2009年07月20日

スポックの産児制限 フレンズ4-3その5

[Scene: Chandler and Joey's, The salesman is trying to sell Joey the encyclopedias.]
チャンドラーとジョーイの部屋。セールスマンはジョーイに百科事典を売ろうとしている。
セールスマン: So, here's somebody interesting, Joey. What do you know about Van Gogh? (それで、ここに興味深い人がいますよ[載っていますよ]、ジョーイ。君はヴァン・ゴッホについて何を知っていますか?)
ジョーイ: He cut off his ear. (彼は自分の耳を切り落とした。)
セールスマン: And? (それから?)
ジョーイ: I'm out. (俺、(このクイズ)下りるよ。)
セールスマン: He painted that. (Points to one of his paintings in the book) (彼はこれを描いたんだ。[本にあるゴッホの絵の一つを指差す])
ジョーイ: Wow. That's pretty nice. I thought he cut off his ear 'cause he sucked. What else you got in there? (わぉ。それってすっごくいい絵だね。俺は、彼がダメなやつだから、耳を切り落としたんだと思ってたよ。そこには他に何が載ってるの?)
セールスマン: Let's see, ahhh.... Where does the Pope live? (そうだな、えーっと…。法王はどこに住んでいるでしょう?)
ジョーイ: In the woods. No, wait-wait, that's the joke answer. (森の中だ。[セールスマンが怖い顔をしたので] いや、待て待て。今のはジョークの答えだよ[ジョークでそう答えたんだよ]。)
セールスマン: Actually, it's Vatican City. Now ahh, what do you know about vulcanized rubber? (本当は、バチカン市国ですよ。それじゃあ、うーんと、ヴァルカナイズド・ラバーについて何か知っていますか?)
ジョーイ: Spock's birth control. (スポックの産児制限[避妊]。)
セールスマン: (laughs) You need these books. ([笑って(その後、すぐに真顔になって)] あなたにはこの本[百科事典]が必要です。)

セールスマンは、百科事典を売るために、そこにはいろんなことが載っているのを説明しています。
Van Gogh は「ひまわり」などの作品で有名なゴッホのことですね。
Wikipedia 日本語版: フィンセント・ファン・ゴッホ

英語の発音は、「ヴァン・ゴー」のようになります。
ゴッホが耳を切った話は有名なので、ジョーイもそれだけは知っていたようです。
それ以外のことについて聞かれて、I'm out. と言っていますね。
これは、ゲームやクイズの解答などから「抜ける」「下りる」イメージかな、と思います。

セールスマンは、百科事典に載っているゴッホの絵を見せ、ジョーイはその絵に対して感嘆の声をあげています。
耳を切ったことは知っていたのに、彼が有名な画家であることは知らなかったようです(笑)。

the Pope は「ローマ法王、ローマ教皇」。
普通はこのように、the をつけて、P を大文字で書きます。
Vatican City は「バチカン市国」。
「市国」という日本語は、City を訳したもの、なんでしょうね。

vulcanize は「ゴムを硫化・加硫・硬化する」という動詞なので、vulcanized rubber は「硫化されたゴム」すなわち「硫化ゴム」ということですね。
硫化、加硫(Vulcanization)は、以下のウィキペディアに詳しく書いてあります。
Wikipedia 英語版: Vulcanization
その英語版ウィキペディアから、参考になる部分を引用させていただきます。

The process is named after Vulcan, Roman god of fire.
「その(硫化という)過程は、ローマの火の神である、Vulcan から名付けられた。」

A vast array of products are made with vulcanized rubber including ice hockey pucks, tires, shoe soles, hoses and many more.
「ありとあらゆる製品が、硫化ゴムで作られている。例えば、アイスホッケーのパック、タイヤ、靴底、ホースなど、さらに多くのもの。」

Hard vulcanized rubber is known as ebonite or vulcanite and is used to make bowling balls and clarinet mouth pieces.
「硬質硫化ゴムは、エボナイトまたはヴァルカナイトとして知られていて、ボウリングのボールや、クラリネットのマウスピースを作るのに使われている。」

このように、化学の専門用語っぽい言葉なので、ジョーイが知っているはずもないのですが、意外にもジョーイは自信満々で答えます。
その答えが、Spock's birth control。

まず、Spock ですが、これはスタートレックで有名なキャラクターですね。
元々は、スタートレックシリーズの第1作 Star Trek: The Original Series の主要キャラで、最近公開された映画「スター・トレック」では、そのスポックの若かりし頃が描かれていました。
スポックについては以下のウィキペディアで。
Wikipedia 日本語版: スポック
Wikipedia 英語版: Spock

birth control を直訳すると「出産調整」になるでしょうか。
すなわち、「産児制限、妊娠調節、避妊」という意味になります。
ジョーイは、「スポックの避妊、スポックが避妊に使うもの」という意味で答えたことになります。

なぜ、スポックの名前が出てきたかと言うと、彼が Vulcan 「ヴァルカン人、バルカン人」だからですね。(正確に言うと、彼はヴァルカン人と地球人とのハーフです。)
vulcanized という言葉で、ヴァルカン人を思い出した、ということです。
vulcanize という単語に「ヴァルカン化された、ヴァルカン風に変えられた」みたいなニュアンスを感じたのかもしれません。

そして、rubber は「ゴム」ですね。
ちなみに、イギリスでは rubber は「消しゴム」の意味にもなります。(アメリカでは消しゴムは eraser)
そして、rubber は避妊に使う「コンドーム」も指すのですね。(日本語でも「ゴム」って表現する人、いますよね?…笑)

ですから、vulcanized rubber という言葉を聞いて、Vulcan condom を想像したジョーイは、「(ヴァルカン人の)スポックの産児制限・避妊(または避妊に使う手段、道具)」と答えた、ということです。
Spock's condom ではなくて、birth control という言葉を使ったのは、産児制限に使うアレだろ?みたいなニュアンスかなと思いました。
ダイレクトに condom と言ってしまうのではなく、抽象的な birth control という言葉を使って遠回しに言うことで、知的な感じを出してみた、という気がするのですがどうでしょう?

ちなみに余談ですが、今回の encyclopedia (百科事典)つながりにもなりますが、トレッキーである私は、「スタートレック エンサイクロペディア」という、スタートレックシリーズの百科事典を持っています。
スタートレック エンサイクロペディア ニュー・エディション THE STAR TREK ENCYCLOPEDIA: A Reference Guide to the Future
総ページ数 794ページ、税別 8,000円というものすごい本ですが、この本には当然のことながら、vulcanized rubber は載っていませんでした(笑)。
もちろん、V の項目に、ヴァルカン関係の言葉が列挙してあるのですが、例えば、ヴァルカン船(ヴァルカン人の宇宙船)は、Vulcan ship と表記されます。
つまり、Vulcan だけで「ヴァルカン(人、星)の」という形容詞にもなるのですね。
ですから、Vulcan rubber であれば、本当に「スポックのコンドーム」という意味になるかもしれません(笑)。

フレンズのセリフでトレックネタが出てくるのは、私の記憶では5回あり、今回が4回目ですが、数あるトレックネタのうちで、私はこれが一番大ウケでした。

得意気に「スポックのコンドームだ」と答えるジョーイに、「そんなに何も知らないんだったら、やっぱりあなたにはこの本が必要ですよ。」と真顔で言うセールスマンに笑えますね。

ちなみに今回セールスマンの説明に出てきた言葉は、Van Gogh, Vatican City, vulcanized rubber でした。
アルファベット順に並んでいる百科事典の V の本を使って説明していたことがわかりますね。


(2009.9.7 追記)
下のコメント欄で、Spock は「スポック博士の育児書」を書いたスポック博士とも関連があるのでは?というご意見をいただきました。
以下の記事で、そのスポック博士について調べたことを書いています。
興味のある方は覗いてみて下さい。
「スポック博士の育児書」との関連性 フレンズ4-3その8
(追記はここまで)


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posted by Rach at 09:11| Comment(5) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
vulcanized rubber の説明、トレッキーならではの解説で、とてもよくわかりました。色々な知識がないとドラマも充分味わえないものなんだなーと改めて思いました。
 
ところで、Spockで私が最初に連想するのは育児書を書いた博士のほうなので、(産児制限に関しての業績は特にないようですが)ジョーイもこの名前を使って、「らしく」答えたのでは、と思いました。
Posted by joy at 2009年07月20日 10:41
初めてコメントしたころ、今回のスポックのネタがお気に入りといわれてましたね、間違いなくスタートレック関連ですね。ただ、そのときに思ったのは脚本家やネイティブは同時にjoyさんのコメントにあるBenjamin Spockも頭をかすめてると思いました。私が子供の頃どこの小さな本屋にも「スポック博士の育児書」と「アルジャーノンに花束を」がならんでいて、それはいまも簡単に手に入れることができます。ちなみにスタートレックのスポックの名前の由来はBenjamin Spockからだと何かで読んだ気がします。アルジャーノンもフレンズのセリフに出てきますね。ところで上映中のスタートレックみてきました。トレッキーに配慮してレナード・ニモイがでてましたが、新しいスタートレックですね。トレッキーには物足りないと思いました。
Posted by catch at 2009年07月20日 14:10
joyさんへ
「とてもよくわかりました」と言っていただけて大変光栄です。
また、育児書を書いたスポック博士との関連性、大変興味深いですね。
「スポック博士の育児書」という本の存在は知っていたのですが、スタートレックのスポックとは別人ということで、あえて触れなかったのです。「そう言えば…」と関連のある話題をどんどん書いていって収拾がつかなくなるのが私の欠点なので、今回はそれを自重したつもりだったのですが…。そういう時に限って、実は関連があった、ということも多いんですよねぇ(笑)。

いろいろ調べていたら、レスが超長くなってしまったので、追加記事「フレンズ4-3その8」として、近いうちに投稿したいと思います。もうしばらくお待ち下さいませ。


catchさんへ
上のお返事にも書きましたが、スポック博士の件は、追加記事として投稿する予定です。もうしばらくお待ち下さいませ。

「スポック博士の育児書」は日本でもブームになったみたいですね。私が第一子を出産する時に、母が贈ってくれたのは、岩波書店「[定本]育児の百科」(松田道雄 著)だったので、私自身は「スポック博士の育児書」を読んだことはないんですよ。
catchさんがおっしゃった「アルジャーノンに花束を」(原題: Flowers for Algernon)は、フレンズ4-19 のセリフに出てきますよね。

今年公開された「スター・トレック」、見に行きたいなぁ、と思いつつ、何だか映画を見に行くタイミングが合わず、結局見損ねてしまいました。(パンフレットだけはちゃんと買いましたが…笑)
レナード・ニモイが出ていたようですね。過去のシリーズの人気キャラを出すとトレッキーは喜ぶ、ということはありますが、確かに映画の予告や特報を見たり、パンフを見たりする限りは、「新しいスタートレック」という雰囲気が漂っていました。
また、DVDがレンタル開始になったら、近いうちにじっくり英語のセリフをチェックしながら見てみたいなと思っています。
Posted by Rach at 2009年07月23日 11:39
8も楽しみです。

松田道雄さんには、一時期はまって、エセー集を何冊か読んだことがあります。彼の実践的な仕事振りや育児アドバイスもRachさんのブログスタイルに影響があるかななどとおもいました。

Posted by joy at 2009年07月23日 19:28
joyさんへ
今日、次のエピソードのフレンズ4-4 に突入してしまいましたが、4-3その8 はもうしばらくお待ち下さいませ。(他のエピソードでも、あと1つ追加記事を書くことになっておりまして…)

松田道雄さんは「私は赤ちゃん」などでも有名なんですよね。私は母がくれた「育児の百科」しか読んだことがないのですが(育児書はこの1冊しかなく、育児の雑誌なども読んだことがありません…笑)、実際に育児をする母親の立場や状況を考慮して書かれた実践的な本だと思いました。どうしても育児に不安になりがちな新米の母親を振り回すような理想論などはなく、「こんな風に少しずつ母親になっていけばいいんだ」と思わせてくれる良い本だったと思います。
ですから、私のブログスタイルに何か通じるものを感じて下さったとしたら嬉しいです。
Posted by Rach at 2009年07月26日 07:28
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