シーズン4 第3話
The One with the 'Cuffs (チャンドラー監禁)
原題は「手錠の話」
前回のエピソード フレンズ4-2 の最後のシーンは、家財道具が盗まれて、もぬけの殻になったジョーイとチャンドラーの部屋の真ん中に、ただカヌーだけが置いてあり、二人がそこに乗ってぼーっと空を見つめているシーンで終わっています。
フレンズ4-2その4 で、棚とカヌーと交換しようと言われて断ったチャンドラーでしたが、あまりに部屋に何もないので、結局そのカヌーを貰い受けたんだな、そんなカヌーでも「ないよりまし状態」なんだな、と思わせるエンディングでした。
そのエピソードの続き。
[Scene: Chandler and Joey's, Chandler is sitting in the canoe as Joey runs through the door carrying an outdoor patio table.]
チャンドラーとジョーイの部屋。チャンドラーはカヌーの中に座っている。そこにジョーイが、屋外用のパティオテーブルを抱えて、ドアから走って入ってくる。
ジョーイ: Hey! We are so in luck! Treeger said that we could have all this cool stuff from the basement. Wait right there. (Goes back into the hall) (おい! 俺たちはすごくツイてるぞ! (アパートの管理人の)トリーガーが言ったんだ。地下室ににあるこのかっこいいやつを全部俺たちが使っていい、って。そこで待ってろ。[廊下に戻る])
チャンドラー: Oh, no-no-no. I'm, I'm paddling away. (あぁ、だめだめだめ(待てないよ)。俺は、俺は、カヌーを漕いで行っちゃうよ。)
ジョーイ: (Returning carrying a couple of rusted lawn chairs) Huh? ([錆びた芝生用椅子を2つ抱えて戻ってきて] どうだ?)
チャンドラー: Wow! Really? We got all this rusty crap for free? (わお! ほんとに? 俺たちはこの錆びたクズを全部、ただでもらったのか?)
ジョーイ: Uh-huh. This and a bunch of bubble wrap. And some of it is not even popped. (あぁ。これと、プチプチ[エアクッション]を一束と。そして、プチプチの一部はつぶしてないんだぞ。)
(They both sit down at the table and the chick and the duck enter from Joey's bedroom.)
二人ともテーブルに座る。そして、ジョーイの寝室からヒヨコとアヒルが入ってくる。(ヒヨコは買ったばかりの時のような黄色ではなく、あれから成長して毛が白く長くなっている)
チャンドラー: Could we be more white trash? (俺たち、今、最高に貧乏白人[白いゴミ]状態だよな。)
上にも説明したように、前回のラストシーンに引き続き、まだカヌーが置いてあるのに笑えます。
家具を運んできたジョーイが、「まだ他にもあるから待ってろ」と言うと、チャンドラーは、I'm paddling away. と答えています。
paddle は「パドル、櫂(かい)」のことで、カヌーを漕ぐ時に使うものですね。
paddle away は「パドルで(カヌーを)漕いで去る」という感じ。
ジョーイが待て、と言ったのを、「俺は今、こうしてカヌーを漕いでいるところだから、待てと言われても流れに乗って漕いであっちに去って行っちゃうぞ。カヌーを漕いでる時に、待てって言われたってそんなうまい具合に待てないよ」みたいに答えた、ということです。
このジョークを言わせたいがためだけに、今回のシーンでもカヌーを登場させたようですね(笑)。
ト書きの rusted も、セリフの rusty も、「錆(さ)びた」という意味。
錆びた家具を嬉しそうにもらってきたジョーイに対して、「わぁ、この錆びたクズがほんとにただなの?」みたいに大袈裟に驚いてみせています。
こんなボロ、ただで当然だよ、そんなものもらって喜ぶなよ、と言いたいのです。
その後、bubble wrap の話もしています。
bubble wrap は、梱包に使われる緩衝材の「プチプチ、エアクッション」のこと。
英英辞典にも載っていました。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
bubble wrap also bubble pack [noun] [uncountable]:
a sheet of soft plastic covered with bubbles of air, used for wrapping and protecting things
つまり、「気泡で覆われた柔らかいビニールのシート。ものを包装したり、保護したりするのに使われる」。
pop は「ポンといわせる、ポンとつぶす・破裂させる・はじけさせる」みたいな感覚でしょう。
ジョーイは、プチプチのつぶしてないやつがもらえたと喜んでいるわけです。
あのプチプチをつぶすのが好き、という日本人は多いですが、アメリカ人もあれが好きなのですね(笑)。
日本では、ムゲンプチプチ ホワイト なんていう、プチプチを模したおもちゃも発売されています。
そんな話をしていると、二人のペットであるヒヨコとアヒルが入ってきます。
上にも書きましたが、黄色いヒヨコちゃんは、にわとりへと成長過程にあって、毛足が長く、白いフワフワの毛になっています。(前回のフレンズ4-2 の冒頭シーンで、エンターテインメント・センターの中にいるヒヨコとアヒルが映るシーンがありましたが、その時にはもうヒヨコは真っ白な姿になっていました。)
それを見てのチャンドラーのセリフ、Could we be more white trash? について。
このセリフは、Could we BE more white trash? と be の部分が強調されています。
これは、チャンドラーの口癖の話 フレンズ3-2その29 で説明した「チャンドラーの口癖、チャンドラー独特の言い回し」ですね。
彼のセリフの特徴は、"Could ... any more...?" というように、more (または形容詞の比較級 -er )の前に any がつくものだと認識されているようですが、今回は any がないバージョンです。
「これ以上…が可能だろうか? いや不可能だ。今、最高に…だ」という反語的表現になります。
普通は強調しないはずの be を強調して発音するのも、チャンドラーの特徴です。
(今回の 4-3 では、最後の方にまたこの口癖が登場します。)
white trash というのは直訳すると「白いゴミ、白いクズ」ですね。
この言葉には以下の意味があります。
英辞郎では、
white trash=下層白人、貧乏白人◆【語源】アメリカでは、法律によって平等化が進められ、黒人が社会に進出してくる一方、貧しい白人が増加し、白人の失業者や貧乏人は「白いごみ」と呼ばれるようになった。
LAAD では、
white trash [noun] [uncountable] (informal):
an insulting expression meaning white people who are poor and uneducated
つまり、「貧乏で教養のない白人を意味する侮辱的表現」。
語義にもあるように、侮辱的な表現ですので、人に対して使うのはやめましょう。
今回のセリフでは、白人であるチャンドラーが「俺たちって貧乏白人だよねぇ」と自虐的に使っているから許されている、ということです。
このセリフ、家財道具を盗まれてすっかり貧乏白人になってしまった、ということを言っているわけですが、ヒヨコとアヒルが出てきた後のタイミングでこのセリフを言っているのが、絶妙なのですね。
white trash 「白いゴミ、白いクズ」という言葉は、ヒヨコやアヒルも指しているのです。
上の説明にも書いたように、ヒヨコは真っ白になっていますし、アヒルは言うまでもなく白い鳥ですね。
そしてさらによく見ると、パティオのテーブルも、2つの椅子も、真っ白ではないのですが、白っぽい色をしています。
白くてボロい家具、白いペットたち、そして家財道具のない白人の俺たち、もうこれ以上、white trash にはなれない、ってくらい、今、最高に white trash (白いゴミだらけの貧乏白人)状態だな、と自分たちの状況を自虐的に表現してみた、ということですね。
白っぽい家具にするために中庭・パティオ用の家具を用意し、ヒヨコも黄色状態から成長した白い状態のものを登場させた、ということになるでしょう。
このチャンドラーのセリフを聞いた後、「そういえば、このシーンで登場したものは全部白い!」ということに気づくと、チャンドラーのセリフがあまりにもドンピシャなので大笑いできる、ということです。
(Rach からのお願い)
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more white trash?の解説助かりました。英文でも日本語字幕でも意味
がピンとこなかったので。汗 ダックとチックがでてきてから言った
セリフでしたのでその2匹の事を言ってるかと思いました。
でも白をだらけという意味で一応家具と白人とペットで意味につながり
はあるんですね。 white trashで調べてませんでした。汗
チャンドラーの`be`は特徴的ですよね。 あれってやっぱりフレンズの
設定でそういう話し方をするキャラにしてるんですかね?アクターの
マッシュペリーさんの話し方がそうであればそれも興味深いですけど。
お話し変わりますが、Rachさんの本を読んでると共感できる点が多い
ですね。FriendsをやるだけでTOEICでいい結果を残せるかは運要素もあ
ると思いますが、リスニングはFriendsの方が速く容赦もないので(笑)
テスト用のリスニングは少しゆるやかに感じますね。もっともまだまだ
僕はぜんぜんできてないですが。汗 人を批判しすぎるのもどうかと
思いますが、崇拝しすぎるのもよくないという考えも僕は賛成ですね。
なんか僕は考えてる事、文章にするの苦手ですがRachさんが本の中で
語ってくれてる事は僕が思っている事も結構あって共感もてます。
リラックスして努力して楽しく学ぶ。これを習慣にさえできれば
良い結果がでると思いますが、結果を出せてない自分はとりあえず、
黙々とやってます。汗 あと、longmanのオンラインってあったんです
ね。汗 英英辞典持ってなくて非常に助かりました。PC使用して
Friendsの訳を調べる時にオンラインのアルク(英和、和英)と最近
両方使用してます。 文法を普段勉強してなかったのですが、
Rachさんの本で文法の大切さも読んで共感できましたので、最近
そちらも勉強してます。仕事にせよ、一人でカフェに行くにせよ、
「三種の神器」の内の一つ(シットコムで笑えの本)をつねにかばんに
いれて持ち歩いてます。w なんとか自分なりにカスタマイズして
勉強方法が固定されてそれが継続できればと思います。
とりあえず、Rachさんの英語レベルに亀のようにのろのろと後ろから
歩いていきたいと思います。w
コメントありがとうございます。
white trash が示唆する「貧乏白人」という意味と、今、部屋にあるものが「家具もペットも白いものだらけ」であることをかけたセリフなのが面白い、ということですね。
チャンドラーが BE を強調して話すのは、あれは、チャンドラーというキャラクターの特徴のようですね。みんながチャンドラーのマネをする時に、必ずそこを強調しますから。他のドラマで見たマシュー・ペリーは、普通にしゃべっていましたので(笑)、マシュー自身がそういう話し方をするわけではないようです。
また、拙著に共感していただいている、というお話もありがとうございます。DVD学習法以外の部分で、自分の学習哲学みたいなものをたくさん書いたつもりなのですが、その部分でいろいろと感じていただけるととても嬉しいです。それから、拙著をつねにかばんに入れて持ち歩いて下さっているなんて光栄です。ありがとうございます。
人が説く学習法は、あくまでその人が成功した方法に過ぎないのであって、大事なのはそれをどれだけ自分に合う形にカスタマイズできるか、なんですよね。とにかく焦らず楽しく続けていただけたら、と思います。頑張って下さいね。私もこのブログを頑張ります。