シーズン3 第25話
The One At the Beach (渚でロスとレイチェル…)
原題は「ビーチでの話」
[Scene: Outside Central Perk, Chandler and Monica are waiting for Phoebe to arrive with the cab.]
セントラルパークの外。チャンドラーとモニカはフィービーがキャブで来るのを待っているところ。
モニカ: (watching a happy couple walk by, arm in arm) Would you look at them? Am I ever gonna find a boyfriend again? I'm gonna die an old maid. ([幸せなカップルが腕を組んで歩いて行くのを見ながら] 彼らを見て。私はまた恋人を見つけることができるのかしら? 私はオールドメイド[オールドミス]のままで死ぬことになるのよ。)
チャンドラー: You're not gonna die an old maid. Maybe an old spinster cook. (モニカはオールドメイド[年老いたメイド]のままで死ぬことはないよ。多分、年老いた未婚のコックとして死ぬことになるだろうね。)
モニカ: (sarcastic) Thanks. ([皮肉っぽく] ありがとう。)
チャンドラー: Hey now besides, worse comes to worse, I'll be your boyfriend. (ねぇ、それに、最悪の状況になったら、俺がモニカの恋人になってやるよ。)
(At that suggestion Monica starts laughing.)
その提案に、モニカは笑い始める。
モニカ: Yeah, right. (えぇ、そうね。)
チャンドラー: Why is that so funny? (何がそんなにおかしいの?)
モニカ: You made a joke, right? So I laughed. (あなたは冗談を言ったんでしょ? だから私は笑ったの。)
チャンドラー: Ha-ha-ha. A little too hard. What, am I not ah, boyfriend material? (ははは。ちょっとキツいな。ねぇ、俺は、その、恋人になる資質がないの?)
モニカ: Well, no. You're Chandler. Y'know, Chandler! (hits him on the arm) (そうね。あなたはチャンドラーよ。ほら、チャンドラーなのよ。[彼の腕をこづく])
前回の話で、恋人ピートと別れてしまったモニカは、自分にはもう一生恋人ができないわ、an old maid として死ぬことになるのね、と言っています。
「die+補語」の形で、「…(の状態)で死ぬ」という意味になります。
die young なら「若死にする」、die a martyr なら「殉教者として死ぬ」ですね。
an old maid について。
old maid は「未婚女性」を侮蔑的に表現した言葉で、日本語で言うと「オールドミス」に当たります。(「オールドミス」は和製英語です。)
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
old maid [noun] [countable]: an insulting expression meaning a woman who has never married and is not young anymore
つまり、「これまでに結婚したことがなく、もう若くない女性を意味する侮辱的な表現」。
侮辱的な表現と書いてあるので、人に対して使うのは避けるべき言葉ですね。
モニカは結婚願望の強い女性ですから、その侮辱的表現を自虐的に使っている、ということです。
それを聞いて、そんなことないよ、と否定するチャンドラー。
普通は「きっといい人が見つかって結婚できるよ」と言いそうなところですが、チャンドラーの答えは違いました。
多分、an old maid じゃなくて、an old spinster cook として死ぬことになるだろうね、と言っています。
spinster は「未婚女性、未婚婦人」という意味です。
LAAD では、
spinster [noun] [countable] old-fashioned
: an unmarried woman, usually one who is not young anymore and who seems unlikely to marry
つまり、「未婚女性、たいていはもう若くなくて、結婚しそうにないように思われる女性」。
cook は「コック、料理人」ですね。
モニカの職業が cook なので、モニカは、an old spinster cook つまり「年老いた未婚のコックさんとして死ぬことになるだろう」と言っていることになります。
ここで cook という職業を出したことで、チャンドラーは、old maid の maid を、職業の maid として捉えたことがわかります。
maid は「メイド、お手伝い、女中」。メイド喫茶のメイドです(笑)。
モニカは、「年老いたメイド、お手伝いさん」として死ぬって言ってるけど、君はコックなんだから、老いたメイドさんじゃなくて、未婚のコックとして死ぬことになるんじゃないの?と言っているわけです。
old maid 「未婚女性」と同義の spinster という言葉をちゃっかり入れた上で、職業を maid から cook に変えているのが面白いのですね。
old maid として死ぬわけじゃないよ、と否定しておきながら、「未婚のおばあちゃんのコックとして死ぬんだよ」と言っているわけで、全くフォローになっていない、ということです。
モニカの真剣な悩みを、ジョークとして茶化して和らげようとした、ということでしょう。
モニカも「それじゃ全然慰めになってないわよ」と言いたげに、皮肉っぽく、Thanks. と言っています。
チャンドラーのセリフ、Hey now besides, worse comes to worse, I'll be your boyfriend. について。
この部分、DVD英語字幕では、Besides, worse comes to worse... と書いてあります。
また、ネットスクリプトでは、Hey now besides, if worst comes to worst... と書いてあります。
チャンドラーの発音を聞くと、worse comes to worse と言っているように聞こえるので、上のセリフは、DVD英語字幕に合わせてみましたが、worse comes to worst の形が本来の形かな、と思います。
LAAD には、以下のように出ています。
if worse/worst comes to worst: if the situation develops in the worst possible way
例) If worse comes to worst, I can always get my old job back.
つまり、「もし状況が可能な限り最悪の方法で進展したら」。
例文は、「最悪の状態になったら、僕はいつでも昔の仕事を取り戻すことができる。」
英辞郎にも if worse comes to worst と、if worst comes to worst が同じ意味で載っています。
if worse comes to worst の語義を引用すると、
if worse comes to worst=《if (the) worst [worse] comes to (the) worst》 最悪[万一]の場合(には)、悪くすると、最悪の状態[ケース]になったら、まかり間違えば、下手をすると
いろいろなパターンを見た上で考えると、if worse comes to worst という「比較級(worse)」から「最上級(worst)」への変化が理屈として一番わかりやすい気がします。
今でも「より悪い」状態だけど、その「より悪い」状態が、「いちばん悪い、最悪の」状態になったら、なったとしたら、というニュアンスでしょうね。
それが決まり文句になって、今では、どちらも worst のバージョンも存在する、ということでしょうか。
どん底の状態がさらにどん底になったとしたら、みたいに、もう行き着くところまで行ってるけど、それがそれよりももっと悪い状態になった場合、のようなニュアンスが生まれるのかもしれません。
辞書の語義と比較して、チャンドラーのセリフの worse comes to worse という表現を見ると、「より悪い状態がより悪い状態になる」と言っていることになってしまい、何だか意味不明になってしまいます。
ですから、今回のセリフは、単なる言い間違いかもしれません。
また、決まり文句なので、worse や worst の違いにそれほど目くじらを立てなくても、意味は通じるから問題ない、ということかもしれません。
最悪の場合は俺がいるからさ、と慰めたつもりですが、モニカは笑い出してしまいます。
冗談だとしか思えないから笑ったのよ、というモニカに、俺は、boyfriend material じゃないの?と尋ねるチャンドラー。
material は「物質、素材」という意味なので、「人材、〜に向いている人、〜としての資質のある人」という意味にもなります。
boyfriend material は、「恋人としての資質がある人」ということですね。
まるで論外みたいに笑われたら、友達でもショックだよ、と言うのですが、だってあなたはチャンドラーだもの、と考える余地もないように笑うモニカです。
(Rach からのお願い)
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これちょっと面白いかもしれません。「Maid」は、実際に、「maiden」の短縮系です。つまりそれを「乙女」という。
以前に、使用人たちの中に、最下位(または、召し使い?)はふつう少女が占めていました。
それから、「maid(乙女の短縮系)」の一般的な意味は徐々に「maid(メイド)」になりました。
じゃ、チャンドラーの発言まで、モニカが「仕事」を考えていなかったでしょうと思います。ww
いつも通り、Rachさんの継続的な勉強はすばらしい。
(コメントに下手な日本語あってすみません。)
いつも貴重なご意見ありがとうございます。
maid は maiden の短縮形で、「召し使いはふつう少女が占めていた」から、乙女を指す言葉が召し使いの意味になった、という経緯には納得です。
「未婚のまま年老いて死んでいくなんてことはないよ」と言ってくれたのかと思ったら、「だって君は maid じゃなくて、cook だろ」と、仕事・職業の意味にすり替えたのが、チャンドラーらしいジョークだと思います。
モニカの職業が cook だから、人に奉仕する・サービスするような同類の職種の maid に絡めてジョークにできるわけで、cook と聞いて初めて「召し使いの意味の maid 」として言っていたことがわかる、というそのオチが見事に決まっていますよね(^^)
また、「継続的な勉強はすばらしい」とのお褒めのお言葉もありがとうございます。
Johnさんが、私の長〜いw 日本語の記事をきちんと読んで下さった上で、英語のニュアンスを的確な日本語で伝えて下さることは本当にすばらしく、いつも感謝しております。Thanks a million! :)
はじめまして!いつも楽しくブログを拝見させていただいております^^コメントは初です^^
ひとつ気になったのですがMonicaの台詞、"Would you look at them? "ではなく"Would you look at that?"の可能性はないですかね?(ネットを見る限りよく使われる言い回しみたいです。)
"them?"だったとして、Rachさん的に、ここで"Would you 〜?"を使うのは違和感ありませんか?いつも"Would you 〜?"(Would you LIKE〜?ではなく)を友人に使う時はどういうニュアンスなのか疑問です( ..)ご教示いただけますと幸いです!!
はじめまして。コメントありがとうございます。
いつも拙ブログを楽しく見て下さっているとのこと、大変光栄で嬉しいです(^^)
そのモニカのセリフですが、Netflix の字幕ではおっしゃるように、Would you look at that? と書かれているのですが、実際に発音している音声は that ではなく them と言っているように聞こえます。
DVD英語字幕でも them になっていました。
「ねぇ、あれを見て」というよりも、「ねぇ、あの仲良さそうにしている”彼ら・二人”を見て」というニュアンスなのだろうと思います。
あの二人を見て! ということならシンプルに Look at them. と言えるわけですが、この場合のように Would you...? を付けることで「〜して(みて)くれる?」のような、相手にその行為を促す感覚が入るように思います。
would には「意志」のニュアンスがありますから「〜ということをしようとしてみて」のような感じになるように思うわけですね。
Would you like...? 「〜してくれませんか?」というお願い・依頼ではなく、今回のように、友人に「〜してみて」というニュアンスで使う例としては、以下のセリフも該当するかと思います。
昨夜は一睡もできなかった フレンズ1-4改その3
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/452580506.html
モニカ: Would you look at her? She's so peaceful. (彼女を見てよ。すっごく穏やかだわ。)
上の説明でわかりにくいところなどございましたらまたお気軽にお尋ね下さいませ。
ご質問ありがとうございました。