2009年05月15日

UFCのオクタゴンリング フレンズ3-23その7

[Scene: Pete's apartment, Pete and Monica are coming back from a date.]
ピートのアパートメント。ピートとモニカはデートから帰ってきたところ。
ピート: Lights. (The lights turn on, once again they're too bright.) Uh, romantic lights. (The lights dim.) (ライト。[ライトがつくが、またもや明るすぎる] あぁ、ロマンティック・ライト。[ライトが薄暗くなる])
モニカ: Ooh, nice. (まぁ、ナイスね。)
ピート: So ah, there was this thing I wanted to talk to you about. (それで、君に話したいことがあったんだけど。)
モニカ: Oh, right. I'd completely forgot about that. (まぁ、そうね。私はそのことをすっかり忘れてしまっていたわ。)
ピート: Well ah, I've been doing a lot of thinking. And I look at my life.... (そうだな、僕は随分考えていたんだ。そして自分の人生を見つめて…)
モニカ: Yeah? (そうなの?)
ピート: ...and I feel like I've conquered the business world. And I feel like I've conquered the intellectual world. And now I-I have the most beautiful woman in the world. (そして、僕はビジネスの世界を征服したという気がする。また、知的な世界も征服した気持ちでいる。そして今は、世界で最も美しい女性と一緒にいる。)
モニカ: Wow. (まぁ。)
ピート: But there's one thing missing. (でも、一つだけ欠けているものがある。)
モニカ: What's that? (それは何?)
ピート: It's time for me to conquer the physical world. (僕が肉体的な世界を征服する時が来たんだ。)
モニカ: Okay. (not sure of herself) (いいわ。[自信がない様子で])
ピート: Monica, I wanna become (pause) the Ultimate Fighting Champion. (モニカ、僕はなりたいんだよ [沈黙] アルティメット・ファイティング・チャンピオンに。)
モニカ: You wanna what? (何になりたいですって?)
ピート: I wanna become the Ultimate Fighting Champion. It's the most intense physical competition in the world. It's banned in 49 states. (僕はアルティメット・ファイティング・チャンピオンになりたいんだ。世界中で最も激しい肉体競技なんだ。アメリカの49州で禁止されている競技なんだ。)
モニカ: What are you talking about? (何を言ってるの?)
ピート: Okay, my trainer, Hoshi, is teaching me a combination of Jeet Kune Do and Brazilian streetfighting. I even had my own octagon training ring designed. (いいかい、僕のトレーナーのホシは、ジークンドーとブラジリアン・ストリート・ファイティングのコンビネーションを僕に教えてくれている。僕は、僕専用のオクタゴンの訓練用リングのデザインまでさせたんだよ。)
モニカ: And I suppose you used a ring designer for that. (それじゃあ、私が想像するに、あなたはそのためにリング・デザイナーを使ったのね。)
ピート: Yeah. Monica, I want you there, in the front row, when I win. I want you close enough to smell the blood. What do you think? (そうだよ、モニカ。僕は、君にそこに、最前列にいて欲しい、僕が勝つ時に。血の匂いを嗅ぐことができるほど近くにいて欲しい。君はどう思う?)
モニカ: My parents will be so happy. (私の両親が(きっと)とても喜ぶと思うわ。)

ピートの部屋の音声認識システムは、Lights. と言うと、また思いっきりまぶしいライトをつけてしまいます。
コマンドよりスイッチを探せ フレンズ3-23その4 の時と同じですね。
その後、romantic lights. と言い直したら、今度は、恋人との過ごすのにちょうどいい感じの、薄暗い明るさになりました。
さすがはピート、これくらいの明度を romantic lights というコマンドで設定していたようです。

そう言えば、前に言っていたように君に話したいことがあったんだ、と切り出すピート。
モニカは、しらじらしく、Oh, right. I'd completely forgot about that. と言います。
モニカの頭の中は「大事な話」でいっぱいで、それがいつ来るかいつ来るかと待っていたはずなのに(笑)、さもそんなことはすっかり忘れていたかのように言っている女心、よくわかります。

conquer は「征服する」。名詞形は conquest です。
feel like は、feel like doing で「…したい気がする」、feel like+名詞で「(飲食物など)を欲しい気がする」という意味がありますね。
今回のピートのセリフは、feel like+文、の形になっていて、その場合は、「(まるで)…のような気がする」という意味になります。
like は as if のような意味ですね。

有名なソフトを開発して、億万長者のピートですから、ビジネスの世界を征服した、と言い切ってしまっても問題ないとは思いますが、征服したのが事実かどうかよりも、「自分としては、ビジネスの世界を征服してしまったような気がしているんだよ」という、自分の見解、自分ではそう思っているんだ、ということを言うために、わざわざ I feel like と言っているように思います。
ビジネスの世界は頭脳を使う知的な世界なので、その世界も征服した気がする、と言っていますね。
さらに、モニカを目の前にして、世界一美しい女性を手にしたとも言い、モニカはそれをうっとりした気持ちで聞いています。

一つだけ欠けているものがある、というピート。
モニカはきっと、「愛する人と築く新しい家庭、家族」みたいな答えを期待していたでしょうね。
いよいよプロポーズされるのね、と思った時のピートの答えは、「ビジネスの世界、知的な世界ではなく、今度は肉体的な世界を征服する時だ。」というものでした。
モニカは怪訝な顔をしていますね。
何だか思っていたのと違って、変な方向に話が行きそうな予感がしているので、続きを聞くのが怖い、といった表情です。

ピートがなりたいもの、それは、the Ultimate Fighting Champion でした。
ultimate は「究極の」。
UFC という略称の格闘技があり、日本でも結構有名です。
UFC という略語は、Ultimate Fighting Championship の略で、そのチャンピオンシップで、ピートはチャンピオンになりたい、と言っているわけです。
UFC のチャンピオンになれば、肉体的な世界・分野も征服したことになる、と。

UFC という格闘技がどんなものかをわかりやすくまとめてくれているのが、こちら(↓)。
UFC WORLD : WOWOW ONLINE
もっと詳しく知りたい方はこちら(↓)。
Wikipedia 日本語版: UFC
Wikipedia 英語版: Ultimate Fighting Championship

実は、次のエピソード、フレンズ3-24 のタイトルは、The One With the Ultimate Fighting Champion で、実際に UFC の試合のシーンが出てきます。
その時にまた、ウィキペディアの興味深い情報をご紹介する予定です。今は、ピートのセリフに関係ある部分だけご紹介します。

確かに、ピートの言うように、the most intense という表現は当たっているでしょう。
アメリカは50州ありますが、あまりにも危険であるということで 49州で禁止されている、とピートは言っています。
つまり、ピートの言葉では、たった1州だけしか、UFC の興行が許されていない、ということになりますね。
このフレンズが放映されたのは 1997年ですが、ピートの言っていることがその当時の事実を語ったものかどうかは裏が取れませんでした。
ピートが言う1州というのは、恐らく、ラスベガスのあるネバダ(Nevada)州のことかな、と思います。
ウィキペディアの日本語版や英語版に、2008年の共和党大統領候補だったジョン・マケイン上院議員が、この競技に反対していた話が書いてあります。
英語版では、マケイン議員がアメリカ50州全ての知事に手紙を書いた、という記述がありますし、日本語版ではそのために「開催地を規制の緩い州で転々とし」という記述もあります。
ですから、多くの州で UFC が禁止されていた、というのは間違いないようです。

州で禁止、の流れで…。
フレンズ1-22その5 で、イーサンが高校生だと知らずにエッチしてしまい、
モニカ: My lie didn't make one of us a felon in 48 states! (私の嘘では、私たちのうちのどちらかが48州で重罪犯罪者になることはないわ[あなたのついた嘘で、私は48州で重罪犯罪者にされちゃうのよ]!)
というセリフがありました。
アメリカは州によって独自の法律が制定されているためにこういうセリフが可能なのですね。
(50州のうちの)48州が、49州が、と言うことで、ほとんどの州では禁止されている事柄であることが説明できる、というアメリカならではのセリフです。

Jeet Kune Do 「ジークンドー」は、ブルース・リーの武術、また、UFC では、ブラジルのグレイシー一族が有名であることから、Brazilian streetfighting の名前も出ていますね。
そのコンビネーション、つまりその二つを組み合わせたものをトレーニングしている、ということです。
究極総合格闘技である UFC のチャンピオンを目指すためにやっているトレーニングとして、それっぽい名前が挙がっているのが面白いですね。

I even had my own octagon training ring designed. というセリフで、ring という単語が登場し、フレンズ3-23その5 で、ジョーイが小切手帳で発見した ring という言葉の意味がここでわかる仕組みになっています。
ジョーイ: (looking at the checkbook) Wow! Look at this! He wrote a check for 50,000 dollars to "Hugo Lindgren's Ring Design." ([ピートの小切手帳を見ながら] わぁ! これを見ろよ! ピートは「ヒューゴー・リンドグレン・リング・デザイン」に、5万ドルの小切手を切ってるぞ。)
というセリフがあり、ring は指輪のことだと思い込んでいたフレンズたちですが、その ring は、ボクシングやレスリングなどの格闘技のリング、のことだったのですね(爆)。

octagon 「オクタゴン」とは、「八角形」のこと。(ヘキサゴンだと六角形です)
octa- や、oct- という接頭語は「8…」という意味があります。
タコは8本足だから、octopus です。
October は、oct- という接頭語がついているのに 8月ではなく 10月ですが、これについては、研究社 新英和中辞典に、以下の説明があります。
語源:ラテン語「8番目の月」の意; 古代ローマでは3月から1年が始まったことから
3月から1年が始まった話は、Wikipedia 日本語版: ローマ暦 に詳しく書いてあります。

I even had my own octagon training ring designed. の構造は、had+目的語+過去分詞(designed)で、「目的語を…させる状態にした、…させた」という使役ですね。
自分自身の八角形(オクタゴン)のトレーニングリングをデザインさせた、ということです。
even は「…さえも、…すら」という副詞で、僕の UFC にかける意気込みはすごくて、自分専用のリングのデザインを特注すること「さえ」したんだよ、特注「すら」したんだよ、という感覚です。

上でリンクしたUFC のサイトからもわかるように、UFC のリングがオクタゴンであることは有名です。
うちの主人に、「UFC のリングって知ってる?」と聞くと、「あぁ、あのオクタゴンの?」と即答したくらいですから(笑)。
fighting ring だけでももちろん、格闘技のリングだとわかるのですが、octagon という言葉がつくことで、知っている人は「UFC のあのオクタゴンのリングか!」と気付いて、余計にそのギャップに笑ってしまうのですね。
モニカが夢見ていたロマンティックな指輪ではなくて、情け無用の究極格闘技のリングのことだったとは!というオチです。
モニカは、UFC については詳しく知らないようでしたが、激しい格闘技であることはピートの説明でわかったようです。
ここで、リング・デザイン会社に高額で発注したリングのデザインは、格闘技のリングのデザインだったのね…とわかってがっかりする、という仕組みです。
格闘家らしく(?)、「血の匂いを嗅げるほど近くで、僕が勝つのを見ていて欲しい」と言っていますが、ロマンティックというより、おどろおどろしいですね(笑)。

UFC 参戦を告げられたモニカは、感想を求められて、「私の両親はすごく喜ぶでしょうね。」と言っています。
これはきっと、ピートにプロポーズされた時に言おうと思っていたセリフの一つでしょうね。
「私は嬉しい、幸せ、天にも昇る気持ちよ」など、自分の喜びを伝えるセリフをあれこれ考えていたのでしょうが、自分が幸せであることを述べた言葉はここではとても使えない、そう思ったモニカは、「私はそれについては嬉しくもなんともないけれど」という言葉をぐっとこらえて、「両親は喜ぶでしょうね」と他人の話に振るのが精一杯だった、という感じです。


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posted by Rach at 13:08| Comment(4) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさん、いつもお世話になっています。今回は使役動詞繋がりで質問があります。

セージ先生のオフィスでの
We appear to have angered it.ですが、ここのhaveって使役動詞ですよね?(日本語訳、音声共に怒らせてしまった、となっていたので)だとすると、使役動詞はhave+目的語+PPだと思っていたんですが、ここは目的語と過去分詞が逆になっているんですが、こういう使い方もOKなんでしょうか?

それと・・・ジェイソンのセリフ
I'm gonna make this real easy for you. これがどうして身を引く、となるのかが判りません・・・このまま検索掛けると何だか歌詞のようなんですがそれと関係があるのでしょうか?

Posted by やっちん at 2014年04月10日 16:12
やっちんさんへ
ご質問ありがとうございます。

まず、We appear to have angered it. について。
この have angered it の have は使役動詞の have ではなくて、have+過去分詞、つまり「完了形」の形になります。
appear は、seem などと同じく、「〜のように見える」という意味で使われ、appear to do の形だと「〜するように見える」という意味になりますね。
今回のセリフは、appear to have done(過去分詞)の形になっていて、「〜したように見える」という意味になっています。つまり、to do の代わりに、to have done という「完了不定詞」の形を使うことで、to do 「すること」という意味ではなく、to have done 「したこと」という過去の意味を表すことができる、ということですね。

appear という動詞は、「〜のように見える」ということから、「外観でそう判断できる」というニュアンスの時に使います。
今回の場合も、セージ先生が軟膏を塗ったら、できものの様子がおかしくなった(見た目の異常が見られた)ということで、慌てて軟膏を拭き取った後のセリフですよね。
ここでの anger は「〜を怒らせる」という他動詞で、it はそのできものを指します。

ここで改めて、このシーンのセリフを見てみると、
サージ先生: We appear to have angered it.
ロス: We? We angered it?
となっていました。
ロスは、サージ先生の言葉を受けて、We angered it? と返していますが、そのロスのセリフが、サージ先生のセリフの基本形のようなもので、そこにいろいろニュアンスを付け加えたのが先生のセリフになっていると考えるとよいですね。

事実としては、We angered it. 「私たち(サージ先生とロス)が、そのできものを怒らせた」ということなのですが、ロスからは見えないところにあるできものなので、ロス自身はそのできものが今、どういう状態になっているかを見ることができないですよね。それで、サージ先生は、「見た目的に、そういう感じになっている」と説明したい気持ちもあって、We angered it. というシンプルな表現ではなく、We appear to have angered it. のように「〜したように見える、見た目から判断するに、私たちはそのできものを怒らせてしまった(ようだ)」と appear to というフレーズを使ったことになるでしょう。
その場合、今、見えている状態が現在形の appear で表現され、it を anger したのはそれよりも前の過去になるので、「それを怒らせた(過去)」ように見える、と過去であることを表現するために、to do ではなく、to have done(過去分詞)の形(完了不定詞)を使ったことになるわけです。

見た目がどんな風になっているか見えないロスは、「怒らせた(怒らせてしまった)ように見える」と言ったサージ先生の言葉を受けて、「怒らせちゃった(んですか)?」と確認のように言葉を返したということですね。

次に、ジェイソンのセリフについて。
これは、スクリプトでは、
ジェイソン: Y'know Phoebe, I'm gonna make this real easy for you. (walks out)
と書いてあるのですが、walks out 「退場する、去る」というト書きがポイントになるでしょうか。
直訳すると、「僕は、このこと(ややこしい三角関係になっていること)を、君のために、本当に簡単にしてあげよう」みたいなニュアンスになります。
ちなみに、real easy は、really easy (very easy のような意味)で、こんな風に really の代わりに real を副詞として使うことは、口語ではよく出てきます。

ジェイソンは「君にとって、これが簡単に・楽になるようにしてあげよう」と言って退出した、自ら出て行った、ということになり、つまり、これ以上モメてもしょうがないから、僕が消えることで、この三角関係を終わらせてあげるよ、みたいに言ったわけですね。
DVDの日本語訳は、
(字幕)なら 僕は身を引くよ/(音声)それなら、フィービー、もう悩んだりすることはないよ
となっていましたが、音声の方が、実際のセリフのニュアンスに近いでしょうか。
「この問題を僕が楽にしてあげる」と言って出て行ったので、そのセリフと行動をひっくるめてが「身を引く」ということになるのですね。
Posted by Rach at 2014年04月11日 14:32
Rachさん

お返事ありがとうございます。
あちゃ・・・完了形だったんですね・・・一度使役?と思うとそこから修正出来なくて・・・フレンズって「変化球」が多いのでこれもそれなのか?って思いこみました。文法壊しちゃった・・・

ジェイソンのセリフ、ト書きは全く見ていませんでした。ト書き、重要なんですね〜 前にgetしたフレンズのスクリプト、あんまり見ていなかったんですがこれからはもうちょっとチェックしてみます。

いつも思うんですが、Rachさんの日本語訳とても綺麗ですよね〜 そうかそういう風に充てればいいんだぁ、といつも感心して読んでいます。直訳をして、そのあとがうまく意訳出来ない私にはホント憧れです。がんばろ!
ありがとうございました。
Posted by やっちん at 2014年04月12日 19:23
やっちんさんへ
こちらこそお返事ありがとうございます。

一度そう思ってしまうと、そこから抜け出すのはなかなか難しいですよね。文法書に載っていないような変化球も確かに多いですし^^

DVDの日本語は、大きなヒントになる一方で、英語では遠回しに言っていることを「結局はそういうことだから」として、ダイレクトな意味で訳してしまうことも多いですね。文字数制限、時間制限などもありますし、直訳でない場合も多いので、そこは注意しないといけない部分でもありますね。

それから、「Rachさんの日本語訳とても綺麗ですよね〜」とお褒めのお言葉をいただけてとっても嬉しいです(^^) とにかくまずは直訳してみて、「それって日本語で言うと、こういうことだよねぇ〜?」と思いながら、あれこれ訳を考えています。「ブログの記事」という形で人様に発表するからこそ、ちょっとずつこなれた訳ができるようになってきたのかな、と思ったりもしています。
これからもそう思っていただけるような訳、そして解説ができるように、私もがんばろ!(^^)

これからもよろしくお願いします。
Posted by Rach at 2014年04月14日 15:40
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