2009年01月10日

防衛機構としてユーモアを使う フレンズ3-17その7

[There's a knock on the door.]
ドアをノックする音。
チャンドラー: Oh that's great. With my luck, that's gonna be him. (あぁ、最高だね。俺の運がよければ、あれはヒム[彼]だろうね。)
フィービー: Him? Him, Ross? (ヒム? ヒムってロス?)
チャンドラー: Nope, "Hymn" 253: "His Eyes Are on the Sparrow!" When my parents got divorced is when I started using humor as a defense mechanism. (answers the door and it's Rachel again.) (いいや。ヒム[賛美歌]253番。「彼の目はスズメに注がれていた」だよ! 俺の両親が離婚した時が、俺が防御機構として、ユーモアを使い始めた時なんだ。[ドアに応対して開けると、再びレイチェルである])

研究社 新英和中辞典では、
with luck=運がよければ
例) With luck, the patient will recover. 運がよければ病人は回復するだろう。

と出ています。
with my luck は「俺の運がよければ」ということでしょう。
さっきはレイチェルが来て気まずくて、その気まずさが抜けきらないうちに、今度はその気まずい原因であるロスが来たらしい、と言っているわけですから、with my luck というのは、皮肉ですね。
「あぁ、全く俺は幸運だよね、今度はロスが来たよ」というニュアンスでしょう。

hymn は「(教会の)賛美歌、聖歌」。
him と hymn は発音が全く同じです。
幸運にも彼が来た、と言っているわけなので、その話題の当事者であるロスに決まっているのに、ヒムってロスのこと?とわかりきったことをフィービーが尋ねるので、「いいや、ヒムってのは、賛美歌の hymn のことだよ」と、ボケているのですね。
こんな風に「わかりきったことを尋ねてくる相手に、あり得ない返事を返す」というジョークのパターンは非常に多いです。
「当たり前だろ」という代わりに、「あまりにもわかりきったことを聞いてくるから、こっちもちょっとふざけてみた」みたいなジョークになるでしょうか。

日本のボケとツッコミの場合は、「ヒムが”賛美歌の hymn”なわけないだろ!」とツッコむか、「違うよーん、ヒムというのは、賛美歌の hymn のことだよ ♪ラララ〜♪(としばらく歌って)…って、そんなわけあるかーい!」と「一人ボケツッコミ」をするかのパターン(ザブングルの加藤歩さんがこんな感じ?)に分かれそうな気がするのですが…。
アメリカンジョークの場合は、「いや、ヒムっていうのは賛美歌の hymn のことだ」と「あり得ないことを”しれっと”言う」、そしてそれに対して周りのものが「はぁ?」とあきれて、観客の笑い声が入る、のが特徴のような気もします。
みんなが「またそんなジョークを言って…」みたいにあきれるので、防衛機構としてユーモアを使う話を語って、こんなジョークばかり言う言い訳をしているのですね。

チャンドラーが名前を出した、"His Eyes Are on the Sparrow" について。
ウィキペディアにありました。(His Eyes Are という複数形ではなくて、His Eye Is という単数形になっていますが…)
Wikipedia 英語版: His Eye Is on the Sparrow

チャンドラーは賛美歌の番号を 253 だと言っていますが、それが正しいのかどうかは裏が取れませんでした。(賛美歌には詳しくないもので)
彼の目、というのは神様の目でしょうから、神様がその一羽のスズメを見つめていた、神様の目が一羽のスズメに注がれていた、という意味のタイトルでしょうね。
Marvin Gaye などもこの曲をカヴァーしているようです。

When SV is when SV、という形について。
「両親が…した時が、俺が〜した時なんだ。」みたいな構造ですね。
そのヒムジョークがあまりウケなかったので、つまらないジョークだって責めないでよ、何だか辛いことがあると、こうしてついジョークが口から出てしまうんだよな、こういうジョークをディフェンス・メカニズムとして使うようになったのも、タバコを始めたのと同じ、両親が離婚した時だったんだよ、という言い訳です。

defense mechanism は「防衛機構」。
何か辛いことを撥ね退けるためのメカニズム、いやなことから自分を守るためのメカニズム、という感じですね。
いやなことをダイレクトに受け入れないで済むように、ジョークでごまかすようになった、ということです。

use humor as a defense mechanism というフレーズは以前のエピソードにも出てきました。
フレンズ2-13その3 で、
スージー: Remember the class play? You pulled up my skirt and the entire auditorium saw my underpants? (クラスのお芝居を覚えてる? あなたが私のスカートを引き上げたから、観客席全員が私のパンツを見ちゃったのよ。)
チャンドラー: Yes. Back then, I used humor as a defense mechanism. Thank God I don't do that anymore. (そうだね。あの頃は、ユーモアを防衛機構として使ってたから。もうあんなことしなくなってて良かったよ。)

チャンドラーのユーモアが防衛機構の表れであることは、フレンズにおける常識、と言ったところでしょうか。


レイチェル: Hi! Uhh, do you guys have plans for the weekend? Because I have my sister on hold, and she said that we could use her cabin for the weekend and go skiing. Huh? I'm asking you first, right?! I mean I'm playing by the rules. (はーい! えーっと、みんなは週末の予定ある? (どうしてこんなことを尋ねるかって言うと)妹との電話を保留中なんだけど、妹がこう言ったの。週末に妹のキャビンを使って、スキーに行くことができるんじゃないか、って。どう? 私はあなたたちに最初に尋ねているわよね? つまり、私はルールに従って行動しているのよ。)
みんな: Absolutely, yeah! (もちろん、イエスだよ!)
レイチェル: Chandler! You're smoking? What are you doing?! (チャンドラー! あなた、タバコを吸ってるの? 何やってるのよ?!)
チャンドラー: Hey, shut up!! You're not my real mom!! (おい、黙れよ! 君は俺の本当のママじゃないんだから!)

on hold は「保留の状態で」。
ですから、I have my sister on hold というのは、妹が「保留の状態である」という状況を私が持っている、という感じで、つまりは、電話で妹と話していて、「ちょっと待っててね」と今、妹との電話を保留状態にしている、ということでしょう。

play by the rules は「ルールに従って行動する、フェアプレーをする」。
さっきは、ロスの方が先約だったから、断られちゃったけど、週末の約束は私の方が早いでしょ? 早い者勝ちがルールなら、私はルール通りに動いて誘っていることになるわよね、という感じです。
ちょうどレイチェルに対して申し訳ないとみんなが思っていたところなので、今度は断る理由もないから、みんな大賛成しています。
後から入ってきたレイチェルにまで、喫煙をとがめられたので、「俺のほんとのママじゃないくせに!」みたいにチャンドラーは言っています。
タバコもジョークも、原因は両親の離婚だった、という話の流れから、わざと大人に叱られた子供のような言い回しを使ったのでしょうね。


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posted by Rach at 09:12| Comment(8) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
With my luck は逆に、チャンドラーの運のなさ、を示した表現ではないでしょうか。 「幸運にも」ではなく、「俺の運からすると」というか「俺の運のなさからすると」のような感じではないでしょうか?
Posted by FAdeD DEAd JAdED at 2009年01月12日 07:30
FAdeD DEAd JAdEDさんへ
コメントありがとうございます。

そうですね。luck は「幸運」ばかりとは限らないですものね。
luck 自体は「運、運勢」であって、bad luck, hard luck 「不運」もありますからねぇ。

ちょっと追加で調べてみると、
研究社 新英和中辞典に、
Just my luck!=(口語)(反語的に)なんたる運よ!、まったくついてないなあ!
というのが出ていました。

これが「反語的」だとすると、「俺の幸運!」→「全くとんだ”幸運”だよ!」みたいなニュアンスなのでしょうが、luck を「幸運」だと考えずに、単なる「運」だと考えると、「(全く)俺の運ってのは!」みたいなニュアンスだとも受け取れますよね。俺の「運のなさ」を呪っているようなセリフだとも考えられます。

そういう意味で、With my luck も、「俺の持っている運で言うと」みたいな感じで、必ずしも「幸運」を示唆しているわけではない、ということですね?
そして、チャンドラーが自分の運を語る時は、「自分には運がない」と思っているタイプの人なので、「俺の今までの運を考えると、今度は別の悩みの種のロスが来たんだろうな。」という流れになるのですね?
ここは「幸運」ではなく単なる「運」と解釈した方が良くて、チャンドラーが運を語る場合は「運のなさ」を示唆している、ということになる、ということになるでしょうか?

上の記事での解釈は、with luck 「運がよければ」という語義に引きずられてしまって、無理やり「運がいい」という解釈に当てはめようとしてしまった結果かなと思います。with my luck 「自分の運から考えると、判断すると」という風に、素直に受け止めれば良かったのでしょうね?
Posted by Rach at 2009年01月12日 08:19
後半部分が付加疑問になってますけど、私の意見としてはすべて「です」です。 また、her with のやつ、ぜひレイチ様のご意見をお聞かせ下さい。 
Posted by FDJ at 2009年01月13日 07:43
FDJさんへ
「後半部分が付加疑問になってますけど」というのは、上の「運」に関する私のコメントが、「ことですね?」みたいに「はてなマーク」ばっかりついて、同意を求める問いかけ調になっている、ってこと…ですよね?(とまた、付加疑問…笑)
それがすべて「です」だということは、私の意見に同意して下さった、ということで理解させていただきます。ありがとうございます。(違ってたら、言って下さい。)

また、her with のやつ、というのは、the latest article on yours のことですよねぇ? I've just read that, but I don't know what to say right now. Let me think about it for a while, please.
Posted by Rach at 2009年01月14日 07:27
His Eyes Is On The Sparrow は賛美歌 新聖歌285番「 一羽の雀に」ではないですか?

「心くじけて(一羽のすずめに)」 新聖歌 285番
心くじけて 思い悩み などて寂しく 空を仰ぐ
主イエスこそわが 真の友
一羽のすずめに 目を注ぎ給う
主はわれさえも 支え給うなり
声高らかに われは歌わん
一羽のすずめさえ 主は守り給う
心静めて 御声聞けば 恐れは去りて ゆだぬるをえん
ただ知らまほし 行くての道
一羽のすずめに 目を注ぎ給う
主はわれさえも 支え給うなり
声たからかに われは歌わん
一羽のすずめさえ 主は守り給う

マタイによる福音書6章26節。
「空の鳥を見るがよい。まくことも、刈る事もせず、倉にとりいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。」
Posted by ぷり at 2010年11月26日 10:43
ぷりさんへ
情報ありがとうございます。
書いていただいた歌詞がまさにこの賛美歌ですね。
邦題を教えていただけたことで改めて検索してみると、ウィキペディア日本語版にもありました。

Wikipedia 日本語版: 一羽の雀
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E7%BE%BD%E3%81%AE%E9%9B%80

残念ながら、ウィキペディア(英語、日本語とも)には、賛美歌の「番号」は書いていないのですが、「新聖歌 285」で検索したら、その「心くじけて」がいくつもヒットしましたので、やはりその番号で間違いないようですね。

…とすると、チャンドラーが適当な番号を言ったか、もしくは脚本家が番号を勘違いしたか、のどちらかなのでしょうね。

また、「マタイによる福音書」の件もありがとうございます。
改めて見てみると、上の記事でリンクした
Wikipedia 英語版: His Eye Is on the Sparrow
の Inspiration にも、
「Matthew 6:26 や Matthew 10:29-31 にインスパイアされた」
という記述がありました。

賛美歌などについては未だによくわかっておりませんので、非常に勉強になります。貴重な情報、ありがとうございました。
Posted by Rach at 2010年11月26日 13:28
こんにちは。
私は子ども時代と大学時代、教会へ通っていましたが、日本でもアメリカでも聖書はともかく賛美歌集を持ち歩くということは今までなかったんです。

その場で借りて牧師さんが「今日は 何番を歌います」とか言ってたと思うのですが、その都度違う歌を歌うので、番号までいちいち覚えていないと思うんですよね。

まして、チャンドラーが大人になって通っているとは思えないのでその番号は適当に言った番号なんじゃないかな〜と思ったりします(笑)

この賛美歌自体は「天使にラブソングを」で有名になった曲なので、その後放映されたフレンズで使われるのはあまり不思議じゃないような気がします。だから適当に番号を言った…とか(勝手な憶測ですが)

あと、アメリカのドラマとか映画などのスクリプトは、必ずしも細かくセリフが書いてあって、それに忠実に演技をするのではなく、ある程度大ざっぱに書いてあって、俳優がそれに合わせて演技することもある、というコメントを何かの番組で聞いた事があります。だから、このセリフも監督とか俳優が適当に思いついて番号を言ったとか…

翻訳の仕事をしている友人からも同じようなことを聞いた事があります。スクリプトと実際のでき上がった映像と相当違っていたりする、というのも結構聞きます。だから、翻訳者はヘタすると全て聞いてスクリプトを作り出すとか…(大変な労力ですね…)

Posted by ぷり at 2010年11月29日 00:28
ぷりさんへ
コメントありがとうございます。

うちは浄土宗だったので、私は教会に通ったことがないんですよねぇ。聖書や賛美歌について、自分の経験から知っていることは皆無なんです。ですから、そのようにご自分の経験から語っていただける情報は大変ありがたく勉強になります。ありがとうございます。

やはり牧師さんは曲の「番号」をおっしゃるのですね。「賛美歌○番:タイトル」みたいな言い方はよく聞く言い方で、チャンドラーもそんな感じのセリフを言っているけれど、多分、番号はテキトー…というのが、真実っぽいですね。

ウィキペディア英語版にも、そういう「番号」の記述はありませんでした。タイトルと番号がしっかり結びついているのであれば、そういう情報も欠かせないものだと思うのですが、ウィキペディアに書いていないくらいですから、別に番号までは知らなくてもいい、ということかもしれませんね。でもセリフとしては「番号」を言うのがそれっぽい、と。

今、改めて、His Eye Is on the Sparrow の英語版ウィキペディアを見ると、
Lauryn Hill & Tanya Blount (from Sister Act 2)
という記述がありますね。
私は、「天使にラブソングを」を見ていないので、Sister Act がその原題だということにも気付きませんでした。その有名な映画のイメージもあって、今回、名前が使われた可能性は高いですね。

私が見たフレンズの映像特典でも、観客の反応を見て、その場でセリフを変えていく、というのを映像として見せていました。一字一句きっちり演じるということでもないのかもしれませんね。俳優たちのアドリブもあるかもしれませんし。特にこういう数字系のものは、いちいち調べるのも面倒くさいので、適当な数字を書いた、または言った、ということは大いにあり得る気がします。フレンズの主要キャラの誕生日ですら、エピソードによって違っていたりするくらいですからね(笑)。

映像翻訳のお仕事をされている人の場合、きちんと文字化されたスクリプトがある場合はまだ良いですが、ない場合は実に大変そうですねぇ。不明瞭だったり超早口だったりで、聞き取りにくいセリフってたくさんありますものね。そのご友人の方に、「ご苦労、お察しします」とお伝え下さい。私はこのブログを書くにあたり、「DVD英語字幕とネットスクリプトと音声」を突き合わせる作業をしているのですが、それだけでも結構大変ですから、何も頼るものがないとどれほど大変か、はよくわかります。

興味深い情報、ありがとうございました。
Posted by Rach at 2010年11月29日 15:01
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