[SCENE: Monica's apartment. Chandler, Monica and Rachel are playing cards around the living room table. Joey and Ross enter.]
モニカのアパートメント。チャンドラー、モニカ、レイチェルはリビングルームのテーブルの周りでトランプをしている。ジョーイとロスが入ってくる。
ジョーイ: Hey, you guys. Check it out! Check it out! Guess what job I just got? [smoothes the blue blazer he's wearing and has a big grin on his face] (やあ、みんな。見てくれよ! 俺は何の仕事をゲットしたと思う? [自分が着ている青いブレザーのしわをのばし、歯を見せてにっこり笑う])
チャンドラー: I don't know, but Donald Trump wants his blue blazer black. [stops] (さあね。でも、ドナルド・トランプは、自分の青いブレザーをブラックにしたいだろうね。[動きが停止する])
ロス: What? (何だって?)
チャンドラー: Blue blazer back. He, he wants it back. (青いブレザーを「バック」したいだ。彼は、彼はそれを「バック」したい、だよ。)
レイチェル: Well, you said "black." Why would he want his blue blazer black? (えーっと、あなたは「ブラック」って言ったわ。どうして彼は自分の青いブレザーをブラックにしたいと思うわけ?)
チャンドラー: Well, you, you know what I meant. (えーっと、俺の言いたかったこと、わかるだろ?)
モニカ: No, you've messed it up. You're stupid. (いいえ。あなたは間違えたのね。あなたっておバカねぇ。)
チャンドラー: [Chandler glares at her and then changes the subject.] So what job did you get, Joe? ([チャンドラーはモニカをにらみつけ、それから話題を変える] それで何の仕事をゲットしたんだ、ジョーイ?)
ジョーイ: Oh, tour guide at the museum. Yeah, Ross got it for me. (あぁ、博物館のツアーガイドだよ。そうさ、ロスが俺にその仕事を用意してくれたんだ。)
ジョーイは、ピンクのシャツの上に、鮮やかな色の青いブレザー(the blue blazer)を着ています。
そのブレザーを得意気に披露して、「俺は仕事をゲットしたんだけど、何だと思う?」と尋ねています。
Guess what? と言われたら、何かしら面白いことを言わずにはいられないチャンドラー。
またお得意のジョークで返そうとするのですが…。
今回は、せっかくのジョークなのに単語を言い間違えて、みんなに「それってどういう意味?」と責められる結果になってしまいます。
まずは順番にセリフの内容を見ていきます。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)は、「トランプ・タワー」などで有名な、アメリカの不動産王、大富豪ですね。
Wikipedia 日本語版: ドナルド・トランプ
Wikipedia 英語版: Donald Trump
his blue blazer と言っているのは、ドナルド・トランプがそういう色のブレザーをよく着ているから、という意味なんでしょうねぇ、多分。
ウィキペディアの日本語版には2つの写真が載っていて(たまたまかもしれませんが)どちらのブレザーも青系です。
特に下の方の、奥さんと一緒に写っている写真のブレザーの色は、今回ジョーイが着ている服の色に似ているように思います。
ただ、英語版ウィキペディアに、blue の服をよく着ている、好きな色は blue、などの記述は残念ながら見当たりませんでした。
Google の画像検索で Donald Trump を見てみると、青系の服が多いようには思いますが、いつも青、ということでもないようです。
チャンドラーが、Donald Trump wants his blue blazer black. と言った後、「あれ?」という顔をして、動きが止まってしまいます。
みんなに「は?」という顔をされて、慌てて、Blue blazer back. He, he wants it back. と言い直していますね。
つまりチャンドラーは、Donald Trump wants his blue blazer back. と言おうとして、wants his blue blazer black と言い間違えてしまった、ということです。
want something back だと「…を返して欲しいと思う、…を取り戻したいと思う」。
I want my life back! だと「俺の人生を返してくれ!」ですね。
want something black だと「…を黒にしたいと思う、黒くしたいと思う」。
バックとブラックを言い間違えた(余計なエルが入ってしまった)ことで、「トランプは自分の青いブレザーを返して欲しいと思ってるよ」が、「自分の青いブレザーを黒にしたいと思ってるよ」という意味になってしまったわけです。
ジョーイがトランプが着そうな感じの派手な青いブレザーを着ていたので、「それはドナルド・トランプのブレザーを盗んできたんじゃないのか? 彼はそれを返してもらいたがってるよ」と言って茶化すつもりが、「トランプは自分の青いブレザーを黒くしたがってるよ」と意味不明な内容になってしまったのですね。
ロスは、What? と言い、レイチェルは「あなたは black って言ったわ」と責め、モニカに至ってははっきりと、you've messed it up と言っています。
mess up は「台無しにする、だめにする」「間違える、失敗する、しくじる」。
ここでは、ジョークを言うはずが言い間違えた、しくじった、トチった、という感じですね。
みんなにポンポン言われて、言い返せなくなったチャンドラーは、「それでそのジョーイの仕事って何だ?」と話題を変え、みんなの非難から逃れます。
この一連のシーン、チャンドラーが一語言い間違えたことにフレンズたちがやたらとツッコミを入れてきて、チャンドラーがそれに言い返すことができずに話題を変えてしまう、という珍しい展開になっていますが、これは実際に、チャンドラー役のマシュー・ペリーがセリフを言い間違えてしまったためにこういうシーンが出来上がったようです。
IMDb: Trivia for "Friends" The One with Phoebe's Uterus に、これにまつわるトリビアが書いてあります。
面白いので引用させていただくと、
Matthew Perry messes up a line by saying "blue blazer black" instead of "blue blazer back". The rest of the cast's responses were so funny that they left it in the episode.
訳しますと、「マシュー・ペリーは "blue blazer back" と言う代わりに、"blue blazer black" と言うことで、セリフをトチってしまった。残りのキャストの反応がとても面白かったので、製作者はそのシーンをエピソードに残した。」
つまり、脚本にあった本当のセリフは back だったのに、それを black と言い間違えてしまった。残りのメンバーがそれに反応した様子が面白かったので、それをエピソードの一部として使ってそのまま放映した、ということですね。
セリフを言い間違えたわけですから、普通ならそこで誰かが笑ってしまったり、ごめん間違えた、と言ってしまったりして、NG集に入ってしまうようなタイプのシーンです。
ところが今回は、「マシュー」がセリフを間違えたのに、シーンが中断することなく、まるで「チャンドラー」が言い間違えたかのように話が進んでいます。
「ジョークの天才であるチャンドラーが、言葉を言い間違えてジョークがすべった」ことをフレンズたちが執拗に攻撃しているように見える、「あなた、面白いこと言おうとしてトチってるわよ」とまで言われてしまっている、ということです。
時々、吉本新喜劇でも、俳優の言い間違いだと思われるセリフを、他のキャストがいじりまくるシーンなどがあったりしますので、それと同じ感覚でしょうか。
元々脚本の中で言い間違える設定になっていたとしたら、みんなにこうして責められた後、それをひっくり返すような面白いオチが最後に来るはずだと思うのですね。
今回はそれがなく、チャンドラーが言い返せなくて敗北を認めたかのように自ら話題を変えているところがいつものフレンズとは展開が違いますので、「マシュー・ペリーが言い間違えた」という IMDb のトリビアを読んで、あぁなるほどそういうことか、と妙に納得してしまいました。
みんなが妙に意地悪っぽくチャンドラー(マシュー・ペリー)を責めている時、俳優としての素の部分みたいなものが垣間見れて面白いなと思いました。
(Rach からのお願い)
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このエピソード、トランプが出てくるので、懐かしくなって来てみました。
この放映当時はトランプと言っても、日本人に何のこっちゃ?という感じでしたよね。
トランプのところもアンパイアって言葉で誤魔化してるし、なかなかの翻訳者泣かせですね。
ロスの職場で食事する場面。皆で腹を割って話そう!というシーンでロンダという女性が「These aren't real」というところが最高です。リベラーチェのHouse of Crap と並ぶ名シーンです。
こちらこそご無沙汰しております。コメントありがとうございます。
このセリフは、マシュー・ペリーがセリフを間違えたらしい、ということも含めて、非常に印象的だったので、私も、トランプ氏が大統領候補になった頃から、「フレンズのセリフに出てきた不動産王の人だ!」と思っていました。
当時の記事では「アメリカの不動産王」と説明していましたが、もうそんな説明をする必要もなくなってしまいましたね^^
当時の日本での知名度を考えると、ここで「ドナルド・トランプ」と訳したところで、日本人には瞬時に笑えないことになってしまうでしょうし、翻訳者の方も苦労されたことだろうと思います。
These aren't real. というセリフ、面白いですよね。職場のみんながさまざまな告白をする中で、私もこのセリフが一番好きかもしれません^^
リベラーチェで盛り上がったのも懐かしいですね。今回のこのシーンも含め、「セリフに出てきた固有名詞を知っていれば笑えるセリフ」というのがフレンズには多いですが、セリフ繋がりからでも、有名人の名前を知ったりすることは本当に楽しいことだなぁ、と改めて思います。
楽しいコメント、ありがとうございました!(^^)