過去記事 スポックの産児制限 フレンズ4-3その5 で、百科事典のセールスマンに、vulcanized rubber 「硫化ゴム、ヴァルカナイズド・ラバー」のことを尋ねられたジョーイが、Spock's birth control 「スポックの産児制限[避妊]」だと自信ありげに答えるシーンがありました。
この Spock、スタートレックに出てくる Vulcan 「ヴァルカン人、バルカン人」のスポックを指していると解説したのですが、その記事のコメント欄で、「スポック博士の育児書」という有名な本を書いている博士とも関連しているのでは?というご意見をいただきました。
今回はその育児書の「スポック博士」について、調べたことを書いてみたいと思います。
もっと早く追加記事を書く予定だったのですが、こんなに遅くなってしまったこと、申し訳ありません。
Google のサーチボックスに「スポック」と入れると、グーグル・サジェスト機能で「スポック博士の育児書」と出てくるくらいですから、この育児書とそれを書いたスポック博士は、日本でもかなり有名なようですね。
「スポック博士の育児書」の原題は、The Common Sense Book of Baby and Child Care で、スポック博士は、ベンジャミン・スポック(Benjamin Spock)という名前です。
Wikipedia 日本語版: ベンジャミン・スポック
Wikipedia 日本語版: スポック博士の育児書
Amazon.co.jp: 最新版 スポック博士の育児書
「スポック博士の育児書」の日本語版ウィキペディアには、「1946年以降では聖書の次に売れたとも言われる」「「育児の聖書」のように言われ」という記述もあるので、そういう超ベストセラーの本の著者である、Dr. Spock (スポック博士)のイメージを出して、「らしく」答えた、という可能性は非常に高いですね。
ジョーイのことだから、その育児書を書いたスポック博士が、あのスタートレックのスポックだと思っていたのかもしれません。(後述しますが、その二人は混同されることが多い、という記述もありました。)
ジョーイが、"Dr. Spock's birth control." と答えていたら、ジョーイがスタートレックのスポック(ミスター・スポック)と、育児書のスポック博士(ドクター・スポック)とを混同していたことがわかるジョークになっていたかもしれませんね。
Wikipedia 英語版: Spock (disambiguation) という「曖昧さ回避のためのページ」では、以下のように説明されています。
Spock (disambiguation)
Spock is a fictional character in the American television show Star Trek
Spock may also refer to:
Benjamin Spock, a pediatrician and best-selling author of books on child development
筆頭にスタートレックのスポックがあがっていて、その次に、ベンジャミン・スポックが出ていますね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) には、Spock, Dr. Benjamin、すなわち、育児書のスポック博士が載っていました。
Spock, Dr. Benjamin: (1903-1998) a U.S. doctor whose books giving advice on how parents should take care of their children had a great influence on parents
つまり、「アメリカの医者で、親が子供の面倒をどのように見るかということに助言を与える彼の本は、親たちに大きな影響を与えた。」
スタートレックの Spock の名前の由来について、ウィキペディア英語版に興味深い記述があったのでご紹介します。
Wikipedia 英語版: Benjamin Spock の、Public misconceptions 「一般的な勘違い」の項目に以下の記述がありました。
It is common to see "Dr. Spock" confused with the fictional character "Mr. Spock" of Star Trek fame, particularly in references from people unfamiliar with the field of science fiction. Reportedly, Trek creator Gene Roddenberry did not intentionally name the character after Dr. Spock; this was a coincidence.
つまり、「「ドクター・スポック」が、スタートレックの架空のキャラクター「ミスター・スポック」と混同されるのを見ることがよくある。特にSF分野に詳しくない人の言及において(その混同がよく見られる)。伝えられるところによれば、トレックの製作者であるジーン・ロッデンベリーは故意に[意図的に]ドクター・スポックの名前をとってそのキャラを名付けたのではなかった。これは偶然であった。」
ジーンの話の出典は、The Making of Star Trek という本のようです。
そして、Wikipedia 英語版: Spock の、Development の項目に、
In The Making of Star Trek (1968), Roddenberry noted that he had been looking for an alien-sounding name, and didn't know until later of Dr. Benjamin Spock, the renowned child psychologist.
という記述があります。
この文章、ちょっと訳しにくいのですが、didn't know (until later) of Dr. ... ということだと解釈して訳してみると、
「1968年の Making of Star Trek という本の中で、ロッデンベリーは以下のように言及していた。ロッデンベリーはエイリアンっぽく聞こえる名前をずっと探していて、後になるまで[後になって知るまで]、有名な児童心理学者であるベンジャミン・スポック博士については知らなかった、と。」
このコメントの出典も、さっきと同じ Making of Star Trek ですが、「名前が同じなのは偶然だ」というコメントと合わせて考えると、スポック博士の名前を見て「これだ!」と思ったわけでもないようですね。
「後にスポック博士の名前を知ることにはなったけれど、エイリアンっぽい名前を探している当時はまだ彼のことを知らなかった(だから、スポック博士の名前から付けたわけではない)」みたいな意味だろうと思うのですが…。
長くなってしまいましたが、育児書のスポック博士はこのようにとても有名な人であるし、スタートレックのスポックと混同されることもよくあるので、脚本家は、スポック博士を想像させることも意図して、このセリフを言わせた、ということなのでしょう。
育児関係の博士だから、birth control という言葉とも馴染みますし、そのこともあって、condom というダイレクトで世俗的な言葉を避け、birth control という抽象的な、育児の専門家が使いそうな言葉を使ったのでしょうね。
(Rach からのお願い)
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2009年09月07日
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