2008年12月15日

僕は浮気をするような人間じゃない フレンズ3-16その20

長い沈黙の後、
ジョーイ: You think I need a new walk? (俺には、新しい歩き方が必要だと思う?)
チャンドラー: What? (何だって?)
ジョーイ: Well y'know, I've been walking the same way since high school. Y'know, y'know how some guys walk into a room and everybody takes notice. I think I need a take-notice walk. (うーんと、ほら、俺は高校の時からずっと同じ歩き方をしてきてる。ある男たちが、部屋に歩いて入ってきて、みんながそれに注目する、っていうの、知ってるだろ。俺は、「注目される」歩き方が必要だと思うんだ。)
チャンドラー: Are you actually saying these words? (お前は実際にこの言葉を(価値[意味]のある言葉として)しゃべっているのか?)

walk はご存知「歩く」という動詞ですが、ここでは名詞として使われており、「歩きぶり、歩き方」という意味になります。
研究社 新英和中辞典には、
walk=[単数形で]歩きぶり、歩き方
(例) I can usually recognize him by his walk. 私はたいてい歩き方で彼だとわかる。

という語義が載っています。

take notice は「注目する、気に留める、気付く」。「…に気付く」と目的語を取る場合は、take notice of になりますね。

y'know how some guys walk について。
この y'know は「ほら、あの」という感じの挿入句ではなくて、You know how some guys walk into... ということ、つまり、some guys が walk into する「様子」を知ってるだろ、「どんな風に」 walk into するかを知ってるだろ、ということだと思います。
some guys は「何人かの男たち」と訳してしまうと変で、部屋に入ってくるだけで、おっ!?と注目したくなるような「男たちっている」だろ、みたいなニュアンスですね。

フレンズ3-6その4 では以下のようなセリフもありました。
ロス: Yeah, y'know how I have you guys? (あぁ、ほら、僕は君たちみたいな友達を持ってるだろ?)
これも、y'know how+SVの形で、直訳すると、「僕がどんな風に君たちを持っているか知ってるだろ?」ということで、それは「こんな風にいつも一緒に時間を過ごして仲良くしている様子、僕と僕の友達がどんな感じかを知ってるだろ?」というニュアンスですよね。

Are you actually saying these words? の say のニュアンスについて。
say は「言葉を言う」という意味ですが、ここでは実際にジョーイがしゃべっていることは明白なので、「お前は(これらの)言葉をしゃべっているのか?」という意味だとすると、妙な質問になってしまいます。
チャンドラーが言いたいことは、「ロス&レイチェルの今後をみんなで心配しているこんな時に、どうしてそんな「どうでもいい話」をしてるんだ?」みたいなことだろうと思います。

この say のニュアンスを考えるに当たり、興味深い記事がありましたので、ここでご紹介します。
神崎正哉先生の TOEIC Blitz BlogTalk vs. Say という記事で、The Specials の Do Nothing という曲の歌詞 I talk and talk, say nothing の talk と say の違い、について語られた記事です。
ビジネス英語雑記帳 の日向清人先生もコメント欄で参加されています。
日向先生のお言葉をお借りすると、「say は、相手にとって information としての価値のあることを言う」というニュアンスがあるのでは、とのことです。

そのニュアンスを今回のチャンドラーのセリフにも適用してみると、「ジョーイは何か言葉を発しているようだけど、本当に何がしかの information として価値のあることを、今実際に言ってるか?、言ってるつもりか?」みたいなことになるのかなぁ?と思いました。
つまり、ジョーイのしゃべっていることは、音としては耳に入ってくるけれど、それが何か意味のあることのようには思えない、「何の役にも立たないようなことを、何ペラペラしゃべってんだよ!」みたいなことなのかなぁ、と。


[Later, in the living room, Rachel is sitting on the couch, Ross is on the chair.]
リビングのその後。レイチェルはカウチに座っていて、ロスは椅子に座っている。
ロス: What, now you're not even taking to me? (moves over to the coffee table) Look, Rachel, I-I'm sorry, okay, I'm sorry, I was out of my mind. I thought I'd lost you, I didn't know what to do. Come on! Come on, how insane must I have been to do something like this? Huh? I-I don't cheat, right? I, that's not me, I'm not Joey! (ねぇ、今は僕と話すことさえしないの? [コーヒーテーブルの方に移動する] ねぇ、レイチェル。ごめん、ごめんよ。僕は正気を失ってたんだ。僕は君を失ってしまったと思っていたんだ。どうしたらいいか僕はわからなかったんだよ。ねぇ、ねぇ! こんなことをするなんて、僕がどれほど正気でなかったか。そうだろ? 僕は浮気をするような人間じゃない、そうだろ? 僕は…そんなの僕じゃないんだ。僕はジョーイじゃないんだから。)
[Cut to Monica's bedroom]
モニカの寝室に画面がカット。
ジョーイ: Whoa-ho-ho! (He looks at Chandler, who gives him a 'come on' look.) Yeah, okay. (おいおいおい! [ジョーイはチャンドラーを見る。チャンドラーは「何、怒ってるんだよ/いいじゃないか」というような顔をする。] まぁ、いいや。)
モニカ: Hey. It's 3 in the morning. They don't know that I've come home yet. You notice how neither one of them are wondering where I am? (ねぇ、(もう)朝の3時よ。あの二人は私が家に帰っていることをまだ知らない。ねぇ、気付いてる? 二人のどちらも、私が今どこにいるのか、って考えたりしてない、って。)
フィービー: Yeah, y'know, people can be so self-involved. (そうね。ほら、人はものすごく自分のことばかり考えてしまうものだから[ひたすら自分のことだけを考えることができるのね]。)

I thought I'd lost you. は、過去の時点で「君を(その時すでに)失ってしまっていた」と思っていた、ということですね。
think (thought) の時点よりも、lose (lost) した時点の方が「より過去」であるために、ここでは過去完了形が使われている、ということですね。

how insane must I have been to do something like this? について。
I must have been (so) insane to do something like this. という文章の、insane の度合いを尋ねる疑問文ということでしょうか。
must have been は、「must have+過去分詞」で、過去についての推定を表し、「(過去の時点で)…したに違いない、…だったに違いない」というニュアンスですよね。
「こんな浮気をするなんて、僕はあの時、ものすごく insane だった(常軌を逸していた)に違いないんだ。」のその「どのくらい insane だったか?」という部分を how で疑問文にしている、という構造かなと思います。
無理に日本語に訳すとすると、「こんなことをするなんて、僕はどれほどおかしくなっていたに違いないか?」みたいな感じになるでしょうか?
「こんな行動を起こしてしまったあの時の僕は、尋常じゃなかったはずなんだ。」というニュアンスかな、と思います。
その後、I don't cheat, right? と続いているのも、「(あの時、どうかしていたに違いない僕は浮気をしてしまったけれど)いつもの僕は、浮気をするような人間じゃない。そうだろ?」というニュアンスですね。
このように「現在形」には、習慣・習性を表す性質があります。
普段の僕はそんなことをしない、あんなのは僕じゃない、僕はジョーイのようなプレイボーイじゃないんだから。つまり、そういう普段しないようなことをしてしまうほど、自分はあの時、insane だった、普段しないようなことをしてしまったのを見ても、あの時 insane だったに違いないと断言できるはずだ、ということが言いたいわけですね。

浮気者のように言われて隣室で抗議の声を上げるジョーイ。
ジョーイが「今の言い方はひどいよな。」という感じでチャンドラーを見た後、チャンドラーがジョーイに対してある表情をするのですが、それがト書きでは、who gives him a 'come on' look と書いてあります。
この "Come on!" のニュアンスをうまく説明できないのですが、「まぁまぁそんなに怒るなよ。」といさめているのか、「何怒ってるんだよ、実際、当たってるだろ、その通りだろ。」「(怒るのは)よせよ、ほんとのことだろ?」みたいなニュアンスなのかのどちらかでしょう。
そんな顔をされたジョーイは、まぁ、いいや、という感じで再び、ドアにくっついて聞き耳を立てています。

They don't know that I've come home yet. は、Monica has come home. 「モニカが(すでに)家に帰ってきている」ということを、They don't know yet. 「まだ知らない」という構造かな、と思います。
つまりモニカたちが隣室にいることを知らない、ということですね。
You notice how+SVは、今回の記事に出てきた y'know how some guys walk と同じで、SがVする様子にあなたたちは気付いてる?という感じでしょうか。
ロス&レイチェルのどちらも「そう言えばもうこんな時間なのに、モニカは帰ってきていない。今どこにいるんだろう?」みたいなことを思っていない様子であることに、フィービーたちは気付いてる?ということですね。

involved は「熱中して、夢中になって」と何かに深く関わっている状態を表すので、self-involved は「いつも自分のことばかり考えていて、他人のことなんて全く気にしていない。自分のことで頭がいっぱい」という感じだと思います。
self-involved は、フレンズ3-7その28 にも出てきました。
フィービーのこのセリフは、モニカを援護しているようでいて、その実は、「ロスとレイチェルが大問題を抱えている時に、「私がいないことを気にしないなんて二人は冷たい」と言っているあなたも、かなり自己中よね、人はそれぞれ、自分のことを中心に物事を考えてしまうものなのね。人間というものは、どこまでも self-involved になることが可能なのね。」と言っているようです。


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posted by Rach at 09:44| Comment(2) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんな言い方をすると失礼だとは思うのですが、Talk vs. Say の話がまったく見えてきません。
たとえば、I watched the movie. と I saw the movie. の違い、とかなら話もわかるのですが、talk と sayって同じように使えませんよね? (Y'know what I'm saying?)

確かに、こちらで紹介されていた歌詞のように、「あいつは言うだけで真剣に思っていないから心配しなくていいよ」という意味で、
Don't worry about him. He just talks.
のようなものは頻繁に使いますが、別にtalk がどうでもいいことについて話す、ということに限定されているわけではないですよね?
なぜなら、モニカいわく、
People never say 'We need to talk' unless it's something bad. だからです。

チャンドラーの言う、
Are you actually saying these words? のニュアンスは「これらの言葉を発しているのは本当にお前なのか?」
ということだと思います。
つまり、ここでは重要な情報云々は全く関係なく、
Are you actually the one who's saying these stupid things? の感じではないでしょうか?

病気でうなされている、とか、何かに取り付かれてそのようなことを言っている、とかではなく、「この状況下において、そんなくだらない事をいっているのは本当にお前という人間なのか?」というニュアンスではないでしょうか?

まぁ、当方は日本語でのニュアンス云々はあまり考えたことはございませんので、断定はできないのですが。
Posted by FaDEd dEAD JAdED at 2009年01月03日 17:52
FaDEd dEAD JAdEDさんへ
貴重なご意見、ありがとうございます。

talk の例として挙げて下さったモニカのセリフ、People never say 'We need to talk' unless it's something bad. は、フレンズ3-23 に出てきますね。
この場合は、日本語の「話があるんだ」という感じで、「どうでもいい話」じゃない「大切な話」を、きちんと二人で話し合う必要がある、というニュアンスですものねぇ。
上で例に挙げさせていただいた歌詞や、He just talks. の場合はやっぱり「何かくっちゃべってる」みたいな、とりあえず音声として言葉を発して何かしらしゃべってる感じはすると思うのですが、それが必ずしも、talk という動詞の基本的なニュアンスではない、ということですね?

どうして、say にひっかかったかと言うと、相手がわけわからんことを言った場合には、What are you talking about? と返すのが普通かな、と思ったのです。それをどうしてわざわざ say these words という言い方をしたのかなぁ?と思って、say という単語に注目すべきなのかな?と、say のニュアンスのヒントを探してみたのですね。
say は「言葉を言う」が基本なので、これらの言葉を実際に言っているのは明白だから、それをわざわざ疑問文にして問いかける、というチャンドラーのセリフに、どういうニュアンスが込められているのかを探りたかった、ということです。そこで、talk と say の話を思い出した、ということなんですが…。

で結局、ここでは、say と talk の使い分けをしているわけではなくて、ポイントは、you という主語にある、ということですね? 「お前は頭、大丈夫か?」みたいなことで、「実際に今、この言葉を発しているのはお前なのか? お前は自分の言っていることがわかっているのか? わかってて、そんな言葉を発してるのか?」みたいなことなんでしょうかねぇ??

そんなことを言っている「お前」に対するあきれた気持ちが表れたセリフである、ということですね? say の方ではなくて、you にポイントがある、ということで、私も納得しました。
Posted by Rach at 2009年01月04日 08:04
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