2009年05月29日

上司が部下を褒める言葉 フレンズ3-24その7

[Scene: Chandler's office, he is just finishing up a meeting with his boss and the rest of his team.]
チャンドラーのオフィス。チャンドラーはちょうど、ボスとチームの残りの人と一緒のミーティングを終えたところ。
ダグ: So, in conclusion, the lines all go up (points to the chart), so I'm happy. Great job, team! Tomorrow at 8:30. (They start to leave) Phil, nice job! (smacks him on the butt) Stevens, way to go! (smacks him on the butt) Goldberg, you maniac! I love ya! (smacks him on the butt) (Chandler walks up) Bing! Good job, couldn't have done it without ya. (he shakes his hand) (それで、結論としては、線は全て上向きで[グラフを指す] だから、俺はハッピーだ。よくやったよ、チームのみんな! 明日は 8:30 だ。[チームのメンバーは部屋を出て行き始める] フィル、いい仕事だった! [彼のお尻を叩く] スティーブンス、よくやった! [彼のお尻を叩く] ゴールドバーグ、このマニアック野郎! 愛してるぜ! [彼のお尻を叩く] [チャンドラーが歩み寄る] ビング! よくやった、お前なしでは成し遂げられなかったよ。[ダグはチャンドラーと握手する])
チャンドラー: Thank you, sir. (ありがとうございます。)
スティーブンス: (coming back in) Oh, excuse me. I forgot my briefcase, y'know, by accident. ([戻ってきて] あぁ、失礼。ブリーフケースを忘れました。あの、うっかりしてまして。)
ダグ: Of course, you did. Forgot something else too, ya bastard! (smacks him on the butt) (to Chandler) Well, what about you? You're not feeling left out or anything, are ya? (もちろん、うっかり忘れたんだろうさ。他にも忘れ物があるぞ、このろくでなし! [彼のお尻を叩く] [チャンドラーに] それで、お前はどうなんだ? のけ者になったりしているように感じてないか、どうだ?)
チャンドラー: No. No, not at all. That's-that's ridiculous. (いえいえ、全然そんなことありません。(のけ者になっているように感じるなんて)そんなのばかげてます。)
ダグ: Everybody else got one, and you want one too. Don't you? (他のみんなはもらった[尻を叩かれた]から、お前もそれが欲しいだろ? どうだ?)
チャンドラー: Ye-ye-yeah, yes I do. (え、えぇ。そうですね、欲しいです。)
ダグ: Now, get on out of here, you! (smacks him on the butt) (さぁ、出て行きやがれ、こいつ! [彼のお尻を叩く])
嬉しそうに飛び跳ねながら部屋を出て行くチャンドラー。

チームの業績をグラフにして見せているボスのダグ。
ホワイトボードを指すのに、ゴルフクラブを使っているのが、体育会系というか、大のスポーツ好きであることをよく表していますね。
グラフの線が4本ともかなりの角度で上向きになっているのがコメディならではですが、その結果を見て、ダグは I'm happy. だと言っています。
そこで観客が笑っていますね。

チームの中にはアイがない フレンズ3-24その2 のコメント欄 で、「このボスには「俺のものは俺のもの、お前のものは俺のもの」的なジャイアンと似た雰囲気を感じます」というご意見をいただいたのですが、上のセリフの I'm happy. という言葉からも、その雰囲気が感じられる気がします。
ボスだから、チームの業績が上がれば嬉しいのは当然ですが、「このグラフを見て俺はハッピーだ」と言っているのが、殿様が「余(よ)は満足じゃ」と言っているように私には聞こえるのですね。
「俺のためによく頑張ってくれた」と言っているように聞こえるので、ちょっと笑ってしまう感じでしょうか。

その後、チャンドラー以外の3人のメンバーに、それぞれ賞賛の言葉をかけて、お尻を一発ずつ叩いていきます。
みんな嬉しそうに叩かれているのが可愛いですね。

Great job, team! / Phil, nice job! / Stevens, way to go! / Goldberg, you maniac! I love ya! と相手によって言葉を使い分けているのがポイントでしょうか。
日本人に比べて、アメリカ人の上司は部下を褒めるのが上手だと言いますね。
ですから、褒め言葉もいろんなバリエーションを持っているようです。
日本人の場合だと「よくやった」「でかした」くらいの言葉しか浮かんでこないのですが、これもそれぞれの個性に合わせた褒め言葉を使えると、もっと相手の心に響くんだろうなと思います。

maniac というのはいわゆる「マニアック」で(発音は「メイニアック」という感じ)、「マニア、熱狂的愛好家」または「狂気の人」という意味もあります。
どういう意味で maniac と言ったのかはよくわかりません。
チームとして一緒に仕事をしている時に、maniac な部分が見えたということか、あるいは、他の二人より少し遅れて嬉しそうな顔で近づいて来たのを見て、「尻を叩かれるのをそんなに楽しみにしてるのか?、この”尻を叩かれるのが大好き人間”め!」みたいな意味で maniac と言った、ということかもしれません。
このマニアックめ、みたいに言った後、フォローとして、I love ya! と言っているのが、口の悪いダグらしいなと思います。
そういうお前が大好きだぜ!という感じですね。

やはり上司のダグは、チャンドラーの気持ちをちゃんと受け止めていて、子供じみた真似をして、お尻を叩いたりはしませんね。
握手のための手を差し出し、チャンドラーがいなければ、このプロジェクトの成功はあり得なかった、お前が最大の功労者だよ、と賛辞の言葉を述べています。
couldn't have done it without ya は、仮定法過去完了を使った文で、「もし君がいなければ…できなかった」という意味ですね。
実際には、君がいたお陰で、それをすることができた、ということです。
チャンドラーもそれに対して、部下らしく、Thank you, sir. と言っていますね。

その後、先に出て行ったはずのスティーブンスが戻ってきます。
カバンを取りに戻ってきただけ、と言い訳していますが、by accident 「偶然に、ふとしたことで」という言葉をわざわざ口に出して言っているのが、逆にわざと(on purpose)置き忘れたことを示唆していますね。
「いや、ほんと、偶然、ついうっかりなんですよ。決してわざとじゃないんです。」と言って、逆のことをアピールしている感覚です。
ダグもそれをわかっていて、Of course, you did. つまり「お前は偶然それを忘れたんだよな。」と相手の言葉を認めた上で、他にも何か忘れてるぞ、と言って、お尻を叩きます。
「これが欲しくてわざとそれを置き忘れたくせに」と言うのを、言葉ではなく態度で表したのですね。

みんながお尻を叩かれて喜んでいるのを見ているチャンドラー。
leave out は「…を除く、除外する」「…を忘れる、無視する」なので、feel left out は「自分のことを無視されているように感じる、のけ者にされているように感じる」ということです。
お前だけ叩かれてないのは、のけ者にされたみたいで寂しくないか?とダグは尋ねます。

叩かれるのがいやだから、ダグに言いにくいことまで言ってそれをやめてもらったのに、今さら叩かれたいだなんて、そんなばかげたことはありませんよ、とチャンドラーは否定しています。
でもダグはチャンドラーの気持ちの変化を見抜いていたのですね。
チャンドラーが部屋からなかなか立ち去らないことからもそれは明白ですし。
ダメ押しでもう一度、「みんながもらってるから、お前も欲しいだろ? どうだ?」と聞かれて、えへへ、実は…という感じで嬉しそうに、yes と答えるチャンドラー。
両手でサムアップして(両手の親指を立てて)、やったぁ〜!みたいにピョンピョン飛び跳ねて部屋を出て行くチャンドラーが可愛いです。
ちょっと自分中心な感じはありますが、ボスとしてなかなか良い人なのではないかと思わせるダグさんでした。


(Rach からのお願い)
このブログを応援して下さる方は、下のランキングサイトをクリックしていただけると嬉しいです。
人気ブログランキング
にほんブログ村 英語ブログ
皆様の応援クリックが、とても励みになり、ブログを続ける大きな原動力となっています。心より感謝いたします。
posted by Rach at 12:25| Comment(6) | フレンズ シーズン3 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「ほめ上手」の件。
アメリカの小児科でもらった、冷蔵庫にくっつけるようなぺたっとした磁石(医者の電話番号が書いてある)に、「子どもをほめる100の言葉」が書いてありました。Way to go!とか、I'm so impressed.とか、I'm proud of you!とか、ほぅそういう風に言うのか、というのから、Good!とかExcellent!とか単純なのまで。子どもはほめて育てよう、というメッセージかな、と。
でも、友人のイタリア人ママが、「うちの子ですら英語のクラスの課題で『完璧!』って言ってもらうって、レベルが低いかほめ過ぎのどっちかじゃないかしらねぇ?」と首を傾げてたりもしました。「えーっホントにちゃんとできてるんじゃないの?」と言った覚えがありますが、まぁ、ほめ過ぎ、おだて過ぎで「オレ様って完璧」と思ってしまうのも確かに問題かも。ほめるのって難しいですねぇ。
Posted by おちか at 2009年05月31日 22:21
おちかちゃんへ
「子どもをほめる100の言葉」は覚えておくと良さそうですね。やっぱり褒めて育てるのは大事かなぁ、と思います。

「ほめ過ぎ」の話ですが、確かにアメリカ人は褒め過ぎじゃないか、と思うことは正直ありますね(笑)。だから、このブログや私の英語について褒めて下さったとしても、それをそのまま受け取っちゃいけない、もっと精進しなくちゃ!と思うようにしています。
ただ、褒め言葉そのものがとても参考になるんですよ。「あぁ、英語ではこんな風に言って褒めればいいのか」という良い勉強になるというか。やはり「こんな風に言ってもらえれば嬉しい」という褒め言葉で褒められたら、やる気が出ると思いますしね。「おだて過ぎ」にならないように褒めるのは本当に難しいですね。
Posted by Rach at 2009年06月02日 12:05
お世話になっております。
3か所不明な点があります。
よろしくお願いします。

14:39
Phoebe: Yeah, y'know what, there are other fish in the sea.
「other fishはレイチェルのこと?」

15:44
Chandler: so I certainly don’t deserve any praise,verbal or otherwise.
「verbal or otherwiseが賞賛(praise)と
つなげることができません」

Doug: Tapanzi Bridge never looked smaller.
「車が動いていないので小さくならない?」

Posted by Tamashiro-OB at 2020年02月02日 15:22
Tamashiro-OBさんへ
ご質問ありがとうございます。

1. there are other fish in the sea
there are other fish in the sea は「海には他の魚もいる」ということで、あえてその人(ボニー)を選ばなくても、世の中には他にも恋人候補になるような人はたくさんいるのに、というニュアンスです。「ボニーじゃなく、レイチェルを選べば?」という気持ちからフィービーはそう言っているわけですが、セリフそのものの意味は「他にもたくさんいるわよ」ということで「ボニーじゃなくてもいいんじゃないの?」ということです。

fish は複数形でも fish という形を使うことが多く、「海にはたくさんの魚がいる」という表現は「誰かに振られても、世間にはまだまだ多くの人がいる」という意味でよく使われます。
研究社 新英和中辞典にも、以下のように出ています。

There're [There's] as good fish in the sea as ever came out of it.=There're plenty more fish in the sea. 《諺》 魚は海にはいくらでもいる 《好機を逃しても[恋人にふられても]落胆するな》

今回のセリフの other fish は、there are という複数形の動詞が使われていることからも、「他の多くの魚たち」という複数を意味することがわかります。「他の1匹の魚」という一人の人間を指しているのではなく、「他の大勢の魚」という複数の人間を指したセリフだということです。

2. verbal or otherwise
verbal というのは「(話し)言葉で表現した、口頭の」、or otherwise は「または別の方法で」。
チャンドラーは上司のダグが褒める時にお尻を叩いてくるのが嫌なので、褒められないように自分が仕事をさぼったことを語った後、
so I certainly don't deserve any praise,verbal or otherwise. (ですから、僕はどんな称賛にも値(あたい)しないんです、口頭でも、または別の方法でも。)
と言ったことになります。
僕はさぼったので、言葉でも動作でも褒めてもらうに値しません、と表現することで、「お尻を叩く」という褒め方をしてもらわないように先回りして言っている感覚になります。

3. never looked smaller
looked smaller だと「より小さく見えた」ですが、そこに否定語の never がつくと、「より小さく見えることは決してなかった」→「それより小さく見えることはないと思えるほど、最高に(めちゃくちゃ)小さく見えた」という意味になります。
「酔っ払って運転したせいで、タッペンジー橋がすごく小さく見えた」→「橋から落ちそうになった」ということですね。
Posted by Rach at 2020年02月03日 13:56
Rachさんへ

比較級の否定は難しいです。
反語的で、会得するには時間かかりそう!

丁寧な解説有り難うございました。

Posted by Tamashiro-OB at 2020年02月03日 21:48
Tamashiro-OBさんへ
おっしゃるように比較級の否定は反語的で難しいですよね。
ご丁寧なお礼のお返事、ありがとうございました。
Posted by Rach at 2020年02月08日 09:14
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。