2009年02月28日

俺がそれを知らないとでも? フレンズ3-18その4

[Scene: Chandler and Joey's, Ross and Joey are talking to Frank.]
チャンドラーとジョーイの部屋。ロスとジョーイはフランクと話をしている。
ロス: All we're saying is, don't rush into anything. (僕らが言っているのはただ、どんなことも焦ってするな、ということだよ。)
ジョーイ: Yeah, come on, think about it. You're 18. Okay? She's 44. When you're 36, she's gonna be 88. (そうだよ。なぁ、考えてみろよ。お前は18歳だろ? 彼女は44歳だ。お前が36歳になった時、彼女は88歳になるんだぞ。)
フランク: What, you don't think I know that? (何? 俺がそのことに気付いてないと思ってるの?)

フランクを説得中のロスとジョーイ。
ジョーイが二人の年齢差を強調しようとするのですが、ジョーイは計算を間違えています。
18歳が36歳になるのは18年後ですから、44歳のアリスは62歳になるはずです。
が、18歳を2倍にすると36歳なので、44歳の方も2倍の88歳にしてしまったのですね(笑)。

さらにそれに輪をかけて面白いのが、フランクの次のセリフ。
You don't think I know that? というのは、英語の特徴で否定語の not が前に来ていますが、日本語の感覚にすると、You think I don't know that? というような意味です。
俺がそのことを知らないとジョーイは思ってるの?ということですね。
that はジョーイの言った内容、つまり、フランクが36歳の時、アリスは88歳になる、という話で、そんなことジョーイに言われなくても知ってるさ、年齢差のことは自覚してるさ、という意味になるのですね。
計算を間違えるジョーイもジョーイですが、「そんなことわかってる」とその間違いにも気付かないフランクもフランクで、どっちもどっちの似たもの同士ということです。
その二人の様子を見て、ロスは、こりゃだめだ、という顔をしています。


ジョーイ: The point is, there's a lot of women out there you haven't even had sex with yet. (大事なことは、お前がまだエッチしたことのない女性が世間にはたくさんいる、ってことだ。)
ロス: Yeah, he-he's right. He's right. This is your time, y'know, yeah, you're young. You're-you're weird. Chicks dig that. (あぁ、ジョーイの意見は正しいよ。彼は正しい。今この時が君の最高の時なんだよ。君は若い。君は、君は変わってる。女の子はそういうのが好きだろ。)

This is your time. について。
This is your life. だったら、「これは君の人生だ。」でしょうが、time の場合はどういうニュアンスになるのでしょう?
君は今、人生で一番いい時にいるんだぞ、みたいな意味かなぁ?と思ったのですが。
そんな時に焦って身を固めるな、もっと自由に遊んだらいいじゃないか、ということでしょうか。

chick はフレンズでこれまでに何度も出てきましたが、「若い女性」という意味。

dig は「…を好む、気に入る」。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
dig: [transitive] (old-fashioned) to like something
例) I dig that hat!

つまり、「(古風な表現) 何かを好きなこと」。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) でも、
dig: LIKE SOMEBODY/SOMETHING [transitive] (old-fashioned slang) to like someone or something
例) I really dig that dress.


つまり、dig の意味は like で、old-fashioned 「古風な表現、古臭い表現」なのですね。
最初にロスのセリフを聞いた時、フランクの年齢に合わせて、ロスはわざと若者言葉を使ったのかと思ったのですが、辞書にあるように、old-fashioned な表現だということだと、無理に若者言葉を使おうとして、逆に古臭い表現を使ってしまった、ということでしょうか?
もしくは、この古臭い表現をイマドキの若者が逆に新鮮に捉えて使っていたりする可能性もあるのでしょうか?

ロングマンを見る限りは、古い表現のようなので、ロスが新しい言葉を使おうとするあまり、逆に古い言葉を言ってしまった、というのが素直な解釈だとは思いますが。


フランク: Okay, but isn't sex better when it's with one person that you really, really care about? (よし、でも、自分がほんとにほんとに大切に思う一人の人との時、エッチはもっといいものになるんじゃない?)
ジョーイ: Yeah, in a poem maybe. (あぁ。ポエムの中では多分そうだろうね。)
ロス: No, the man's right. That's what I had with Rachel. (いいや、その男の意見は正しい。それは僕がレイチェルとしていたことだよ[レイチェルと僕の関係・エッチがそれだったんだよ]。)
フランク: You don't have it anymore? (ロスはもうその関係を持ってないの?[そういうエッチをしないの?])
ロス: No, I ah, I slept with someone else. (もうないんだ。僕は、あぁ、僕は他の誰かと寝たんだよ[浮気したんだよ]。)
フランク: Okay, so wait, all right, so how does that make things better? (わかった。ちょっと待って。いいか。それで、そのこと[浮気したこと]で物事が好転した?)
ロス: It didn't. (良くならなかった。)
椅子に座るロス。
フランク: Okay, so what you used to have with Rachel is what I got with Alice. (よし。それで、ロスがレイチェルとかつて持っていたこと[していたこと]が、俺がアリスと持っていることなんだ。)
ジョーイ: Now, wh-what, what is that like? (じゃあ、どんな、どんな、それはどんな感じなんだ?)
今度はジョーイまでもが椅子に座って、真剣に聞き始める。
フランク: It's so cool, man. It's so, it's just 'cause being with her is so much better than, like, not being with her. (すごく最高だよ。すごく。彼女と一緒にいることは、ほら、彼女と一緒にいないことよりもずっと素敵だから。)
ロス: Yeah, yeah. (あぁ、そうだよ。)
ジョーイ: (to Ross) Why can't I find that? ([ロスに] どうして俺はそれを見つけられないんだ?)
ロス: Don't ask me, I had it and I blew it. (僕に聞くなよ。僕はそれを持っていたのにふいにしてしまったんだぞ。)
ジョーイ: Well, I want it! (あぁ、俺もそれが欲しいよ!)

世間には女性がたくさんいると言われて、フランクは反論します。
care about は「…を気に掛ける、大事に思う」。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
care: to think that something is important, so that you are interested in it, worried about it etc
つまり、「何かが重要だと思うこと、そのために、そのことに興味を持ったり、そのことを心配したりする。」

エッチというのは、いろんな人とたくさんするよりも、自分が大事に思うただ一人の人とする方が better なんじゃないの?とフランクは言っています。
ジョーイはそんなのは理想論で、ポエムの中だけの話だよ、と一蹴するのですが、ロスはフランクの言葉に食いつきます。

フランクは sex の話をしているので、That's what I had with Rachel. も基本的には sex のことを言っているのだと思われます。
have sex with で、「…とエッチする」ですから、フランクが今言っているような、「愛する一人の人とのエッチ」を、僕もレイチェルとしていた。僕とレイチェルがしていたエッチが、フランクの言う、「愛する一人の人とのエッチ」だったんだ、ということですね。
これ以降の会話でも、話題になっているのは基本的にはエッチのことだと思うのですが、エッチに限定せずに、エッチを含めた男女関係、恋愛関係、男女の愛と捉えることも可能でしょうか。
ですから、What I had with Rachel は、レイチェルとしていたエッチであり、もっと大きな枠で言うと、レイチェルと僕とが持っていたもの、二人の関係、二人の愛、というニュアンスになるのだと思います。

ロスが過去形の、I had with Rachel を使ったので、過去形ということは、今はもうその関係がないのか?とフランクが尋ねています。
その大切な一人の人との関係が破綻した後、何もいいことなんかなかった、ということにロスは気付きます。
ロスは、自分とレイチェルの関係が、フランクとアリスの関係だと言われ、ものすごく納得してしまうのですが、今度はプレイボーイのジョーイが、そのたった一人の人との関係というのはどういうものかと興味津々で真剣に尋ねます。

椅子に座ってフランクの話に聞き入る二人。
結婚を踏み止まらせようとした二人が、逆に恋愛の講義を受けるような形になっているのがおかしいですね。

フランクの説明は、彼女と一緒にいることは、so much better than だと言うのですが、何と比較しているかと言うと、「彼女と一緒にいないこと」に比べて better だと言っているのですね。
好きな相手なので、一緒にいないよりは、一緒にいた方がいいに決まっているのですが、他の何か素晴らしいことと比較するのかと思いきや、being with her は、not being with her よりも better だ、と当たり前のことを述べているのが面白い、ということでしょう。
冷静に聞いていれば、別に感動するような内容でもないように思うのですが、「たった一人の人との究極の愛」の話に魅了されてしまった二人には、そのフランクのセリフまでもが感動的に聞こえるようですね。


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posted by Rach at 08:08| Comment(6) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
レイチさん、こんにちは。

レイチさんのブログを最初から読んでるんですが、やっと去年の
夏ごろまで辿り着きました。^^

こうやって、フレンズを復習してみると
意味を取り違えていた場面や、勘違いしてたところに気づいて
とても勉強になります。ありがとうございます。

一度間違うと、記憶に残って覚えるんですよね。

チャンドラーのギャグが、遠まわし過ぎてよく解ってない
というのが大半でした。
観客の声と同じタイミングで笑えた時はヤッター♪って思います。

そうそう、
Come on. = Do me a favor. って意味が入っていると覚えれば
自然と使えるよ ってネイティブの人が言ってました。

ジョーイは フランクを説得したいと思っているので
お願いだから、考えてよ って気持ちがあるんだと思います。
日本語に訳したら、まあ、ちょっと、おいおい、とかに 
なっちゃうのが面白いですね。

Posted by millufe at 2009年02月28日 14:46
millufeさんへ
コメントありがとうございます。
私自身、よくわかっていない部分も多く(笑)、こんな考え方もあるのかぁ、くらいの参考にしていただければ、と思っています。問題集と違って、「完全な答え」がどこかに載っているわけではないですが、それでも完璧にはわからなくても、それなりにドラマを楽しめる、ということを知っていただけたらな、と。
チャンドラーのジョークは、ほんと難しいですよね。まぁ、ネイティブが大喜びするくらいのジョークですから、かなりレベルが高いのだろうと。そのジョークを英語で少しでも理解できたら嬉しいですよね。

Come on. は言い方や表情によっていろんなニュアンスが出せますよね。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
come on!: (spoken) used to encourage someone to do something
つまり、「誰かが何かをすることを勧める、促す」
という語義が載っています。
上のジョーイのセリフ、Yeah, come on, think about it. は、その encourage のニュアンスかな、と私は思いました。フランクが年齢差のことをわかっていないようなので、ちょっと考えてみろよ、と促す感じ、でしょうか。

自分が相手に頼みごとをしている場合の Come on. は、その行動を是非してくれ、と促す意味で、Do me a favor. の意味も入ってくるのでしょうね。

フレンズ3-18その3
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388471383.html
で、
フィービー: Come on, you guys. You have nothing to lose. I have everything to lose. Do you want me to lose everything? Everything?
というセリフがありましたが、これは、その前の続きから見てみると、

フィービー: But, you guys can, please you gotta talk him out of it.
ロス&ジョーイ: No-no-no-no-no.
フィービー: Come on, you guys, you have nothing to lose....
となります。

フランクを説得して、結婚をやめさせて欲しい、と頼むフィービーに、ノーと言う二人。
その後の、Come on. は、まさに、Do me a favor. のニュアンスですね。
そんなこと言わずに、私の言うことを拒絶せずに、お願いだから、頼んだことを引き受けてよ、という感じですよね。

その3 の日本語訳では、その Come on. のニュアンスが出ていませんでした。今回いただいたコメントで、そこに気付くことができました。ありがとうございます。
Posted by Rach at 2009年03月02日 13:26
お久し振りです。monです。。
シーズン1からこのブログを読み続けて、先日やっと追いつきました☆
これからはrachさんと同じペースで考えていけるので嬉しいです。

さて、今回の記事についての質問です。
Rossの“You're young. You're weird.”のくだりについて。
私は英語学習の際、ジーニアス英和辞典を主に使用しているのですが、
そこに「weird:4《米俗》すばらしい」とあります。
この場合では“cool”と同じような意味に使えるんだとか。
まあフランクはちょっと変わった子だし、というニュアンスでもあるのでしょうが(笑)、
ここはrachさんのおっしゃる通り、Rossがスラングを用いることによって
「無理に若者言葉を使おうとして」いる様子が表れており、
その結果、“Chicks dig that.”なんて言ってスベってしまったのかしら・・・(笑)
と考える次第であります。
そう考えると、観客の笑い声も何となく苦笑チックなような・・・。

そんなに深く考える所でもないのかもしれませんが(汗)
細かい所ほじくりまわしてばかりですみません(^_^;
よろしくお願いします。
Posted by mon at 2009年03月04日 12:36
monさんへ
コメントありがとうございます。自分で書いたことを忘れてしまうほどの記事数なのに(笑)、シーズン1からずっと読んで下さったとのこと、まことにありがとうございます。嬉しいです。

ジーニアスには「すばらしい」という意味が載っているのですね。

私もちょっと調べてみました。

Macmillan English Dictionary では、
weird: strange and unusual, sometimes in a way that upsets you

LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
weird: (informal) very strange and unusual, and difficult to understand or explain

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
weird: (informal) unusual and very strange
例) Robin's boyfriend is kind of weird.

上の例文「ロビンの恋人は、weird って感じだ。」は、どうも褒め言葉ではないみたいで、ロビンに言うと怒られそうな気もします(笑)。

このように、私の手元の辞書には、cool という意味では載っていないのですが、weird を cool という意味として使う、という感覚はわかる気がします。
悪い意味じゃなくて、他の人にはない一種独特の雰囲気を持っている、とか、ロスの世代の人間にはわからない超越した部分がある、みたいな感じが出せるような気がしますよね。

日本語でも、「彼、変わってるよねー」というと、何だか変人みたいな言われようですが(笑)、「彼、独特のものを持ってるよねー」「ユニークだよねー」「普通の人には理解できない何かを持ってるよねー」というと、言い方によっては褒め言葉に聞こえなくもない、と言いますか…。

wicked 「邪悪な」が「素晴らしい」という意味で使われることもありますし、特に若者言葉では、強烈なニュアンスの単語を褒め言葉として使う、ということは多いだろうと思います。

若者言葉として、weird = cool がどの程度通用するのかはわかりませんが、ロスがそういう若者言葉を知っていて、無理にいろいろ盛り込もうとして、結局、最後は dig を使ってスベってしまった、という流れだ、という解釈は面白いなと思います。

私が最初に受けた印象でも、weird という言葉を、ロスは悪口として言ったわけではないように思うのですね。聞いた方のフランクも悪口だとは受け止めなかった、という感じです。ロスとしては、フランクの「わけわかんない感じ、ロスには理解しがたい摩訶不思議な感じ」を weird と表現して、そういう mysterious な部分を cool だと思う女の子もいるよね、という意味で、Chicks dig that. と続けた、ということかな、と思いました。実際、フランクは「ちょっと変わった子」ですしね。本人はそれほどとは思っていないかもしれませんが、きっといろんな人から、変わってると言われてきただろうから、別に weird という言葉を使っても気を悪くしたりしないだろう、という気持ちもあって、褒め言葉でも悪口でもなく、誰もが認めるように君は weird だから、と言った、という感じかな、とも思います。人によっては、You're weird. と言ったら怒る人もいるかもしれませんが、フランクの場合は言っても大丈夫、みたいなところがあるような気もします。

フレンズ1-3その2
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470018.html
で、リジーという女性が、フィービーに、
Hey, Weird Girl. (やあ、変な女。)
と呼びかけていました。
このリジーさんもかなり weird な感じだったのですが(笑)、その人に、Weird Girl と呼ばれるフィービーが weird なのもみんなが認めるところですよね。
フィービーとフランクは、さすがに姉弟だけあって、二人そろって、weird 呼ばわりされているのが面白いなと思いました。

いろいろ一緒に考えて下さってありがとうございます。こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
Posted by Rach at 2009年03月06日 11:44
深く掘り下げて考えてくださってありがとうございます。
なるほど、wickedと似たような転じ方だというのはしっくりきます。

意味が良い方にも悪い方にも転じるというのは、
日本語でいうところの「ヤバい」みたいなものなのでしょうね。
若者コトバでは何でも極端でさえあれば「ヤベー」ですから(笑)。

難しいニュアンスも細やかに説明していただいて、いつもとても助かっています。
また来ますね♪
Posted by mon at 2009年03月07日 22:10
monさんへ
こちらこそ、お返事ありがとうございます。

日本語の「ヤバい」もそんな感じですよね。私はアラフォーなんですが、私はやっぱり「ヤバい」は悪い意味としてしか使えません。でも、極端な言葉が褒め言葉や称賛の言葉として使われる、という感覚は日本語でも英語でも同じなのだと思うと、人間としての共通点を感じられて、語学学習が楽しくなる気がします。
またお越し下さいね♪
Posted by Rach at 2009年03月08日 07:12
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