2009年09月03日

what's sayという表現 フレンズ1-14その6

以前に、フレンズ1-14その5 のコメント欄 で、
what's say you and I give it another shot?
というセリフについてのご質問をいただきました。
今日はそれに対する私の見解を記事にしてみました。
本当はもっと早くお返事するつもりだったのですが、子供が夏休みの間はバタバタしてしまって、お返事がこんなに遅くなってしまいました。
誠に申し訳ありません。

このセリフは、偶然、料理店で再会した元妻キャロルと楽しい時間を過ごしたロスが、二人でもう一度やり直そう、みたいなことを言っているセリフです。
ご質問の内容は、上のセリフの「what's say という表現と it がわかりません」とのことでした。

まず、give it another shot の方から。
shot は「試み」ですね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
shot [noun]: ATTEMPT
[countable] an attempt to do something or achieve something
例) I've never tried before, but I'll give it a shot.

つまり、「何かをしよう、または何かを成し遂げようという試み」。
例文は、以前にやってみたことがないが、やってみようと思う。」

ロングマンの例文も、give it a shot というふうに it が使われていますが、その it は、今の状況を漠然と指しているのだと思います。
give it a shot で成句になっている、という感じでしょうね。
give は目的語を二つ取る他動詞で、it に another shot を与える、つまり、「今のこの状況に、もう一度試みを与える」ということから、「もう一度やってみる、もう一度チャンスにかけてみる」みたいな意味になると思います。
このセリフでは「二人がもう一度やり直してみる」みたいなことでしょう。

次に what's say について。
ネットスクリプトでは以下のようになっています。
ロス: You know? Here's a wacky thought. Um, what's say you and I give it another shot.
そして、DVDの英語字幕には、Let's say you and I give it another shot? と書いてあります。

実際に音声を聞いてみると、what's say に聞こえるような気がします。
でも、what's say という表現は、手元の英和や英英辞典には載っていません。

まずは、DVD字幕通りの、Let's say について見てみます。
Let's say だと「仮に…だと仮定してみましょう」という意味ですね。
LAAD では、
let's say:
said to ask someone to imagine something in order to discuss it or understand it better
例) If you found some money on the street -- let's say $100 -- what would you do?
let's say (that)
例) Okay, let's say he comes. Will you be happy to see him?


つまり、「何かを議論するために、またはそれをより良く理解するために、誰かに何かを想像するように言うために使われる」。
例文は、「君が通りでお金を見つけたとしたら…100ドルだと仮定しよう…君はどうする?」
「オッケー。彼が来ると仮定しよう。彼に会って嬉しいと思うかな?」

Let's say だとすると、セリフの意味は、「君と僕でもう一度やり直してみる、と仮定してみようよ。」になるでしょうか。

「what say ならみたことあるような」とのお話だったので、実際に映画やドラマのセリフで、What say が使われているかどうかを、映画やドラマのデータベースである、IMDb (Internet Movie Database)で調べてみました。
グーグルの検索ボックスに、site:www.imdb.com quotes what-say と入れると、IMDb のサイト内で、quotes (引用文、つまりサイトで引用されているセリフ)で、what say が使われているものが探せます。

ざっと見たところ、What say you? や、What say you to+名詞、あるいは、What say+文(SV)の形もあります。

What say you? については、Urban Dictionary に出ていました。
Urban Dictionary: What say you
What do you thik? のような意味のようです。

ですから、「What say you to+名詞」は、「…について/対してどう思う?」という意味でしょうし、What say+文(SV) は「SがVであることをどう思う?」みたいな意味になるのかな、と思います。

What do you say+文...? 「…はどうですか?」という、相手の意見を尋ねる表現がありますが、その do you が省略された形が、What say+文、なんだろうなぁ、と。

LAAD では、
what do you say?: used to ask someone if they agree with a suggestion
例) What do you say we split the two sandwiches?

つまり、「ある提案に同意するかどうかを誰かに尋ねる時に使われる」
例文は、「その2つのサンドウィッチを分ける、っていうのはどうかな?」

What say+文という形はそれなりに使われていそうだ、とわかったところで、では問題の What's say という表現です。
IMDb では、以下の2つのセリフを発見しました。

Quotes for Dr. Raymond Stantz (Character) from Ghost Busters (1984)
Ray Stantz: He's right... we do need to give you a name. Just to annoy Peter, what's say we call you Slimer?

Memorable quotes for Star Trek: Borg (1996) (VG)
Q: (一部省略) What's say we give the old goat a second chance to save Sprint's life?

とりあえず見つけたのは上の2例だけなので、頻出フレーズというほどではないですが、what's say という表現もアリなのかな?と思わせる結果ではあります。
この場合も意味としては、What say...? と同じでしょうね。

ただ、少々ひっかかるのは、What do you say が、What say になるのはいいとして、What's say とわざわざ -'s が付くのがどうにも違和感があるんですよ。
ネイティブがそんな略し方をするだろうか?と。
What でいいところを、わざわざ What's と言うと、何らかの省略形であることを示すことになり、その -'s は何の略?と他の人に思わせることになるような気がするのです。
日本人の話す英語だと、What を What's と言ってしまうような間違いはよくあると思うのですが、ネイティブは「意味もなく」 What を What's と言わない気がするんですよねぇ。

でも、IMDb に What's say と書いてあるセリフがあるわけですから、使う人もいる、ってことでいいのかなぁ?

仮に、What's say を What do you say 「…はどうかな?」のニュアンスで訳してみると、「君と僕とでもう一度やり直してみる、ってのはどうかな?」という提案になり、意味は通りますね。

上で引用した、IMDb にあったセリフも、
「君を Slimer と呼ぶのはどうだ?」
「その old goat に、スプリントの命を救う第2のチャンスを与えるのはどうだ?」と訳すとしっくり来る気がしますので。

ロスのセリフも、話の流れで言うと、「二人がもう一度やり直すって仮定しよう」よりも、「二人がもう一度やり直すってのはどうかな?」という提案の方がしっくり来るようには思います。
もちろん、Let's say 「仮定しよう」であったとしても、「そういう仮定を想像してみることで、君はどう思うかを考えさせる」わけですから、本質的な内容は同じことになるのでしょうが。
言葉としては、ここでは、What do you say...? のような「相手の意向を尋ねる」ニュアンスの方がぴったりくるかな?と思うのです。

くどくなりますが、セリフの流れを確認するため、この一連のセリフを以下にちょっと書いてみます。

ロス: You know? Here's a wacky thought. Um, what's say you and I give it another shot. (ねぇ、変なこと考えちゃった。君と僕とがもう一度やり直すってのはどう? [(Let's say なら) 君と僕とがもう一度やり直すと仮定してみようよ 。])
キャロル: Ross.... ([困ったように] ロス…)
ロス: No no no. I know what you're gonna say. You're a lesbian. But what do you say we just put that aside for now, you know? Let's just stick a pin in it, okay? Because we're great together, you know? You can't deny it. And besides, you're carrying my baby. I mean, how perfect is that? (いやいやいや。君が何て言うつもりかわかってるよ。君はレズビアンだ。でも、とりあえず今はそのことを脇に置いておくっていうのはどうかな? それにはただピンを刺しておこうよ、いいだろ? だって僕らは二人で最高だっただろ。君はそれを否定できないはずだ。その上、君は僕の子供を妊娠してる。つまり、それってすごくパーフェクトじゃないか。)
ロス: Ross.... (ロス…)

2番目のロスの長セリフの中に、But what do you say we just put that aside for now, you know? というのがあり、上で関連表現として紹介した、what do you say...? の形が登場していますね。

仮定してみようよ、と言う場合は、「それを仮定することでこうなるはずだ、というロスの見解」がどこかで述べられるような気がします。
Let's say という表現は、大事なことを言うための前振り表現のように思うのですね。
今回のセリフの場合は、ロスが自ら、a wacky thought (ばかげだ、突飛な、奇抜な考え)と表現した上で、「君と僕、もう一度やり直さないか?」とキャロルに思い切った提案していることがメインテーマになると思うのです。
ですからその大事な部分を Let's say と仮定の表現で言うのは、インパクト不足のような気がするのです。

その後のセリフも、そう仮定したらどうなるか、の説明ではなくて、僕の提案を君は突拍子もないことだと思うだろうけど、実は何も不思議なことはなくて、それが一番自然な姿なはずなんだよ、ということを、because の後に理由を続けて、「二人がもう一度やり直すこと」の正当性を訴えていますね。

そういうことからも、Let's say よりも、What do you say のニュアンスに近いような気がするので、What's say というのは、What do you say のニュアンスで使っている、と考えた方がいいように思う、ということです。

今の私の見解は、
1. ロスのセリフは、Let's say ではなくて、What's say と言っているらしい。
2. What's say は、What say と同じような表現で、What do you say...? の意味らしい。
ということになります。

以上、大変長くなりましたが、what's say とそれに似た表現を比較したものとして、今回の記事を読んでいただければ幸いです。


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posted by Rach at 06:53| Comment(4) | フレンズ シーズン1 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほどですね。ここまで、探求されているのですから、本人か原稿を書いた人に解答を聞きたいですね。こんなふうに気になった言葉は、いつかどこかで必ずまた出会うと思います。その時に「ああ、そうだったのか。」と発見、解決することもよくあることです。これが語学の楽しさだと思います。とても勉強になりました。ありがとうございました。
give it a shot などのイデオムは、自分自身が発することはなくても知っていると聞き取れるし、それが文中でちょっとしたスパイスになっている事もあるので、とても勉強したい分野です。
このブログでは、イデオムを紹介してくださるので、とても勉強になります。これからも毎回読みますので、がんばってください。

Posted by smile at 2009年09月03日 22:47
smileさんへ
勉強になった、と言っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。

what's say は「標準的とは言えないが、使われないこともない」という気がしていて、これからもずっと英語を学び続けていくうちに、まだどこかで出会うかも、と私も思っています。

イディオムが「文中でちょっとしたスパイスになっている」というのは全くその通りですね。しゃれた言い回しがかっこよく聞こえたりして、そういうものを自分の中にどんどん蓄積していくことで、言葉が豊かになっていくんですよね。

温かいお言葉、ありがとうございます。そのお言葉を励みに、これからも頑張ります!
Posted by Rach at 2009年09月04日 07:09
こんにちは。Rachさんを見習い、つい最近 Friends を使って英語の勉強を始めたものです。(シーズン1の途中から読み始めました) 他の方の参考にもなればと思い、私見を投稿させて頂きます。 What's (to) say that...という、to の省略(To不定詞の名詞的用法)ではないでしょうか? 今後も引き続き参考にさせて頂きますので、頑張って下さい。楽しみにしております!
Posted by hato-san at 2011年09月03日 00:29
hato-sanさんへ
コメントありがとうございます。

「What is to say that... の to が省略されたもの」というご意見…そうかもしれませんね。
All you have to do is (to) do... 「君がすべきことのすべては…することだ」→「ただ…すればいいだけだ」のような場合だと、to do の to が省略されますから、それと同じような感覚、だということですね?

貴重なご意見ありがとうございました。
これからも頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by Rach at 2011年09月03日 09:30
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