2009年05月13日

彼はbad news フレンズ3-22その8

フレンズ3-22その6 のコメント欄 で、3-22 に関するご質問をいただきましたので、今回、記事の形で回答させていただきます。
以下のセリフは、時系列に並べてあります。
また、DVD字幕とネットスクリプトで表記が異なる場合は、実際の音声とチェックして正しいと思われる方を書いてあります。


1. エピソードの冒頭シーン。
レイチェル: Oh, Phoebe, are you still on hold? I was supposed to call my dad back, like, two hours ago. (まぁ、フィービー。まだ保留中の状態なの? 私は、2時間前くらいに、パパに電話をかけ直すことになってたのよ。)
フィービー: Oh, yeah. He clicked on. He said call him as soon as you get a chance. He's at Flimbees. (えぇ、そうね。パパのキャッチホンが入ったわよ。パパは、レイチェルが電話できるようになり次第、電話してくれ、って言ってたわ。パパはフリンビーズにいるって。)

ネットスクリプトでは、clipped on と表記されていますが、DVD英語字幕では、clicked on になっています。
click はマウスのクリックのように、「カチッと音を立てる」感覚ですね。
click on は「カチッと音がして、何かが on になる」ような感覚で、何かカチッというような音がして、キャッチホンが「入った、つながった」感覚だと思います。


2. プレミア後のパーティーで。
ロス: (drags Chandler over to buffet table) I'm telling you, this guy Rachel is with is crazy. Okay? He viciously screamed at total strangers. I think he's baaad news. ([チャンドラーをビュッフェテーブルに引っ張ってきて] 話したいことがあるんだけど、レイチェルが一緒にいる男はクレージーなんだよ。彼は全くの他人に悪意を持って叫んだんだ。彼は危険人物だと思うよ。)

ネットスクリプトでは、viscously と書いてあるのですが、正しくは、viciously です。
DVD英語字幕では、viciously と書いてあり、音声でも「ヴィシャスリー」と発音されています。
実際に、viscous 「粘着性の、粘性の」という形容詞とその副詞、viscously も存在しますので、紛らわしかったですね。(こちらの発音は「ヴィスカス」という感じ)
viciously は「悪意を持って、意地悪く」という意味ですね。

ロスは bad を強調して、baaad news と言っています。
bad news は「嫌な人、困った人、要注意人物」。
研究社 新英和中辞典、英辞郎などに載っていました。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
bad news: (informal) someone or something that always causes trouble
つまり、「いつもトラブルを起こす誰か、または何か」。


3. パーティーで、なれそめを聞かれたピートとモニカ。
ケイリン: So how'd you guys meet? (それで、あなたたちはどんな風に出会ったの?)
ピート: Well ah, the short version is, I ah pursued her for a couple of months. Then I gave her a check for 20,000 dollars and she was mine. (そうだな。短いバージョンで言うと[短く言うと、手っ取り早く言うと]僕がモニカを2、3ヶ月追いかけた。それから、僕はモニカに2万ドルの小切手を挙げた。そして彼女は僕のものになった。)
モニカ: Yeah, and in the long version, I dump him for telling people the short version. (そうね。そして、長いバージョンでは、ピートがその短いバーションを人に話すから、私は彼を振るのよ。)

dump はフレンズによく出てくる「(恋人を)振る」ですね。
ピートは、短く言うと、手っ取り早く言うとこんな感じなんだ、と、「モニカは金でころっと落ちた」みたいな言い方をします。
それはモニカにとっては不名誉な話なので、長いバージョンとして情報を付け足すのですが、そのセリフを直訳すると、「そうね、で、長いバージョンで言うと、そのショートバージョンを人々に言って[ふれて]回ることで私は彼を振るのよ」みたいなことでしょうか。

この for は、研究社 新英和中辞典の、
for=[報償・返報を表わして] 〈好意・成果など〉に対して、…の返報として
He was fined for speeding. 彼はスピード違反で罰金を科せられた。

の「返報の for」かなと思います。
「人にそういう誤解を招くことをしゃべって回ることへの返報(報い、仕返し)として、彼を振るのよ」という感じでしょうか。
ピートが人聞きの悪いことを言うから、「そんなことばっかり言ってるから、私に振られちゃうのよ、私を怒らせちゃうのよ」と、ピートの説明にモニカは怒っている、ということを冗談っぽく言っている感覚かなと思いました。

正直、I dump him の dump という「現在形」のニュアンスがよくわからないのですが、「習性」の現在形だとすると、「そういうこと言ってるから、私は彼を振るわけね」みたいなことになるでしょうか。


4. ジョーイが自分のエージェントのエステルをフレンズたちに紹介するシーン。
エステル: How do you do? (to Rachel and Monica) Ooh, you two girls were outstanding! (to Joey) Do they have representation? (初めまして。[レイチェルとモニカに]まぁ、あなたたち女の子二人、抜群[素敵]ね! [ジョーイに] 彼女たちにはエージェントがいるの?)

representation は「代表、代理」なので、俳優の代理人として、仕事を請け負ったり、他者と交渉したりするエージェント、(俳優の)所属事務所、という意味なのだと思います。
エステルは彼女たちも女優、もしくは女優の卵だと思ったようですね。


5. ケイトの部屋。ジョーイと良い感じになりながら、かなり酔っ払っていたケイトは、ジョーイにもたれて眠ってしまいます。
ケイトをソファに寝かせた後、
ジョーイ: (Looks at her) Good night, Kate. Sweet dreams. (Picks up a garbage can) I'm gonna put this can right here in case you have to hurl. ([ケイトを見て] おやすみ、ケイト。良い夢を。[ごみ箱[ごみ入れ]を持ち上げて] このごみ箱をちょうどここに置いておくよ。万が一、吐かなきゃいけない時のために[吐きたくなったらいけないから]。)

hurl は「…を強く投げつける、(言葉などを)浴びせる」という意味がありますね。
そういう、何かを投げつける、浴びせる、という勢いのある強い感覚が、「吐く」という意味になるようです。
実際、英辞郎には、「(自動詞)吐く」という意味が載っていました。
また、LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) には、
hurl: [intransitive and transitive] (American English informal) to vomit
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) には、
hurl: [intransitive] (slang) to VOMIT
と出ていますので、アメリカのスラングで「吐く」という意味になるようです。


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posted by Rach at 11:17| Comment(7) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お手数おかけしました
click on、viciously には脱力ですね  スクリプトのほうのミスとは
もっと英語的に深い意味があるのかと期待してただけに(苦笑)
ねちねちした絡むような怒りがviscously でも、けっこう面白いと思ったので
後は大体、そうかなと思ったのが確認が取れすっきりしました

特に、short version と long versionのお話など、吹き替えより原語のほうが毒があり、面白いなと思いました。
またお世話になると思いますが、よろしくお願いします。
Posted by かつての読者 at 2009年05月13日 21:31
かつての読者さんへ
お返事ありがとうございました。

ネットスクリプトは細かい音まで拾ってくれていて、本当にありがたいのですが、タイポや聞き間違いも結構あるんですよね。ですから、ネットスクリプトが存在する場合でも、DVD英語字幕を見る、チェックする意義もかなりあるように思います。固有名詞の綴りも、DVD英語字幕の方を優先した方がいいようです。
Posted by Rach at 2009年05月14日 12:56
1. clickに関して
辞書には「音を立てる」とだけありますが、個人的にはこの意味で使われた時にはすごく能動的な印象を受けます。「何らかの意図・目的を持ってカチッと音を立てる」というイメージ。なので、このclicked on が正解でしょうねー。

3.in the long version 関連
まず for ですが、最初は単純に「理由・原因を表す」を想像してました。でもちゃんと辞書には「報酬・返報」というすばらしい用法が載っているのですね。やっぱり辞書は大事ですね。

それから dump が現在形なのは何故か?私なりに想像してみました。
まず、in the long version に含まれた皮肉について、Rachさんの解釈にのっかる感じで私の感覚を。
前の the short version で、馴れ初めを非常に簡略化して説明していますが、この表現は実際にもよく耳にする気がします。急いでいる場合だけでなく、例えばビジネスで演繹的表現が好まれる状況でも使えると思います(社内など親しい間柄に限られますが)。
で、その short version に不足を感じた場合には、他から付け足しが入るわけですが、今回のように the long version などとわざわざ言う場合には、ほぼ100% 特別な意図(皮肉・不満・ジョークなど)が含まれると考えていいと思います。単に補足するなら、actually とか他にもっと簡単な表現がありますので。
というわけで今回の場合は、the long version の後にモニカならではの痛烈な皮肉が来なければなりません。モニカとしては「いかに強烈にするか!」を一生懸命考える場面だと思います。
その手段としてモニカが選んだのが「短く言うこと」ではないでしょうか。フォーカスを当てやすくするという通常の目的だけでなく、in the long version と言った後で、あえて極めて短く言うことはそれだけで皮肉を強烈にアピールできるはずです。助動詞とかまどろっこしいわ!という感じ(笑)
これが私が思った「現在形にした理由その1」です。

で、実は「理由その2」はもっと単純で。
動詞の現在形の用法に「確定した未来」というのがあったはずです。例えば、「明日パーティに行く?」と聞かれて、"I go." / "I will (go)" / "Maybe (I go)." では全部感じが違いますよね?
だからこの場合には、I dump him. で、彼を振る事が確定していると言う(=皮肉を強める)感じかと思います。

学校で英語を習う時は現在形で習って、いざ使おうと思うと現在形で話すことはほとんどない気がして、でもよく聴いてみるとネイティブは現在形で言う事が結構多い。そんな気がします。

4.representation / representative
まずは例によって「何で冠詞がついてないんだ?」という疑問から入って、プラスrepresentativeの方がよく聞く気がしてちょっと調べてみました。
representation は主として集合体を表して不加算名詞で使われるみたいですね。
逆にrepresentativeは「はっきりとした代理人」のイメージ。
だからこの場合は、事務所とかエージェントとか何だかわからないけどとにかく、「仕事の斡旋を任せてる存在はいるの?」と聞きたいからrepresentationが正しいんだなぁと一人で理解。
合ってますでしょうかね?(笑
ちなみにフィーリングとしては、本気で彼女たちもスカウトしたいなら、Do they have "any" representation? とした方が感じがでると思うのですがいかがでしょう?

5. hurl
アメリカ系の辞書にはどれでもスラングとして載っているようですが、実際には聞いたことがありません。聞き取れていないだけという可能性も多分にありますが。
個人的には、酔ってる時に vomitと発音しようとすると、それだけで吐きそうになるので今後は hurlの方を使いたいと思います(苦笑)

以上、長々とすみません。。。

Posted by ほっとあーるぐれい at 2009年05月14日 19:41
こんにちは(と書きましたが、真夜中に油を燃やしている息抜きでこのエントリーを読んでました……)

上(↑)の「ほっとあーるぐれい」さんのコメントと一部重複しますが、

I dump him. は、友人などにある出来事を話したり、行動を説明したりするときに使われる用法かなと思います。日本語では「ト書き」のようなきびきびとした感じでしょうか。筆力がなくてうまく説明できないのですが、ニュアンスとしては仮定法現在に近い感じがします。Monicaのひとつ前のPeteのせりふも、早口で興奮して実況中継するかのようににしゃべるときは現在形になってもおかしくないと思います。

to hurl はぼくも聞いたことがないです。かわりに、to pukeを話し言葉ではよく聴いた記憶があります。to vomitは、普通すぎて、本当に吐きそうなときにI'm about to vomit.というとあまりに客観的な感じがして少しずっこけます。

以上、あまり確信はないですが、私見を述べさせていただきました。今後ともよろしくお願いします。
Posted by outrageous2007 at 2009年05月15日 02:02
ほっとあーるぐれいさんへ
representation は「代表(権)、代理(権)」という意味の場合は、不可算名詞みたいですね。
「代表者」という意味では、確かに、representative という名詞の方をよく聞きますね。(こちらは可算名詞)。
フレンズ3-13その12 で、
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388471216.html
I got to sit in on the meeting with the reps from Calvin Klein. (カルバン・クラインの代表者たちと一緒に、ミーティングに参加することになったのよ。)というセリフがありましたが、rep は representative の短縮形ですね。
representation と representative の不可算、可算の違いは、おっしゃるように、「集合体」と「はっきりした代理人」というイメージの違いでしょう。
representative は -ative という語尾からもわかるように、元々は形容詞ですよね。ですから、representative という名詞= a representative person のニュアンスで、だから、個々人を指す可算名詞になるのかなぁ、と。エステルはとにかくそういう「代理人、事務所みたいなやつ」という漠然としたイメージで、あえて、representation を使ったのでしょうね。
疑問文の any は「いくらかの」という意味ですね。だから、「何かしらそういう代表みたいな人はいるの?、もしかしてそういう人がいたりするの?」という探りを入れるような感じになって、より興味深い様子が出るかもしれません。(私の何となくのイメージですが)

dump と hurl については、まとめレスにさせていただきます。


outrageous2007さんへ
burn the midnight oil 「深夜まで勉強する、働く」ですね。お疲れ様です。そんな時に読んでいただけて光栄です。

以下、dump の現在形と、hurl 「吐く」についてのお二人へのまとめレスになります。

ほっとあーるぐれいさんの「助動詞とかまどろっこしいわ!」というのも面白いですね。
ジョークのオチであり、ラブラブにも関わらずピートがそういう憎らしいことを言うから、私だってお返しよ!という感じで、簡潔に述べた、それが、時制などのニュアンスを入れない、dump なのかもしれません。「そういうこと言うから、私は彼を振る」とブチッと切ってしまった感覚でしょうか。

「確定した未来を現在形で表す」という用法はありますが、それは、予定表などでスケジュールが決まっている場合によく使われる気がします。

outrageous2007さんの「ト書きのようなきびきびとした感じ」というのもわかりやすいですね。
フレンズ2-21その22
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470597.html
で、「過去のことを語っていて突然現在形にスイッチする」ことを、大西泰斗先生のお言葉を借りて、説明しています。
なれそめを聞かれているので、臨場感を持って現在形で語ることで、より生き生きした感じが出る、ということでしょうね。
今でも二人はラブラブなので、ピートがそれを言いふらすことでモニカがピートを振ったわけではないことはわかります。それがわかる状況であえて、「そういうこと言うから、私は彼を振ったのよ。それが本当の長いバージョンよ。その大事な部分をピートは抜かしてるわ。」みたいに言って軽く仕返しをした感じなのでしょう。それを実況中継する形で現在形にしている、と。

hurl は実際にはあまり聞かないのですね。まず「吐く」として習う言葉は、vomit かもしれませんが、自分が吐きそうな時に使う言葉ではない、という印象は私にもあります。
フレンズ4-9 で、
チャンドラー: Oh man! I am so excited- I may vomit!
というセリフがあるようですが、これもちょっとおちゃらけた言い方なのかな?とも思います。
puke も時々聞きますね。フレンズの後のシーズンにも登場する単語です。
「吐きそう」と言う場合、無難なのは、I'm gonna throw up. あたりでしょうか。throw up だと他にもいろいろな意味があるため、「吐く」という行為をダイレクトに言うのを避けるには適しているかもしれません。
Posted by Rach at 2009年05月15日 12:21
臨場感を与えるというパターンはありますね。
子供が「今日学校でこんなことあってさ」のような感じで話し出すと、最初の状況説明以外は全部現在形になる気がします。
めんどくさいっていうのもあるんでしょうが。

個人的意見ですが、この場合、in the long version で始まってる以上、本来は状況説明をしなければならないはずで、そうなるとやはり、未来に起こりうる事であれば未来をあらわす表現が来るべきだと思います。
そこへわざわざ現在形を持ってきたのは、「それを言うのをやめない限り私はあなたと別れるわよ」という直接的な警告だと感じます(もちろん本当は別れられないので「その話し方はやめてって言ってるのがわからないの?」程度の感じ?)。
これを言うことで、話を聞いてる相手にも「彼の話はそのままとらないでね!!」っていうアピールができますから。下手に言い訳しようとしたらかえって怪しくなりますよねきっと(笑
あくまでも個人的な感じ方っていうことで。


throw up は何度も聞いたことがあるんですが、もしかしたらこれはやや上品な表現なんでしょうかね?「吐く」のに上品も下品も無いかもしれませんが。。。
Posted by ほっとあーるぐれい at 2009年05月15日 18:41
ほっとあーるぐれいさんへ
>「それを言うのをやめない限り私はあなたと別れるわよ」という直接的な警告だと感じます
というお話、なるほどなと思いました。
私も上手くニュアンスを説明できないのですが。また、しばらく考えてみて、何か思いついたら書きます。

throw up は(私もよくわかりませんが)日本語でいうと「もどす」みたいな感じでしょうか? 「吐く」という直接的な表現を、やや婉曲的に表現した、という感じがします。行為が行為ですから、上品も下品も無い、というのはその通りでしょうね。
Posted by Rach at 2009年05月17日 08:46
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