2009年04月25日

シェークスピアのセリフでののしる フレンズ3-22その4

新聞にジョーイが出た芝居の劇評が出ますが、ケイトの演技はジョーイよりもひどいと言われ、マーシャルの演出も酷評されます。
そのことで落ち込んでいるケイト。
[Scene: The Theatre, after the party. Joey is trying to comfort Kate.]
劇場で。(打ち上げ)パーティーの後、ジョーイはケイトを慰めようとする。
ジョーイ: Hey! You okay? (やぁ! 大丈夫?)
ケイト: Fabulous. (最高よ。)
ジョーイ: Listen, drama critics, they're nothing but, but people who couldn't make it as actors. You know what you should do? (聞いてよ。劇の批評家は、彼らは、俳優として大成しなかった人間にすぎないんだよ。君は何をすべきかわかる?)
ケイト: Become a drama critic. (私は劇の批評家になるべきね。)
ディレクター: (entering, drunk) I am hurt! (to Joey and Kate) A plague on both your houses! (walks away) ([酔っ払って入ってきて] 私は傷ついた! [ジョーイとケイトに] お前たち二人の家に災いを! [歩いて去る])
ケイト: By the way, he dumped me tonight after he read my review. (ところで、(ディレクターの)彼は、今夜、批評を読んだ後、私を捨てたのよ。)
ジョーイ: Oh, classy. (あぁ、しゃれたことしてくれるよね[何様のつもりだ]。)
ケイト: Yep! I sure know how to pick 'em, huh? You know I gave up a part on a soap for this? (そうよ! 私は確かに男の選び方を知ってるのよ[男を見る目があるのよ]、そうでしょ? 知ってる? 私はこの芝居のために、ソープオペラの役をあきらめた[蹴った]のよ。)
ジョーイ: Wow! Yeah, I ah, I gave up a job too. (そうなんだ! あぁ、俺も仕事を一つあきらめたんだよ。)
ケイト: Really? What? (本当? 何の仕事?)
ジョーイ: Uh, declawing cats. Hey, tell you what, let me walk you home. We'll stop by every newsstand and burn every copy of The Times and The Post. (あぁ、ネコのツメ切りの仕事だよ。ねぇ、思いついたんだけどさ、君を家まで歩いて送らせてよ。全ての新聞売場に立ち寄って、タイムズとポストの全部に火をつけちゃおうよ。)
ケイト: Why The Post? (どうして、ポスト(も)なの?)
ジョーイ: Oh, you didn't see The Post? (あぁ、ケイトはポストを見てないの?)
ケイト: No. You? (見てないわ。あなたは見たの?)
ジョーイ: No. Why? (いや見てないよ。どうして?)

critic は名詞で「批評家、評論家」。
nothing but の but は「…を除いて」という意味なので、nothing but を直訳すると「…以外ではない、…の他はなにもない」、つまり「ただ…なだけ、…に過ぎない」という意味になります。
make it は「うまくやり遂げる、成功する」ですから、make it as actors は「俳優として成功する、俳優として大成する」ですね。
I made it! なら何かが成功した時に「やったぞ! やったわ!」という意味になります。

批評家って人種は、俳優として成功できなかった人間なんだよ、と言って、ジョーイはケイトを慰めています。
批評家についてそう語った後、ジョーイは You know what you should do? と言っています。
そんな批評家の言うことなんて気にすることはない、君が今すべきことは、そんなつまらない批評家の言うことを無視すること、忘れることだよ、と言いたいわけです。
ところが、You know what you should do? と問われたケイトは、当然そのジョーイの言いたいことがわかっていながら、「私も批評家になるべきね」(I should become a drama critic.)と答えます。
私も俳優として成功できそうにないから、批評家に転向すべきよね、と自虐的に答えているのです。

同じく劇評で酷評されたディレクターのマーシャルは、酔っ払いながら二人のところにやってきます。
相変わらず大げさな言い回しで、 I am hurt! A plague on both your houses! と言って去っていくのですが、このセリフ、実はシェークスピアの「ロミオとジュリエット」の有名なセリフだと言うことが調べているうちにわかりました。

plague は「伝染病、疫病」「ペスト」という意味で、研究社 新英和中辞典や英辞郎には、
(A) plague on it[him etc.]!=いまいましい! こんちくしょう!
という意味が載っています。
on を使って、on 以下のものに疫病がふりかかるイメージ、「そいつに疫病を!」という感覚が、「いまいましい! こんちくしょう!」という憎しみのフレーズに繋がるのでしょう。

A plague on にそういう意味があると知って、検索で使用例を調べるために Google のサーチボックスに、A plague on と入れたところ、A plague on both your houses というフレーズが候補として表示されました。(Google サジェスト機能)
そこからさらに調べてみると、A plague on both your houses というフレーズが、「ロミオとジュリエット」で使われたセリフだということがわかったのです。

そのセリフを説明してくれているサイトを2つ紹介します。

A plague on both your houses - Shakespeare Quotes
上のサイトには、ロミオとジュリエットに出てくるマキューシオ(Mercutio)のセリフとして、I am hurt. A plague a' both your houses! と書かれています。
つまり、ディレクターの言っている、I am hurt. の部分も含めて、シェークスピアのセリフの引用だった、ということですね。
ちなみに、フレンズ1-21その6 で、ジョーイが、新しい芸名(Holden McGroin)でオーディションを受けた時に、演じていたのがマキューシオでした。

A plague o' both your houses: Information from Answers.com
上のサイトでは、このセリフの背景と意味がわかりやすく説明されていますので、興味のある方は是非お読み下さい。

マキューシオは、モンタギュー家(ロミオの家)とキャピュレット家(ジュリエットの家)の両家に対して呪いの言葉を言ったわけですが、ディレクターはそのセリフを使って、ジョーイとケイトの両方の家に災いがあるように、と言っているのです。
演出そのものを酷評されているので、ジョーイとケイトのせいばかりではないのですが、ディレクターは二人のせいで自分の将来が台無しにされた、と言いたいのですね。
ケイトはこのディレクターの才能を買っているような発言を過去にしていましたが、こんな風にさらりとシェークスピアのセリフを引用したりするような日頃の言動から、そう思い込んでいたのかもしれません。
かなり有名なセリフのようなので、これを引用したからと言って、博識であることの証明にはならないのかもしれませんが、やっぱりジョーイには不可能な芸当かと(笑)。

批評を読んだ後、ディレクターに捨てられたのよ、と語るケイトに、ジョーイは、Oh, classy. と言っています。
classy は英和辞典では「しゃれた、高級の、上流な、身分の高い」という意味が載っています。
ジョーイのセリフのニュアンスは、日本語の「しゃれたことしてくれるじゃないか」のように皮肉っぽく言っているのか、ディレクターという役職の人間が、自分の役に立たなくなったからと俳優を非情にポイと捨ててしまうことを「いかにも立場が上の人間がやりそうなことだよね」と言っているのかのどちらかかな?と思いました。
その後のケイトのセリフ、Yep! I sure know how to pick 'em, huh? も、them つまり男性の選び方を私はよく知っている、私は男性を見る目があるから、こんな男と付き合っていたのよ、私ってほんとに男を見る目があるでしょ?と皮肉っぽく言っている気がします。
「批評が悪かったからとあっさり女を捨てるような男と付き合っていたなんて、私はなんてバカな女だったのかしら」という言葉の裏返しでしょうね。
余談になりますが、90年代に活躍した C.C.ガールズというアイドルグループ(ユニット)がいましたよね。
その C.C. は Cool & Classy の略だそうです。

過去に、ジョーイに対してソープオペラのことをバカにする発言をしていたケイトですが、実はソープオペラの役を蹴って、この芝居にかけていたことがわかります。
それに対してジョーイも「俺もある仕事をあきらめて、これを選んだんだ」と言うのですが、それが declawing cats という役者のキャリアには全く関係ない仕事なのが笑えます。
declaw という単語は英辞郎に、
declaw=(他動詞)爪を除く
と出ていますが、爪を全部引っこ抜いてしまうということではなく、DVDの日本語訳にあるような「ネコのツメ切り」のニュアンスでしょう。

家に帰る途中に、The Times と The Post を全部燃やしちゃおう、と提案するジョーイ。
The Times は、The New York Times、The Post は、The New York Post ですね。
Wikipedia 日本語版: ニューヨーク・タイムズ
Wikipedia 日本語版: ニューヨーク・ポスト
アメリカの新聞で「ポスト」と言えば、ワシントン・ポストが有名かな、とは思ったのですが、やはりブロードウェイでの演劇のレビューを取り扱っている、ということになると、地元のニューヨークの新聞ということになると思います。
ニューヨーカーのジョーイが The Post と言えば、やはりニューヨーク・ポストなんだろう、と。

今回、劇評で酷評されたタイムズはわかるとして、ポストの名前も出たことに、ケイトは「??」となります。
普通は、「ポストも燃やそう」と言ったら、それにも悪い批評が載っているかと思いますよね。
で、「読んだの?」と聞いたら「読んでない。どうしてそんなこと俺に聞くの?」と返すジョーイ。
ジョーイはポストを読んだわけではなくて、また、ポストにも悪い批評が載っていたわけでもなくて、ただタイムズのついでにポストの名前も出しただけ、だったのですね。


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posted by Rach at 10:55| Comment(5) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。2年ほど前からROMさせてもらっていました。
今日が初コメです。

私は二人の幼子の母親で、37才です。
RachさんのサイトがきっかけでFriendsのDVDを全巻揃え、ほぼ毎日1〜2話ずつ観ています。
最初は英語で観るのがしんどくて途中から音声を日本語に切り替えていましたが、1年経った頃から話の全てを英語で見ても苦痛ではなくなりました。
現在、話の50%くらいはヒアリングできるようになり、少しずつではありますが進歩を実感しています。

子供の世話がまだ大変なのでなかなか思うように勉強がはかどりませんが、自分のペースで続けていきたいと思っています。

それにしても、フレンズの台詞からシェイクスピアやC.C.ガールズのグループ名の意味までたどりつくとは!
すごい探求心ですね。尊敬します。
1日分のブログを書くのには色々と調べて、ものすごく時間がかかることでしょうね。

いつも楽しみに拝見していますので、これからも更新がんばってくださいね。
プロフィール欄のお写真、とっても素敵です。


Posted by doriemon at 2009年04月25日 18:15
ではCCレモンもcool & classy!?
なんて茶化してすみません。。。
classyの感じは「しゃれたことしてくれるじゃないか」ですごく納得しました。もっと下衆な感じで言うと「お上品なこってぇ」てなところでしょうか。
こういう普段スルーしてしまうところに立ち止まれるのが、このサイトのいいところですよね!

関係ないんですが、claassyと10回言ってるうちにプラッシーに変わってしまう私は微妙なお年頃?(オチ)
Posted by ほっとあーるぐれい at 2009年04月25日 23:04
doriemonさんへ
初めまして。コメントありがとうございます。2年も前から読んで下さっていたとのこと、とっても嬉しいです。

私も二児の母親で 40才なので、とても親近感を覚えます。一日中小さいお子さんの相手をしていると、なかなか勉強時間を確保するのって難しいですよね。焦らずにご自分のペースでゆっくりじっくり学習を進めていっていただけたら、と思います。

「話の全てを英語で見ても苦痛ではなくなりました」というのはとても素晴らしいことです。実際に英語を使ってコミュニケーションする場合は、日本語訳などの助けがない状態で行うわけですから、オール英語のものに抵抗感をなくすことはとては大切ですよね。50%くらいはヒアリングできる、とご自身で実感されているのも素敵です。続ければ続けるほど、どんどん聞ける部分が増えてくると思います。

そうですね、ブログを書くのは結構時間がかかってしまいます。他にもいろいろと英語学習としてやってみたいことがあるのですが、多くの方とブログを通じてこうしてお話させていただける環境がとてもありがたいと思っているので、やはりまずはブログを書くことを優先順位の第一位に置いています。

温かい激励のお言葉もありがとうございます。それから、写真の件もありがとうございます。いくつになっても、そういう部分を褒めていただけるのは嬉しいです(笑)。


ほっとあーるぐれいさんへ
C.C.レモンとプラッシーについては、レスを書くと、また関係ないことをいろいろ書いて長くなってしまいそうなので、自重しました(笑)。

classy のニュアンスは実際どうなんだろう?と悩んだのですが、日本語でも、「しゃれたこと」「上品なこって」とか言いますもんね。フレンズなどのセリフでは、最低な状況で、Great! 「最高だよ!」と言ったりするような皮肉っぽい言い方がよく登場しますが、今回もそれの一種だろうと思いました。決して重要単語ではないでしょうが、そういうちょっとしたニュアンスがわかると面白いなぁ、と思うし、それを学べるのが海外ドラマのセリフで学ぶ醍醐味ですよね。
Posted by Rach at 2009年04月27日 12:00
皮肉っぽい言い方といえば。
スコット・トゥローの小説「Presumed Innocent(邦題:推定無罪)」で、殺人の疑いをかけられた主人公(主席検事補)が、部屋を立ち去ろうとした時、ライバルの検事補に「おまえがやったんだろう!」と罵声をあびせられ、腹立ちのあまり「ああそうさ!(Yes! I did! だったかな?)」と答えたのを思い出しました。
日本人の場合、こういう本当に追い詰められた状況でこういう表現は出てこないような気がします。やはり相当に自然な行為(表現)なのでしょうね。

ちなみにこの作品、映画なら少しは何とかなるのですが、原著は全く歯が立たず、買っただけで3ページぐらいしか読んでいません(苦笑)。日本語の原作本は本当に面白く、これが英語で読めたら!というのは年に一回ぐらい思います。
この証言も実は裁判の大事な焦点の1つになっていて・・・。関係ないので自重。

そういえば、Rachさんの次の記事(27日)で、「特定の」を表すtheの使い方を簡単に説明されていましたね。このお話の軸の1つ"the B file" もその用法ですよね?アメリカ人はこの使い方が本当に好きですよね(イギリス人は?)。隠語的に使ってみたり、友達同士の親密感を出すために使ったり、単にめんどくさいから使ったり(笑)。
こういうのが上手く使えるようになるといいなぁと思います。
Posted by ほっとあーるぐれい at 2009年04月27日 23:22
ほっとあーるぐれいさんへ
売り言葉に買い言葉、という感じであっても、Yes! I did! みたいなことを言ってしまっていいのかな?と見ている方は思ってしまいますね。「お前は自分の口でそう言ったじゃないか!」と後から責められたりしないのかな、と心配になりますが。でも、英語のセリフを見ていると、そういう皮肉っぽい言い方は頻繁に出てきます。文字通りに訳してしまうと「??」となってしまうセリフって多いです。

Presumed Innocent (film)
http://en.wikipedia.org/wiki/Presumed_Innocent_(film)
に、a B-file とか、the B-file という言葉が出てきますね。B というのは、bribery の B なんでしょうね。この映画、苦手なので、細かい設定をあまり覚えていないんですよ。

the night という言い方は、
フレンズ1-22その3
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470150.html
にも出てきました。
レイチェル: Could tonight be the night? (今夜が「その夜」になりそうなのね?)
というセリフで、お互いの暗黙の了解の「あの夜、その夜」という感覚ですよね。
Posted by Rach at 2009年05月01日 09:48
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