2010年03月19日

三面記事の有名人と同名 フレンズ4-18その3

フィービーは今、弟フランク夫婦の代理母になっています。
代理母として、みごもっている三つ子ちゃんの一人の名前を考えて欲しいと言われ、どんな名前にしようか考えているところ。
フィービー: So, I decided I'm definitely going to go with either Joey or Chandler. (それで、絶対にジョーイかチャンドラーかのどちらかでいこうって決めたわ。)
ジョーイ: Oh! Oh-oh, you gotta pick Joey! I mean, name one famous person named Chandler. (ああ! あぁ、ジョーイを選ばなくちゃだめだよ! だって、チャンドラーって名前の有名人の名前を一人、挙げてみてよ。)
チャンドラー: Raymond Chandler. (レイモンド・チャンドラー。)
ジョーイ: Someone you didn't make up. (でっちあげじゃない誰かだよ。)
チャンドラー: Okay, there are no famous Joeys. Except for, huh, Joey Buttafucco. (それじゃあ、有名なジョーイって名前の人間もいないぞ。あー、ジョーイ・バタフッコを除いてはね。)
ジョーイ: Yeah, that guy really hurt us. (ああ、あいつのせいで、俺たちは本当に傷ついたんだ。)
フィービー: Well, how about a compromise then, okay? What if it's like y’know, Chan-no-ey? (そうねぇ、それなら、歩み寄るのはどう? 例えばこういうのだとどうかしら? チャン・ノウ・イーとか。)

フィービーは、お腹の子供の名前について、ジョーイかチャンドラーかのどちらかにする、と言っています。
go with を直訳すると「…と一緒に行く」ということで、ここでは「…(の線)で行く」という感覚ですね。
それを聞いたジョーイとチャンドラーの二人は、やはり自分の名前をつけてもらいたくて、お互いに相手の名前より自分の名前の方が良いことをアピールしようとします。

Name one famous person named Chandler. は、最初の name も、後ろの named も、どちらも動詞として使われていますね。
最初の name の方は「名前を挙げる」という意味。
後ろの named は「人に…という名前をつける、人を…と名づける」という他動詞の過去分詞形で、person named Chandler は「チャンドラーという名前をつけられた人」という意味になります。
つまり、「チャンドラーという名前をつけられた一人の有名な人の名前を挙げてみろ」→「チャンドラーという名前の有名人を一人挙げてみろ」ということです。
ジョーイは、「チャンドラーなんてつまらない名前だよ。有名人でそんな名前のやついるか?」と言いたいのですね。

そこですかさずチャンドラーは、得意気な顔で「レイモンド・チャンドラー」と答えます。
レイモンド・チャンドラーは有名なアメリカのハードボイルド作家ですね。
Wikipedia 日本語版: レイモンド・チャンドラー
レイモンド・チャンドラーの作品 The Long Goodbye は、清水俊二さんが翻訳された「長いお別れ」の他に、あの村上春樹さんが「ロング・グッドバイ」というタイトルで翻訳されたものもあります。
ですから、レイモンド・チャンドラーは、日本人の間でも有名な作家だと言えるでしょう。
ちなみに、1973年に The Long Goodbye (邦題:ロング・グッドバイ)のタイトルで映画化もされています。
主人公の探偵フィリップ・マーロウ役はエリオット・グールド。フレンズで、ロス&モニカのパパであるジャック・ゲラーを演じている俳優さんですよね。

チャンドラーという有名人を挙げろと言われて、その通り、超有名人を挙げたチャンドラーですが、その後のジョーイの返しが面白いです。
make up は「作り上げる」ですから、この場合は「(ないものを)でっち上げる」という感覚。
Someone you didn't make up. を直訳すると、「お前がでっちあげたのではない誰か(だよ)」ということで、つまり、「レイモンド・チャンドラーだなんて、適当な名前をでっちあげないで、ちゃんとした実在の人物の名前を挙げろよ」とジョーイは言いたいのですね。
このセリフから、ジョーイは、超有名作家である、レイモンド・チャンドラーの名前を知らないことがわかります。

レイモンドを知らないと話にならないので、今度はチャンドラーが、「じゃあ、お前のジョーイって名前の方はどうなんだよ? ジョーイって名前の有名人もいないじゃないか。…を除いてはね」と言って反撃しています。
Joeys は、「ジョーイという名前の人」を複数形にしたもの。

ジョーイなんて有名人は、ジョーイ・バタフッコしかいない、というチャンドラーに対して、ジョーイは、Yeah, that guy really hurt us. と残念そうな言い方をしています。
これも直訳すると、「そうだな、あの男は本当に俺たちを傷つけた」ということで、us は自分と同じジョーイという名前の人々を指しています。
hurt は自動詞だと「痛む」で、他動詞だと「…痛める、けがをさせる」「(評判・感情などを)傷つける」「損害を与える、害する」という意味になります。
今回の hurt us は、物理的、肉体的に傷つけるのではなくて、ジョーイという名前の人たちを精神的に傷つける、という感覚ですね。

チャンドラーの挙げたバタフッコという人物がどんな人が知らなくても、チャンドラーが「ジョーイって名前の有名人はバタフッコくらいしかいないじゃないか」「ああ、そいつのせいで、俺たちジョーイって名前の人間は心を痛めてるんだよ、迷惑をこうむってるんだよ、いやな思いをしてるんだよ」というやり取りから、同名であることが名誉であるような人物ではない、ということがわかります。

英語の解釈としては、「同じ名前であることを名誉なこととして自慢できないような、そういう名前の有名人がいる」ということがわかればそれで良いわけですが、せっかくなので、その人物がどういう人かをここで紹介しておきましょう。
フレンズのセリフで名前が出てきて、観客が「ああ、あの人」とピンと来るぐらいの有名人ですから、やはり、ウィキペディアにありました。
Wikipedia 英語版: Joey Buttafuoco

ウィキペディアの最初の説明部分を以下に引用させていただきます。

Joseph A. "Joey" Buttafuoco (born March 11, 1956) is an American auto mechanic who made headlines in 1992 for his affair with then-underage Amy Fisher (born August 21, 1974), who subsequently shot Joey's wife, Mary Jo Buttafuoco (born May 15, 1955), in the face.

生年月日は省略した上で訳しますと、
「ジョセフ・A (ジョーイ)・バタフッコは、アメリカ人自動車整備士で、1992年に、当時未成年だったエミリー・フィッシャーとの情事で新聞をにぎわせた人物。エイミーはジョーイと関係を持った後、ジョーイの妻であるメアリー・ジョー・バタフッコの顔を銃で撃った。」

つまり、そのジョーイ・バタフッコという人物は、エイミーという未成年と関係を持っていて、そのエイミーがジョーイの妻を拳銃で撃ったために新聞に大きく取り上げられ、有名人になってしまった、ということのようです。
ウィキペディアでは、Incident として、その衝撃的な事件の内容が書かれています。
まとめさせていただくと、
「妻のメアリーは顔を撃たれたにもかかわらず、自分を撃った人物が着ていたTシャツがどんなものであったかを証言した。そのシャツは、バタフッコが情事の相手であるエイミーにあげたプレゼントだったので、妻を撃った狙撃者はエイミーであることがわかった」
ということだそうです。

そういうセンセーショナルな事件のため、夫であったジョーイの名前は一躍有名になり、その事件の後も、テレビショウなどのメディアに何度も登場しているようです。
そういう事件の中心人物である人と同名、ということは、自分たちジョーイという名前の人間にとっては、あまり嬉しいことじゃないよ、同名の人として彼の名前が出るせいで、俺たちは傷つくんだよ、とジョーイは言いたいようですね。

上のウィキペディアの下にある、Categories というところには、American people of Italian descent 「イタリア系アメリカ人」という記載があります。
Joe という名前は、典型的なアメリカ人男性Joe フレンズ3-12その21 でも触れたようにアメリカでよくある名前ですが、これが、イタリア系の Joey になると人数が少なくなってしまい、有名人を探すのが難しくなってしまう、という感じなのでしょうか?
Joey という名前の有名人は他にもいそうな気がしますが、今回のセリフではジョーイが聞いたら嬉しくない名前を、チャンドラーがわざと挙げた、ということなのでしょうね。
日本でも人気のアメリカのシットコム「フルハウス」(Full House)では、男性メインキャラ3人のうちの1人のコメディアンは、Joey という名前で呼ばれていますよね。(彼の正式な名前は、ジョゼフ・アルヴィン・グラッドストーン(Joseph Alvin "Joey" Gladstone)。)

ジョーイとチャンドラーがお互いの名前をけなし合うので、それなら a compromise 「妥協、歩み寄り」をしたらどう?とフィービーは提案しています。
そこで出した案が、Chan-no-ey。
文字を見てわかるとおり、Chandler と、Joey の名前を半分ずつくっつけた名前です。
二つの名前のどちらか決められなくて、二つを合体させた名前を考える、というのは日本語のコメディーでもありそうな発想ですが、発音が、「チャン・ノウ・イー」みたいな感じで、なんだか中国系の人にありそうな名前に聞こえるのも楽しいところです。


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posted by Rach at 11:50| Comment(11) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。中年後期のkoroyakunです。
楽しい解説ありがとうございます。ここのシーンは最初字幕なしで見てましたが、3回見てもname one famous person named Chandlerのところが分かりませんでした。でも字幕見て、なるほど活きた会話のせりふだな、と思いました。
ところで Raymond Chandlerの場合、Chandlerは苗字ですよね?この辺は英語名の面白いところですよね。他にもJames,Toms,Robertsなどがあることを思い出しました。
Posted by koroyakun at 2010年03月20日 00:51
たびたび来させていただいてます、Madelineです。
私も最近ブログを始めました。
私の好きなことを書いていこうというページなのですが、今フレンズのことを書いていて、こちらのブログさまを紹介させていただきたいのですが、いいですか??
それと、リンクもさせていただきたいです。
お返事まってます。

この、エピソード、やっぱりJoeyのばかっぷり、最高ですね:D

Posted by Madeline at 2010年03月21日 22:14
koroyakunさんへ
「楽しい解説」と言っていただき、ありがとうございます。
name が動詞で使われていて、どちらも他動詞ながら「名前を挙げる」「名前を付ける」という違った意味なのが、興味深いですね。日本語だと「nameする」とでも表現されるような動詞の感覚が、結びつく目的語によって、「(名前を)挙げる」「(名前を)付ける」のようにバリエーションが広がるところが、英語の動詞の面白さなのでしょうね。

それから、おっしゃるように、有名なレイモンド・チャンドラーの場合は苗字ですよね。それが名前(first name)としても使われるのが確かに面白いです。
私もそういう名前として、エルトン・ジョン(Elton John)とか、ジョージ・マイケル(George Michael)などを思い出したのですが、調べてみたらどちらも本名ではありませんでした(笑)。

英辞郎では、
James=ジェイムズ(ファミリーネーム)。ファーストネームにも。
との記載がありますし、
Roberts=ロバーツ(ファミリーネーム) 【語源】「Robert の息子」の意。
と書いてあります。

過去記事、ボビー・ボビー フレンズ3-7その31
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470984.html
では、Robert Bobby (ロバート・ボビー)というお医者さんの名前が出てきて、Robert の愛称は Bobby だから、それだと、Bobby Bobby になっちゃうよ、というやり取りもありました。
名前の感覚は、ノンネイティブにはピンと来ないものも多いですが、そういう視点で見るのも楽しいですよね。


Madelineさんへ
まず最初に、同じコメントが2回入っていましたので、1つは削除させていただきました。うちのブログのコメント欄は反映するのに時間がかかる場合が多々あり、「書込」ボタンを押した後、投稿したコメントが消えたように見える場合があるのです。
きっと今回もそういう現象が起きたので、2回も入れていただく手間をおかけすることになってしまったのだと思います。申し訳ありませんでした。

ブログを始められたのですね? 貴ブログのタイトル、素敵です。
拙ブログをご紹介していただけるとのこと、誠に光栄です。ありがとうございます。リンクもご自由にはって下さって結構です。

今回のエピソード、レイモンド・チャンドラーを知らないのが、いかにもジョーイらしくていいですよね。

ブログは自分の好きなことを自由に綴れば楽しく続けられると思います。マイペースでブログを楽しんで下さいね。
Posted by Rach at 2010年03月23日 10:52
ジョーイバタフッコの名前はピンとこなかったんですが、レイチさんの説明で思い出しました。エイミーフィッシャーの名前は有名ですね。彼女の事件は「エイミーフィッシャー」というタイトルでおそらく映画になったと思いますが。。この名前は「人を殺してまで男を手に入れようとする女」の代名詞ですね。
Posted by テリトリー at 2010年04月09日 22:14
テリトリーさんへ
私は上の記事を書くためにネット検索するまで、どちらの名前も全く知りませんでした。

Wikipedia 英語版: Amy Fisher
http://en.wikipedia.org/wiki/Amy_Fisher
の Movies about Amy Fisher という項目に、4つタイトルが書いてありますね。TV映画みたいですが、彼女を描いた作品があるということですね。衝撃的な事件だっただけに、悪女の代名詞として使われるわけですね。
Posted by Rach at 2010年04月10日 07:29
Rachさん、こんばんわ

またよろしくお願いします。
今回は2つで、どちらもジョシュアのセリフなんですが・・・
ダックとチックを追い出した後も身震いして、
Oh, they’re working on this week・・・ここのtheyってその前のアパートのことですか?でもそれならtheyじゃなくてit?って思ったんですが・・字幕では改装中で、となっていたんですが今一つピンと来ません。

そのあとの
They-they-they can smell fear.
(字幕ではsmell the fearとなっていました)smell the fear of で英辞郎では「(人)の恐怖を感じ取る」というイディオムが載っていたんですが、意味からするとこのこと?って思ったんですがこの場合字幕にもスクリプトにもofは載っていません。ofを省略しているのか、それともそもそもそのイディオムではないのか??

とっても細かいなぁ、とは思うのですがこういう小さい所によく引っかかってしまいます・・・よろしくお願いします。
Posted by やっちん at 2014年08月04日 18:20
やっちんさんへ
ご質問ありがとうございます。

では早速1つ目。
レイチェルの家で食事をしている時に、ニワトリとアヒルがうろうろしているので、ジョシュアが嫌がるシーンでしたね。
レイチェル: Okay, y'know, would you feel better if we went someplace else? I mean we could pack all this stuff up and y'know go to your apartment. (いいわ、ほら、別の場所に行けば、あなたは気分がよくなるかしら? これ(この食事)を全部詰めて、あなたのアパートメント(家)に行けばいいんじゃない?)
ジョシュア: Oh, they're working on this week. It's a total mess. But uh, I'm staying at my parents' house. We could go there. ([訳は省略] ぐちゃぐちゃなんだよ。でも、僕は(今)両親の家に泊まってるんだ。そこになら行けるよ。)

この they は「アパートの工事をしている人を漠然と指す」ニュアンスになります。
work on は「せっせと働く、仕事を続ける、従事する」のような意味。
このセリフ1文だけだと、具体的なイメージがわきにくいですが、「あなたのアパートに行きましょうよ」という話の流れから、そのアパートの話の続きとして、
「今週、人々が work on している(働いている)状態である」→「そこでは今週、作業が行われている」→「工事中である」
というニュアンスになるわけです。
その次の It's a total mess. 「全くの混乱・散乱・散らかり」というセリフからも、「アパートがぐちゃぐちゃ」→「アパートが工事中、修理中、改装中」であることが連想されるわけですね。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
work on [phrasal verb]
work on something : to spend time making, improving, or repairing something
例) Every weekend you see him working on his car.
つまり、「何かを作る、改良する、修理することに時間を費やすこと」。
例文は、「毎週末、彼が自分の車をいじっているのを見るよ」。

ジョシュアのセリフも、They're working on my apartment. ということですね。
ですから、具体的な意味としては「改良する・修理する」ということになるでしょうが、改良・改装なのか、修理なのかという細かい点はここでは問題ではなく、アパートでは誰かが作業中である、ということが言えればいい、というのが、問題のセリフのニュアンスになるでしょう。
work on というフレーズのニュアンスを出して訳すと、「(アパートでは)今週、人が作業中なんだ」ということで、「改装・修理」などの言葉を使わず、漠然と「人々が・業者が作業中」であることを言っている感じですね。
「(僕のアパートでは)人が作業中」→「アパートは工事中」ということになるわけです。

こういう「漠然と人を指す they」というのが英語にはよく出てきますが、特に誰だと説明する必要がない(作業している人が誰かは問題ではない)からそういう they を使っているので、ポイントは「(誰かが) work on している」という動詞の部分にあります。アパートを主語にしようとすると「アパートが改装・修理されている状態」のように受動態を使うことになりそうですが、そんな回りくどい言い方をしないで、「漠然とした主語 they」を主語にして、「誰かがアパートを work on している状態」だと表現する方が英語としてもシンプルでわかりやすい、ということですね。

2つ目。They can smell the fear. について。
DVDの日本語訳は、
(字幕)僕をからかってる/(音声)僕をからかってるらしいな
になっていましたね。


smell は「においを感じる」というのが基本語義ですが、そこから「(陰謀など)に気づく、感づく」という意味としても使われます。

LAAD では、
smell trouble/danger etc. : to feel that something bad is going to happen
例) Actually, I should have smelled trouble earlier.
つまり、「何か悪いことが起ころうとしていると感じること」。例文は、「実際、もっと早く、トラブルに気づくべきだったのに(実際には気づくことができなかった)」。

日本語でも、何か怪しいな、裏があるなと感じた時に、「これは何か、匂う(におう)な」などと言いますから、目で見てはっきりとわかるわけではないけれど、別の感覚で何かを感じる、という場合に、smell(匂う)という言葉を使うのは、日英共通のように思いました。


smell the fear of someone の形だと「人の恐怖を感じ取る」ということになりますが、ここではわざわざ「僕の」とは言わず、smell the fear だけで済ましている感覚ですね。

the なしの smell fear なら、漠然と「恐怖を感じ取る」で、今回の smell the fear は、the による特定感があるので、ジョシュアの恐怖を指していることが感じられます。
言っている内容としては、「鳥たちは、僕の恐怖を感じ取ることができる」ということですが、「僕の」とはっきり言いたい場合には、(ネット検索してみたところ) smell the fear of me のような形ではなく、smell my fear のような所有格を使う方が一般的なようで、「主語+smell my/your fear」という使用例がネットではたくさん見つかりました。
鳥に対して、my fear 「僕の恐怖」と表現するのがしゃくだったのか(笑)、ジョシュアはあえて、「僕の恐怖」とは表現せず、「その恐怖、この恐怖」のように言っていることになるでしょう。the fear だけで、my fear だとわかる、ということですね。

そのように、smell (the) fear という言い方は、「恐怖を感じ取る」という一般的な表現ですが、今回は、相手が動物であること、そして彼らが扉の向こう側にいることから、余計にその smell という動詞が「生きてくる、しゃれている」セリフになっていると私は思いました。

鳥たちにビビっていたことから立ち直り(笑)、両親のアパートに行こう、ロマンチックだよ、と言ってレイチェルにキスしようとしたジョシュアでしたが、廊下からまた鳥たちの鳴き声が聞こえたので、「鳥たちは、匂いで、僕がビビってるのがわかるんだね」と言って、「鳥は扉の向こうにいて、中のジョシュアの様子は見えないのに、動物の嗅覚で、僕がまだ鳥に対して恐怖を抱いているのを感じ取っている。だからこうやって僕に対して鳴き声を上げて、僕を威嚇してる」というようなことを、ジョシュアは言いたいのだろうと思います。
レイチェルにキスしようとしているジョシュアは、もうすっかり鳥への恐怖心はなくなっているように見えるのですが、実はまだ内心かなりビビっていて、鳥たちにはその恐怖(the fear)を感じ取られてしまったな、ということで、相手(敵w)が動物であること、そして扉の向こうにいることから、「扉の向こうで見えないから、僕の姿ではなく匂いからその恐怖感を感じ取った」と表現しているところに、このセリフのポイントがあると思ったということです。

smell the fear 「恐怖を感じ取る」というのは、一般的に使われる表現だけれども、「その相手の動物が扉の向こうにいる」ということから、文字通り「動物はその嗅覚で、扉を隔てた先にある僕の恐怖を感じ取ることができるんだね」と表現したことが、この状況にぴったりで面白い、ということだろうと思いました(^^)
Posted by Rach at 2014年08月05日 11:37
Rachさん

詳しい解説ありがとうございました。
1つ目のtheyの使い方・・・
theyにもこんな風に漠然と表す使い方あるんですね。youのそういう使い方は文脈から判る様になったんですが、他の代名詞は前に出てきたものを指す、と思い込んでいました。work onも取り組むからこの場合は工事中!なるほど!です。もっと想像力を働かせなくちゃダメですね。

2つ目のsmellの解説もとっても判りやすく説明していただいてありがとうございました。単語の意味を基本語義から広げて考える!makeやhaveなんかも使われる意味とても広いですよね。
こういうことが瞬時に感じ取れるようになるともっと英語楽しいんだろうなぁ〜と思いました。その域に達するまでまだしばらくはRachさんの力をお借りしなければ駄目だなぁ・・・
今後ともよろしくお願いします。
Posted by やっちん at 2014年08月06日 16:21
やっちんさんへ
ご丁寧なお礼のお返事ありがとうございます。

they や work on のような基礎単語は、意味を限定するのが却って難しいですよね。どちらも漠然とした表現なので、具体的なイメージが浮かびにくいと言いますか。

smell については、「におう」が「目で見たもの以外の部分から感じる」というニュアンスになるのは、日本語に共通した感覚で面白いなと思いました。今回は「動物」であり「ドアの向こう」であることから、その単語がより効果的に使われたことになりますね。

これからもどしどしご質問下さいね。解説で飛ばした部分を補足できることは嬉しいし、いただいたご質問へお返事を書くこともとても楽しいのです。書くことで自分の頭も整理できて、私自身にとっても非常に勉強になっています。
こちらこそ今度ともよろしくお願いします(^^)
Posted by Rach at 2014年08月07日 15:21
Rachさん、お返事ありがとうございます。解説に出ていないところもドンドン質問していいとのお言葉、とっても嬉しいです(すでにしているんですが・・・笑)ちょっとだけ遠慮していたこともあったので・・・(^^)
これからもたくさん質問させていただきますね!

大阪、暑いんでしょね・・・連日の猛暑大丈夫ですか?ご自愛下さいね!
Posted by やっちん at 2014年08月07日 19:50
やっちんさんへ
温かいお返事ありがとうございます(^^)

質問していただけるのは本当に嬉しいことなのです。何年も前に書いた記事が、こうして生きていてくれている、というのが、ブロガー冥利に尽きる、という感じなんですよね。ですからどうか遠慮なんてなさらずに^^ これからもご質問を楽しみにお待ちしております。

大阪、暑いですよ〜。少し前は雨が続いていたのですが、晴れが続くと、ほんと暑いです、、がお蔭様で、体調も崩さず元気にしております。
やっちんさんもどうかご自愛くださいませ。
お互い、この夏を元気に乗り切りましょう!
Posted by Rach at 2014年08月07日 21:22
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