2009年01月04日

わかりました、殿下 フレンズ3-17その4

チャンドラー: Y'know what, maybe it's gonna be okay, I mean, it's been a week. (なぁ、多分、大丈夫だよ。だって、まだ1週間だぞ。)
ジョーイ: Yeah, it's never taken me more than a week to get over a relationship. (あぁ。(男女)関係(の問題)を克服するのに俺が1週間以上かかった経験はこれまでないよ。)
モニカ: It's never taken you more than a shower to get over a relationship. (あなたの場合は、関係(の問題)を克服するのに、シャワー1回分以上かかったことないでしょ。)

it's been a week. は「現在の時点までで1週間」で、It's been a week since they broke up. ということですね。
まだ1週間しか経ってないぞ、そのうち仲直りするさ、ということです。

get over は「乗り越える、克服する、打ち勝つ、立ち直る」。
ロングマン現代英英辞典では、
get over: UNPLEASANT EXPERIENCE
get over something
to begin to feel better after a very upsetting experience

つまり、「非常に動揺させるような経験の後で、気分が前よりよくなること」。

チャンドラーの「まだ1週間だ」に対応するセリフなので、get over a relationship は、「男女の恋愛関係の問題を克服する」というような意味だと思います。
get over a relationship という表現を最初聞いた時、「きっちり別れてケリをつけ、別れ・別離を克服する」ようなイメージに聞こえたのですが、フレンズの誰もがロスとレイチェルが別れることを望んでいないので、ここではやはり、「今、喧嘩しているという悪い状態・状況を克服する」、つまり「また、よりを戻す」という意味だろうと思います。

to get back together ならはっきりと「よりを戻す」と言っていることになりますが、ジョーイの get over a relationship という言い方だと、「別れがドロ沼になっていて、それから早く抜け出したい、きっぱり別れたい場合」、「二人の気持ちが行き違いになっていて、早く上手に仲直りしたい場合」のどちらも使えるような気がしました。

ジョーイが「俺なら1週間もかからない」というのに対して、モニカは「1週間どころか、シャワー1回分もかからないくせに」と言っています。
シャワーを浴びるのは数分のことなので、ジョーイの場合はそんなことで数日も悩んだりしないでしょ、ということです。
男女の恋愛において、シャワーというのは、エッチの後に浴びるイメージがあるでしょうか?
ジョーイのようなプレイボーイの場合、相手と寝た後、その後シャワーを浴びている間にその人のことはどうでもよくなってしまって、何の後腐れもない、みたいなことをモニカは言いたいのかもしれません。


[Rachel enters.]
レイチェルが入ってくる。
モニカ: (seeing her) Okay, let's go!! Let's hit the road!! ([レイチェルを見て] よし、行きましょう! 出発しましょう!)
レイチェル: Hey! (はーい[と挨拶する]。)
モニカ: Let's get the show on it! (計画を開始しましょう!)
レイチェル: Okay, let me just get a cup of coffee. (わかった。ちょっとコーヒーを1杯飲ませて。)
モニカ: Oh Rachel, I know the best coffee house and it’s sooo close. (まぁ、レイチェル。私は最高のコーヒーハウスを知ってるの、すごーく近くなのよ。)
レイチェル: Closer than here? (ここよりも近いの?)
フィービー: (turning around and picking a cup off of a table) Oh, hey, look, I found coffee! (handing her the cup) Okay, let's skedaddle. ([振り返って、テーブルからカップを1つ取り上げる] あぁ、ねぇ、見て。コーヒーを見つけたわ! [レイチェルにそのカップを手渡す] さぁ、ずらかろう。)
レイチェル: Wait, I'm not just gonna drink somebody's old coffee. (待って。私は誰かの古い[飲みさしの]コーヒーを飲むつもりはないわよ。)
フィービー: Okay, Your Highness. (わかりました、殿下。)

hit the road は「出発する、立ち去る」。
フレンズ2-22その22 でも、
レイチェルママ: Alright, Monica dear, I'm gonna hit the road. (モニカ、もう行くわね。)
というセリフがありました。

get the show on it ですが、get the show on the road という表現があるようです。
get the show on the road は、「計画・仕事などを始める、仕事に取りかかる、活動を開始する」という意味。
ショーを道に乗せる、つまり、何かの計画を軌道に乗せる、というようなニュアンスでしょうか。
ロングマン現代英英辞典では、以下のように載っています。
let's get this show on the road: (spoken) used to tell people it is time to start working or start a journey
つまり、「仕事を始める、または旅を始める時間だと人に言うために使われる(表現)」。

その前のセリフで、hit the road という言葉を使っており、今回も同じ the road という言葉を使うイディオムなので、2回目は it と表現しているようですね。

このモニカの一連のセリフ、Let's go! だけなら普通ですが、あとの2つはちょっと表現が「わざとらしくて大袈裟」ということだと思います。
「行こう、出発よ、計画開始よ!」と言って、ここからすぐに立ち去ることを促しているのですが、イディオムを使うことで、大仰しい感じを出している、「さぁ、素晴らしい計画のために、これから張り切って出発しましょう!、いざ出陣!、出発進行!」みたいに、普段使わないような表現を使って必要以上に盛り上げようとしている、その勢いでさっさとここを出ちゃおう、と思っているモニカの気持ちが見て取れるセリフなのかな、と思いました。

今、モニカたちがいるセントラルパークはコーヒーハウスなので、その店の中で、I know the best coffee house and it's sooo close. 「最高のコーヒーハウスを知ってる、すごく近くなの。」と周りの人に聞こえるような声で言ってしまっていいのかしら?と思ったりしたのですが…(笑)。
レイチェルは「近くもなにも、今、私たちはコーヒーハウス内にいるでしょ。近くにわざわざ行かなくても、ここで飲んでいけばいいじゃない。」と言っているのですね。

let's skedaddle について。
skedaddle は、研究社 新英和中辞典では、
skedaddle=(動)(自)(口語) 急いで[あわてて]逃げる、逃走する

見慣れない単語なので、フィービーの造語かと思ったら、上に挙げた研究社の辞書にも、英辞郎にもちゃんと載ってました(笑)。
でも、ネットスクリプトでは、let's scidaddle. と書いてあったので、ネイティブにとっても、それほどなじみの単語ではないのかもしれません。
スケダードルみたいに、ダにアクセントが来ますね。
ロングマン現代英英辞典では、
skedaddle: [intransitive] (spoken) to leave a place quickly, especially because you do not want to be caught - used humorously
つまり、「ある場所を素早く離れる、特に捕まえられたくないという理由で。ユーモラスに使われる」。
used humorously というのがポイントでしょうか。
日本語で言うと、「とっととずらかろう」みたいな感じかな、と思いました。

highness は、high の名詞形で「高いこと、高さ、高位」。
そこから、皇族に対する敬称や呼び掛けとして使われ「殿下」という意味になります。
Your Highness は2人称として使われますので、このフィービーのセリフでは、レイチェルに対して「殿下」と言っていることになりますね。
人の飲みさしのコーヒーは飲まない、と言ったレイチェルのことを、「あなたはそういうものは飲めない高貴な方なのね。」という感じで、「殿下」と呼びかけた、ということです。
日本語でも「上から目線の人」「態度のでかい人」に対して、「お前は何様のつもりだ?」みたいに言うことがありますが、今回はそこまで喧嘩を売っていないにしても、「高貴なお方である殿下に、わたくしは無礼なことを申し上げましたわね。」みたいなニュアンスを込めたようです。


[Ross enters behind Rachel, and look at each other for a moment.]
ロスがレイチェルの後ろに入ってくる、お互いをしばらく見る。
フィービー: (in a deep voice, imitating Ross) "Um, Rachel I'm really sorry." (imitating Rachel) "That's okay, Ross. Wanna get back together?" (imitating Ross) "Yeah, okay." (in her normal voice) Did anyone else hear that?! ([ロスを真似しながら、太い・低い声で] 「あぁ、レイチェル。本当にごめんよ。」 [レイチェルを真似しながら] 「いいのよ、ロス。よりを戻したい?」 [ロスを真似しながら] 「あぁ、いいよ。」 [フィービーの通常のいつもの声で] 他の人も誰か今の聞こえた?)
OPENING CREDITS

レイチェルがまだいる時にロスが入ってきたので、出会ってしまって気まずい二人。
そこで、フィービーが一人芝居を始めます。
声色や言い方が全く似ていない、いい加減な物真似なのに笑えますね。

Did anyone else hear that?! で、anyone else が使われているのは、「私以外の誰かにもそれが聞こえた?」ということですね。
誰が見ても、フィービーがしゃべっていたのはバレバレなのに、さも自分がしゃべったのではないように、「今、ロスとレイチェルの声が”私には聞こえた”けど、”他にも誰か”聞こえた人がいる?」と言っているのですね。
そのように言うことで、「今しゃべったのは私ではない」ということを示唆、主張しているわけですが。

フレンズ3-5その4 では、
チャンドラー: Does anyone else think David Copperfield's cute? (デビッド・カッパーフィールドがキュートだと思う人は他にもいる?)
というセリフもありました。
この場合はジャニスがそう思っている、ということだったのですが、チャンドラーがそう思っているように(わざと)誤解されていましたね。

ロスとレイチェル、それを見ているフレンズたちの気まずさを解消する方法としては、あまり役に立たない方法ですが、それでも、フィービーが二人がよりを戻すことを願っているというのは、このセリフからもわかります。
ロスとレイチェルもそれには気付いているでしょうが、それでも簡単には仲直りできないほど、今回の喧嘩はこじれにこじれているのが悲しいですね。


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posted by Rach at 08:06| Comment(2) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

いつも楽しく拝読させて戴いています。『フレンズ』は、You know what,のような相手に注意を引きつけるような会話表現が満載の上に、基本単語・表現を生きた会話で学ぶいい教材だとRachさんのブログを読みながら感じます。

例えば、チャンドラーの"I mean, it's been a week."は現在完了の文ですが、いかにも話し手の目の前にいままでの1週間が見えている感じがします。

ぼくの書き方が悪くて不快にさせたら、本意ではないのですが、2度やりとりで使われている"more than"という表現はちょっと気になりました。

ジョーイの"Yeah, it's never taken me more than a week to get over a relationship."の場合、連続している時間なので、「1週間以上かかった経験はこれまでない」というRachさんの日本語でしっくりくるのですが、モニカの"It's never taken you more than a shower to get over a relationship."では、回数ですから、more than one personが「2人以上」を指すことを考えると、「シャワー1回浴びれば、問題を解決できるんでしょ(2回目のシャワーは必要ない)」というのが正確なのかなあ、と思います。ただ、否定語が入っているのでRachさんの最初の訳でやっぱり合っているのかなあ、と考えたりします。手元のMerriam-Webster's Advanced Learner'sには、Choose no/not more than three options. [=chose three options or fewer]とあります。いかがでしょうか。

本年もどうぞよろしくお願いします。
Posted by outrageous2007 at 2009年01月05日 13:39
outrageous2007さんへ
あけましておめでとうございます。
フレンズの教材としての魅力をわかっていただけて、とっても嬉しいです。ほんとうに(こういうサイトを運営している私が言うのもなんですが)、フレンズは「基本単語・表現を生きた会話で学ぶいい教材」ですよね!

ご指摘の never taken you more than a shower について。
outrageous2007さんのおっしゃる通りだと思います。
私は more than a week という「期間」を表す言葉につられて、a shower の方も、「シャワー1回分くらいの短い時間」という「時間、期間」の長さを表しているように訳してしまったようです。だから、「1回分の長さ」という意味で、「1回分」と書いたようですね。

が、実際のところは、a week は「1週間」という長さを指しますが、a shower の方は、「シャワーを1回」という「回数」を指している、ということですね?
おっしゃるように、それはまさに「ジョーイにとっては、2回目のシャワーは必要ない」ということで、1回寝てしまえばそれでおしまい、いつまでもややこしい関係をずるずる引きずったりしない、男女関係がこじれたまま2度3度寝るような関係を続けたりしない、ということが言いたい、ということなんでしょうね?

期間の長さか回数か、という点は、日本語に訳してしまうとうやむやになってしまいそうな部分ですが、その点は、英語を理解する上で大切なポイントですよね。私がさらっと流して気付かなかった部分を気付かせて下さり、感謝しています。ありがとうございます。

こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願いします。
Posted by Rach at 2009年01月06日 08:45
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