2009年02月10日

君が非難できる立場か? フレンズ3-17その20

キャロル: (running over and grabbing the phone away from Ross) (on phone) Phoebe, hang on a second. (Hands Ross her keys) Here, take my car, go pick up your friends. ([走ってきて、電話をロスから掴み取る][電話で] フィービー、ちょっと待ってて。[自分のキーをロスに手渡して] はいどうぞ。私の車を使って、あなたの友達を迎えに行って。)
ロス: No, I'm not gonna pick them up. (いいや。僕は彼らを迎えには行かないよ。)
キャロル: Listen, we both know you're gonna do it 'cause you're not a jerk. Okay? So you can either sulk here for half an hour and then go pick them up, or save us both time and sulk in the car. (聞いて。私たち二人とも、あなたがそうするってわかってるわ、だってあなたはひどい人間じゃないんだもの、そうでしょ? だから、ここで30分すねてから彼らを迎えに行くか、それとも、私たち二人がそんな無駄な時間を過ごすことなく、あなたが車の中ですねるか、のどちらかをすることができるのよ。)
ロス: No, Rachel doesn't want me to.... (だめだよ。レイチェルは僕にそんなことをして欲しくないって…)

sulk は「すねる、ふくれる、不機嫌になる」。
キャロルはさすがは元妻、ロスのことがよくわかっているようです。
今は冷たいことを言っているけれど、結局、みんなのことが気になって迎えに行くに決まってる。
どうせ行くのなら、ここですねてないで、迎えに行く途中の車の中ですねてたらいいのよ、そしたら、ここで30分すねる時間を省略できるから、ということですね。
or save us both time and sulk in the car は、or you can save us both time and sulk in the car ということで、both は us にかかっているのだと思います。
あなたと私両方の、無駄な時間を省ける、ということで、あなたがここですねるのは時間の無駄だし、そんな愚痴を聞く私の時間も無駄、あなたが今すぐ出掛けたら、二人ともそんな無駄な時間を過ごす必要がなくなる、という意味だと思います。
私にもそんな無駄な時間を過ごさせないで、迷惑かけないで、ということでしょうね。


キャロル: Look, I-I-I am sorry that Rachel dumped you 'cause she fell in love with that Mark guy, and you are the innocent victim in all of this, but don't punish your friends for what Rachel did to you. (ねぇ、レイチェルがそのマークって男性に恋したことで、あなたをふったことには同情するわ。この件に関してはあなたは無実の犠牲者よね。でも、レイチェルがあなたにしたことで、あなたの友達をひどい目に逢わせるのはやめて。)
ロス: Yeah, you're right. (そうだね。君は正しいよ。)
キャロル: (on phone) Phoebe, hang on a second. Ross wants to say something. (listens) What? (listens) (to Ross) You slept with someone else?! ([電話で] フィービー、ちょっと待って。ロスが何か言いたいことがあるから。[電話を聞いて] 何ですって? [聞いて][ロスに] あなた、他の誰かと寝たの?)
ロス: We were on a break!!! Okay!! (grabs the phone) We were, we were... (calms down) yeah. Where are you? I'll find you. (hangs up) (僕たちはブレイク中だったんだ! いいか? [電話を掴んで] 僕たちは、僕たちは… [静まって] あぁ、君たちはどこにいるの? 僕が探すよ。[電話を切る])
キャロル: You slept with another woman? (あなた、別の女と寝たの?)
ロス: Oh, you-you're-you're one to talk. (あぁ、君が、君がそれを言うのか?[君がそれを言える・非難できる立場か?])

キャロルは、I-I-I am sorry that Rachel dumped you 'cause she fell in love with that Mark guy.... と言っています。
そのセリフで、ロスとレイチェルが別れた理由について、ロスがキャロルに嘘をついている、ということがわかりますね。
電話口で大きな声でそんなことを言ったため、相手のフィービーに筒抜けとなり、フィービーがキャロルに、別れた本当の理由を告げることになります。
それでキャロルは、"You slept with someone else?!!" と言っているのですね。
私の聞いた事情と違うじゃない、あなた、嘘ついてたの?という感じです。
"We were on a break!!!" と、自分の正当性を主張しようとするロスですが、嘘をついていたのがバレたので、これ以上頑張ることもできず、迎えに行くことを決心します。

ロスの最後のセリフ、You're one to talk. について。
英辞郎では以下の説明が尊っています。
You're one to talk.=あなたにもそんなところがありますよ。(相手に反論して)

英英辞典 Merriam-Webster's Learner's Dictionary の talk の 8番目の項目にも、you're one to talk が出ています。
Merriam-Webster's Learner's Dictionary: talk

Merriam-Webster's Learner's Dictionary の説明は、
8. [no obj] : to criticize someone
This sense of talk is often used in phrases like look who's talking, you're one to talk, and you should talk to say that someone should not criticize another person because he or she has the same faults as that other person.
例) "She's way too skinny." "You're one to talk. You need to gain some weight, too."

つまり、「talk には、誰かを批判する、という意味がある。talk のこの意味はしばしば、
Look who's talking.
You're one to talk.
You should talk.
のようなフレーズで使われる。
誰かが他の人と同じ欠点があるという理由から、その人がその別の人を批判すべきではない、と言うために使われる。」
例文は、「彼女はやせすぎよ。」「君がそんなことを言うの? 君も体重を増やす必要があるよ。」

語義の部分、「誰か」「他の人」というと不明瞭なので、Aさん、Bさんとしてみると、「AさんはBさんを批判すべきではない、なぜなら、AさんにはBさんと同じ欠点があるから」ということを言うために使うフレーズ、だということですね。
同じ欠点のある人間が、そのことで他人を非難するのはおかしい、というニュアンスです。

ロングマン現代英英辞典には、なぜか、You're one to talk. が出ていません。
ロングマンでそれに近いものは、以下のものでしょうか。
look who's talking: also you're a fine one to talk, you can talk
(spoken) used to tell someone they should not criticize someone else's behaviour because their own behaviour is just as bad
例) 'Peggy shouldn't smoke so much.' 'Look who's talking!'

つまり、
Look who's talking.
You're a fine one to talk.
You can talk.
の意味として、「自分自身の行動・言動が同じように悪いという理由から、誰かを非難すべきではない、と人に言うために使われる。」
例文は、「ペギーはあんまりタバコを吸うべきじゃないよ。」「そんなこと言ってるのは誰よ。(あなたこそ、どうなのよ。)」

ロングマンの You're a fine one to talk. が、You're one to talk. と同じニュアンスなのでしょうね。

Urban Dictionary には、You're one to talk. の省略形 Y.O.T.T. というのが出ています。
Urban Dictionary: Y.O.T.T.
Y.O.T.T.
: You're One To Talk.
(Meaning) you're being hypocritical, same as saying "look who's talking"
Like the pot calling the kettle black.

つまり、「君は偽善者的である。Look who's talking. と言うのと同じ。the pot calling the kettle black のようなもの。」

The pot calls the kettle black. 「目くそ、鼻くそを笑う」は、フレンズ1-18その4 で説明しました。

実際にネイティブの間で、どのくらいこの Y.O.T.T. という省略形が使われるのかわかりませんが、ASAP (as soon as possible)みたいに、Y.O.T.T. という省略形で使われるということですから、それだけ、You're one to talk. は決まり文句になっている、ということですね。

You're one to talk. の話が長くなってしまいましたが、"You slept with another woman?" "Oh, you-you're-you're one to talk." というやり取りは、「他の女と寝たの?」という言葉を、「君がそれを言うのか? 君がそんなことを言える立場なのか?」と言い返している、ということになります。

妻が他の男性と浮気をしていた場合にも、「自分のことを差し置いて、人の浮気を非難するのか?」という意味でこのセリフは使えると思うのですが、レズのキャロルの場合は本当に「”他の女”と寝た」ので、このセリフが余計に大爆笑なわけです。

そう思って、セリフを振り返ってみると、フィービーから真実を知らされた後、キャロルは、"You slept with someone else?!" 「あなた、他の誰かと寝たの?」と言っています。
ロスは自分が嘘をついていたのがバレたので、"We were on a break!!!" と必死に言い訳しますが、その後、ダメ押しのようにもう一度、"You slept with another woman?" 「あなた、別の女と寝たの?」とキャロルに問い詰められます。

さっきは、ウソがバレて動揺していたけど、「他の女と寝たの?」だなんて、君からはそんなことで非難されたくない、「他の女と寝た」のは他ならぬ君じゃないか!という反論が、You're one to talk. なのですね。
キャロルの最初のセリフが、with someone else、その次に、with another woman と変化しているために、ロスの You're one to talk. というセリフの面白さがより際立つ気がします。
キャロルがレズだからこそ、キャロルがスーザンという女性と寝たためにロスと離婚することになってしまった、という背景があるからこそ、"You slept with another woman?" "You're one to talk." がドンピシャなジョークになるわけですね。


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posted by Rach at 11:11| Comment(6) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。こういう話し言葉の決まり文句を引くには、Longman Advanced American Dictionaryがいいと思っています。"you're one to talk" そのものは載っていませんが、Spoken Phrasesというボックスの中で、look who's talking, sb can talk, sb's a fine one to talk を見出し語として挙げ(これはイギリス英語版と同じですね、ただ、ボックスがいい感じです)、You need to get more exercise. Look who's talking.という例文を出しています。ところで、Rachさんの翻訳、もう少し品を落として、「よ、よ、よく言えるじゃない。そんなこと言えた義理?」と軽く流してもいいのではないでしょうか。何か丁寧すぎる印象を受けます。上品なお人柄が災いしているような・・・
Posted by 日向清人 at 2009年02月11日 17:46
日向清人先生
日向先生から、このようにコメントをいただけて、大変光栄で嬉しいです。ありがとうございます!

日向先生おすすめの Longman Advanced American Dictionary (LAAD)、買いました!

日向先生の英英辞典の記事、
日向清人のビジネス英語雑記帳:(1)英英辞典の是非、選び方など
http://eng.alc.co.jp/newsbiz/hinata/2009/02/post_550.html
のコメント欄で Yutaさんが書いておられるように、
拙ブログの過去記事、
「英会話ヒトリゴト学習法」を読んで のコメント欄
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388471365.html#comment
で、「日向先生も LAAD をおすすめしておられる」というお話を聞きました。

そのコメント欄では、Yutaさんも outrageous2007さんも LAAD がお気に入りだ、というお話をされていたので、いつか書店でゆっくり見てみよう…と思いながら、でもやっぱり買っちゃおう!と思い直して、先日、Amazon で CD-ROM 付きのものを購入したのです。

残念ながら、この上の記事を書くのには間に合わなかったのですが、LAAD が届いた時、真っ先に talk の SPOKEN PHRASES のボックスを確認しました。
日向先生がおっしゃるように、「ボックスがいい感じ」ですね。
LDOCE(Longman Dictionary of Contemporary English、ロングマン現代英英辞典)の方は、talk という単語そのものの語義や、phrasal verb などと同じレベルで spoken phrases が扱われていますが、LAAD のように、SPOKEN PHRASES だけを囲み記事で示してもらえた方がわかりやすくていいですよね。
フレンズなどのドラマに頻出する表現が目白押しで、このボックスを読むだけでも多彩な会話表現が覚えられそうです。

受験英語、試験英語に慣れた人が躓きやすいのが、こういう「知ってる単語ばかりなのに、文全体のニュアンスがよくわからない」という文ですよね。そこをボックスとしてまとめてくれているのが、LAAD の素晴らしいところだと思います。

CD-ROM からインストールしたパソコン上での LAAD は、THESAURUS はボックスとして囲み記事になっているのに、なぜか、SPOKEN PHRASES のボックスがありません。CD-ROM に入っているものも、紙の辞書と同じように、ボックスにしてくれているとありがたいのですが…。

アメリカのドラマを扱っているブロガーとして、ずっと「アメリカ英語に特化した辞書が必要なのではないか?」と思っていたので、LAAD を選ぶことができてとても良かったと思っています。日向先生のおすすめの辞書であれば、間違いありません!

LDOCE と LAAD で例文が違う、というのもありがたいですよね。こういう SPOKEN PHRASES は対話の中で覚えないと意味がないので、ロングマンのように、二者の対話として例文が載っているのがいつも助かるなと思っています。その英語の日本語訳を丸暗記するのではなくて、「こう言われた場合に、こう返す」という感覚を身に付けることが大事ですものね。

それから、私の翻訳が「品が良すぎる」(?)というアドバイス、ありがとうございます。卑語は卑語のように、乱暴な言い回しは乱暴に聞こえるように訳さないと、本当のニュアンスは掴めない、といつも思っていますので、日向先生のお話は大変参考になります。
そうです、「そんなこと言えた義理?」という表現が日本語にありましたよね。私はなぜかその「義理」という言葉が浮かばなくて、ロスがちょっとお堅い感じの人物なので上のように訳してしまったようです。

翻訳が丁寧すぎるというご指摘とは別に、「上品なお人柄が災いしているような・・・」とのお言葉をいただけて、このブログを3年半続けて来て良かった、と心から思いました。これからもそう思っていただけるよう(笑)、けれども、日本語訳はできるだけ英語のニュアンスに忠実に訳せるように頑張りたいと思います。

拙ブログでも最近、英英辞典の話題で盛り上がったばかりだったので、このタイミングで日向先生が英英辞典の記事を書いて下さることがとても嬉しいです。
英英辞典の記事のつづき、とても楽しみにしております。
Posted by Rach at 2009年02月12日 14:56
Rachさん、こんばんわ

You're one to talk.
そういう意味だったんですね〜 本当に口語表現満載のフレンズ、勉強になります!英辞郎も私が使っている(使ってた?)電子辞書にはない言葉が一杯でいまこうした「いつか使ってみたい表現」を集めています。(ちょっとしたマイブーム?笑)

ところで・・・いま3段階でサクサク進めながら、翌日は前の日にやった部分までを通して観て(聴いて)から進むようにしています。しっかりと意味が取れた所を何度も聴くとリスニングupに繋がるかなぁって思って・・・!
これからもいろいろ工夫しながらフレンズ学習楽しんでいこうと思ってます♪
Posted by やっちん at 2014年03月09日 20:26
やっちんさんへ
コメントありがとうございます。

You're one to talk. のような、「単語は簡単だけど、ノンネイティブには意味がピンと来ないもの」こそ、ドラマのセリフでニュアンスを掴めると嬉しいですよね。
英語を学ぶ理由はいろいろありますが、「実際にそういうネイティブっぽい言い回しを自分が使ってみたい」という憧れのような気持ちは、英語学習者に共通のものだと思います。ドラマのセリフは本当にそういうものの宝庫で、私もそういうのを溜め込むのがとても楽しいです。

「しっかりと意味が取れた所を何度も聴くとリスニングupに繋がる」というのは、本当におっしゃる通りだと思います。意味を理解することで「英文の構造」を理解し、その構造を意識してリスニングすることが、リスニング力を上げるし、同時に自分がスピーキングする時の文章構成力を養うことにも繋がると思うのです。意味がわからない、構造がわからない状況で何回も聞くよりも、まずはきちんと「理解」して、自分の中で消化してから、音やリズムに慣れていくのが大切だと思います。

これからも、やっちんさんに合う形にどんどん工夫していただいて、フレンズ学習を楽しんで下さいね♪ そのお手伝いができるように、私自身も大いに楽しみながらブログを頑張ります!(^^)
Posted by Rach at 2014年03月10日 16:17
Rachさん、コメントバックありがとうございます。これもRachさんのブログと
どんな質問にも快く応じて下さるお蔭だなぁと感謝に堪えません!
シリーズ10、ラストまで頑張りますのでこれからもどうぞ末永く!よろしくお願いします。
Posted by やっちん at 2014年03月10日 19:55
やっちんさんへ
こちらこそご丁寧なお返事ありがとうございます。

ブログにご質問いただけることは、本当に嬉しいのです。ですからこれからも、どうかお気軽にご質問下さいね。

私もファイナルシーズンまで頑張ります。これからもよろしくお願いします!(^^)
Posted by Rach at 2014年03月12日 16:12
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