2009年10月29日

ツリーをフロスで飾るロス フレンズ4-10その6

[Scene: Central Perk, Phoebe is working on her holiday song, Chandler is sitting on the couch reading a magazine, and Ross is sleeping on the couch.]
セントラルパーク。フィービーはホリデーソングに取り組んでいる。チャンドラーは雑誌を読みながらカウチに座っている。ロスはカウチで眠っている。
フィービー: (singing)
Happy Hannukah, Chandler and Monica
Merry, merry--

(♪ハッピー・ハヌカー、チャンドラーとモニカ〜
メリー、メリー…♪)
チャンドラー: (interrupting) Oh, y'know, y'know what, Pheebs? ([さえぎって] あぁ、ねぇ、フィービー?)
フィービー: What? (何?)
チャンドラー: I'm not Jewish so.... (俺はユダヤ教徒じゃない。だから…)
フィービー: So! Ross doesn't really decorate his tree with floss, but you don't hear him complaining, do you? God! (Phoebe hits her guitar which wakes up Ross with a start.) (だから? ロスは本当に自分の(クリスマス)ツリーをフロス[or 繭綿、刺繍糸]で飾るわけじゃないわ。でも、ロスが(そのことについて)文句を言ってるのを聞かないでしょ? なんてこと! [フィービーは自分のギターをたたく。その音でロスがハッと驚いて目を覚ます])
チャンドラー: Bad dream? (悪い夢でも?)
ロス: I wasn't sleeping. (ボクは寝てなかったよ。)
チャンドラー: Oh yeah, then uh, what was Phoebe's song about? (あぁ、そうか。じゃ、フィービーは何の曲を歌ってた?)
ロス: It's the one with the cat. I gotta go. I've got another date. (ネコのやつだよ。僕は行かなくちゃ。もう一つデートがあるんだ。)

フィービーの歌詞に、チャンドラーがクレームをつけています。
「ハッピー・ハヌカー、チャンドラー」となってるけど、僕は、ユダヤ教徒、ユダヤ系じゃないから、ユダヤ教の祭りを祝う言葉「ハッピー・ハヌカー」の後に名前を続けないでくれよ、ということ。

それを聞いて、今度はフィービーが怒ります。
Ross doesn't really decorate his tree with floss, but you don't hear him complaining, do you? について。
floss は日本人にもなじみのある dental floss 「デンタルフロス」を指すことが多いですが、それ以外に、研究社 新英和中辞典では、
「繭(まゆ)のけば、繭綿」「= floss silk (かま糸 <よってない絹糸。刺繍などに用いる>」「絹綿」
などの訳語が載っています。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
floss [noun] [uncountable]:
1. DENTAL FLOSS
2. EMBROIDERY FLOSS

とあり、最初にデンタルフロスの意味が出ていますね。
2. の emboidery floss は、同じく LAAD では、
embroidery floss [noun] [uncoutable]: silk or cotton thread used in embroidery
つまり、「刺繍に使われる絹または綿の糸」。

ツリーをデコレートする(飾る)のに、綿を雪に見立てる、ということは日本でもやりますね。
ただ floss の語義はもっぱら「糸」のような形状を指すようなので、ああいうふわふわした綿は意味しないような気もします。
刺繍糸のようなきれいな糸で飾る、という意味か、そういうものの代わりに手近にあるデンタルフロスを使って飾り立てている、という面白さなのかもしれません。

フロスが何を指すにしろ、フィービーが言いたいのは、実際にはロスはフロスでツリーを飾るわけじゃないけど、ロスはそのことで文句を言ったりしない、ということですね。
このフィービーのセリフから、この歌には、Ross decorates his tree with floss のような歌詞があるんだろうと想像できます。
Ross と floss で韻を踏ませたかった、韻を踏むために、実際にはしていないことをでっちあげた、という感じ(笑)。

floss が刺繍糸のようなきれいな糸を指すとして、それで飾るという行為が一般的なものである場合でも、ツリーを飾るのはもっぱら女の子の仕事っぽいので、ロスがそういうことをしそうにない、と言える気がします。
さらに、ロスはユダヤ教徒なので、クリスマスツリーを飾ったりしない、ということも言えそうです。
ロスがユダヤ教徒である話は、フレンズ7-10 ではっきりと示されることになります。
また、フレンズ4-10その3 で、Happy Hanukkah, Monica という歌詞にモニカがケチをつけなかったことからも、モニカ(ロスの妹)もユダヤ教徒である、ということが言えると思います。
今回の記事の歌詞、Happy Hannukah, Chandler and Monica で「俺はユダヤ教徒じゃない」というチャンドラーのセリフも、「実際にユダヤ教徒であるモニカはともかくとして、俺は…」というニュアンスが感じられますよね?
モニカはクリスマスツリーを飾りクリスマスを普通に祝っていますから、それほど敬虔なユダヤ教徒というわけではない、という設定のように思えます。

floss がデンタルフロスを指すとすると、デンタルフロスでツリーを飾ることはありえないので、「実際にはしていないこと」を歌っている歌詞であることから、こっちの方がジョークとしては面白い気がします。
アメリカ人も、floss = dental floss という連想が真っ先に働くと思いますし。
そうすると、floss という部分がオチ(punchline)になりますね。

ト書きの with a start は「ハッとして、びっくりして」。
start という名詞に「驚いてはっとすること」という意味があるのですね。
飛び起きたロスに、「悪い夢でも見たのか?」と言うチャンドラー。
ロスは「僕は寝てないよ、寝てなかったよ」と言っています。
寝ていることを指摘されてこう返事するのは、日本語も英語も同じですねぇ。

起きてたって言うんなら、今フィービーが歌ってた歌は何だ?とチャンドラーは意地悪な質問をします。
What was Phoebe's song about? は、Phoebe's song was about ... 「フィービーの歌は…についてであった」の…の部分を尋ねる疑問文ですね。
「フィービーの歌は何について(の歌)だった?」→「フィービーは何の歌[何に関する歌]を歌ってた?」という質問になります。

It's the one with the cat. は、「ネコのやつだ」という感じ。
ネコが出てくる、ネコが登場する、ネコにまつわる歌ということで、ロスはフィービーの代表作(?)、Smelly Cat だと言いたいのでしょう。
この the one with... という表現は、フレンズの原題によく出てくる形ですね。
そう言えば、今回の 4-10 の原題も、The One with the Girl From Poughkeepsie 「ポキプシーの女の子の[が出てくる]話」でした。


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posted by Rach at 07:28| Comment(2) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
色々とロスが残念な回ですが
フィービーがロスに両方とも別れればスッキリするじゃんと言った後
”私もプラハで悩んだわ”と言っていますがこの意味が全く分かりません。
その後チャンドラーが”プラハ?”と尋ねてますがフィービーは”秘密の過去よ”とぼかしてて尚のこと意味が分かりません・・。Rachさんの解釈で是非解説して頂きたくコメントしました。因みに最初プラハをプロムと勘違いしたのは内緒です・・思いっきり国の名前ですよね・・。
Posted by tsubasa at 2017年08月29日 11:55
tsubasaさんへ
こんにちは。ご質問ありがとうございます。

それは以下のようなシーンでしたね。
フィービー: Umm, well, I had a similar problem when I lived in Prague. (あぁ、私も似たような問題を抱えてたわ、プラハに住んでた時に。)
チャンドラー: Prague? (プラハだって?)
フィービー: So much you don't know. (あなたの知らないことがすごくたくさんあるのよ。)

チャンドラーとしては、「フィービーがプラハに住んでたなんて話、聞いたことない」という意味で、疑うような顔つきで「プラハだって?」と言ったのですが、フィービーは So much you don't know. と返しています。
much は「多量、たくさん」という意味の代名詞で、There's so much you don't know. 「あなたの知らないことがすごくたくさんあるのよ」と言っていることになります。

フィービーというキャラクターなら、フレンズたちに語っていない過去がいろいろありそうですから、「プラハに住んでた」っていうのもあながち嘘ではないのかも、と思えてしまう面白さだと思います。
フィービーという謎めいたキャラなればこそ成立するセリフでしょうね。

チェコ共和国の首都プラハはその美しさで人気ですが、英語では「プラーグ」みたいな発音ですから、そういう風に読むと知らないと、全くピンと来ないですよね(^^)
Posted by Rach at 2017年08月29日 19:09
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