[Chandler starts to light a cigarette.]
チャンドラーはタバコに火をつける。
フィービー: Chandler!! (チャンドラー!!)
チャンドラー: What? (何だよ。)
フィービー: What does the sign say? (そのサイン[標示・張り紙]は何て書いてある?)
チャンドラー: "Beam me up, Jesus." (転送して、神様。)
フィービー: No, the "No Smoking" sign. There's no smoking in my grandmother's cab. (違うわ。「喫煙禁止」のサインよ。おばあちゃんのキャブの中では、「喫煙はダメ」[禁煙]なの。)
チャンドラー: Okay, well, then, I-I have to go to the bathroom. (わかったよ。そうだな、それなら、トイレに行かないといけないな。)
みんな: Oh! (もう!)
フィービー: Please! (やめてよ。)
モニカ: No, Chandler, no! No unscheduled stops. You can go when we stop for gas. (だめよ、チャンドラー、だめ! 予定にない停車は、なしよ。給油のために止まる時に(トイレに)行けるわ。)
チャンドラー: Oh, come on, there's a rest stop right up there! Come on, I really have to goooooooooo. (ねぇ、いいだろ。すぐそこに休憩所がある! ねぇ、俺はほんとに、行かないといけないんだぁぁ〜!)
ジョーイ: Oh, now I have to go!! (あぁ、今、俺も行かなくちゃ![俺も今、行きたくなった!])
sign は「標示、標識、張り紙、サイン」。
このように「(掲示などが)…と書いてある、…と出ている」は、say を使いますね。
ロングマン現代英英辞典では、
say: GIVE INFORMATION
[transitive not in passive] to give information in the form of written words, numbers, or pictures - used about signs, clocks, letters, messages etc
つまり、「書かれた言葉、数字、または絵の形で情報を与える。サイン、時計、手紙、メッセージなどについて使われる。」
タバコを吸っているチャンドラーに抗議しているフィービーが、「そのサインには何て書いてある?」と聞いているわけですから、「タバコは吸うな。車内禁煙」という類のことが書いてあることは、うすうす気付きますよね。
それをそのまま読むのはいやだから、チャンドラーお得意のジョークでボケているわけですが…。
Beam me up, Jesus.
このセリフ、スタートレックネタです。(Trekkie の私はとても嬉しい!)
フレンズ2-8その11 で、スタートレックネタが出てきた時に、「フレンズでは(私の記憶では)あと3回、スタートレックネタが出てくる」と書いたのですが、そのうちの一つが今回のジョークです。
Beam me up. で「俺を転送して。」という意味になるのですね。
Wikipedia 日本語版: 転送装置 に転送の仕組みが書いてありますが、スタートレックの転送システムは、「物質を分解して転送ビームに乗せて運び、目的地で再構築する」というビーム方式。
そのウィキペディアにも、
英語では、ビームで転送することを、動詞 beam(直訳すれば「ビームする」)で表すこともある。
と書いてあります。
beam somebody up は、「(人)をビームで転送して上に上げる」という感じですね。
どうして、up かと言うと、未知の惑星などに降り立った上陸班(away team)を、衛星軌道上にいる宇宙船エンタープライズ号に転送する、つまり、下の地面から、空の上に浮かんでいる宇宙船にビームで転送するので、beam up となるわけです。
エンタープライズ号から地上に降りる際には、beam somebody down と言っているのはほとんど聞きません。
船から下りる場合は、転送室(transporter room)の台の上に乗って、そこから転送されるのですが、その場合は、"Energize!" と言います。
energy は「エネルギー」ですから、energize は「エネルギー化する、活性化する」という感じですね。
人間としての形を失った別のエネルギーに変換せよ、エネルギー化して転送せよ、という感じなんだろうと思っています。
えーっと、ここではスタートレックの専門知識をお伝えしたかったのではなくて、日本語ではとにかく転送技術を使っている時には「転送!」という言葉を絶対に使います。
「技術と用語が完全に一対一対応」と言ったらよいでしょうか。
それに対して、英語では、同じ転送技術を使っていても、船から下に下りる場合は、Energize という動詞を使い、下から上に上げるときは、beam up という句動詞を使います。
日本語だと絶対に専門用語を揃えたくなるのに、英語はそうではない、というところがいかにも英語っぽいな、と思いました。
Jesus というのは、「ジーザス、神様」のことですね。
この部分、DVDの日本語字幕では「天国へ転送して」となっていましたが、ここでのニュアンスはまさにその通り!
「転送して、神様。」というのは、天上におられる神様のところに転送して下さい、ということなので、「天国へ転送して。」という意味になるのですね。
フィービーの言い方で、タバコを吸うなって言われるのがわかるから、このまま天国に連れて行って、お空の上でゆっくり吸わせてください、みたいなジョークなのでしょう。
(2009.1.24 追記)
Beam me up, Jesus. について、下のコメント欄でご指摘いただきました。
実際に、Beam me up, Jesus. と書いたステッカーが存在するようです。
下のコメント欄に訂正と追加説明がありますので、詳しくはそちらをご覧下さい。
(追記はここまで)
No unscheduled stops. がモニカらしいセリフのような気がします。
几帳面なモニカのことですから、どこで給油するかとかを事前にきっちり決めていたはずで、そういうスケジュールにない停車はやめてよね、予定が狂っちゃうじゃない、と怒っているようです。
gas は「ガソリン」のこと。gasoline の略ですね。
フレンズ2-9その10 では、gas は「アクセル」という意味で使われていました。
「ガソリンスタンド」は、gas station ですね。
rest stop は「休憩のための駐車」「休憩施設、パーキングエリア、サービスエリア」。
I have to go (to the restroom). ですが、最後の go が、gooo.... となっています。
音声は「ゴー…おおおおん」みたいになっていて、我慢できない感じが出ていますね。
それを聞いて「俺も行きたくなった、トイレ行かなくちゃ」というジョーイ。
いつまでも子供みたいな可愛い男子たちです。
You guys are 8? 「あなたたち、(8歳の)子供? 小学生?」とみんなで言ってあげましょう(笑)。
(Rach からのお願い)
このブログを応援して下さる方は、下のランキングサイトをクリックして下さい。
人気ブログランキング
にほんブログ村 英語ブログ
皆様の応援クリックが、とても励みになり、ブログを続ける大きな原動力となっています。心より感謝いたします。
どうでもいいことですけどBeam me up, Jesus.で、なぜJesusかと思うのですが、Beam me up, Scottyで一つのはやり言葉になっているのでScottyのもじりでJesusなのかもしれません。Jesusは不満を表す卑語でもあるし、signが天国のおばあちゃん、あるいは神のお告げという意味のジョークでJesusになったのかも。チャンドラーのジョークは分析してもネイティブにもよくわからないそうです。私は今でもエレベーターにのるとボタンを押しながら"ブリッジ"というし。友達と食事中トイレに行くときは携帯を出して、"転送"と言ってます(笑)。
現在、海外在住なのですがあまり英語を話す機会もなく、フレンズのDVDを買って勉強を始めました。こちらのブログの解説を読むと、おもしろい表現がちゃんと説明してあるので、DVDをさらに楽しめました。
スタートレックネタに反応していただき、ありがとうございます。
そうですね、"Beam me up, Scotty." が一つの決まり文句ですから、何か呼び掛け語としての人名が必要となって、それでその部分を Jesus にした、ということなんでしょうね。
(知らない方のために説明すると、Scotty は転送作業を担当する機関主任の名前というかニックネーム。スタートレックの一番最初のシリーズ TOS (The Original Series)(邦題は「宇宙大作戦」)に出てきます。)
ネットで調べていたら、ウィキペディア”日本語版”に、このセリフを説明したものがありました。やっぱり有名なんですねぇ。
Wikipedia 日本語版: チャーリー、転送を頼む
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%81%E8%BB%A2%E9%80%81%E3%82%92%E9%A0%BC%E3%82%80
(これも蛇足ですが、日本語版では、Scotty は「チャーリー」という名前になっています。日本人にとっては、スポック(Spock)と音が似ていて紛らわしいから、だそうです…信じられない理由…笑)
Wikipedia 英語版にも当然ありますね。
Wikipedia 英語版: Beam me up, Scotty
http://en.wikipedia.org/wiki/Beam_me_up,_Scotty
In popular culture には、今回のフレンズのセリフのことは言及されてないですね。Scotty じゃないからかな。
ウィキペディアを読んでいると面白いです。ホームズの「初歩だよ、ワトソン君。(It's elementary, my dear Watson.)」と同じように有名なフレーズだとあります。私はトレッキーだから知ってましたが、日本人ではどの程度有名なんでしょう?
ウィキペディアにも、このセリフと全く同じものは劇中では使われていない、とありますね。
私が持っている分厚いスタートレック辞典「スタートレック エンサイクロペディア ニュー・エディション」の p.39 の beam の項目にも、
「皮肉にも、"Beam me up, Scotty (スコッティ、転送してくれ)" という TOS の決まり文句を、カーク船長は一度も使ったことがない。」
と書いてあります。
私のイメージでは、空の高いところにいる宇宙船と、天上にいる神様のイメージを重ねて、高いところにいる人に向かって、そこに私を転送してくれ、と呼び掛けた感じかな、と思ったのですが、
>Jesusは不満を表す卑語でもあるし、signが天国のおばあちゃん、あるいは神のお告げという意味のジョークでJesusになったのかも。
という分析は大変興味深いです。おばあちゃんのキャブで sign という言葉を聞くと、「天国、神」にまつわるイメージが浮かびますものね。
>チャンドラーのジョークは分析してもネイティブにもよくわからないそうです。
その一言で、肩の荷が下りました(笑)。そんなにあっさり解読できないところに、チャンドラーのジョークの深みがある、ということにしておきたいです。
エレベーターは、スタートレックのターボリフト(turbolift)のイメージそのままですよね。確かに、"Bridge." って言いたくなります。(音声認識コンピューターは賢いですね…笑)
私は TOS をほとんど知らないのですが、TOS の頃は、コミュニケーター(communicator)は、携帯みたいな形をしていたのですね。私は TNG (The Next Generation。邦題:新スタートレック)が好きなので、転送!と言う時は、胸の記章(バッジ)をポン!と叩いて、"Beam me up." と言いたくなります。携帯はどっちかというと、トリコーダー(tricoder)のイメージで、壁に向けて、放出している素粒子などを調べたい衝動に駆られますが(笑)。
catchさんのコメントで気が付いたのですが、そういえばフレンズで出てくるスタートレックネタは全部、TOS のものですね。そういう意味では、TNG のイメージしか浮かばない私はちょっと問題ありかも。
tree32さんへ
ご訪問&コメント、ありがとうございます。
拙ブログへのリンクをはって下さるとのこと、光栄です。ありがとうございます。
また、私の解説をお褒めいただき、嬉しいです。フレンズで楽しく英語を学んでいただけたら、そして私のブログがその学習のお手伝いをすることができたら、とても嬉しく思います。
これからもよろしくお願いします。
貴重なご意見ありがとうございます。FDJさんのおっしゃる通りですね。今回の Beam me up. については、絶対の自信があったのに、却って Trekkie としての知識が邪魔してしまったみたいです(笑)。
私が調べたことを以下に書いてみます。
最初、「ステッカー」という文字を見た時に、ウィキペディアにステッカーの話が書いてあるのを思い出しました。
Wikipedia 日本語版: チャーリー、転送を頼む
では、
「スコッティ、転送を頼む。ここにはどんな知的生命体もいない」というフレーズが使われたバンパーステッカーが存在する。
Wikipedia 英語版: Beam me up, Scotty
では、
The phrase was used on a bumper sticker with the tag line "Beam me up Scotty. There's no intelligent life down here."
(余談ですが、上の他の方へのお返事で、「Wikipedia 英語版: Beam me up, Scotty の In popular culture には、今回のフレンズのセリフのことは言及されてないですね。」と書きましたが、実はちゃんと以下のように書いてありました。
The line is referenced in episodes of a number of television series, including: Boys from the Black Stuff, Friends....)
その Beam me up, Scotty. のステッカーは以下のサイトに写真があります。
Beam me Up Scotty Bumper sticker from Zazzle.com
http://www.zazzle.com/beam_me_up_scotty_bumpersticker-128423001444320858
それで、ステッカーというのは、Beam me up, Scotty. のことなんじゃないのかな…?と思っていたら、おっしゃるように Beam me up, Jesus のステッカーも存在しました。
上と同じ Zazzle.com のサイトでは、Jesus ではなくて、God でしたが、同じことですね。
Beam Me Up God Sticker
http://www.zazzle.com/beam_me_up_god_sticker-217625863178928137
また、別のサイトでは、
Christian window sticker decal, Religious
http://www.goodnewsgraphics.com/serv04.htm
の1行目の右から2番目に BEAM ME UP JESUS があります。
Funny Christian Phrases decals
http://donsdecals.com/chph.html
の2行目右端にもあります。
その上の2つのサイトに、Christian という言葉があるように、キリスト教に関係するステッカー、デカール(ガラスなどに貼るもの?)ということのようです。
rapture は「歓喜、有頂天」という意味しか知らなかったのですが、Rapture と大文字になっているので、何かの用語なのかと思ったら、キリスト教に関する言葉なのですね。
Wikipedia 日本語版: 携挙
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%90%BA%E6%8C%99
上のウィキペディアに詳しく書いてありますが、携挙(けいきょ、英語:Rapture)とは、「地上にあるすべての真のクリスチャンが空中で主と会うこと」のようです。
もちろん、英語版もあります。
Wikipedia 英語版: Rapture
http://en.wikipedia.org/wiki/Rapture
アマゾンで以下のようなタイトルの本もありましたが、この本そのものは 2007年発売のようです。
ただ、そのタイトルから、Beam Me Up, Jesus というフレーズと、Rapture が関係あることがわかりますね。
Beam Me Up, Jesus: A Heathen's Guide to the Rapture (ペーパーバック)
Jim Gerard (著)
http://www.amazon.co.jp/Beam-Me-Up-Jesus-Heathens/dp/1568583273
FDJさんがおっしゃるように、Rapture はキリスト教の終末思想と関係がありますね。フレンズ3-17 は1997年放映なので、「世紀末だけに特にこの手のステッカーが多く出回っていたのではないでしょうか。」というFDJさんの推測が当たっていると私も思いました。
それで、Trekkie として少し頑張ってみると(笑)、やっぱり、Beam me up, Jesus. というフレーズは、Beam me up, Scotty. のもじりだと思うのです。
そういうSFの有名なフレーズがあって、それがちょうど Rapture の概念にぴったり合うものだったので、Scotty の代わりに、God や Jesus を入れた言葉が、クリスチャンの合言葉みたいに使われ出した、ということだろうと思います。
そういう知識を頭に入れた上で、再度、上のやり取りを見てみます。
フィービー: What does the sign say? (そのサイン[標示・張り紙]は何て書いてある?)
チャンドラー: "Beam me up, Jesus." (転送して、神様。)
フィービー: No, the "No Smoking" sign. There's no smoking in my grandmother's cab. (違うわ。「喫煙禁止」のサインよ。おばあちゃんのキャブの中では、「喫煙はダメ」[禁煙]なの。)
"No, the "No Smoking" sign." と言うのは、「チャンドラーが今読んだ、Beam me up, Jesus の sign じゃなくて、No Smoking の方の sign よ。」というニュアンスなんですね。
私はチャンドラーがとっさにアドリブで、そこに書いていないことを言ったと思っていたのです。No Smoking の sign のことを言っているのがわかるから、「禁煙よ、って怒られそうだから、神様、今すぐ俺を転送して、天上でゆっくりタバコを吸わせて下さい。」という意味だと。でも、実際に、No Smoking と並んで、Beam me up, Jesus の sign が貼ってあったのが、このジョークのポイントなのですね。
ということで、Beam me up. と言うと、スタートレックだ!としか思えない私の早合点でした。そのフレーズが、キリスト教関係のステッカーでも使われているというのは、大変興味深いです。ここで FDJさんに教えていただかなかったら、一生気付かなかったかもしれません。(もしくはアメリカに行ってどこかでこのステッカーを見て、ひっくり返るかのどちらか…笑)
貴重な情報を教えていただき、ありがとうございました!