チャンドラーとジョーイの部屋。ジョーイとチャンドラーは2人の男性(トニーとピーター)にエンターテインメント・センターを見せているところ。
トニー: Wow! That's ah, that's pretty nice. (わぁ! それ[その棚]はかなりナイスだね。)
ジョーイ: "Pretty nice"? (かなりナイス、だって?)
チャンドラー: You'll have to pardon my roommate. He wanted to marry this. (俺のルームメートのこと、許してやってくれ。彼はこの棚と結婚したかったんだ。)
トニー: We don't have 50 bucks. But would you be willing to trade for it? We got a canoe. (俺たちは50ドルを持っていない。でも、君らは、交換[トレード]するつもりはある? 俺たちはカヌーを持ってるんだ。)
(Joey jumps up in excitement and without turning around Chandler holds out his hand stopping him, and ushering him back into his seat. Joey sits down, dejected.)
ジョーイは興奮のあまり飛び上がる。そして(後ろにいるジョーイを)振り返ることなく、チャンドラーは手を伸ばし、ジョーイを止め、彼に席に戻るように導く[促す]。ジョーイはがっくりして座る。
チャンドラー: Y'know, I, I really don't think we need a canoe. (ほら、俺たちにはカヌーは必要ないって本当に思うんだ。)
トニー: You gotta take the canoe. (君はそのカヌーを受け取らないといけない[是非カヌーを受け取ってくれ]。)
チャンドラー: All right, just, just take the entertainment center. And then when you get home, throw the canoe away. (わかった。ただ、ただそのエンターテインメント・センターを受け取れ。それから家に帰ったら、そのカヌーを捨てろ。)
ピーター: We're not throwing it away. I built that canoe. (starts to leave as Tony chases after him) (俺たちはカヌーを捨てたりしないぞ。そのカヌーは俺が作ったんだ。[出て行こうとする。トニーは彼の後を追いかける])
ジョーイ: (to Peter) Good for you! ([ピーターに] よくやった[でかした、えらいぞ]!)
50ドルに値下げされた広告を見て、棚を買いたいという人が現物を見に来ています。
棚を見て、pretty nice と言ったら、ジョーイが怒っていますね。
pretty はここでは副詞で「かなり」という意味。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
pretty [adverb] (informal)
1. fairly, but not completely
2. very (SYN: quite)
という意味が出ています。
「(完全にとは言えないが)かなり」のニュアンスが 1. に当たりますね。
nice は日本語にもなっている「ナイス」の感覚で「良い」という意味。
LAAD にも、
nice: good, pleasant, attractive, or enjoyable
という語義が載っていて、やはり良い意味であり褒め言葉なのですが、「最高」と絶賛、褒めちぎるほどの意味はないのかもしれません。
この棚を作ったジョーイとしては、もっとすごい言葉で褒めて欲しかった、ということでしょう。
私もよくわかりませんが、Great! Excellent! Cool! Awesome! Fabulous! Outstanding! とかなら納得したのかなぁ?
nice と言われてもあんまり嬉しくない、という話は、フレンズ1-13 にもありました。
ちょっとしたアクシデントで、レイチェルの裸の胸を見てしまったチャンドラー。
もう胸の話はやめて、というレイチェルに、
チャンドラー: You know, I don't know why you are so embarrassed. They were very nice boobies. (ねぇ、どうしてレイチェルがそんなに恥ずかしがってるのかわかんないよ。とってもナイスな[いい]胸[おっぱい]だったよ。)
レイチェル: "Nice"? They were "nice"? I mean, tha... that's it? I mean, mittens are "nice." (「ナイス[いい]」? 胸はナイスだった? つまり、その…それだけ? だって、ミトンはナイス、って言うでしょ。(そんな感じなの?、その程度のレベルなの?))
私の胸を目撃しておいて、感想は「ナイス、いい」だけなの? 「そのミトン、いいねぇ」みたいなレベルの nice という形容しか出てこないわけ?みたいな怒りですよね。
pardon は、I beg your pardon. 「ごめんなさい。すみません。」のフレーズで使われる言葉ですが、動詞では「容赦する、(人・罪などを)許す、勘弁する、大目に見る」という意味になります。
相手は一応、pretty nice と言って褒めたのに、その発言に不満そうなジョーイのことを、「うちのルームメートの発言、態度をどうか許してやってくれ、大目に見てやってくれ」と言っているのですね。
その後、He wanted to marry this. と言っています。
「彼はこの棚と結婚したいと思っていた」と過去形が使われているのは、その彼の熱烈な想いに反して、これを売らなければいけなくなったんだ、だから結婚したくてもできない、というニュアンスも出ています。
結婚したいほど、この棚に惚れ込んでいたんで、月並みな褒め言葉じゃ納得しないんだよ、という感じです。
相手は50ドルを持っていないので、物々交換、トレードはどう?と提案しています。
willing to do は「…するのをいとわないで、…してもかまわない」というニュアンスです。
研究社 新英和中辞典では、
willing=【P】〔+to do〕(あまりやりたくないことでも求められると)進んで〈…〉して、〈…するのを〉いとわないで (比較:be ready to do は「いつでもすぐ〈…する〉」の積極的な意であるが、be willing to do の場合は「本当はしたくないがする」、「…してもかまわない」の意で積極的な意味はない)
LAAD では、
willing [adjective]
1. prepared to do something, or having no reason to not want to do it
willing to do something
例1) How much are they willing to pay?
例2) I'm perfectly willing to wait here.
つまり、「何かをする準備・覚悟ができている、またはそれをしたくないという理由を持っていない」
例文は、1. 彼らはいくら払うつもりがありますか?[いくらなら払っていいと思っていますか?]
2. 私は完全にここで待つつもりがあります[待つことを全く厭(いと)わない]。
「…しても構わない」と思っているだけで、「積極的に…したい」という意味ではない、ということですね。
ですから今回のセリフも、チャンドラーたちが当然50ドルで買って欲しいと思っているのを承知で、50ドルの手持ちがないのでトレードならどうかなぁ?、もしトレードしよう、って俺たちが言ったら、その話に乗る気はあるかな?、別にトレードでも構わないと思えるかな?と言っているのでしょうね。
トレードの話を出した後、俺たちはカヌーを持っている、とトニーは言います。
カヌーという言葉を聞いて、ジョーイが敏感に反応するのがおかしいです。
これは実際にこの場面を見ていただけるとすごく面白いシーンなのですが、チャンドラーはジョーイの姿が全く見えていない状態で、カヌーの言葉にジョーイが反応したのを確信し(後ろでジョーイが動いた気配を感じたのかもしれませんが)、ジョーイの方を全く見ないまま、「まぁ、ここはひとまず落ち着け!」というように、ジョーイを手で制します。
ここでジョーイが「カヌー! それ楽しそう!」とか言ってしまうと、50ドルがカヌーに変わってしまうので、チャンドラーはそれはどうしても避けたかった、ということです。
I really don't think we need a canoe. は、really don't の語順になっていますので、really は not を強調しています。
「カヌーを欲しいとは思わない」つまり「カヌーは欲しくない」ということを強調している、全然欲しくない、全く必要ない、という感じですね。
その後、トニーは怒ったような顔で、You gotta take the canoe. と言っています。
gotta は got to または、have got to の略で、ここでは、You have to take the canoe. という意味です。
「君はカヌーを受け取らないといけない」というのは、「カヌーを要らないとは言わせないぞ」と有無を言わせない感じが出ているように思います。
このセリフで、チャンドラーも観客も、自分には必要ないカヌーを何とか人に押し付けようとしているトニーの本音が見えます。
その相手の高圧的な態度に対して、とりあえずはまず棚を受け取って、家に帰ってからそのカヌーを捨てろ、とチャンドラーは言っています。
それを聞いて、今まで黙っていたもう一人の男性が、「そのカヌーは俺が作ったものだ!」と言って、怒って出て行ってしまいます。
ジョーイがその彼に向かって、ねぎらい、または励ましの言葉をかけていますね。
同じように一生懸命手作りで作ったものを、ルームメイトに邪魔者扱いされているもの同士、気持ちが通じ合った、という感じです。
アメリカ人は、DIY = Do It Yourself 「自分でやろう、自分でやりなさい」、日本で言う「日曜大工」の好きな人が多いですね。
そういう背景があるために、自分で組み立てるイケア(IKEA)のような家具店が人気にもなるわけです。
(フレンズ3-23その4 でイケアについて触れています。)
今回の棚とカヌーのトレードの話は、ルームシェアをしている人たち、特に男性2人のルームシェアにありがちな話、というところでしょうか。
(Rach からのお願い)
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