キャシーの誕生日に、ジョーイはチャンドラーが苦労して入手した「ビロードうさぎ」の本をプレゼントします。
そして、ジョーイは自分が文房具店で買った「時計つきペン」を、チャンドラーからのプレゼントだと言って、チャンドラーからキャシーにプレゼントさせます。
その後のシーン。
チャンドラー: [to Kathy] Good night. ([キャシーに] おやすみ。)
キャシー: Um, thank you for the gift. (あの、贈り物をありがとう。)
チャンドラー: Oh, uh, yeah... I just knew that sometimes when you're writing, you... you don't always know the exact time. (あぁ、そうだね…時々君が書きものをしてる時、正確な時間がいつもわかるわけじゃない、って知ってたから。)
キャシー: No, I... I didn't mean the pen. Thank you for the book. (いいえ。私はペンのことを言ったんじゃないの。あの本をありがとう。)
チャンドラー: Uh, the book? (あー、本って?)
キャシー: The Velveteen Rabbit? I kinda have the feeling you had something to do with it. (「ビロードうさぎ」のことよ。あなたがあの本に関係してるっていう気がした、っていうか。)
チャンドラー: What do you mean? (どういう意味?)
キャシー: Well, uh, when Joey gave it to me he said: "This is 'cause I know ya like rabbits, and I know ya like cheese." Thanks. I love it. And I know how hard it must have been for you to find. (そうね、あの、ジョーイがそれを私にくれた時、ジョーイはこう言ったのよ。「これをあげるのは、君がうさぎが好きなことを知ってるからだ。それに、チーズが好きなことも知ってるから。」 ありがとう。これ大好きよ。それに、(この本を)見つけるのがどれほど大変だっただろうかもわかるわ。)
チャンドラー: (tongue-tied) Uhl..ell. By the way, in case you missed that, that sound was, "Oh, well." ([舌足らずになって] アー、エル。ところで、今のを君が聞き損ねた時のために言っておくと、今のは、「オー、ウェル(あぁ、まあね)」って言ったんだ。)
キャシー: You must really like... Joey... to go to all that trouble for him. (あなたは本当にジョーイが好きなのね。彼のためにそれほど骨を折ってあげるなんて。)
チャンドラー: Oh, yeah. He's my-- He's my best friend. (あぁ、そうだね。彼は俺の…俺の親友だから。)
むりやり時計つきペンを押し付けられたチャンドラー。
キャシーがプレゼントのお礼を言うので、「書きものをしている時に、いつでも時間がわかるようにと思ってプレゼントしたんだ」と言っています。
ジョーイがこのプレゼントを買ってきた時に言っていた理由をそのまま使っているのですね。
でも、キャシーがお礼を言ったのは、ペンではなく本のことでした。
have something to do with... は「…と関係・関連・かかわりがある」。
have nothing to do with... なら「…と関係ない」になります。
kinda (= kind of) と言葉をボカしながらも、あなたはあの本に関係してる、って気がしたの、というキャシー。
キャシーは、ジョーイのセリフから、この本を買ったのはジョーイじゃない、ということに気づいたのですね。
そのジョーイのセリフ、"This is 'cause I know ya like rabbits, and I know ya like cheese." について。
this は、この「ビロードうさぎ」の本、またはこの本をあげること、を指していると思います。
どうして俺がこの本をあげるかって言うと、「俺は君が…を好きなことを知ってるからさ。」と言っているわけですが、好きなものとして、rabbits と cheese が挙げられていますね。
チャンドラーはジョーイに、この本のタイトルと、小さい頃の彼女の愛読書であったことは教えましたが、ジョーイはどうやらこのお話を知らないようです。
お話にチーズは登場しませんので、cheese という言葉を出した時点で、ジョーイはこの本の中身を知らない、この本をよく知らない人が、高価な初版本を苦労して手に入れようとするはずがない、ということにキャシーは気づいた、ということですね。
この本をあげる理由としては、あまりにトンチンカンなので、キャシーはそのことに気づいたわけですが、ジョーイがどうして、cheese という言葉を出したのか?がよくわかりません。
私の意見を2つ書いてみます(あまり自信はありません)。
まず、1つ目は、cheese という食べ物を出したことで、rabbits も食べ物を指しているのではないか?ということ。
料理にウサギの肉が使われることもありますので、キャシーがウサギの肉が好物で、それと並べて好物であるチーズも挙げた、逆に言うと、チーズを出したことで、うさぎは食用の肉の種類を指していることになり、ぬいぐるみのうさぎの話であることを知らないことが露呈してしまった、という流れかなぁ、と。
ただ、食べ物としてのウサギを指す場合は、不可算名詞の rabbit になるような気もするのですが…。
まぁ、普通のうさぎと思わせておいて、実は食べ物だった、というオチだとすると、食べ物だとわからないようにわざと複数形で言わせてみた、ということかもしれません。
2つ目は、Welsh rabbit という名前の「チーズトースト」が存在するので、それからの連想かな?ということ。
研究社 新英和中辞典の rabbit の項目を見ていると、
rabbit=Welsh rabbit
という語義があり、さらに Welsh rabbit を調べると、
Welsh rabbit, Welsh rarebit=【名】【C】 [料理名には 【U】] チーズトースト 《チーズをあぶるか溶かして薬味などを加えトーストにかけたもの; 熱いうちに食べる》
という説明がありました。
Wikipedia 英語版: Welsh rarebit には、写真も載っています。
rabbit という名前のつく cheese 料理なので、このジョーイのセリフに関係あるような気がする、ということです。
The Velveteen Rabbit というタイトルから、Welsh rabbit を連想したジョーイは、Velveteen rabbit もそれと同じような料理の名前だと思った、というオチなのかな、と。
ということで、なぜ cheese も一緒に挙げたのか、についてはよくわからないのですが、少なくとも、そのジョーイのセリフを聞けば、ジョーイはこの本の内容を知らないということはわかりますよね。
この本のファンであるキャシーは、この初版本を入手するのがどれほど大変だったか、ということもわかってくれていました。
その言葉を聞いたことで、チャンドラーも今までの苦労が報われた気がしたでしょう。
嬉しさのあまり、舌が上手く回らず、Uhl..ell. と意味不明な言葉を発しています。
照れ隠しからか、今の言葉は Oh, well. と言おうとして舌がもつれちゃったんだよ、みたいに説明していますね。
キャシーが喜んでくれているのがわかって、叫びたいほど嬉しいはずのチャンドラーですが、「大変だったでしょ」という労いと感謝の言葉に、わざと気軽に「あぁ、まあね。」と返すつもりが、変に力が入りすぎてしまったようです。
ネットスクリプトでは、 You must really like... Joey と表記されていて、Joey と言うまでに少し間があるように書かれていますが、実際のセリフでは、それは「微妙な間(ま)」ですね。
キャシーはこの初版本の価値がよくわかっているので、それをくれたチャンドラーの気持ちに気付き始めているのかも…と思わせる「間」です。
この like... Joey の間がもう少し長いと、「こんなにしてくれるほど、あなたは私のことを…?」と一瞬言いそうになるのを飲み込んで Joey と言った感じが出ますが、今回はそこまでではない、ただ、ネットスクリプトを書いた人が ... を入れたくなるような雰囲気は確かにある、という感じがします。
go to all the trouble for... は「…のために骨を折る、…のために労を惜しまない」というニュアンスですね。
直訳すると「…のために全ての困難に向かう」というような感じでしょうか。
あらゆる困難を物ともせず、その人のために頑張る感じが出ている気がします。
「ここまでしてくれるなんて、ほんとにあなたは…ジョーイのことが好きなのね」と言ったキャシーに、チャンドラーは相槌を打ち、ジョーイが入っていった寝室を振り向いた後、キャシーの方を見るのですが、キャシーを見つめる顔が真剣で、完全に恋する男の顔になっています。
キャシーも、go to all that trouble for him と言いながらも、実は「私のためにそこまでしてくれるなんて(go to all that trouble for me) 」という気持ちも混ざっているはずで、チャンドラーの真剣な表情を見た時、「もしかして、あなたはやっぱり…」とちょっと焦った表情になっています。
が、ふっと力を抜いたように、「彼は俺の親友なんだ」と笑うチャンドラー。
この時のチャンドラーはとてもステキですね。
このハラハラするシーンを、英語で見ていながら、英語を見ていることを忘れるほど入り込めるようになれば「いい感じ」かな、と思います。
(Rach からのお願い)
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velvety という単語に「(ワイン・チーズなどが)まろやかな、口当たりの柔らかな」という意味があるようです。
Velveteen から velvety を連想して、それがチーズにつながったんじゃないかと私は推測しました。
貴重な情報ありがとうございます。
velvety という形容詞が存在するのですね。確かに私の持っている英和にも載っていました。
研究社 新英和中辞典では、
velvety=〈ぶどう酒など〉舌触り[口当たり]のよい
英辞郎では、
velvety=【形】ビロードのような、滑らかな、柔らかい、口当たりの良い、まろやかな
velvety calf=舌触りが滑らかな子牛肉
と出ています。
また、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
velvety [adjective]: looking, feeling, tasting, or sounding smooth and soft
例) a deep velvety voice
つまり、「スムーズでソフト」な感じを指す、ということですね。
私の手持ちの辞書には「チーズ」の例が載っていないのですが、チーズのまろやかさも指すのであれば、velvety から cheese を連想した、という可能性はありますね。
また、velvety calf 「舌触りが滑らかな子牛肉」という表現からの連想なのですが、velveteen rabbit を velvety rabbit と聞き間違えて(本は包装されていたので、ジョーイはタイトルを文字では確認していないから)、「舌触りの滑らかな(柔らかな・口当たりの良い)ウサギ肉」を想像し、その付け合せのイメージでチーズも出した、という感覚かも、などと思ったりもしました。
いずれにしても、velveteen 「ビロード製の」を、velvety 「口当たりの柔らかな、まろやかな」と勘違いした可能性が非常に高いですね。音もよく似ていますし、食べ物の名前を出したことで、「ビロードでできたぬいぐるみのうさぎ」であることを全く知らないという事実が判明した、という流れなのでしょうね。
興味深いご意見、ありがとうございました。
この一連のチャンドラーとキャシーのやり取りは心の機微が感じられてとても素敵ですね。キャシーを演じてる役者さんも魅力的です。
キャシーが"この本はジョーイじゃなくてあなたが買ったんでしょ?"とは言わずに、"I kinda have the feeling you had something to do with it" と婉曲的に言うところにセリフの妙があるし、こんな風に言えるようになりたい所です。
こんにちは。コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、この二人のやりとりはほんと素敵ですよね。キャシーという女性は同性の私から見ても魅力的です。
本当に言いたいことをそのまま口にするのではなく、違った言い方をすることで、相手に対しての気遣いを見せたりするのが、リアルなやりとりに感じられて、いいですよね。
本人たちの気持ちを感じ取りながら、言葉として発せられたセリフの意味を聞き取れれば、そして自分もこんな風に言えれば、ほんとに素敵だな、と思います(^^)
過去2回ほどセミナーに参加させていただき、終了後も質問に優しく応じていただきました。その節は本当にありがとうございました(また参加したいです)。
本作を使用しての勉強を(本当に)少しずつ進めています。たとえノロくても楽しく続けられているので、毎日感謝しています。
このシーンはこのあいだ終えたところです。個人的には特にキャシーの発音で "for you” とか "for him” あたりが弱くて流れる感じといいますか、別の単語に聞こえてきて混乱しました。まだまだですね。
そして今ごろは既にお気付きかもしれませんが、その際に調べたところ、"Velveeta” という加工チーズの製品名が出てきました。KRAFT食品製品で、米国はじめ香港や韓国でも販売されているようですね。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Velveeta
上でまさに言及されているように、"velvety smooth” が名前の由来になっているようですね。たぶんコイツで間違いないと考えたんですが、どう思われますか?
こんにちは。コメントありがとうございます。
拙セミナーにご参加いただけたこと、大変光栄です。ご質問のこともそのように表現していただけて、また参加したいと言っていただけるのもとても嬉しく、また機会がございましたら、その時はどうかよろしくお願いします<(_ _)>
やはり「楽しく続ける」のが何よりだと思いますので、これからも楽しみながら進んでいただけたらと思います。
キャシーの発音の「弱くて流れる感じ」という表現、よくわかります。レギュラー陣の発音には次第に慣れていきますが、ゲストキャラの発音はいろいろあるので難しいですよね。
そして rabbits/cheese の件について貴重な情報ありがとうございます。そのチーズの名前は知りませんでした。検索してみると日本語でも「ベルビータチーズ」という名称で呼ばれているようで、知ってる人は知ってるチーズのようです。
私も「確かにコイツで間違いない」と思います! 以前のコメントで velvety という形容詞を教えていただいていたことが、ここでチーズの名前として繋がったわけですね。ジョーイはイタリア系でチーズの種類にも詳しそうですから、響きの似たチーズの名前を連想した、というのはもう完璧な流れだったのですね。うまい具合に繋がってすっきりしました♪
貴重なご意見、本当にありがとうございました!(^^)
コントのような名人芸、素晴らしい。
途切れのないコントが最後まで連続
しています。
ロスとダーティ・ガールの情事(?)は
抱腹絶倒してしまいました。
チャンドラーの淡い恋もユーモラスに
描かれています。モニカのシメも面白い。
これからも期待してよいのでしょうか?
ワクワクしますね!
このエピソードも本当に面白いですよね。笑いもあり、感動する部分もあり、フレンズは実に素敵なドラマだと思います。