[Scene: Central Perk, Rachel and Monica are sitting on the couch and Phoebe is getting coffee as Chandler enters. Ross is also there.]
セントラルパーク。レイチェルとモニカはカウチに座っていて、フィービーはコーヒーをもらっている。そこにチャンドラーが入ってくる。ロスもそこにいる。
ロス: Hey, Chandler. Saw the new furniture. Very nice. (やあ、チャンドラー。新しい家具を見たよ。とても素敵だね。)
モニカ: Yeah. Joey has the best boyfriend ever! (そうね。ジョーイは(これまでで)最高のボーイフレンドを持ってるわね。)
チャンドラー: I kissed Kathy. (俺はキャシーにキスした。)
ロス: What? (何だって?)
モニカ: Are you serious? (マジで?)
フィービー: Does Joey know? (ジョーイは知ってるの?)
チャンドラー: No. Is there any way, any way you think he'll understand this? (いいや。このこと(キャシーとキスしたこと)をジョーイが理解してくれそうな方法が何か、何かないかな?)
モニカ: You obviously haven't screwed over a lot of your friends. (They all look at her) Which we all appreciate. (明らかに、あなたは今までたくさんの自分の友達を裏切ったことなんてなかったのにね。 [フレンズは全員モニカを見る] そのことは私たち全員、感謝[評価]してるわよ。)
ロス: No, the-the sad thing is, if you had told him how you felt before you kissed her, knowing Joey, he probably just would've just stepped aside. (いや。残念なのは、もしチャンドラーが自分の気持ちを、キャシーとキスする前にジョーイに言っていたとしたら、ジョーイのことだから、彼は多分、ただ、身を引いてくれた[チャンドラーにキャシーを譲ってくれた]だろうね。)
チャンドラー: Oh, don't say that! Don't say that. That's not true, is it? (あぁ、そんなこと言わないでよ! そんなこと言うなよ。そんなの嘘だよな?)
フィービー: I think maybe, yeah. (私も多分そう思うわ。)
モニカ: He loves you. (ジョーイはあなたを愛しているもの。)
チャンドラーが買い揃えた家具を見たというロスは、それについて褒めています。
モニカは、「ジョーイは(これまでで)最高のボーイフレンドを持ってるのね。」と言っていますが、この boyfriend は、「男友達」という意味ではなくて、女の子が持つ「男性の恋人」のニュアンスですね。
女の子のために、あれもこれも買ってあげるリッチで太っ腹な恋人をジョーイは持ったみたい、と言っていて、ゲイ疑惑がいつも持ち上がるチャンドラーに対しては、「まるであなたはジョーイの恋人みたいね」という意味にも聞こえます。
キャシーとキスしたことをフレンズたちに告白するチャンドラー。
Is there any way...? の any way は、anyway 「とにかく」ではなくて、「何か方法があるかな?」という意味です。
「キャシーとキスしたのがいけないことだってわかってるけど、ジョーイがそのことを理解してくれそうな方法、何かないかな?」ということです。
screw over は「(人)をだます」というような意味ですね。
スクリュー フレンズ3-7その29 にも、screw over というフレーズが登場し、その時には、LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) (ロングマン現代英英辞典)の語義を紹介しました。
今回は、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) の語義を紹介します。
LAAD では、
screw somebody also screw somebody over: (slang) to cheat someone or treat them in a dishonest or unfair way (SYN: cheat)
つまり、「(スラング) 誰かをだますこと、もしくは、不誠実なまたは不公平なやり方で人を扱うこと」。
恐らくモニカが言いたいのは、チャンドラーは今までそんな風に、自分の友達の恋人とキスしちゃうような「友達に対する裏切り行為」をしたことなんてなかったのに、みたいなことでしょう。
チャンドラーは概してモテないので(笑)、友達の恋人を横取りしたりするようなことは確かになかったですし。
モニカの発言で、フレンズたちがモニカをあきれて見ているのは、チャンドラーがどんなにキャシーのことを好きか、ジョーイに対してどれほど罪悪感を持っているか、がわかっていながら、「友達を騙す、裏切る」なんて、今までそんなことは一度もなかったのにね、あなたらしくない…みたいなことを、screw over というスラングを使って、はっきり言ってしまったからでしょう。
みんなににらまれたので、その後、関係代名詞の which を使って、「今まで友達を裏切ったことがないことは、私たちみんな、appreciate してるわよ」と付け加えています。
appreciate は「感謝する、ありがたく思う」「(高く)評価する」という意味ですから、「これまではそういう裏切り行為がなかった」ということについては、私たちは友達として感謝してる、評価してるからね、と言っているのです。
ロスは、the sad thing is... と言って、「悲しいこと、残念なことはこれだよ」と説明します。
ロスの意見では、キャシーとキスする前に、チャンドラーがどれほどキャシーを真剣に思っているかを話せば、ジョーイはきっと二人のことを理解して、自分から身を引いてくれただろう、チャンドラーにキャシーを譲ってくれただろう、ということですね。
仮定法過去完了を使って、「(過去の時点で)もし…していたら、〜だっただろう」と、「過去の事実に反する仮定」をしています。
実際にはキスしちゃったけど、キスする前に話してたら、違った結果になっていたのに、という感覚です。
step aside は「脇へ寄る、脇へ退く」ですから、「(他人に譲るために)身を引く」という意味になります。
knowing Joey というフレーズが挿入句のように入っていますが、これは分詞構文で、「ジョーイのことを知っているから、わかってるから」みたいなニュアンスになるかな、と思います。
仮定法過去完了を使って、「ジョーイなら多分こうしただろう(に)」とロスはジョーイがしたであろう行動を語っているわけですが、どうしてそう思うかって言うと、「ほら、ジョーイはああいう人間だからさ」「僕が(僕たちが)よく知っているような友達思いのジョーイの性格を考えたら」きっと譲ってくれただろう、という感じでしょう。
日向清人先生の 即戦力がつくビジネス英会話―基本から応用まで の p.154 にも、knowing を使った以下の分詞構文が登場していました。
Hmm, knowing him, I can almost see him making.... (以下略) 「ふーむ、社長のことよく知っているだけに、…している様子が目に浮かぶようだわ。」
この knowing him も、今回のセリフ、knowing Joey と同じ感覚かな、と思います。
「彼を知っているから、様子が目に浮かぶ」「ジョーイを知っているから、多分こうしただろう(と思う、想像できる)」という感じですね。
「もうキスしちゃったからしょうがないけど、残念だったよね、もしキスする前に言ってれば…」みたいなことを言われて、チャンドラーはパニクります。
「今更そんなこと言うなよ! そんなことないよな? 違うって言ってくれ!」みたいに言うのですが、他のフレンズたちもロスの意見に賛成のようです。
チャンドラー、ますます辛いですね。
(Rach からのお願い)
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勉強になりました。ありがとうございました。
勉強になったと言っていただけて光栄です。難しい文法事項は、知識として理解するのはなかなか大変ですが、それがセリフのニュアンスと深く関わっている場合だと、すんなり受け入れられる場合も多いですね。どうしてその文法事項を使わないといけないか、という必然性がわかるから、でしょうか。
キスしてしまった後で、「もしキスする前だったら…だったのに」なんて言われたら、チャンドラーとしてはたまらない、そういう気持ちが理解できると、この仮定法過去完了の「重さ」みたいなものがわかりますよね。私も、ドラマのセリフをじっくり見つめるようになってから、学校で習っていた文法の本当の意味のようなものがわかり始めた気がします。
ご意見ありがとうございます。おっしゃる通りだと思います。
チャンドラーのセリフが「寝ぼけた」感じに聞こえた、ということなんですね。そんなことしておいて許してもらえると思ってるなんて、なんてのんきな、みたいな呆れでしょうか。今まで友達を裏切ったことがあれば、その後の修羅場も経験しているだろうけど、そんなコメントがでるくらいだから、そういう経験ないのねぇ、ということですね。
よくそんな寝ぼけたことが言えるわねぇ、みたいに呆れた後で、「友達を裏切った経験がない、ということは、友達の私たちとしてはありがたいことだけど」と付け加えているわけですね。
ご意見ありがとうございました。