2010年02月17日

イギリスではどうだか知らないけど フレンズ4-16その2

セントラルパーク。ロスとエミリー(ロスが今デートしているイギリス人女性)が、デートから帰ってきました。
ジョーイ: Hey, what have you guys been up to? (ねぇ、君ら二人は何をしてたの?)
ロス: Oh, we went to see a collection of Victorian doorknobs at the Cooper-Hewitt museum. (あぁ、僕たちは、クーパー・ヒューイット美術館でビクトリア朝時代のドアノブコレクションを見てきたんだ。)
チャンドラー: Without me? (俺抜きで?)
エミリー: My uncle dragged us there, but actually it turned out to be really interesting. (叔父様にそこに無理やり連れられて行ったんだけど、でも実際には[蓋を開けてみると]、本当に面白かったのよ。)
ロス: Yeah. (そうなんだ。)
エミリー: They were so ornate and beautiful. I mean, look at that! (Shows them a doorknob she has.) (そのドアノブはとっても装飾が凝っていて美しいの。ほら、見て! [エミリーは自分が手に持っているドアノブを見せる])
モニカ: I don't know how museums work in England, but here, you're not supposed to take stuff. (イギリスでは美術館がどんな風に機能しているのか知らないけど、ここアメリカでは、ものを取っちゃいけないことになってるのよ。)
エミリー: I, uh, I got it from the gift shop. They have really lax security there. (Chandler is shocked.) It's a joke. (They all laugh.) (私は、その、それをギフトショップで手に入れたのよ。そのギフトショップでは、本当に警備が手薄なのよ。[チャンドラーは(エミリーの発言に)ショックを受ける・驚く] ジョークよ。[全員が笑う])

ロスはある美術館に行ってきたと言っています。
DVD英語字幕は、doorknobs at the museum と省略されていて名前が出ておらず、ネットスクリプトの綴りは、the Cupert-Hewitt museum になっているのですが、正しい綴りは Cooper-Hewitt になります。
「クーパー・ヒューイット美術館」という、マンハッタンのフィフス・アベニューにある実在の美術館の名前です。

公式サイト: Cooper-Hewitt, National Design Museum
Wikipedia 英語版: Cooper-Hewitt, National Design Museum

上のウィキペディアに以下の記述があります。
the only museum in the U.S. whose collection is solely focused on contemporary and historic design
訳しますと、「コレクションが、現代デザイン、歴史的デザインのみに焦点を合わせているアメリカで唯一の美術館」ということですね。
ですから、ビクトリア朝時代のドアノブコレクションを見てきた、という話にぴったり合う美術館で、その美術館なら確かにそういう展示をやっていそうだと思えるということです。

チャンドラーの Without me? は「俺なしで、俺抜きで二人だけで行ってきたのか?」ということ。
「俺も行きたかったのに、行くなら俺にも声を掛けてくれよ」ということですが、これはもちろんジョークで、あまり楽しくなさそうな展示を見てきたんだな、と言う代わりに、「すごく面白そうなのに、どうして俺を誘ってくれなかったんだよ」という皮肉を言っているのですね。

エミリーの言う My uncle は、恐らく、フレンズ4-14その1 に登場した、レイチェルの上司のウォルサムさんでしょう。
drag は「引く、引きずる」。パソコンのマウスのドラッグも drag ですね。
その「引きずる」というニュアンスから、「人を無理に引っ張り出す、無理やり連れて行く」というニュアンスにもなります。
ロスと私は別に行きたくなかったんだけど、叔父様が無理やり私たちをそこに連れて行ったのよ、というニュアンスで、いやいや引きずられていった感じが出ているのですね。
but という逆接の後、actually it turned out to be really interesting となっているのは、「つまらないと思って行ったけど、実際には実に面白いものであることがわかったのよ」という感覚になります。

ornate は「飾り立てた、華美な、装飾の凝った」。
ornament 「オーナメント、飾り、装飾」という単語がありますが、恐らく関連語でしょう。

エミリーがドアノブをみんなに見せた後の、モニカのセリフが面白いです。
but here というのは、その前の in England との対比で、but here in the U.S. 「イギリスではどうだか知らないけど、ここアメリカでは」というニュアンス。
take stuff は「ものを取る」で、暗に「ものを盗む」ことを言っています。
展示されていたドアノブ、きれいだったのよ、ほら見て、と手の中のものを見せたのが、まるで展示物を盗んできたみたいに思えるからですね。
「展示物は勝手に取っちゃいけないことになってるのよ。イギリスの美術館ではどうだか知らないけど」とモニカは言っているわけで、イギリスでは展示物を勝手に取ってもいいわけ?みたいなニュアンスにもなります。
もちろん、エミリーが本当にくすねてきたと思っているわけではないでしょうが、何の説明もなく「ほら、これよ、見て!」みたいに言ったので、ちょっとからかってみたのでしょう。

エミリーは、展示物を盗んできたんじゃなくて、これはギフトショップでゲットしたものよ、と言っています。
They have really lax security there. の they は、その美術館を管理している人、lax は「ゆるい、手ぬるい、だらしがない」で、今回のように security の話だと、「警備が厳しくない、手ぬるい、手薄である」ということです。
「ギフトショップではセキュリティが手薄だ」というセリフはつまり、展示物は厳重に警備されていたけれど、ギフトショップは手薄だったから、そこからいただいてきたのよ、と言っていることになります。
「アメリカでは展示物を盗んじゃいけないのよ」に対して、「これは警備の手薄なギフトショップで手に入れた」とエミリーが答えたので、チャンドラーはびっくりした顔をしています。
それで「今のはウソよ、ジョークよ」とエミリーが言うことで、みんなが笑っているわけです。
真面目そうなエミリーですが、彼女なりのジョークだったということですね。

ギフトショップで品物を買った場合は、bought (buy) ではなく、got (get) を使うことも多いです。
bought と言うと「お金を出して買った」ことが強調されます。
ここでは、got という表現を使うことで、実際には bought 「お金を出して買った」けれど、「買った」のか「(盗んで)手に入れた」のかがわからない表現になっているため、その後の They have really lax security there. が生きてくるのですね。


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posted by Rach at 12:37| Comment(2) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rach様、
ドラマに登場する美術館まで調べるのですね。大したものです。ドアノブのコレクションで私が思い出すのは、「奥様は魔女」(原題 Bewitched)のサマンサの叔母さんがドアノブのコレクタだったことです。実際にこの美術館にドアノブが展示されているのか知りませんが、こんなこともひょっとすると関係していたのかなとも私は思いました。
英語のイディオムについては、今回出てきた、"turn out"(結局〜だとわかる)が非常に英語的だなと思っています。回転ドアが回って(turn)見えていなかったものが外に(out)出てきて見えるようになったというイメージで覚えやすいイディオムの一つです。マイク松谷
Posted by マイク松谷 at 2010年02月18日 22:14
マイク松谷様
興味深いコメント、ありがとうございます。
「奥さまは魔女」は子供の頃、夕方に再放送していたのを何となく見ていた程度なのですが、ドアノブ収集のおばさんの話は知りませんでした。

Wikipedia 日本語版: 奥さまは魔女 (テレビドラマ)
にも、

クララおばさん(Aunt Clara) サマンサの伯母。趣味はドアノブ収集。

という記述がありましたし、

Wikipedia 英語版: Bewitched
にも、
Aunt Clara (Marion Lorne) に関する記述で、

She has a collection of over a thousand doorknobs (inspired by Lorne's real-life collection).

と書いてあります。クララおばさんを演じている女優さんの Marion Lorne さんが実生活でドアノブをコレクションしていたことから、彼女演じるクララおばさんもそういう趣味の人だという設定になったようですね。

ついでに、
Wikipedia 英語版: Marion Lorne
を見てみると、「Lorne さんの実生活でのコレクションのうちのいくつかを、番組の中の小道具として使った」というような面白い話も載っていました。

今回のセリフで、「ドアノブのコレクション…ってどんなの?」と思ったのですが、有名なシットコムである奥魔女にそういう趣味の人がいるとすると、それを踏まえての話だった可能性は大いにあります。マイク松谷さんのように、ロスのセリフを聞いてクララおばさんを思い出した人が多いのだろうと考えると楽しいですよね。

turn out は非常に英語的な感じがしますね。turn や out それぞれの基本イメージをしっかり理解していると、様々な組み合わせの言葉に応用できる気がします。
Posted by Rach at 2010年02月20日 06:50
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