それが、勝間和代さんの「読書進化論−人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか」です。
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読書進化論~人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか~ (小学館101新書) (小学館101新書 1)

このサブタイトルにもあるように、この本は、「新しいウェブ時代の読書論」です。
「はじめに」でその読書論の「3つの新しい基軸」について説明されています。
それは、
1.ウェブによる本というコンテンツの読み方の進化
2.ウェブによる著者と読者の関係性や書き方の進化
3.ウェブによる本の売り方と書店の進化
です。
キーワードは「進化」。
ウェブというテクノロジーの登場で、本の立ち位置が難しくなってきている、ということはよく指摘されますが、勝間さんは、ウェブとの関係で本を語るにおいて、「変化」ではなく、「進化」という言葉を使っておられます。
ウェブの登場で本の存在が脅かされるのではなく、ウェブの発達と共に、読書も読者も著者も進化していくのだ、進化していくべきだ、という論調ですね。
私はその考え方に共感を覚えました。
共感を覚えると言えば…。
個人的な話になりますが、勝間さんは私と同い年(厳密に言うと同学年)のようです。(私は1969年の早生まれ)
同世代の女性が活躍されている姿を見るのは嬉しいものですね。
本とウェブとの関係を考えるという本なので、それに連動して、勝間さんはウェブ上で、いろいろな先進的な企画を立ち上げておられます。
ウェブ版『読書進化論』
『読書進化論』ブログ 【勝間和代のBook Lovers】
「読者のみなさんと、一緒に進化していきたい」という勝間さんのメッセージが、このような新しい試みにも表れているなと思いました。
以下、特に印象に残った部分について、私自身の経験や考えと絡めながら、語っていきたいと思います。
私が考える「書評」というものは、本の宣伝でもなければ、本の要約でもありません。
3年間ブログをやってきたブロガーとしての私、そのブログの書籍化として本を出すことができた著者としての私、その私というものを背負いながら、「読書進化論」を読んで何を思い、何を感じたかを語らないと、私が自分のブログで書評を書いている意味がないと思うのですね。
勝間さんは、「本は他者の人生の疑似体験」だと表現されています。
「読書進化論」を読んで、勝間さんの人生を疑似体験しながら、私はブロガー、著者としての自分のこれまでの経緯を振り返り、それと比較しながら、今後の「進化」を期待したいと思うのです。
勝間さんも、「書く技術」の一つとして、「自分の事例を利用して、親しみを持たせる」ことを挙げておられます。
p.137 ブログを読む目的は著者の体験の疑似体験ですから、一般論ではなく、読者は「あなたの体験をしっかり話してください」ということを望んでいるのです。
ですから、今回の書評でも、私の経験談が多くなってしまうことをお許し下さいませ。
また、私という別の人間の経験を語ることで、「読書進化論」で語られている内容が、勝間さんというユニークな人材だからこそできたことなのか、それとも、他の人にも一般的に通用する話なのか、というのがわかるのではないか、とも思いました。
「読書論」というと、これまでは「本の読み方」について語るものが多かったように思いますが、上の2.と3.の部分についてここまで詳しく語られた本はあまりなかったように思いました。
今回、私が特に興味を抱いたのは、2.の「ウェブによる著者と読者の関係性」の部分です。
「はじめに」の p.5 でその部分についての説明があります。
ウェブの発展により、メルマガ・ブログなどの新しいテクノロジーが出てきて、読者と著者の距離がどんどん近づいています。具体的には、読者が著者に対して、書評やブログのコメントという形で直接メッセージを発したり、あるいは読者がブログなどの発展段階を通じて、著者になるケースも増えてきました。
私は自分のこととして体験しているだけに、その「著者と読者の関係性の進化」の部分は、よくわかります。
私は2005年6月にこのブログを始めましたので、もう3年以上ブログを続けていることになります。
このブログを書いていたことで、2008年3月に、私がおすすめしている「海外ドラマのDVDを利用した英語学習法」をまとめた本、シットコムで笑え! 楽しくきわめる英語学習法 (NTT出版)を出版することができました。
私も「著者」の仲間入りをすることができたわけですね。
ウェブというテクノロジーがなければ、ブログというツールがなければ、私が著者になることは決してありませんでした。
(拙著については、過去記事、学習法の本を出版しました! で詳しく触れており、拙著に関係する記事のリンク一覧もそこにあります。)
また、「読者が著者に対して、直接メッセージを発する」という部分についても、経験があります。
拙著を出版した後の話になるのですが、2008年7月に、私はこのブログで、晴山陽一さんの「英語ベストセラー本の研究」(幻冬舎)を読んだ感想を書きました。
すると、晴山さんがネット検索でその記事を発見して下さり、そこから交流が始まったのです。
このブログにコメントを下さり、晴山さんのサイトで拙著を紹介していただき、サイン本まで送っていただける間柄になりました。
お互いの近況をメールで報告し合うなど、今でも、頻繁にメールのやり取りをさせていただいています。(詳しくは、過去記事、晴山陽一氏が拙著を紹介して下さいました をご覧下さい。)
私はそれまであまり書評を書いたことがなかったのですが、このことをきっかけに、ブログで書評を書けば、著者ご本人がそれを読んで下さるチャンスがある、ということを知りました。
それも、書名や著者名で検索すれば、その本について書いてある記事が簡単に見つかる、という、検索機能が発達した現代だからできることですよね。
また、こんな風に晴山さんとお近づきになれたのも、私が本を出していた、というのが大きな理由の一つだろうと思います。
ブログの記事というのは膨大で(現時点で、1149件あります)、サイドバーのプロフィールなどで、ある程度のことはわかるけれど、その人の考え方の全体像をパッと知りたい場合には、どこを見たらいいのか困ってしまう、ということもあるように思います。
その点、私のように、つい最近、それも「初めての本」を出したばかりの人間の場合は、その本を一通り読めば、その著者の言いたいこと、ポリシー、普段のものの考え方、がすっとわかるだろうと思うのですね。
晴山さんが「気になる本は、どんどんアマゾンカートに入れる」というフットワークの軽い方だったことが幸いして、私の本もすぐに読んでいただけて、私のことをすっかり理解していただけた、ということはとてもラッキーだったと思います。
これが逆に、私が何十冊も本を書いている人間だったら、どの本を読めばいいのか迷われたかもしれませんし、そういう意味でも、絶妙のタイミングで、素晴らしい出会いだったなぁ、と思っています。
勝間さんも「本」について、こう述べておられます。
p.28 本は、自分を表現し、流通させるメディアとして、ウェブよりもはるかにフォーマットが安定している
p.29 私は、本というものは、「著者が書店を通じて見知らぬ人たちに名刺を配っている」イメージに近い、と思っています。
勝間さんも私も、流通している本の部数に大幅な違いはあれども(笑)、どちらも自分を表現するメディアとして使っていることは同じだということですね。
第二章 進化している「読む」技術
この章で面白いな、と思ったのは、以下の部分。(印象的な部分を抜粋してあります。)
p.120 私は基本的に本というのは、学術書以外は、ある意味、著者の「与太話」、もう少しいいことばで言うと、著者たちの経験談だと思っています。
「与太話」ですから、その信憑性をきちんと調べるのは自分の責任になります。
とりあえず、やってみて信憑性を調べてみようと思ったのです。
やらないうちからインチキだと断言してしまってもいけませんし、逆に鵜呑みにして魔法の杖のように考えて行うのも危険だと思っています。著者の与太話に対しては、すべてに好奇心と健全な疑いを持ちつつ、調べたり、体感することが、著者との体験談の共有です。
私も拙著で、
まずは「人の意見」に耳を傾けてみる、次に「自分で」やってみる、ある程度やってみて、それから自分なりに「カスタマイズ」する
ということを書いています。
世の中には「極論」好きの人がいて、崇拝するか、徹底的に糾弾するかの二派に分かれることがよくあるけれども、まずは「ある人の意見として」先入観を持たずに素直に聞いてみて、それから自分でやってみよう、ということを書いたのですが、私が言う「人の意見」というのも数多くの本から得た情報のことですね。
勝間さんの「すべてに好奇心と健全な疑いを持ちつつ」という姿勢は、人の意見を聞く上で、本を読む上で、最も大切だと思います。
第三章 「書く」人も進化する
本の発売前から、私が一番注目していた部分です。
想像通り、興味深い内容がたくさん書いてありました。
勝間式「相手がわかりやすく読みやすく書く」ための4つの技術 の技術3に以下の記述があります。
p.143 思想は大事なことなのでしっかりと伝えますが、このような思想を伝えた後に、行動を常にセットで説明し、実行してもらう必要があります。
この点は、私も拙著を書く際に、意識していました。
拙著でも、第1章で、ドラマを使って学ぶのはこれほど効果的ですよ、という私の「思想」を伝え、その次の第2章で、Rach流DVD学習法について、具体的な方法を細かく説明する、という方法をとっています。
学習法はその方向性の正しさについて理解してもらうことがまずは先決で、それを頭に入れた上で、実際の行動を起こしてもらわないといけない、と私も思ったからですね。
ウェブで発見されて著者に進化するには では、勝間さんが実際に進化してこられた様子が、具体的に細かく書かれています。
ここは、是非、実際に本を手にとっていただいて、勝間さんご自身の言葉で語られるのを直接読んでいただきたいです。
その部分の冒頭に、私にとって印象的なことが書いてありました。
p.152 ブログを書いている人は何百万人もいます。しかし、その中で出版社が見つけて声をかけ、商業出版デビューできるのは、年間に数十人か、せいぜい100人単位でしょう。
その人数から考えると、私が商業出版デビューできた、ということは本当に「幸運」だったとしかいいようがありません。
勝間さんは「運」という言葉に、もしかしたら違和感をお感じになるかもしれませんが、「時代の流れ」とか、「人との巡り合わせ」とか、そういうものも無視できないような気が、私自身はしています。
勝間さんの本では、ディスカヴァー21社の干場弓子社長との出会いについて語られていますが、そういう方に出会えたことはやはり幸運だったといえるのでしょう。
そういう方に発見してもらえるほど書き手として進化していたことが、その幸運を引き寄せた、ということは言うまでもありませんが。
勝間さんの本は、現代の人々が求めるものにマッチしていた、だから、こんなに数々のベストセラーを生み出しておられるのだと思います。
普段から、インプットとアウトプットで自分を磨いていて、自分の中に引き出しをたくさん持っていた、それが、最大の理解者との出会いで、その持っているものが花開いた、という考え方もできるのかな、と思います。
ずっと蓄積されていたものがあるからこそ、その中から「時代にマッチするもの」を探し、それを提供することができるのだと思うのですね。
今の時代はこれを求めているだろうから、今からそれについて学び、それについて本を書いてみよう…ではきっと遅すぎるのです。
日頃から問題意識を持ち、大いに考えているからこそ、運やチャンスが到来した時に、スッとそれに乗ることのできる準備ができていた、と言えるのではないでしょうか。
一方、私の話になりますが、私が商業出版デビューできたのは、今の「勉強法・学習法ブーム」のお陰だろうと思っています。
おこがましいですが、私も、勉強法ブームが起こる前から、自分のブログで、Rach流DVD学習法、という言葉を使い、それを実際にブログ上でやってみせていました。
勉強法ブームが来た時に、私は英語を職業とする「英語のプロ」ではないながらも、ブログの中で読者と共にDVD学習法で学び合ってきた、という実績があったからこそ、それを本にすることができたのだろうと思います。
ちなみに、私も商業出版デビューし、本の著者となった人間ではありますが、私の場合は「ウェブで発見されて」というのとは少し違います。
私は「本にしませんか?」と出版社から直接依頼を受けたのではなく、「企画のたまご屋さん」という出版エージェント会社に企画書を提出、それをたくさんの出版社に配信してもらいました。
その企画書を読んで手を挙げて下さった出版社が複数あり、その中で一番熱心にアプローチして下さったのが、NTT出版さんだった、ということです。
「企画のたまご屋さん」について、詳しくはこちら(↓)
企画のたまご屋さん トップページ
その時の詳しい経緯については、書き出すと長くなるので今回は割愛しますが、私の場合も、企画書を読んで編集者の方が気に入って下さった後も、社内での企画会議に通らないといけないなど、いくつものハードルがありました。
出版社が本を出版することを決めて下さった!と聞いた時は、それはもう本当に嬉しかったですね。
私の書いたものが「価格のついた商品」として通用すると認めて下さったわけですから。
「読書進化論」の p.39-40 に、「本を出すと人生のステージが変わる」という話があります。
人生のステージが変わる、というのは、そういう出版のプロがゴーサインを出してくれた、というお墨付きが、自分の自信となるし、それで、自分の作品に対価が発生するからなんだろうと思います。
世俗的な言い方になってしまいますが、「世間の見る目が変わる」というのもあります。
ブログを書いていて、たくさんの人が読んでくれているとか、ブログの人気ランキングで高順位だとか言っても、あまりブログに詳しくない人は「へぇ、そうなんだ」で終わってしまうのですが、本を出すとなると、そしてそれが有名書店で実際に何冊も並んでいたりすると、やはり誰でも驚いて下さるものです。
(私の場合は、夫や私の両親などの身内が一番驚いていた、というのが面白い…笑)
そこが本を出すことによる、劇的な変化の一つですね。
やはり今でも「本」というメディアの威力はすごい、それが本を出せた私の実感です。
長くなりましたので、続きは、次回 にします。
(Rach からのお願い)
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