2009年07月07日

分詞構文の感覚を掴む フレンズ4-1その8

フレンズ4-1その7 のコメント欄 で、分詞構文に関するご質問をいただきました。
分詞構文はフレンズのようなドラマで頻出しますので、今回は、ご質問に対する私の考えを、記事の形で投稿します。

問題の分詞構文が出てくるセリフはこちら。

レイチェル: (to Ross) I just feel bad about all that sleep you're gonna miss wishing you were with me! ([ロスに] 私と一緒にいられたら、と願いながら、あなたが眠れない夜を過ごすことになるのが気の毒だわ。)

こういう分詞構文の入ったセリフを、感覚的に理解できるようになるにはどうすればよいか?というご質問でしたので、私はこんな感じで捉えている、ということを以下に書いてみたいと思います。

上に書いたセリフを文字として見ていると、miss wishing つまり、miss doing という形に見えますよね。
私も上のセリフを解釈する時に、miss でいったん文章が切れているのか、もしくは、miss doing の形なのかを確かめようと、DVDを見直してみたんですよ。
音声は、...all that sleep you're gonna miss / WISHING you were WITH me! みたいな感じで、私が大文字で書いた部分が強く発音されているようでした。
miss と wishing が繋がっているようには聞こえず、miss でいったん、一瞬、切れて、wishing... が続いているように聞こえたので、この部分は「情報を付け足す形の分詞構文」だろうな、と思った、ということです。

wishing の前に小休止があること、そして文章の意味を考えると、wishing の前にコンマを付けたいところですが、I just feel bad about の about の内容が、"all that sleep you're gonna miss, wishing you were with me" 「私といられたらと願いながらあなたが miss することになるその眠り全て」になるので、この文章でコンマを入れてしまうと、主文の主語である I (私=レイチェル)が wishing するように見えてしまいます。
ですから、私も上のセリフではあえて wishing の前にコンマを入れなかったのです。

いただいたコメントでは、「分析的に読んだら文の構造も見えて意味も理解できる」とのことでした。
それはとても大切なことですし、また非常に良いことだと思います。

miss wishing の形だと解釈すると、you're gonna miss wishing... with me で後ろの文章が完結してしまいます。
後ろの文章で欠けている要素である目的語が all that sleep として前に出る形になっているはずなのに、後ろの文章で目的語が欠けていないことになり、all that sleep と you're gonna... 以下が繋がりません。
また、miss doing の意味を「…することができなくなって残念である」「…しそこなう」という意味で解釈すると、「私と一緒にいられたらと思うことができなくなって残念である」「私といられたらいいのにと願いそこなう」となって、意味も通じません。
レイチェルは「こんな風に喧嘩別れして、後から私を恋しく思って後悔することになるのよ」と言いたいはずですから。

そして、今度はそれを、ナチュラルスピードで聞いたまま理解することについてですが、それは、英語を常に聞いた順番に前からイメージしていく、ということが大切になってきますね。
聞き取りのヒントは上にも書いた、「miss と wishing の間が一瞬途切れている」という感覚です。
特に、wishing の部分をかなり強く発音していて、「…ということを願いながらね!」と本当に言いたいことを最後に付け足した感じが出ているように思います。
そういう「付け足した感じ、補足説明のニュアンス」を感じ取れるかどうか?が、分詞構文を掴める鍵になるはずです。

ちなみに、コメント欄では、if you wish you were with me と解釈したように書かれていますが、私は if 「もしも…ならば」と解釈したのではなくて、「…しながら」という付帯情況を表すニュアンスで解釈しました。

付帯情況を表す分詞構文については、フレンズ2-24その5 のコメント欄 で触れていますが、もう一度その内容をここで再掲させていただきます。(私の説明文も過去コメント欄に書いたものと全く同じになりますが、ご了承下さい。)


(フレンズ2-24その5 のコメント欄 での説明)

数研出版「基礎と完成 新英文法」の p.385 に以下の説明が載っています。
以下に引用させていただきます。

<付帯情況>「AしながらBする」:AとBの動作が同時に起こっており、AはBの動作の一部になっている場合:Aを分詞構文にする。
Walking on tiptoe, I approached the door. 「つま先で歩きながら、私はドアの方へ近づいた。」
He went out, slamming the door. 「彼はドアをバタンと閉めて、出て行った。」

「付帯情況」を示す分詞構文では、as を使って次のようにいうこともできるが、今度は、付帯的動作Aに力点を置いた言い方になる。
I walked on tiptoe as I approached the door. 「私はドアの方へ近づいて行くとき、つま先で歩いた。」


上で引用した部分で、as を使った書き換えの説明が興味深いです。
付帯情況の分詞構文では、as を使って書き換える場合、-ing の方に as をつけるのではなく、完全な文になっている方に as をつけるということです。
ただそうすると、上の説明にもあるように、力点を置く場所が変わってしまうので、元の文とニュアンスが違ってしまいますね。

時を表す分詞構文だと While, When を使い、原因・理由を表す分詞構文だと As, Because などを使って書き換えられるのですが、「…しながら、…して、…する状態で」という付帯情況の分詞構文は、無理に書き換えようとするとニュアンスが異なってしまうので、完全にイコールの書き換えをすることは難しい、ということのようです。
逆に、「…しながら」と同時に起こっている動作の一部を表現するには分詞構文が最適だ、ということにもなりますね。

ちなみに、上の例にある、"He went out, slamming the door." のような分詞構文は、フレンズのト書きによく出てくるパターンだと思います。

(再掲はここまで)


フレンズでは、セリフでもト書きでも、分詞構文が出てくる時は「付帯情況」を表すことが多いように思います。(「ほとんど付帯情況を表す」と言ってもいいくらいかと)

ご質問のコメントにあった、「(分詞構文は)すぐに分からないところに、分かりにくさのポイントがあるような感じがします」というお話はまさにその通りで、それが我々ノンネイティブにとってはある意味「壁」なのですが、そのあいまいさが分詞構文の特徴でもあり、便利なところでもあるのですね。

越前敏弥さんが書かれた、越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書) の p.60 「動名詞・分詞」のまえがきに、次の説明があります。

分詞構文については、時を表すのか理由を表すのかなどとよく迷うのですが、どれかひとつの意味に限定したければ、書き手も when だの because だの if だの、接続詞を使って言えばよいわけですから、そもそも分詞構文というのは意味があいまいでもかまわないときに使われることが多いのです。

分詞構文はそういうあいまいなものなんだ、と納得することが大事ですね。
(ちなみに、越前さんのこの本、とっても面白いですよ!)

逆に、こういう分詞構文に慣れてくると、自分で接続詞を何にすればいいかなぁ?などと考えることなく、分詞構文を使ってライティング、スピーキングができるようになってきます。
意味が限定され過ぎない分、分詞構文の方が便利ということにもなります。

わかりにくい分詞構文が出てきた場合は、音だけを聞いてそれが理解できなかったことは、それはしょうがないとあきらめましょう。
分詞構文が登場するようなセリフは、感情のままに話していて早口のものが多いですからね。

次に、そのセリフを、文字になった文章として確認し、その構造をしっかり把握していく…。
その積み重ねがあって、分詞構文とはこういうものだという「感覚」が掴めてくると、そのうち、音だけでも聞き取れるようになる、という流れになるかと思います。

フレンズにはト書きを含めて、分詞構文がよく登場します。
そういうものにたくさん触れて、分詞構文の感覚を養っていただければ、と思います。


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posted by Rach at 07:10| Comment(6) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
どうも丁寧なレスありがとうございます!

おかげさまで、付帯情況の分詞構文は、「同時に」さまざまなことが起こっている様子を生き生きと示すための表現方法なんだなと見えてきました。そこが重要なのに、外してしまってました。また似たような表現が出てきたときは、注意しておきます。レイチェルは要マークですね^^;

ただ、このセリフは、意味が取りにくいのも確かですね。
I feel bad aboutなんて言ったら、レイチェルは怒ってるんだから、「私は〜のことで気分が悪い」と普通なら理解するところなのに、「私は〜のことで気の毒な気持ちになる」と意味を取らないと、ここは通じないです。それだったら、I feel sorry aboutにして欲しいと脚本家に文句を言いたくなるんですね。そのほうが皮肉として分かりやすいと思うから。

about all that sleep you're gonna miss もall / thatと切れているのかな、でもそれだとsleepと原型になっているのはおかしいなというように感じました。だから、ここで切るのは適切じゃないけれど、フレンズのことだから、スクリプトのタイポかもしれないとか考えるんですね。それでこんがらがってしまいます^^;

些細な点ですが、訳し忘れがあるので、ちょっと指摘です。
all that sleep you're gonna missの"all"です。
訳としては、「眠れない夜を過ごす」でなくて、
「過ごし続ける」「重ねる」と訳出したほうが適切と思うのですが。
Posted by ひさっぷ at 2009年07月09日 21:57
ひさっぷさんへ
こちらこそお返事ありがとうございます。

確かに、feel bad about という表現はあいまいですよね。
feel bad については以下の記事で触れたことがあります。(ひさっぷさんはシーズン3をまだ見ておられないんでしたね? ネタバレになるのなら、そのシーズン3の記事はまだ読んでいただかなくて結構ですので)
フレンズ3-11その5
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388471110.html

そのコメント欄にも書いたのですが、feel bad には、feel sorry のような意味もあるようです。他にもいろいろな意味があって、どういうニュアンスかは、その文脈に合わせて解釈していかないといけないようですね。

all that sleep は名詞ですね。sleep は「睡眠、眠り」という意味では不可算名詞になります。all は単数名詞にかかると「全部の、全…」という意味になります。
ですから、all that sleep you're gonna miss は、「あなたが miss することになる、その全ての眠り」みたいな感じでしょうか。
意味としては、「眠れない夜を過ごし続ける、眠れない夜を重ねる」ということになると思いますが、sleeps という可算名詞の複数形ではないため、睡眠を数としてはカウントしていないので、漠然とした表現にするのも一つの手かな、と思いました。
Posted by Rach at 2009年07月10日 07:26
お返事が遅くなりました。
3-17の その2 
でも同じ議論がありますね。
自分自身で、feel badが、「気分が悪い」のか「申し訳なく、気の毒に思う」のか、いろいろ調べてみたんですが、これといった決定打がないですね。

ただ、英辞郎とここのサイトを調べた限りでは、feel bad の後の部分が長々と続く場合、だいたいは「申し訳なく、気の毒に思う」という意味になってますね。とりあえず、feel bad が出たら「申し訳なく、気の毒に思う」と理解して、それで意味がおかしい場合は「気分が悪い」とすれば、話しているのについていけそうです。


ネタバレについてですが、僕自身は別に大丈夫です。フレンズを英語でつっかえることなく聞くのが目標だし、フレンズは推理モノのように展開を先読みして当てるところが、楽しむポイントでもないから、あまりネタバレで見る気なくなったという気持ちにはならないですね。(とはいえ、ネタバレがイヤだという方もいるので、ネタバレやるつもりはないですよ、当たり前ですが)

今でもついていくのが精一杯だし、後の展開を知っていたほうが、むしろフレンズの他の部分を楽しめるんですね。そのせいか、一度目の鑑賞よりも、二度目のほうが、面白いです。ロスの口ぐせとか動きみたいなディテールが、よく分かって楽しめるんです。二度目の鑑賞でロスのファンになりました^^;
Posted by ひさっぷ at 2009年07月15日 19:25
ひさっぷさんへ
feel bad の意味を判断するための明確な判断基準はない、という気がしますね。後に続く前置詞などで意味が特定できるわけでもないようです。feel sorry の意味で使われることが多く、その feel sorry 自体も意味の幅が広いですから、前後の流れや文脈で判断するしかないようですね。

ネタバレなしの方がドラマを新鮮に楽しめる、ということもありますが、私がネタバレを避けようとするのは、聞こえてくる単語を真っ白な状態で推測できるように、ということが大きいかもしれません。話の内容や展開を知っていると、その知識を使ってセリフを推測することができてしまいます。英語の試験や実際にネイティブと話をする場合には、初めて聞く話を聞き取ることになるわけで、その訓練の一環として、できるだけ予備知識のない状態で、シーンを見て英語の音を聴くだけで、どこまでセリフが理解できるか?が、自分の英語力を確かめる大きな指標になると思うのです。何の予備知識もない状態で、ネイティブと同じように普通に見ていて、セリフが聞き取れた!という喜びを知って欲しいからですね。「内容を知っていて、英語が聞き取れる」のと、「全く内容を知らないのに、英語が聞き取れる」ことの間には、大きな差がある、ということです。

「後の展開を知っていたほうが、むしろフレンズの他の部分を楽しめる」というお話はよくわかります。私もブログを書くために、今、二度目を見ているわけですが、一度ファイナルまで通して見た後で、また最初から見ると、いろんな発見があって楽しいですね。ロスは確かに、二度目に見ている時の方がより魅力的に見えます。一回目はどうしても、チャンドラーのジョークや、ジョーイのボケぶりにばかり目が行ってしまって、ロスの魅力に気づきにくいのかもしれませんね。
Posted by Rach at 2009年07月16日 07:15
今日初めてこのブログを読みました。分詞構文の捉え方、全く同感です。私も分詞構文に出会うたびに「〜しながら?〜なので?どっち?どっちにも当てはまる?」って感じてました。しかし、慣れてくると「あいまいな感じ」が、すーっと入ってきました。そして自分が英文を書くときは接続詞よりも分詞構文を自然と使うことも増えました。

ああ、なんか嬉しいな、自分の捉え方と同じ!よかった。

これからも読みますのでブログがんばってください!!
Posted by smile at 2009年08月27日 02:13
smileさんへ
コメントありがとうございます。
分詞構文は、数をこなして慣れていくことで、だんだん感覚が掴めてきますよね。私もフレンズで大量の分詞構文に触れたお陰で、自分で書く時に分詞構文を使いこなせるようになった気がします。すごく英語っぽい表現なので、それを使っているとネイティブに近づけた気がして嬉しくなります。

こちらこそ、私と同じ捉え方の方がいて下さって嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。ブログ、がんばります。
Posted by Rach at 2009年08月27日 08:03
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