2009年03月06日

worthは前置詞? フレンズ3-18その7

[Scene: Phoebe's, Frank is watching TV, and he's very depressed as Phoebe enters.]
フィービーの部屋。フランクはテレビを見ている。フィービーが入ってきた時、フランクは非常に落ち込んでいる。
フィービー: Hey, Frank. Look, okay, I know that you think I did, like, this totally evil thing. But I so didn't. There's someone here who can explain this better than I can. (ねぇ、フランク。ねぇ、私が全く邪悪なことをしたってあなたが思ってるのは知ってるわ。でも、私は断じてひどいことはしなかったわ。このことを私よりもうまく説明できる人がここにいるの。)
アリス: Hi, Frank. (こんにちは、フランク。)
フランク: Hi, Mrs. Knight. (こんにちは、ナイト先生。)
アリス: Phoebe's right, Frank. I know it's hard to hear, but it would've been wrong to go through with it. I-I-I was being selfish. Even though we, we want the same things right now, in the future, we may not. (to Phoebe) Is that it, is that what it is? (フィービーは正しいわ、フランク。聞くのが辛いのはわかるわ。でも、結婚をやり通すことは、悪いことだっただろうと思うの。私は(あの時)自分勝手だったわ。たとえ、私たちが今は同じことを求めているとしても、(本当は)同じことを求めていないかもしれない。[フィービーに] そうよね? それが言うべきことよね?)

But I so didn't. の so は意味を強めています。
研究社 新英和中辞典では、
so (副詞)=[程度を表わして][強意的に](口語) とても、非常に、大変
(I'm) so sorry! ごめんなさい, すみません。それはお気の毒に。
You've been so kind. 本当にご親切にしていただきました。
My husband so wants to meet you. 主人がぜひお目にかかりたいと申しております。


この意味を強める so は、研究社の例文では、すべて so にアクセント記号がついています。
so の部分を強調して発音する、ということですね。
(アクセント付きの文字は文字化けするかもしれないので、上の引用では、太字にしました。)
ネットスクリプトでも、そういう強意の so は、SO sorry! のように大文字で書かれていることが多く、その部分を強調してしゃべっていることがわかるようになっています。
so sorry や、so kind のような使い方だけでなく、My husband SO wants to meet you. のように、want を強調することもできるのですね。
今回のフィービーのセリフ、But I so didn't. も、「あなたは私がひどいことをしたと思ってると思うけど、でも、私はひどいことはしなかった」という「しなかった」(didn't)ことを強調する so です。
日本語に訳すと、「絶対にしなかった」や「断じてしなかった」みたいになるかな、と思います。

アリスに挨拶する時に、フランクは、Mrs. Knight と言っています。
婚約者であった時は、アリスと呼んでいたけれど、婚約解消になった今は、元の先生と生徒の関係に戻ったので、先生に対する呼び名である Mrs. Knight を使っているのですね。

go through with は、英辞郎では、
go through with=(つらいことを)やり抜く、守り通す、果たす
例) The elderly couple were going to get married, but did not go through with it. 「老年のカップルは結婚しようとしていたが、果たせなかった。」

この例文、「年の差カップル」に変えると、今回のフランクとアリスの婚約解消にぴったりの文章になりますね。

I was being selfish. について。
これは、I was selfish. 「私はわがままだった。」というのと少しニュアンスが違います。
フレンズ2-19その1 で、
エディー: I don't think you're being fair! (そんなのフェアじゃないよ!)
というセリフがありました。
その過去記事では、「ハートで感じる」大西先生のご説明を使って、"You're unfair." と "You're being unfair." との違いについて語っています。

今回のアリスのセリフも、I was selfish. であったならば、「過去の私の性格・性質はわがままだった。」という意味になるようです。
過去の時点では、いつでもどんな時でも selfish であった、というような、その人の性格・気質について述べた表現になる、ということですね。
それに対して、今回のように、I was being selfish. と進行形が使われている場合は、過去の特定の瞬間についての言及で、「フランクと結婚しようと言った時、結婚するつもりになっていた時の、あの時の私はわがままだったわ。」と、ある瞬間の行為を指して selfish だと言うことになるので、本人の性格そのものを述べたことにはならず、「あの時の私はわがままでどうかしていたわ。」というようなニュアンスが出る、その時の行為が selfish であった、ということを示すことになるのですね。

アリスは自分の気持ちを正直に伝えているように見えて、そのセリフの後で、フィービーの方を振り返り、"Is that it, is that what it is?" と言っています。
これを聞くと、フィービーとあらかじめ打ち合わせをしておいた、フランクを納得させるためには、こう言えばいいのよ、と事前にフィービーに言うべき内容を決められていた、ということがわかりますね。
普通は、こういう不審な行動で、アリスはフィービーの言った通りのことを口にしているだけ、ということに気付くのですが、フランクはアリスと別れるということで頭がいっぱいでそのことに気付かないようです。
その後、フィービーの言われた通りに、言葉で納得させようとしたアリスですが、別れることが正しいという話をしながら、結局、二人はキスして抱擁してしまいます。
この後、盛り上がっている二人を残して、フィービーは自分の部屋を出て行ってしまいます。
二人を別れさせる作戦は失敗に終わった、ということですね。


[Scene: Chandler's bedroom, he's listening to the hypnosis tape again.]
チャンドラーの寝室。彼は催眠テープをまた聴いている。
催眠テープ: Cigarette's don't control you. You are a strong, confident woman, who does not need to smoke. (タバコはあなたを支配しません[コントロールしません]。あなたは、強く、自信に満ちた女性です。あなたはタバコを吸う必要がありません。)
ジョーイ: (He's recorded his voice on the tape) Joey's your best friend. You wanna make him a cheese sandwich every day. (he laughs) And you also wanna buy him hundreds of dollars worth of pants. (ジョーイはテープに声を録音していた) ジョーイはあなたの親友です。あなたはジョーイにチーズサンドイッチを毎日作りたくなる。[ジョーイは(テープの中で)笑う] そして、あなたはジョーイに、何百ドルもするパンツを買いたくなる。)
(Chandler wakes up and stares at the tape.)
チャンドラーは目を覚まして、(何だ今のテープは?という感じで)テープを見つめる。)

少し前のシーンで、夜中に起きたジョーイが、チャンドラーのテープの内容を聞き、このテープのせいで女性化していたことに気付きます。
その時、にやっと笑ったジョーイがたくらんでいたのが、このことだったのですね。
催眠術で、コインをゆらゆらさせながら、「あなたは眠くなーる、眠くなーる。そしてジョーイにパンツを買ってあげたくなーる。」と言っているのと同じ感じです。
声を吹き込みながら途中嬉しそうに笑っているジョーイの声までテープに録音されています。リアリティがありますね。
ちなみに、チャンドラーは、茶色い犬のぬいぐるみと一緒に寝ていますが、これも女性化の一環でしょうか?(笑)

hundreds of dollars worth of pants という表現について。
worth は「…の価値があって」という意味で使うことが多いですが、今回は名詞ですね。
研究社 新英和中辞典には、
worth=(名詞)(不可算) (価格のいくら)だけの分量、(…に)相当するだけ(of)
(例) a dollar's worth of this tea このお茶1ドル分
Give me ten dollars' worth of this cloth. この布地10ドル分ください。

と出ています。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
worth [noun] [uncountable]
ten dollars'/​15 cents' etc. worth of something:
an amount of something worth ten dollars, 15 cents etc.
例) $2,000 worth of computer equipment


辞書の例文では、dollars' のように、所有格のアポストロフィーがついていますね。
worth が名詞なので、ten dollars' worth で「10ドル”の”価値」になる、ということでしょう。
$2,000 というドルマーク表記の場合は、所有格のアポストロフィーをつけなくても、$2000 だけで(名詞を修飾する)形容詞の役割を果たす、ということでしょうかねぇ?

ジョーイのセリフには、所有格のアポストロフィーがついていませんが(DVD英語字幕にもついていませんでした)、hundreds of dollars が形容詞的に使われている、ということなのかなぁ?
でも、Macmillan English Dictionary には、
The fire destroyed millions of dollars' worth of equipment.
という例文が出ていますので、millions of dollars' とアポストロフィーがつくのなら、hundreds of dollars も、アポストロフィーが必要なのではないかな、と。

過去記事、トゥーウィークスノーティス フレンズ3-10その16 のコメント欄 で、「映画のタイトル Two Weeks Notice は、正しくは Two Weeks' Notice になるようだ」という話について書いています。
ネイティブでも、複数形の所有格のアポストロフィーを抜かすことがあるらしい、という話なんですが、今回のジョーイのセリフも、それでしょうかねぇ?

英英辞典の語義にあるように、「…の価値がある」という意味の worth は、worth ten dollars のような形で使いますね。
研究社 新英和中辞典には、
worth=【形】【P】 (用法) 目的語をとるため, 前置詞と考える人もいる
と書いてあります。
つまり、一応、形容詞に分類しているけれど、前置詞と考えた方がわかりやすい、という感覚ですね。

手元にある英英辞典を見てみました。
ロングマンでは、この worth は、adjective (形容詞)ではなくて、preposition (前置詞)に分類されています。
Merriam-Webster Online Dictionary も、前置詞でした。
Macmillan English Dictionary (マクミラン英英辞典)は、adj つまり、「形容詞」扱いですね。

worth の特殊な使い方を考えると、確かに前置詞として理解していた方が良いような気はします。

worth doing だと、「…する価値がある」ですね。
研究社 新英和中辞典の例文では、
Rome is a city worth visiting. ローマは訪れる価値のある町だ。
(用法) visiting の意味上の目的語は a city

とあります。
ちょうど、ピートとモニカが今回のエピソードでローマを訪れていたので、この例文を載せてみました(笑)。

フレンズ2-15その18 では、ついに結ばれるロスとレイチェルのセリフで、
ロス: Listen, I'm sorry. I had to work tonight. (ねぇ、ごめんね。今夜仕事があって。)
レイチェル: Oh, that's okay. You were worth the wait. And I don't just mean tonight. (いいのよ。あなたは待つ価値のある人だもの。それは今夜だけのことを言ってるんじゃないわよ。)
というのがありました。
そこでも、worth について少し説明しています。

ここで、worth と紛らわしい単語を二つ、おまけで説明しておきます。
worthy と、worthwhile です。

worthy は、形容詞か前置詞かよくわからない worth とは違って、まさに「形容詞らしい形容詞」です。
be worthy of で「…に値する、ふさわしい」。
名詞の前につけると worthy 「価値のある、尊敬・尊重すべき、立派な」という意味になります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) の例文では以下のものが挙げられています。
The proposal is certainly worthy of consideration. 「その提案は確かに考慮する価値がある。」
a worthy opponent 「尊敬すべき対戦相手[競争相手]、好敵手」。


worthwhile も同じく形容詞ですが、これは、研究社 新英和中辞典によると、
worthwhile=時間と労力をかけるだけの値打ちのある、やりがいのある
という意味になります。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
worthwhile [adjective]: something that is worthwhile deserves the time, effort, or money you give to it
例) a worthwhile job

つまり、「worthwhile なものとは、それに与える時間、努力、金銭の価値があるもの」。
例は、「やりがいのある仕事」。

while という単語は、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
while [noun]
a while a period of time, especially a short one

とあり、「間・期間、特に短い間」を指すようです。
「短い」というのが少々ひっかかりますが、while の「間」の意味から、worthwhile は何らかの時間をかける価値がある、というニュアンスになるのでしょうね。

以上、worth とその関連語に関する説明でした。


(Rach からのメッセージとお願い)
スピードアップ宣言! での予告通り、3-18 は、今日の その7 で何とか終わることができました。
「2週間で1エピソードを終える」というのをとりあえずやってみたのですが、いかがだったでしょうか?
セリフを選ぶことになる分、省略してしまったところも多いですが、これくらいのペースでエピソードを進んでいける方が、私としては楽しいような気がしました。
一つ一つの記事の長さがこれまでより長くなる傾向にあるようで、読む方は面倒くさいと思いますが…(すみません)。

これからもできればこの方式で続けたいと思っています。
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posted by Rach at 13:44| Comment(3) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさん、こんにちは。

worth visiting は worth a visit と言い換えられますね。
この2つが使われている例文を辞書で探しました。

【Merriam-Webster's LEARNER'S DICTIONARY】
- Chicago is worth a visit. I think you'll really like it.

【Cambridge Advanced Learner's Dictionary】
- When you're in Reykjavik, the National Museum is worth a visit.
- The museum is well worth a visit.

【Longman Dictionary of Contemporary English】
be (well) worth a visit (=be interesting to go to)
- A lot of the small towns in the area are definitely worth visiting.
- The town is well worth a visit.
- The local museum is worth a visit.
- The hotel fitness centre is definitely worth a visit.
- The amphitheatre is well worth a visit.

【Kernerman English Learner's Dictionary】
- The exhibition is well worth a visit.
Posted by Tak at 2009年03月07日 11:48
レイチさん、こんにちは

長くなる分読むのがめんどくさくなる、なんて心配されてますが
読み応えがあって大賛成です。

楽しくブログを書くというのが一番だと思うので、
レイチさんに合った方法が見つかってよかったですね。

私は、やっとシーズン5に突入しました(笑)
ジョーイのアクセントが、なかなか聞き取りにくかったんですが
ここにきてやっと解るようになってきました。
Posted by millufe at 2009年03月07日 13:48
Takさんへ
コメントありがとうございます。
そうですね、worth visiting は worth a visit と言い換えられますね。a visit という名詞が直接後ろに続くところが、worth という言葉の特徴的な使われ方なので、worth a visit を覚えておけば、そういう後ろに名詞が続くという性質を忘れにくいですよね。


millufeさんへ
コメントありがとうございます。
「読み応えがあって大賛成」と言っていただけて、とても嬉しいです。これからも楽しくブログを続けていけたらな、と思っています。

ジョーイのアクセントですか…。私は誰のが聞き取りにくかったかなぁ?
とにかくフレンズ学習を始めた頃は、誰のセリフもさっぱり聞き取れなかったので(笑)、特に誰のアクセントが聞きにくかった!という強烈な印象がないんですよね。モニカの早口が難しかったかも…。
フレンズのような連続ドラマは、レギュラー陣の声は毎回聞くので、そうやって、男女の複数の声質に徐々に慣れていくことができる、という点でもありがたいかな、と思います。
Posted by Rach at 2009年03月08日 07:07
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