2009年01月20日

公衆トイレには紙がないから フレンズ3-17その12

[Scene: The rest stop, Phoebe's pulling in.]
休憩所。フィービーは車を止める。
チャンドラー: Here we go. Okay, brace yourself. (さあ行くぞ。よし、踏ん張れ。)
モニカ: What? (何?)
[Both Chandler and Joey put their feet up against the glass, Monica doesn't and gets thrown up against the glass.]
チャンドラーとジョーイは足を上に上げてガラスに押し付ける。モニカはそれをしていないので、ガラスに投げつけられる。)
レイチェル: Okay. (いいわ。)
モニカ: Ow! (わぁ!)
[Joey gets out and sprints to the bathroom and Chandler follows with a cigarette in his hands.]
ジョーイは車から出て、トイレに全力疾走する。そしてチャンドラーは手にタバコを持って、その後に続く。)
フィービー: (to Rachel, who's staying in the cab.) Aren't you gonna go? ([キャブの中にとどまっているレイチェルに] レイチェルは行かないの?)
レイチェル: No. Thank you. (行かないわ。ありがとう。)
モニカ: (getting out) No, Rachel never pees in public restrooms. ([車の外に出て] (レイチェルは)行かないわ。レイチェルは公衆トイレでは絶対におしっこしないのよ。)
レイチェル: Well, they never have any paper in there y'know. So my rule is, "No tissue, no tushy." (Phoebe laughs and gets out.) Well, if everybody's going.... (She gets out and starts to close the door.) (そうね。公衆トイレには絶対に紙がないでしょ。だから、私のルールはこうよ。「ノー・ティッシュ、ノー・トゥシー[ティッシュがないなら、お尻もなし]。」 [フィービーは笑って外に出る] ねぇ、もしみんなが行っちゃうなら… [レイチェルは外に出て、ドアを閉めようとする])
フィービー: No, y'know what, don't close it! (Rachel slams the door shut locking themselves out.) The... keys.. are in there. (だめよ。ほら、ドアを閉めちゃだめ! [レイチェルはドアをバタンと閉め、(結果)彼らを車の外に締め出してしまう[車に入れないように鍵を掛けてしまう] キーが…その中にあるのよ。)
チャンドラー: Oh, no-no-no-no-no-no!! (だめだ、だめだ、だめだ!)
ジョーイ: What's going on? (何があったの?)どうしたの?
チャンドラー: (to Joey) My lighter's in there! (points to the cab) ([ジョーイに] 俺のライターが中にあるんだ! [キャブを指差す])
COMMERCIAL BREAK

pull in は「人が車を道路側・片側に寄せて止める」。
brace は「…を締める、引き締める」「(足などを)ふんばる」「(困難などに)備える」。
embrace 「抱擁する、抱きしめる」、bracelet 「腕輪、ブレスレット」も「締める」に関係がありますね。

この場合の brace yourself は、「心構えをする」という精神的な意味ではなく、「足をふんばれ。衝撃に対して身構えろ。」という肉体的な行動を言っているのだと思います。

実際、ジョーイとチャンドラーは、put their feet up against the glass、つまり、ガラスに足を押し当てて、ふんばっています。
研究社 新英和中辞典の brace 「(足などを)ふんばる」の例文に、
brace one's feet to keep from falling 倒れないように足をふんばる。
というのがありますが、それと同じニュアンスですね。

gets thrown up against the glass は、急ブレーキの衝撃で、上に飛ばされて、ガラスにぶつかる、という感じです。
フィービーの運転は荒っぽくて、特に、停車する時には急ブレーキをかける傾向にあります。
フレンズ2-9その12 で、ジョーイとチャンドラーが初めてフィービーのキャブに乗った時、チャンドラーは頭をガラスにぶつけていました。
その学習効果があって、今回は身構えた、そんなことを知らないモニカはガラスにぶつかってしまった、ということですね。

sprints to the bathroom というト書きが面白いです。
もれちゃいそうだから、トイレに一目散に走っていく、という感じです。
sprint は「スプリント」と日本語にもなっているように、「全力疾走。短距離競走」、「(特に短距離間を)全力疾走する」。
sprinter は sprint する人、つまり「短距離走者」ですね。

私が上に書いた日本語訳で「おしっこ」という言葉が登場していますが、pee は「おしっこをする」という意味なので、こう訳すより仕方ありません。
フレンズ3-16その24 で、
ジョーイ: (whispering) No, I really have to pee. ([ささやきながら] 違うよ、俺はすごくおしっこがしたいんだ。)
というセリフもあったように、フレンズではよく pee という動詞が使われます。
pee は、「トイレに行く(go to the bathroom/restroom)」よりも、もっと直接的な表現なんですよね。
だから、I have to pee. を「トイレに行かなきゃ。」と訳してしまうと、pee の感じが出ないので、やはり「おしっこ」と訳すしかしょうがないのです。

フレンズは友達同士なので、pee という言葉を頻繁に使っていますが、普通はそれほど親しくない人の前で、I have to pee. と言ってはいけないんだろうと思います。
ネイティブに確認したわけではないですが、下品というより、子供っぽい言い方のような気がします。

元々、piss 「おしっこをする」という卑語があって、その言葉は卑語なので、最初の文字 p を取って、pee という単語が出来たようです。
だから、日本語で言うと、「小便をします」というのを「小の方をしてきます」みたいに言い換えた感じでしょうか?
日本語の場合でも、小と言ったところで、小便を指していることは明白なので、人前ではそこまで言わない方がいいですよねぇ?
親しい友達同士だから、pee を使っている、という感じがわかってもらえるといいなと思います。

モニカは restrooms を「レスチュルームズ」みたいに発音しています。
こういうのがブルックリン・アクセントの典型、でしょうか。

tushy は「尻」。
英辞郎には載っていました。
ロングマン現代英英辞典には、tushy ではなく、tush が載っていました。
tush: [countable] (American English informal) the part of your body that you sit on
つまり、「人が座る身体の部位。」

この英英辞典の定義の仕方、面白いなぁ、と思うんです。
フレンズ3-5その26 で、fanny 「尻」という言葉が出てきた時にもロングマンの語義を引用したのですが、その時の定義も、the part of your body that you sit on でした。

これは、you sit on the part of your body 「人が自分の体の一部の上に座っている」ということで、その上に座っている体の一部分のことを、tush や fanny と呼んでいる、ということですね。
人は座っている時、お尻の上に座っているんだ、という感覚なのでしょう。

"No tissue, no tushy." は、「ティッシュなし、尻なし」みたいな標語(?)で、「ティッシュ(紙)のないところでは、お尻を出すな」ということですね。
tissue (発音は、ティシュー)と、tushy(トゥシー)の発音が似ているので、こうして並べているのです。

最初は車の中にいる、と言ったレイチェルですが、他のみんなが出てしまったので、レイチェルも出ようとして、ついいつものくせでドアを閉めてしまいます。
車のキーは中にあり、lock themselves out つまりフレンズたちが、車の中に入れないように、鍵がかかってしまったのです。
チャンドラーもそれを見て騒いでいますが、普通は、フィービーと同じように、The keys are in there! と言うべきところを、My lighter’s in there! と叫んでいます。
チャンドラーにとっては、「鍵がかかって中に入れない=ライターが使えないのでタバコが吸えない」ということになるからです。
最初にタバコを手に持って車を出たのですが、ライターを車の中に忘れたのに気付いて戻ってきたところだったようです。
彼だけピント外れのことで騒いでいるのが面白いですね。


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posted by Rach at 12:19| Comment(4) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachel slams the door shut locking themselves outの文構造で質問です
S+X+(名詞+do)の構造で、Sは(名詞が何かする状況を)Xする
つまりRachelが door をshutするよう slamする という構造だと思うのですが。
後に続くlocking 、、、、 shut とlockというよう動詞が連続して出てきており
S+X+(名詞+doing)・・・Sは(名詞が何する状態になってるという状況を)Xする
なのか?    とまどっています
Rachelは door がlockしている状態という状況を slamする 、、なのか
それとも両方にかかってるのでしょうか?  そう言うのって文法的にありなのかどうか???
またlockingは進行形なのが、この場合普通なのでしょうか?  過去形だとおかしいのでしょうか?
これは過去の出来事でなく、今まさに 彼らがlock中なのでなんとなく分かるのですが。
Posted by かつての読者 at 2009年01月20日 20:55
かつての読者さんへ
ご質問ありがとうございます。

まず、Rachel slams the door shut について。
slam the door shut は「動詞+目的語+補語」で、「ドアをバタンと閉める」という意味になります。

研究社 新英和中辞典にも、
slam(他動詞)=(+目+補) (窓・ドアなどを)バタンと(…の状態に)する
例) slam a window shut 窓をバタンと閉める。
という説明があります。

slam には「(窓・ドアなど)をバタンと閉める」という意味があるので、slam a window だけでも「窓をバタンと閉める」という意味になるのですが、
slam した結果、a window がどういう状態になったか、
あるいは、
a window がどういう状態になるように slam したのか、
をはっきり示すために、目的語の後に補語として、shut という言葉がついているのですね。

この shut は、動詞 shut 「(窓・ドアなどを)閉める」の原形ではなくて、過去分詞形です。
ですから、「閉められた、閉められた状態で」ということですね。
この SVOC は、大西先生の「ハートで感じる英文法 会話編」の Lesson 3 知覚構文で説明されていた「ピボットの呼吸」だと思います。

Rachel slams the door shut. というのは、
Rachel slams the door. であり、The door is shut. だということ、つまり、「レイチェルはドアをバタンと閉め」、「ドアは閉められた状態である」という感覚を一つの文にしたのが、Rachel slams the door shut. だということです。

次に、locking... 以下について。
研究社 新英和中辞典に、
lock out=[〜 oneself で] (かぎを失ったりして)中に入れなくなる、締め出される
例) I locked myself out. かぎがなくて入れなくなった。
という説明があります。
「自分自身を締め出してしまった」という感じですね。

ト書きにはカンマがありませんが、locking の前にカンマがあると考えて、Rachel slams the door shut, locking themselves out. だとすると、locking 以下は分詞構文だと思います。
その場合は、省略されている主語は主文の主語である Rachel で、Rachel slams the door shut, and (then) she locks themselves out. みたいになるでしょうか。
日本語に訳すと、「レイチェルがドアをバタンと閉めて、レイチェルが(自分を含めた)フレンズたち自身を締め出してしまう[中に入れないように鍵をかけてしまう]」。
という感じですね。
ですから、コンマの抜けている分詞構文だろう、というのが私の考えです。
Posted by Rach at 2009年01月22日 11:19
なるほど! またしても省略形でしたか、、、   幽霊見たり枯れ尾花・・・みたいなかんじで、そんなに大層に惑う文でもなかったですね
とはいえ文法等に自信の持てない当方としては勝手に省略と断じるだけの力もなく説明していただきありがとうございます。
また勝手にshutを原型だと思っていたミスも指摘していただきありがとうございます。
shutした状態にするslamするということですね!

さて今日の学習の科学 興味深く読ませていただきました
実は私も最近、、似たような記事を読み色々感じていたところです◆ 英語理解と脳 というコラムでして・・・
要約すると、理屈でなく自転車に乗れるのを習得するよう理屈でなく体にしみこませることが肝要
母国語にいったん置き換えて理解するよりダイレクトに英語から内容を理解する・・・・みたいな感じでして。
つまり apple → リンゴ(日本語)→実際の目に浮かぶリンゴ  という回路でなく いきなり apple → リンゴ(日本語)→実際の目に浮かぶリンゴ  になるような回路を構築すべきだと。   それは慣れとも。
元記事 http://openblog.meblog.biz/article/1288793.html

最近は昔と比べダイレクトに外国語が来る機会が増え、変に和訳されるよりその方が 対象の生の触感を感じる経験もあり コラムの言わんとする回路、英語学習法、、、今日の此処での記事も含め一考いたしました
Posted by かつての読者 at 2009年01月22日 23:18
かつての読者さんへ
お返事ありがとうございます。
そうです、「shut した状態に slam する」ということです。

また、英語と脳についてのコラムのご紹介ありがとうございます。
「体にしみこませる」ことの必要性と、英語から日本語という「他言語への変換」ではなくて、「英語が示すそのもののイメージを浮かべる」ことの大切さは、私もよくわかります。

最近は外来語をそのままカタカナで書くことが多いですね。日本語表記の限界で、アルファベットの音声を正確にカタカナ化できない、という弊害はありますが、無理に漢字で日本語を作ったり、日本にある似た言葉で置き換えようとするよりも、英単語そのものを使った方がわかりやすいと思うことはよくあります。その言葉の定義がしっかりしていれば、カタカナのままであっても、違和感なく日本語に組み込めるような気がします。
Posted by Rach at 2009年01月24日 06:19
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