フレンズ1-8その3 のコメント欄 で、ご質問をいただきました。
興味深いご質問だったので、今回、私なりの考えを、記事の形で投稿します。
問題の部分は以下。(日本語訳は、過去記事のものをそのまま使っています。)
自分はゲイではないと言いながらも、どうせデートをセッティングするのなら、ローウェルじゃなくて、ブライアンにして欲しかった、というチャンドラー(笑)。
チャンドラー: The point is, if you were gonna set me up...I'd like to think it'd be with somebody like him. (俺が言いたいのは、もしデートをセッティングするつもりだったなら、彼みたいな男を選んで欲しかったって思うだけだよ。)
同僚: I think Brian's a little out of your league. (ブライアンはちょっと高嶺の花なんじゃないの?)
チャンドラー: Excuse me. You don't think I could get a Brian? Because I could get a Brian. Believe you me.... I'm really not. (ちょっと待て。俺にはブライアンを落とせないとでも? ブライアンみたいな男なら、ものにできるさ。本当だぞ。…[気まずくなり] 俺はゲイじゃないからな。)
最後のチャンドラーのセリフについて、以下の3点のご質問でした。
1. Brianに a がつくのはなぜ
2. この場合の because の使われ方は?
3. belive you me とは、誰を信じろということでしょうか?
まず、1. ですが、a Brian で「ブライアンのような人」という意味ですね。
研究社 新英和中辞典では、
a=[固有名詞につけて] …のような人[もの]
a Newton ニュートンのような人[大科学者]
また、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では以下のように説明されています。
a:
10. used before a name to mean having the same qualities as that person or thing
例) He's like a modern Dickens.
「その人やそのものと同じ品質、クオリティーを持っていることを意味するために、名前の前に使われる。」
例文は、「彼は現代のディケンズのようだ。」
上のやり取りの最初のセリフに、somebody like him 「彼みたいなやつ」という表現が出ていますが、somebody like Brian = a Brian ということですね。
私が現在解説している、フレンズ4-2 にも、固有名詞に a がついたものが登場していました。
ブログの解説では飛ばしてしまったのですが、go out with a Chip Matthews という表現になっていて、これも「チップ・マシューズ”みたいな人”とデートする」という意味です。
a のついていない Brian だと、ブライアンその人を指すことになりますが、a Brian と表現することで、「ブライアンみたいな人、ブライアンレベルの人、ブライアンくらいの男」、つまり同僚が「チャンドラーには高嶺の花だ」と思っているレベルの男を、俺だってやる気になればゲットできるさ、というニュアンスになります。
私が過去記事でつけた日本語訳は、「俺にはブライアンを落とせないとでも? ブライアンみたいな男なら、ものにできるさ。」となっていますが、正確に言うと、どちらも「ブライアンみたいな男」と訳さないといけませんでした。
ブライアンが落とせる、と言っているのではなくて、「ブライアンレベルのいい男」でも落とせる、という感じです。
2. の because の使われ方について。
これはやはり、理由を述べる「なぜなら、というのは」ですね。
You don't think I could get a Brian? Because I could get a Brian. を日本語に直訳すると、「俺がブライアンレベルの男をゲットできない、って思ってる? なぜなら、俺はブライアンみたいな男を(その気になれば)ゲットできるからね。」になってしまうでしょうか。
こういう直訳だと、前後の文章の結びつきがしっくり来ません。
チャンドラーの You don't think...? 「君はそう思わないんだな?、思ってないのか?」というセリフには、どこか相手に挑みかかっている感じが出ています。
君がそんな風に思っているなんて信じられないよ、僕は君とは逆の考えだよ、という感情がそこにはこもっています。
You don't think...? という言葉そのものに、「君はそう思ってるみたいだけど、僕の考えは違う」というニュアンスが入っているので、「なぜ、僕が君の考えに不満を持っているかと言うと、今、君が言ったことにケチをつけているかと言うと」の理由の説明として、Because 「なぜなら」僕は、彼くらいの男を(その気になれば)ゲットできるからだよ、と説明している流れになります。
3. Believe you me. について。
まず、Believe me. というのはよく聞くフレーズですね。
直訳の通り、「私を信じて」ということで、「本当だよ、確かだよ、嘘じゃないよ、信じてくれよ」というニュアンスです。
そして、今回の Believe you me. というのも、意味としては、Believe me. と同じです。
私の持っている英和辞典には載っていませんでしたが、英英辞典には載っていました。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
(spoken) believe (you) me:
used to emphasize that something is definitely true
例) There'll be trouble when they find out about this, believe you me!
つまり、「何かが確かに本当であると強調するために使われる」。
例文は、「彼らがこのことに気付いたら大変なことになる。本当だよ(信じて)。」
ちなみに、believe (you) me というカッコ表記は、believe me または believe you me の形で使う、つまり、you は省略可能だ、ということです。
Macmillan Dictionary にも載っていました。
believe (you) me: (spoken)
used for emphasizing that what you are saying is true, especially when you are warning someone about something
例) All this is going to cause a lot of trouble, believe you me.
つまり、「自分が言っていることが本当だと強調するために使われる。特に誰かに何かを警告している時に」。
例文は、「このこと全てはたくさんの困難を引き起こすことになるぞ。信じてくれよ(本当だぞ)。」
ということで、Believe you me. = Believe me. だということになります。
意味としてはそういうことですが、ではどうしてこういう奇妙な形になっているのかを、ちょっと私なりに考えてみたいと思います。(あくまで私の推測に過ぎませんが)
私の考えでは、以下のように変化していったように思うのですが、どうでしょう?
Believe me. という普通の命令文
↓
そこに主語の You をつけて You believe me. という、より強い命令文にする
↓
それをさらに強調のために倒置にしたものが Believe you me. となる
まず、命令文に主語の You をつける件について。
数研出版 「基礎と完成 新英文法」の p.72 の「命令文」に以下の説明があります。
命令文では、相手(=2人称)に命令していることは場面から明らかなので、主語の You は省略されるのが普通である。しかし、相手に警告したり、複数の相手の、特に誰に向けられた命令であるかを明確にするために、主語を表すことがある。その場合、you を強く発音する。
相手に警告する場合、しばしば強い<いらだち>の感情が含まれる。
「強調のための倒置」については、大西泰斗先生の ハートで感じる英文法 会話編 の Lesson 4 「倒置−感情を乗せる−」の回で説明されていました。
「倒置の呼吸」、つまり、倒置という「基本語順から逸脱した形」を取ることで、「感情の高まり」という「特別なニュアンス」を与える、というご説明でしたね。
このブログでは、以下の記事で「倒置」について触れています。
先のエピソードに当たるので、ネタバレになる場合は無理に読んでいただかなくて結構ですが、参考までに挙げておきます。
フレンズ2-14その21 と、フレンズ3-17その6
ということで、Believe you me. はパッと見、まるで目的語を2つ取っているかのように見える不思議な形ですが、Believe は目的語を2つ取りませんので、多分、上に書いたように、You believe me. が倒置になった形、それが、Believe you me. なのだろうと思うのですが…(確信はありません)。
意味は、Believe me. と同じ、もしくはそれをさらに強調したもの、ということになるでしょう。
(Rach からのお詫び)
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Rachさん、ありがとうございます。やっぱりちゃんと理由があるのですね。私も調べたつもりですが、You don't thinkに挑むようなニュアンスがあるなんて全然気づきませんでした。aや believe you meは、誤植かも…なんて、あやうく納得するところでした。
Rachさんのデータベースってすごいですね。
私は一度目にしたことでも目にしたことさえ忘れちゃうので、Rachさんがお書きになってるようなパソコンにメモというのをすればいいのかな。
でも、そこまでのデータの蓄積がないしな…
でも、楽しいので、このブログがある限りがんばります(*^^)v
早速のお返事ありがとうございます。
実際、ネットスクリプトには、誤植やタイポ(タイプミス)は結構あるようなんですよ。ですから、その可能性も常に考えなければいけませんよね。
拙著に書いた「読んだ本をパソコンにメモする」という話ですが、それもあまりそれにばかり気を取られていると、メモすることに一生懸命になり過ぎてしまう恐れもあります。入力することが最終目的になってしまってはいけませんし。
私の場合は、本を読んで「おや?」と思ったことや、その時に思ったことなどを、つらつらとパソコン内のメモ帳に書きなぐっている、という感じですね。自分へのメモであり、後で検索できればいいだけですから、あまり丁寧には書きません。
今回のことは、私がこのブログを4年間やってきて、そういう調べものに慣れている、というだけのことですね。拙著の終わりにも書きましたが、「こういうことを調べたい時は、まずこれから当たってみよう」という目途が付けられるようになってきた、ということでしょう。
「楽しいので」と言っていただけるのが、ほんとに一番嬉しいですね。元々、語学を学ぶことは楽しいことであるはずなのに、苦行のように学んでいる人が多いことをいつも残念に思っているからです。私も、上のようにいろいろ調べ物をしている時は、時間を忘れるほど楽しいんですよ。だからこのブログを4年も続けて来られたのだと思います。
私も頑張りますので、Jumさんも楽しくマイペースで続けて下さいね。