[Scene: The Theatre, Joey and Kate are rehearsing for the play.]
劇場。ジョーイとケイトは、芝居のリハーサルをしているところ。
ジョーイ: I talk to you, and nothing! You look at me, and it's nothing! (He kisses her) Nothing. (俺は君に話しかける、でも、何もない! 君は俺を見る、でも、何もない! [ジョーイはケイトにキスをする] 何もないんだ。)
ディレクター(The Director): Tasty. I'm really starting to feel like you guys have a history. It's-it's nice. (エッチな感じでいいねぇ。君たちには歴史があるように、僕は本当に感じ始めたよ。ナイスだ。)
ディレクターの感想、Tasty. について。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
tasty [adjective]:
2. (informal) tasty news, gossip etc is especially interesting and often connected with sex or surprising behaviour
3. (British English informal) sexually attractive
つまり、2. は「tasty news, tasty gossip は特に興味深く、しばしば sex や驚くような行動と関連がある。」
3. は、「(イギリス英語、インフォーマル) 性的に魅力的である」。
3. はイギリス英語、と書いてありますが、2. にも、性的なことの言及がありますので、性に関係のある形容詞として使われることがある、ということですね。
今回のセリフも、夫婦である二人の演技が、性的な雰囲気を醸し出しているとか、エロティックな感じでいいよぉ〜、みたいな褒め言葉なのでしょう。
実際の演技はというと、ジョーイはプレイボーイであるにもかかわらず、キスは「いかにも演技」という感じだし、キスの後の、Nothing. は、手振りといい、言い方といい、全くの「ダイコン」です。
(俳優さんが、「大根役者」の演技をするのって難しいだろうな、といつも思うのですが、このジョーイのダイコン演技はなかなかのものです…笑)
そんな下手な演技を見てそんなに褒めるか?みたいな印象を観客が持つ、という流れでしょうか。
ディレクターの才能にも、ちょっと疑問符を感じるところですね。
history は、フレンズ1-20その3 にも出てきました。
二人は役者で他人だけど、まるで本当の夫婦みたいに、二人の間にはいろんなことがあったんだろうな、と思わせる演技だったよ、ということです。
ケイト: I have a question about this scene. (このシーンについて質問があります。)
ディレクター: Yes? (何だ?)
ケイト: Well, I don't understand why Adrianne's attracted to Victor. (えーっと、私はなぜエイドリアンがヴィクターに惹かれているかわからないんです。)
ディレクター: Peel the onion. First of all, he's good-looking. (中身を掘り下げろ。まず第一に、彼はルックスがいい。)
ジョーイ: Yeah. (そうですよね。)
ケイト: I think my character's gonna need a little bit more of a reason than that. (私の(演じる)キャラクターは、それ以上の理由をもう少し必要とすると思うのですが。)
ジョーイ: Oh, hey, how about this one? Ah, it says so in the script! Y'know ah, I-I don't know why my character likes you either. I mean, it says in the script here that you're a bitch. (へー。なぁ、こういう理由はどうだい? 「あ、脚本にそう書いてある!」ってのは。ねぇ、どうして俺のキャラクターが君を好きなのか、俺もわからないよ。だって、この脚本に、君は最低女だって書いてあるのに。)
ケイト: It doesn't say that in the script. (そんなこと、脚本には書いてないわ。)
ジョーイ: It does in mine. (俺の脚本には書いてあるよ。)
ディレクターに褒められて嬉しそうなジョーイですが、ケイトは納得できない様子。
peel the onion は直訳すると、「たまねぎの皮をむけ」ですね。
こういうイディオムがあるのかと思って調べてみたのですが、特に有名なイディオムとかではないようです。
DVDの日本語訳では、「ふかーく読み込め。深く掘り下げろ」となっていましたが、恐らくそういう意味なんだろうと私も思います。
たまねぎはどんどんむいていくことができ、最後には芯にたどり着きますよね。
そのイメージで、外側の目に見える部分だけじゃなくて、もっと内側の真実を突き止めろ、本当の姿を見極めろ、みたいな意味だろうと。
で、そんな風に言った後、ヴィクターの魅力を述べるのですが、それが、good-looking、つまり、見かけがいい、ハンサムだ、ということ。
内面・中身を見ろ、みたいなことを言っておきながら、いきなり、「見かけ」という外面(そとづら)、上っ面(うわっつら)を挙げているところが何ともトンチンカンであり、このディレクターの話が浅いものだということがわかる気がします。
くだらないことを質問するな、という感じで、ジョーイはいらついていますね。
そういう設定なんだから、そういう風にスクリプトに書いてあるんだから、素直に受け入れろよ、演劇の通ぶって、いちいち、脚本にケチをつけるなよ、と言いたいわけです。
ジョーイの発音は、...likes YOU either. となっていて、「俺の方こそ、どうしてヴィクターがエイドリアンを好きなのか、わかんないよ。」という感じで、それは俺が言いたいセリフだ、こっちだってこんな女の魅力がちっともわかんないよ、と言っているのですね。
役柄の描写にケチをつけているのではなく、相手の俳優に対しての個人的な感情をぶつけているのがお互いわかっているわけです。
実際の脚本では、エイドリアンも魅力的な女性として描かれているのでしょう。
ですから、エイドリアンが bitch だなんてことは、脚本には書いてないわ、とケイトは言うのですが、in mine つまり、in my script にはそう書いてる、というジョーイ。
ソープオペラ俳優であることやインフォマーシャルへの出演をバカにされたジョーイは、脚本に bitch と落書きして、ケイトに対する怒りをぶつけていているのかな、と思います。
[Scene: The Hallway, Chandler and Ross are returning from working out.]
廊下。チャンドラーとロスはワークアウト[トレーニング]から戻ってきたところ。
チャンドラー: I can blow-dry it. I can put gel on it. It doesn't matter, I still wind up with this little (pats the flat spot on the back of his head) cowlick-y thing on the middle part of my head. It's so annoying. Does it bug you? (ブローすることもできる。それにジェルをつけることもできる。でも、そんなこと無意味なんだ。やっぱり、この小さな [頭の後ろの平らな部分をたたく] 頭の中央の逆毛みたいなやつが直らないんだ。すごくうっとうしいよ。お前も逆毛でイライラする?)
ロス: You bug me. (お前にイライラするよ。)
[Rachel comes out of her apartment, followed by Mark, and they leave on their date, without saying a word to Ross. Ross is stunned.]
レイチェルは彼女の部屋から出てくる。その後にマークが続く。そして二人はデートに出かける、ロスには一言も言わずに。ロスは愕然とする。
チャンドラー: Is there any chance you didn't see that? (今のをお前が見なかったって可能性はあるかな?)
cowlick は「逆毛」。
前のカウの方にアクセントがあります。
手元の英和を見ると、通常は、額の上のものを指すとありますが、今回のチャンドラーは、頭の後ろの毛を言っていますね。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
cowlick [noun]: [countable]
hair that sticks up on your head
つまり、「頭の上に突き出ている髪の毛」。毛がピンと立っている感じでしょう。
Word origin には、
Origin: Because it looks as if it had been licked by a cow
とあり、「牛になめられたように見えるから」だそうです(笑)。
wind up with は「…で終わる、…で締めくくる」。
ドライヤーでブローしても、ジェルをつけても、結局、この cowlick-y thing がそのままの形で残ってしまう、という感じでしょう。
bug は「(人を)悩ます、いらいらさせる」。
フレンズ3-7その19 にも出てきましたが、bug = annoy です。
上のセリフでも、"It's so annoying. Does it bug you?" となっていて、annoy と bug が同じ意味として使われていることがわかりますね。
ロスは、そんなくだらないことをいちいち僕に尋ねてくる、チャンドラーにいらいらするよ、と答えています。
そんな風にのどかでささいな話をしていたら、レイチェルとマークがデートに出かける場面に出くわしてしまいます。
ばっちりそれを見てしまい、呆然としているロスに対して、you didn't see that の chance はあるかな?と聞いていますね。
この chance は日本語の「チャンス」ではなく、「見込み、可能性」ですね。
多分見てしまったと思うけど、その時、よそ見をしていて、今のを見ないで済んだ、って可能性はあるかな?という感じ。
「見てはいけないものを見てしまったな、今の見なきゃ良かったよな、ロス。」という感じのことが言いたいのでしょうね。
(Rach からのお願い)
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実はこのエピソードを見てないので何ともいえないのですが、今回のジョーイとケイトのやりとりを見るかぎり、ケイトはオーソドックスな演劇を学んだ人物というよりも、前衛的、実験的な演技に興味がある、一般人は共感できない演技を追及する人物として描かれているのではないかと思い書き込みさせていただきました。つまり、ブロードウェイで上演されるような演劇ではなく、オフ・ブロードウェイと呼ばれる小劇場系の俳優がケイトなのではないでしょうか(さらに小さい劇場をオフ・オフ・ブロードウェイと呼ぶそうなので、むしろこちらの方にあたるのかもしれません)。
deconstruction(脱構築理論)に前々回のエントリーで触れていました。僕も少しかじった程度ですが、deconstructionはたとえばスピルバーグ監督の『ジョーズ』を見て、ジョーズに追われる主人公は、競争社会に投げ込まれた人々の競争に敗れることの潜在的な恐怖を象徴していると評論するようなものだと理解しています。deconstructionの理解はどうでもいいのですが、脚本家目線で語って見れば、以前にケイトがdeconstを持ち出して演劇を語らせていたのは、一般人にとって「理屈っぽい」「ついていけない」人物であることを示唆したかったからではないでしょうか。
今回のエピソードは、ソープオペラの「べたな」演技(ジョーイの場合は単に「へたな」演技)とオフ・ブロードウェイの「実験的な」演技とのギャップが笑いどころなのかなと思って、次回の記事を楽しみに待ちたいと思います。はずれていたらごめんなさい(笑)。
コメントありがとうございます。
ケイトが「オフ・オフ・ブロードウェイの小劇場系の前衛的、実験的な演技に興味がある人である」というお話は興味深いですね。
フレンズを見ている人は、ジョーイのお芝居のレベル(学芸会レベル?…笑)を知っていますよね。その共演者として、deconstruct を熱く語るような人物であるケイトを登場させた、ということは、おっしゃるように「理屈っぽい」「(一般人には)ついていけない」人物であることを示唆していることになるのでしょうね。ケイトは、演劇を芸術としてみている芸術家っぽい人なのでしょう。
実は、後のセリフで、ケイトが演劇をきちんと学んだ人であることがわかるセリフが出てくるのですが、そういう立派な経歴を持ちつつ、前衛的・実験的なものにひかれている人だという感じも漂っていますね。だから、ジョーイが出演するような無名のお芝居にあえて出たりしているのでしょうし、観客の側から見ると才能がなさそうに見えるこの一風変わったディレクターに対しても、そのつかみどころのない部分に大いに期待しているような感じもします。演劇に対して純粋で、情熱を持って演技にトライしている、という感じが出ているように思いますね。
水と油みたいなジョーイとケイトが、これからどうなっていくのか、が確かに見どころなのだと思います。今後も、二人のギャップの違いに注目しながら、解説していきたいと思います。
今、ちょうどエピソード3-19と3-20を見終わったところです。僕がdeconstructに過剰に反応しすぎたようですね(汗)。Rachさんが的確に指摘されていらっしゃるとおり、演劇をきちんと学んだことを示唆する程度であまり深い意味を込めてdeconstructを使ったようではなさそうですね(滝汗)。。Rachさんに変な気を使わせることになってしまいました、すみません。大人の対応をしていただき本当にありがとうございました。
「脱構築」はよっぽどの人しか知らないという先入観で深読みしてしまいましたが、インターネットで調べてみると、英語の世界ではdeconstruct Obama's campaign messages(オバマの選挙メッセージを脱構築する)、deconstruct the whole financial system(金融システムを脱構築する)、deconstruct the neurological framework(神経学の枠組みを脱構築する)など、いまだにBig Wordではあるとは思うのですが、Newsweekから経済ニュースのBusinessweek、医療ニュースのHealthDayなどで用例を発見できましたから結構幅広く使われているんですね。
そもそもエピソードを見てれば、ケイトのきちんとした服装、しぐさ、話し方を見れば、教養あるオーソドックスな役者という感じで、前衛的実験的なオフ・オフ・ブロードウェイの役者という印象はあまりありませんでしたね。次回からは、該当エピソードを見てからコメントするという最低限のモラルは守りますので、どうぞよろしくお願いします。
こちらこそ、ご丁寧なお返事ありがとうございます。また、deconstruct を使った数々の例を調べていただいて、まことにありがとうございました。
英英辞典を見ると、もっぱら文学批評で使われるような言葉だとあったので、私も普通は使わない言葉なのだろうと思っていました。ですから、そのように、Newsweek などでも使われている、という情報はとても新鮮です。日本語の「脱構築」という言葉も大変哲学的で、それこそ、big word な感じがしますが、あえてそういう言葉を使う人にはそういう言葉を使える教養のある人間であることを示唆する意図もあるのかもしれません。
「該当エピソードを見てからコメント」というのもなかなか大変だと思いますので、その辺りはお気になさらず。フレンズを見たことのない方にもその面白さを伝えられるといいな、と思いながら書いていますので、記事中で掘り下げ足りない部分、わかりにくい部分などをいろいろとご指摘いただけるとありがたいです。