2009年11月06日

ジョーイの靴を満たせるか フレンズ4-11その3

セントラルパークでキャシーとラブラブなところを見せつけるチャンドラーですが、キャシーが出かけた後、フレンズたちに「キャシーとはまだエッチしてない」ことを告白します。
チャンドラーがエッチをためらう理由は…。
チャンドラー: Well, Kathy's last boyfriend was Joey. (えーっと、キャシーの前の[一番最近の]恋人はジョーイだっただろ。)
ロス: And you're afraid you won't be able to fill his shoes. [grins] (そしてチャンドラーは恐れてるんだな。自分がジョーイの靴にぴったり合わせることができないんじゃないかって。[にやっと笑う])
チャンドラー: No, I'm afraid I won't be able to make love as well as him. (いいや。俺が恐れてるのは、彼と同じくらい上手にエッチできないんじゃないかってことだ。)
ロス: [stops grinning] Yeah, I was going for the metaphor. ([にやっと笑うのをやめて] あぁ、僕はメタファーを言おうとしたんだよ。)
チャンドラー: Yes, and I was saying the actual words. (そうだな。そして俺は(メタファーじゃない)本当の言葉を言ったんだ。)

チャンドラーは、キャシーの直前の恋人がジョーイであったことを気にしているようです。
ロスは、fill his shoes できないんじゃないか、って心配してるわけだな、と言っています。
fill someone's shoes は「人に代わって後任となる、後釜にすわる」という意味。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
fill somebody's shoes: to be able to do a job as well as the person who did it before you
つまり、「自分の前にある仕事をした人と同じようにうまくその仕事をすることができること」。

fill someone's shoes を直訳すると、「誰かの靴を満たす、埋める」ということで、前任者にぴったりサイズが合った靴に、後任者もぴったり合わせる、前任者がこなしてきた仕事を後任者ももれなくきっちりやる、みたいな感覚なのでしょう。

フレンズ3-18その6 のコメント欄 で話題に上ったことがあるのですが、靴を使ったイディオムでは、in someone's shoes 「人の立場に立って」というのもありますね。
これも誰かの靴を履くという行為で、その人の立場に立つ、という状態を表しているのでしょう。
日本語の「立場に立つ」の「(足で)立つ」という言葉と英語の shoes 「靴」には同じ感覚があるように思います。

ロスはメタファー、つまり比喩を使って言っているわけですが、ニヤっと笑いながらこのセリフを言っていることから、裏に別の意味を込めていることがわかります。
「彼の靴を満たす、彼の靴のサイズにぴったり合う」というのは、エッチにおける「入れる」という行為を、靴に足を入れるというメタファーで示唆しているように思います。
すると、his shoes は、キャシーの大事な部分を指しているように思うのですね。

(女の私が言うのもなんですが)靴に足を入れるように、キャシーのあの部分にジョーイはそれを入れていた、今度はそこにお前が自分のものをぴったり合うように入れることになるわけだけど、それがうまく出来るかどうか、もしくはサイズがぴったり合う(ジョーイのものと大きさが同じである)かどうかを心配してるんだろ、と意地悪なことをメタファーを使って言っているのだと思います。

ちなみに、DVD日本語訳では「ジョーイの穴を埋められるかどうか」と訳してありました。
エッチな意味のメタファーとすると、これはある意味ドンピシャで(笑)お見事!と思いました。

実はこれと似たニュアンスのセリフが、フレンズ3-24 で出てきたことがあります。
ブログの解説では飛ばしてしまった部分なので、以下に紹介させていただきます。

セントラルパークで、ゲスト俳優のロビン・ウィリアムズとビリー・クリスタルが話しているシーン。
自分の妻が婦人科医と浮気しているのがわかるんだ、と言うロビンに、
ビリー: Like when you go bowling and you know you're in somebody else's shoes? (ボーリングに行って、他人の靴を履いてるのがわかる時みたいな感じ?)
ロビン: That's the one. (まさにそれだよ。)

これも、「他人の靴を履くと違和感がある」と言っていますね。
奥さんとエッチした時に、自分の靴を履いているはずがこれは別人の靴だと感じた、というような比喩です。
自分の靴だったはずが、誰か他の人が足を入れてしまい感覚が違ってしまった、それで奥さんが別人と寝てしまったことがわかった、ということでしょう。
同じように靴で例えていることから、今回のロスのメタファーに通じるものがあります。

ちなみに、たまたま昨日(11/5)の日経新聞朝刊に、村上由佳さんの「ダブル・ファンタジー」の書籍広告が載っていました。
その広告にその小説の中のセリフだと思われる以下の言葉が載っていました。
「ほかの男と、した?
俺のかたちじゃなくなってる」


これは、ビリー・クリスタルが例えた「他人の靴を履いている」という違和感と似ているように思います。
ビリーの場合は、コメディの中でジョークにして言っているわけですが、男が感じる違和感としては同じものなんだろうと。
ちょうどこの記事を投稿しようとしていた時に、目に入った言葉だったので、タイムリーだと思ってここで引用させていただきました。

ロスの発言を No. と否定したチャンドラーは、「俺はジョーイと同じくらい上手くエッチができるかどうかを心配してるだけだ」と言います。
チャンドラーのセリフは、上に挙げた LAAD の語義と非常によく似ていますね。
そのロスの例えの本当の意味をダイレクトに言ったわけです。

うまく例えたと思ったメタファーが通じなかったと感じたロスは、「今のは比喩だよ」と説明します。
当然のことながら、それが皮肉を交えた比喩だとわかっていたチャンドラーは、「お前が比喩を使って皮肉を言ったのはわかってたけど、俺はそれを実際の言葉を使って言ってみたまでだ」と返しています。

こういう皮肉っぽい例えは、相手が何らかの反応をしてくれてこそ言った甲斐もある、というもので、比喩で例えたことをダイレクトな言葉で表現されてしまっては、比喩を言った人間がバカみたいに見えてしまいます。
比喩を直接的な言葉で返すことで、チャンドラーはロスの皮肉に対して軽く仕返しをした、俺が真剣に悩んでるのに茶化したりするから、お前の皮肉を面白くないものにしてやったんだよ、という感じでしょうね。


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posted by Rach at 11:13| Comment(2) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。今年から夫の海外転勤に伴ってアメリカで暮らしているゆずといいます。
日本でも英語を使って仕事してたし、英語はなんとかなるだろうと思ってやってきたら、みんなが話してる言葉がわからない・・・!これはまずいと思って、勉強方法を探していた時、テレビで放映しているFRIENDS(こちらでは、毎朝2話ずつやっているんです♪)を見て、そのおもしろさに夢中になってしまいました。そして、こちらのブログを見つけて、ドラマを見終わった後、復習がてら参考にさせてもらっています。
「fill his shoes」はちょうど私もひっかかった表現だったので、こちらでも取り上げられてて嬉しかったです。そんな下ネタの意味もこめられてたとは気づきませんでした(笑)
まだFRIENDSで聞き取れるのも半分くらいですが、めげずに頑張ろうと思います〜、これからもお世話になります!
Posted by ゆず at 2013年04月23日 22:53
ゆずさんへ
はじめまして。コメントありがとうございます。
拙ブログを参考にしていただいているとのこと、大変光栄で嬉しいです。

アメリカでは今でも普通に放映しているのですね。何度も再放送されているおかげで、少し昔の作品でありながらいぜん人気のようで、そのおかげでこうして、私のブログを読んでいただけることになったわけですから、嬉しい限りです。

fill his shoes の話は、今読むと、結構大胆なことを書いていますね、私は^^ 改めて自分で読み返して、恥ずかしくなってしまいましたがw、その解説を楽しんでいただけたようで良かったです。
こちらこそ、参考にしていただけるようなものが書けるよう、これからも頑張りたいと思います。よろしくお願いします!
Posted by Rach at 2013年04月25日 15:35
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