The One with the Dirty Girl (恋人はダーティ・ガール)
原題は「ダーティな女の子の話」
モニカとレイチェルの部屋。本を手に持ちながら入ってきて、包装紙持ってる?と尋ねるチャンドラー。
チャンドラー: Actually, it is for Kathy's birthday. It's an early edition of her favorite book. (実は、キャシーの誕生日用なんだ。彼女のお気に入りの本[愛読書]の初版本なんだよ。)
フィービー: Oh, The Velveteen Rabbit! Oh, my God, when the boy's love makes the rabbit real.... (まぁ、ビロードうさぎ[ビロードのうさぎ]ね! あぁ、そうなのよ、少年の愛がそのうさぎを本物に変える…)
チャンドラー: Okay, but don't touch it because your fingers have destructive oils. (そうさ、でもその本を触らないでくれ、だって君の指には有害な油がついてるから。)
レイチェル: Huh. Well, then you'd better keep it away from Ross' hair. So this is pretty rare. How did you get that? (そう。それなら、その本をロスの髪の毛から遠ざけた方がいいわよ。それで、この本は、相当レアよね。どうやってそれを入手したの?)
チャンドラー: Oh, it wasn't a big deal. I just went to a couple of bookstores, talked to a couple of dealers, called a couple of the author's grandchildren. (あぁ、大したことなかったよ。ただ、2、3軒の本屋に行って、2、3の卸売り業者と話をして、著者の孫2、3人に電話しただけだよ。)
レイチェル: Oh, honey, that's so sweet. (まぁ、ハニー。それってすっごく素敵ね。)
フィービー: Yeah, and what a great way to say, "I secretly love you, roommate's girlfriend." (そうね。それに「俺は密かに君を愛してる、ルームメイトの恋人さん」って言うのに、すっごくいい方法ね。)
チャンドラー: It doesn't say that. Does it? (そんな意味にならないよな? なっちゃう?)
チャンドラーが持っていたのは、キャシーへの誕生日プレゼント。
キャシーの愛読書の初版本だと言っています。
英語でのタイトルは、The Velveteen Rabbit。
velveteen は「綿ビロード、別珍(ベッチン)」。
(英辞郎によると、日本語の「ベッチン」という言葉は、velveteen から来たそうです。)
velvet 「ベルベット、ビロード」とよく似た単語ですが、素材に違いがあるようですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
velveteen [noun] [uncountable]: cheap material that looks like velvet
つまり、「ベルベットのように見える安価な素材」。
DVDの日本語訳では本のタイトルが「ビロードうさぎの涙」となっていましたが、これまでいろんなタイトルの日本語訳が出ているようですね。
以下に日本語版の2冊を紹介します。
童話館出版
Margery Williams(マージェリィ ウィリアムズ)/著
William Nicholson(ウィリアム ニコルソン)/イラスト
いしい ももこ/翻訳
ビロードうさぎ

ブロンズ新社
マージェリィ・W・ビアンコ/原作
酒井駒子/絵・抄訳
ビロードのうさぎ

半年ほど前、本屋さんの絵本コーナーでブロンズ新社の「ビロードのうさぎ」が積んであったので、「あ、これはチャンドラーがキャシーにプレゼントした本だ!」と、思わず衝動買いしてしまいました。
このブロンズ新社の黄色い本には、白い帯がついていて、
帯の背表紙には、
2007年のベスト絵本
帯の表には、
圧倒的な支持をあつめて
『月刊MOE』(白泉社)2007年絵本ベスト
『この絵本が好き!』(平凡社「別冊太陽」編集部=編)2007年の絵本(国内絵本)
堂々の第1位!
と書いてあります。
このことからも、日本でも有名な絵本であることがわかりますね。
このブロンズ新社の挿絵は、酒井駒子さんという方が描かれているので、チャンドラーの持っている初版本の絵とは異なりますが、こちらの日本版の挿絵もとっても素敵です。
童話館出版のイラストはオリジナルの絵のようです。
Wikipedia 英語版: The Velveteen Rabbit にも表紙の画像があります。
「私もこの本大好きなのよー」と感激して触ろうとするレイチェルに、「指の有害な油がつくから触らないで」と言うチャンドラー。
この本を大切に扱いたい気持ちが出ていますね。
destructive は「破壊的な、有害な」というやや大袈裟な形容詞ですが、ジョークとしてわざとそういう大袈裟な言葉を使っているようです。
お宝を扱う人や鑑定士さんなどが、白い手袋をしていることがありますが、そんな感覚で、素手でべたべた触らないでよ、油が付いて傷んじゃうじゃんか、みたいなことが言いたいようですね。
レイチェルは、ちょっと触ったくらいで、油油って言わないでよと言いたげに、油を気にするんだったら、ジェルがいっぱい付いたロスの髪の毛に気をつけた方がいいわよ、あっちの方がもっとベタベタだから、と言っています。
有名な本の初版本なので、こんなレアなもの、どうやって手に入れたの?とレイチェルは尋ねます。
それに対する返事がチャンドラーっぽいですね。
「いやぁ、大したことないよ」と言った後、自分がやったことを3つ挙げるのですが、最初は本屋、次に卸売り業者、そして最後には、著者の孫にまで連絡を取ったと言っています。
まず本屋に行くのは当たり前として、その後、ない本を捜し求めて、ついには著者の親族にまでアプローチし、やっと手に入れた本だということです。
そのチャンドラーの行動を聞いて、フィービーは、what a great way to say, "I secretly love you, roommate's girlfriend." と言っています。
What a great way to say... は感嘆文で、「・・・と言うのに何てすごい方法だ」という意味ですね。
「ルームメイト(ジョーイ)の恋人であるキャシー、僕は君を密かに愛してるんだ」と伝えるのに最高の方法じゃん、と言いたいわけです。
そんな風に指摘されて、チャンドラーは慌てます。
It doesn't say that. Does it? の say は直訳で「言う」でもいいですが、「…ということを表している、物語っている」という感覚がより近いでしょうか。
「キャシーを密かに愛してる」なんて意味を表さないよな、そんな意味があるように見えないよな、と否定しているのですが、その後、不安になって、Does it? 「もしかして、そんな意味になっちゃう?」と尋ねていますね。
そういうつもりは全くなかったのに、フィービーに指摘されて、焦るチャンドラーがかわいいです。
ちなみに、上で紹介した Wikipedia 英語版: The Velveteen Rabbit の References in popular culture にも、フレンズ4-6 で登場したことが書いてあります。
フレンズ8-6 のセリフにも登場します。
ウィキペディアではこの初版本の説明として、worth about $15000 in reality と書いてあります。
実際には約 15000ドルの価値がある、その初版本を実際に買うとすると 15000ドルくらいする、ということですね。
フレンズの脚本を書いた人が、それくらいの価格のものであると認識していたかどうかは別にして、ルームメイトの恋人へのプレゼントにしては、あまりにも高価すぎる、希少価値の高いものであることがよくわかりますね。
(Rach からのお願い)
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調べましたら、自分もちょっと読みたくなっちゃいました。w
初版はすごい高いんですね。 チャンドラーさすが。w
ジョーイとのプレゼントの差がすごいですよね。w
1922年に出版された本なので、その初版本だったら、やはりそれくらいの価格はするのでしょうね。
私もウィキペディアに書いてある金額を見て驚いたのですが、具体的にその金額を知らなくても、「The Velveteen Rabbit の初版本」と聞けば、それがとてもレアで高価なものであるとわかる、という仕組みですね。
最初の部分でこのチャンドラーのプレゼントを示すことで、後に出てくるジョーイのプレゼントとのギャップがより鮮明になるわけですよね。
間違いのご指摘、ありがとうございます。
上の記事も訂正させていただきました。
コメントありがとうございます。
ウィキペディアの内容は、変化が激しいですよね。ノンネイティブにとって貴重なサブカルネタの情報源として、とても頼りにしているのですが…。
それ以外にも、いろいろと参考になるリンクを示してくれる点も助かりますよね。おっしゃるように、「子供だけでなく大人も楽しめる」からこそ、こうして長年多くの人に愛されてきたのだと思います。「物語」というのは、意外と難しい単語が使われたりしていますので、そういう意味でも勉強になりますよね。
(初版は普通first editionがよく使われます。)
How do I determine a First Edition of a Book? という件名のweb記事
http://www.booklibris.com/BLFirstEditionID.htm
ではこの初版本を詳しく説明しています。
たとえばハリーポッターシリーズの最初のころの本の初版第2刷の価値は第1刷の5%から25%だとしています。
チャンドラーも高価ではあるけれどなんとか手の出る金額で手に入れたのではないでしょうか。
コメントありがとうございます。
そうですね、おっしゃる通り、「初版本」ならば、the first edition になるはずですよね。チャンドラーが言っているのは、an early edition ですから、「初期の版」という意味になりますね。
ご指摘の通り、the first edition ではなくて、an early edition だから、チャンドラーにも買えたということでしょう。こんな有名な作品の正真正銘の初版本なら、ものすごい価値がついているでしょうから。
貴重なご指摘、ありがとうございました。
How do I determine a First Edition of a Book?
の内容は目を通していただけましたか?
そこでは英語の冠詞の面白い使用例が見られます。
件名の中が the First Edition ではなくて a First Edition になっています。実は僕自身も最初はちょっと戸惑ったのですがあとになってなぜなのかわかりました。
初版本というのはたいていの場合、複数存在します。そのうちの1冊をあらわすときは冠詞は a にするんでしたね。
もしフレンズのこの場面のためにチャンドラーが1万5千ドルする貴重な初版本を用意したのだとしたら the first edition ではなくて a first edition を使うのが正しいと思います。(この本の初版本は2冊以上存在すると思われるので)
もしチャンドラーが存在しているこの本の初版本を全部買い占めてきたのなら the first editions ということになるとは思いますが。
コメントありがとうございます。
序数だと the がつく、という思い込みみたいなものがあって、あまり深く考えずに the first edition と私は書いてしまいましたが、おっしゃるように、紹介して下さった記事でも、a First Edition のように a が使われている形が頻出していますね。その部分に気付かなくてすみません。
初版本は何冊もあるので、「そのうちの1冊をあらわすときは冠詞は a にする」というご説明、おっしゃる通りだと思います。
冠詞のニュアンスを掴む貴重な用例を参考に挙げていただき、ありがとうございました。
この冒頭のシーンのチャンドラーとフィービーのやりとりなんですが、フィービーが自分の誕生日プレゼントがまだ来てないと言った後のチャンドラーのセリフで、
"I have a call in about that"
というのがなんとなく意味は分かるんですが、文の構造がいまいち掴めません。特にinの捉え方です。
Rachさんはどう解釈しますか?
コメントありがとうございます。
ご質問のやりとりは以下のようになっていましたね。
チャンドラー: Hi. You guys have any wrapping paper? (はーい。包装紙持ってる?)
フィービー: Oo! Is it for my birthday present? (わぁ。それ(その包装紙)って私の誕生日プレゼントのためのもの?)
チャンドラー: Phebes, it was your birthday, like, months ago. (フィービー、君の誕生日は、ほら、数か月前だっただろ。)
フィービー: Yeah, but remember you said you ordered something special and it just hasn't come yet? (そうね、でも覚えてる? あなたは言ったのよ、特別なものを注文して、それがまだ届いてない、って。)
チャンドラー: Well, I have a call in about that. (そうだね、それについては、call in してるよ。)
フィービー: 'Kay. (わかったわ。)
have a call in about that の文の切れ目は、have a call in / about that だと思われます。それについての a call in を持っている、みたいなことでしょうね。(a) call in は名詞で、本来は call-in のようにハイフンで結んだ方がわかりやすい、のかもしれません。
その call in という名詞の意味については、名詞としてそれらしい意味はあまり辞書に載っていないのですが、call in という句動詞の意味を名詞にしたニュアンスがあるように思います。
研究社 新英和中辞典では、
call in
(3) 〈警察・専門家などの援助を〉求める
というのが載っています。
その語義を英語で説明したものは、以下の LAAD (Longman Advanced American Dictionary) が該当するように思います。
call somebody/something in : to ask or order a person or organization to help you with a difficult or dangerous situation
つまり、「難しい、または危険な状況について助けてくれるように、人や組織に頼む、または命令する」。
何か困ったこと、問題があって、それについてある人や組織に解決を依頼する、みたいなことでしょう。
今回のセリフでは、「プレゼントを頼んだはずなのに、まだ来ない」ということなので、それは問題ですよね。ですからその問題については、すでに該当部署に相談済み、連絡済みで、相手からの返答を今待ってるところ、みたいな意味が、I have a call in about that. なのかな、と私は思いました。
DVDの日本語訳では、
(字幕) 連絡待ちだ/(吹替) あぁ、ちゃんと催促しとくよ
となっていましたが、字幕の方の「連絡待ち」というのが、「頼んだものが届かないとすでに電話して、相手の連絡を待っている状態である」という英語の意味の訳になっているのだと思います。
実際のところは、数か月前のフィービーの誕生日に、チャンドラーはプレゼントを買うのを忘れていたのでしょう。それでとっさに、「プレゼントを買ったんだけど、まだ届かないんだ」と答えたのでしょうね。で、それっきりになっていたのが、今回プレゼントの話が蒸し返されて、「頼んだけど来てないっていうあのプレゼントはどうなったの?」と問い詰められたので、「あれはまだ調査中、連絡待ちなんだ」と答えてごまかした、というやり取りになっている、ということでしょう。
call inで一つの名詞ということだったんですね!
ハイフンがなかったので、わからなかったです(汗)
解説ありがとうございます!
こちらこそ、お返事ありがとうございます。
DVD英語字幕にもハイフンはついていなかったのですが、名詞であるとはっきり明示するために call-in のようなハイフンつき表示だとよりわかりやすかっただろうと思います。
in about って何だろう?とか思ってしまうと、迷ってしまう部分ですよね。