2009年06月16日

ファイブオクロックシャドウ フレンズ4-1その2

シーズン3の終わりで、レイチェルとボニーのどちらを選ぶか迷っていたロス。
ロスが開けたドアはレイチェルのものでした。
レイチェルとキスをした後、「ボニーと別れてくる」と言ってボニーの部屋に入ったロスは、かなりの時間が経過した後、レイチェルの部屋に戻ってきました。
ロス: It's over. (終わったよ。)
レイチェル: Oh, was it awful? (まぁ。大変だった?)
ロス: Well, it was long. I didn't even realize how late it was, till I noticed the five o'clock shadow on her head. (They both start to laugh, then stop themselves quickly.) Anyway, she didn't want to stay. I called a cab. She just left. (そうだな、長かったよ。時間がどれほど遅いのか気付かなかったほどだよ。彼女の頭のファイブ・オクロック・シャドウに気付くまではね。[二人とも笑い出す。それからすぐに笑うのをやめる] とにかく、ボニーはここにいたくないって言うから、僕はタクシーを呼んだんだよ。彼女はたった今、出て行った。)
(They kiss.)
二人はキスをする。
レイチェル: I wrote you a letter. (あなたに手紙を書いたの。)
ロス: Ohh, thank you! I like mail. (He goes to kiss her again, but she turns away.) (あぁ、ありがとう! 手紙って好きだよ。[レイチェルに再びキスしようとするが、彼女は体をそらす])
レイチェル: (handing him the letter) It's just some things I've been thinking about. Some things about us. And before we can even think about the two of us getting back together, I just need to know how you feel about this stuff. ([ロスに手紙を手渡しながら] 手紙の内容は、私がずっと考えていたことよ。私たちに関することなの。そして、私たち二人がよりを戻すことを考える前に、この件についてあなたがどう感じるかをただ知りたいと思っているの。)
ロス: Okay. (He leans in to kiss her again, but she leans back preventing him from making contact.) Wow, it's-it's 5:30 in the morning. (Rachel laughs) So, I'd better get cracking on this baby. (わかった。[ロスは彼女にキスをしようと、彼女に体を傾けるが、ロスが接触してくるのを避けて、レイチェルは背中を反らせる] わぁ、(もう)朝の5時半だよ。[レイチェルは笑う] それじゃあ、僕はこのベイビーの解読に取り掛かった方がよさそうだね。)

ボニーとの別れ話が済んだようですが、とても時間がかかったとロスは言っています。
I didn't even realize how late it was, till I noticed the five o'clock shadow on her head. について。
これは、彼女の頭に five o'clock shadow があることに気付いて、今がどれほど遅い時間かわかった、という意味です。

研究社 新英和中辞典では、
five o'clock shadow=[通例 a 〜] (朝剃ったひげが伸びて)夕刻に目立ってくるひげ
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
five o'clock shadow [noun] [singular] : the dark color on a man's face where the hair has grown during the day
つまり、「日中に毛が伸びた男性の顔の濃い色」

日本語ではこれにぴったり該当する言葉が存在しないので、「ファイブ・オクロック・シャドウ」という英語そのままのカタカナ語が使われることもあるようです。
昔、テレビのサスペンスドラマを見ていたら、死体にファイブ・オクロック・シャドウがあるかどうかで死亡推定時刻を判断しているシーンが出てきました。
登場人物の女性がファイブ・オクロック・シャドウという言葉を知らなくて、「ファイブ・オクロック・シャドウというのは…」と男性(古谷一行さんだったような…)が説明するセリフもあったので、この言葉は私の記憶に残っていました。
ですから、このロスのセリフを聞いた時に、私もプッと笑えてしまったのです。

本来の意味は、朝出掛ける前に剃ったひげが、夕方の5時に伸びてきて、ひげの部分がうっすら黒くなる、ということですね。
ボニーの場合は、前日の夕方(?)に頭を剃って、それが次の日の早朝5時くらいに頭の部分がうっすら黒く(あるいは一休さんの頭のように青く?)なった、ということのようです。
その後のロスのセリフにもあるように、今は朝の5時30分なので、ファイブ・オクロック・シャドウの five o'clock という言葉もぴったりで、さらに笑えてしまう、というところです。

five o'clock shadow という言葉のハマリ具合と、うっすら影ができたボニーの頭を想像して、二人はプッと笑ってしまうのですが、その後、「彼女にはつらい思いをさせたんだから、こんなことで笑っちゃいけない、いけない…」という風に、お上品に口を押さえて首を振るロスが面白いです。

ボニーとも別れたことだし、やっとこれで誰にも気兼ねなく愛し合える…と思ったはずのロスですが、レイチェルは手紙をロスに差し出します。

a letter も mail も同じような意味ですが、a letter は可算名詞、mail は不可算名詞ですね。
mail は集合的に「郵便物」を表すという感覚です。
手紙を書いた、というレイチェルに対して、I like it. ではなく、I like mail. と答えたロスですが、「手紙というもの、手紙類は好きだよ」「手紙っていいよねぇ」と抽象的な話にすり替えている感じがします。
キスしてこれから盛り上がろうとする時に、レイチェルがさっと出した手紙ですから、何かいやな予感がしたのでしょうね。
素直に「そんな手紙を書いてくれてありがとう」といえずに、「ありがとう。手紙というものをもらうことは嬉しいよ」と逃げた感じがしました。

レイチェルは、二人のことについていろいろここに書いてある、と説明し、あなたがその手紙を読んでどう感じるかを知りたいと言います。
キスしようとするロスをレイチェルは拒んだので、ロスもまずはこの手紙を読まないと始まらないんだな、ということに気付きます。
僕は君のためにボニーと長い別れ話をしてきて、もう朝の5時半なのに、と言ってみせるのですが、レイチェルは強硬姿勢を崩しません。

get cracking のような、get doing の形は「…し始める」という意味ですね。
Let's get going. 「出発しよう。」というフレーズもよく使われます。
crack は「暗号を解読する、難問を解く」。
フレンズ3-13その31 で、
チャンドラー: I can't believe she cracked your code! (レイチェルがジョーイの暗号を解いたなんて信じられない!)
というセリフもありましたね。


(Rach からのお願い)
このブログを応援して下さる方は、下のランキングサイトをクリックしていただけると嬉しいです。
人気ブログランキング
にほんブログ村 英語ブログ
皆様の応援クリックが、とても励みになり、ブログを続ける大きな原動力となっています。心より感謝いたします。
posted by Rach at 13:27| Comment(2) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
a letter も mailの違いから、ロスの微妙な思いを知る    久しぶりに感心いたしました  
これぞcracking ですね!
以前、松本清張の「ある小倉日記伝」の解説で阿刀田高さんが解説されたものが印象に残っています
「ある小倉日記伝」のラスト   この事実を知らずに死んだのは不幸か幸福かわからない・・・・とあります。
私など何気なく読んでしまったのですが 本来なら 幸か不幸かわからない、、、とするのが一般的な結び
それをあえて不幸と幸福を、置き換えたのが清張の企みだと力説されるのです。
つまりある一方を置き換えまでしての強調したい清張の想いがあるというのです。
これには全く感心しました    清張にも、それを看破した阿刀田さんにも
今回の記事、、、、それと全く同じものを感じました。
Posted by かつての読者 at 2009年06月16日 21:01
かつての読者さんへ
解説をお褒めいただきありがとうございます。
あくまで私がそう感じただけなので、絶対というわけではないのですが、ロスの言う mail という言葉は、「レイチェルがくれた手紙」そのものを指していない気がした、ということです。

阿刀田さんの解説は、やはり作家ならではの鋭い視点が感じられますね。優れた作品を読んだ後、さらにその良さを再認識させてくれる素晴らしい解説を読むことができると幸せな気持ちになりますね。

私の解説はそのレベルには到底及びませんが、これからも私なりに頑張りたいと思います。
Posted by Rach at 2009年06月18日 11:59
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。