2010年03月24日

「捨てる英語勉強法<リスニング編>」を読んで

井上大輔さんの「捨てる英語勉強法 <リスニング編> ネイティブ英語は海外ドラマで学ぼう」(三修社)を読みました。
そのご本で私の著書や私のこのブログのことをご紹介下さっている、ということで、三修社のご担当者の方が、私に本を送って下さいました。ありがとうございます!

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捨てる英語勉強法 <リスニング編> ネイティブ英語は海外ドラマで学ぼう
捨てる英語勉強法 <リスニング編> ネイティブ英語は海外ドラマで学ぼう

井上さんのご本の中で、拙著 シットコムで笑え! 楽しくきわめる英語学習法 については、「英語字幕を出す順番」の話の中で、3人の著者のうちの1人として、例に挙げて下さっています。
また、アメリカンジョークのお話の中で、「『フレンズ』のアメリカンジョークを解説したブログ」として、拙ブログの URL を紹介していただきました。
大変光栄で嬉しいです。ありがとうございます!

私個人の本やサイトを紹介して下さった以外にも、『フレンズ』というドラマのことが何度も何度も登場します。
そこも、『フレンズ』のセリフを解説したこういうブログを書いているブロガーとしては、とっても嬉しいところです。
井上さんのご本の p.115 に「海外ドラマリストアップ」としてドラマがいくつか紹介されていますが、その”1番目”に挙げられているのも『フレンズ』(!!)
井上さんによる解説には、「英語もわかりやすく、ドラマで英語を勉強したいと思っている人が最初に使うのにぴったり」とあります。
Totally! 「まったくその通り!」
そんな風に言っていただけると、フレンズに特化したブログを5年近く続けてきた甲斐もある、というものです。

p.95 にも、「海外ドラマを使って英語を勉強している人に人気の『フレンズ』の場合」という記述があります。
p.128 でも、『フレンズ』や『フルハウス』などのホームドラマをオススメされていて、
特殊な状況が舞台になっているドラマに比べ専門用語やスラングが少ない
日常用語が多いので、覚えた英語をそのまま普段の生活で使えるという利点
などがオススメの理由として挙げられています。

また、「知ってドラマを10倍楽しむ英語フレーズ」というコラムが各章の間に挿入されているのですが、そこに出てくるフレーズは、フレンズを使って学習している方にはお馴染みのものばかり。
受験英語時代には全く知らなかったフレーズ、でもフレンズで英語学習をするようになってからは何度も耳にしたフレーズが満載で、「あぁ、井上さんも、私と同じように海外ドラマで英語を学ばれたんだなぁ」ということがよく実感できます。

また、井上さんのご本を読んでいて共感できるなぁ、と思うのは、
p. 22 「資格試験の英語と話し言葉の英語は質的に異なります」という部分。
p. 23 資格試験で高得点も取って、かつネイティブの英語がわかるようになるためには、資格試験の英語とは別に、ナチュラルな英語を勉強する必要があるのです。

これについては全くその通りですね。
私も「TOEIC の点数を伸ばすにはどうすれば良いか?」と尋ねられたら、TOEIC という試験に特化した勉強をすべきだ、と答えます。

拙ブログでも、「TOEIC などの試験で高得点を取ることと、海外ドラマのセリフを理解することとは、ベクトルが違う」ということを自分でよく言っています。
シットコムを字幕なしで見てネイティブと同じように笑えるようになったのは、TOEIC で900点超えをしたからでも、満点を取れるようになったからでもないのです。
「海外ドラマを教材にして英語を学んできたから、海外ドラマの英語で笑えるようになった」というごく自然な流れなのですね。

p.86 では、「効率の良さを追求していると、詰め込み学習、単なる暗記になり、勉強がつまらなくなる」という話が書いてあります。
ではどうすればいいか? その答えとして井上さんは、

p.87 勉強を面白くするためには、意図的に寄り道をするムダの多い「詰まる」勉強法を行えばいいのです。そうすることで、英語学習が単なる暗記ではなく、ドラマを楽しみながら自然と身につけた英語を自分なりに整理していく知的冒険のプロセスに変わります。

「知的冒険」、いい言葉ですね。
私も、井上さんのおっしゃる「知的冒険のプロセス」を楽しんでいるつもりです。
私は元々、「いつまでに、TOEIC で何点取らないといけない!」というようなプレッシャーから英語を始めたわけではなく、ただ、「英語を理解したい、映画や海外ドラマを英語で普通に楽しめるようになりたい」という気持ちから始めただけでした。
ですから誰かに強制されなくても、「どうしてこの英語がこういう日本語になるんだろ?」と思っていろいろ調べたくなってしまうのですね。
私にとっては答えを見つける過程そのものが楽しい。だから、最終的に答えが見つからなくてもそれはあまり気にならないのです。
調べる過程で出会ったさまざまなことが自分の英語力を少しずつ高めてくれているのを身をもって感じているから、最終的に答えに到達できなくても、そこで不安になることはありません。

必要な知識だけを素早く身に付けることや、存在する答えに早く行きつくことだけを目標にするような風潮は日本ではいつまで経ってもなくならないようですが、私の中ではそういう考え方は、いつまでも「受験生の時のノリ」を引きずっているようで、あまりいい気持ちがしません。
大人になってから何かを学ぶ場合は、もっと学ぶプロセスを楽しめる気持ちを持って学んでいきたいと思うのですね。
私は本を読む時も、「本を読む」という行為そのものを楽しみたいので、速読などには全く興味がありません。
知識を素早く仕入れることが目標なのではなく、読書というひとときを楽しみながら、著者とじっくり対話したいと思うのです。
英語学習もそれと同じで、「使えるフレーズを短期間でできるだけたくさん覚える」という「暗記」には全く興味がありません。
ですから、私の英語学習には、「何かを暗記するための時間」というものがそもそも存在しません。
全く同じことを何度も繰り返すのは、私にとっては苦行なので、そういう行為は性に合わないのです。
私が提唱する「Rach流DVD学習法」では、「はしょる3段階」という、字幕や音声を切り換えながら3回見るという行為はありますが、それぞれの段階で得る情報が違うので、「全く同じ行為を繰り返す」のとは別物だ、という認識です。
必要だと思える段階をこなし、フレンズをシーズン1じっくり見てきたら、その中での頻出表現は自然に記憶に残っていくだろう、という学び方なのですね。

昨今のように、「就職・昇進のために英語の資格が必要」という風潮が強まれば強まるほど、それは受験生に与えられるプレッシャーと同じものになってしまい、プロセスを楽しむ余裕がなくなってしまう、英語という語学を学ぶ喜びそのものが失われてしまうようで、とても寂しい気がします。
自分の母国語以外の言葉で、他言語の人とコミュニケーションできるなんてとても素晴らしいことなのに、いつまでも「資格としての英語」という、受験英語のベクトルの延長上で英語が語られているようで、こんなことでは英語嫌いの日本人を増やすだけなのではないか、とも思えます。
現状では、「英語なんて話せなくてもいい、ただ、TOEIC の点数さえ上がれば」みたいなことを考えている人もたくさんいるのでは?と思えるほど、多くの人がその資格試験に翻弄されているような気がしますね。
「自分は英語学習を”楽しんでいる”余裕なんかない。ただ TOEIC の点数さえ上がってくれれば」と願っている方は、海外ドラマを使った英語学習は間違いなく「回り道」でしょう。

井上さんも、冒頭で以下のように書かれています。

p.12 「この本で紹介している方法は、短期間で結果が出るものではありません。
ドラマを使った勉強法は、楽しみながら勉強しているうちにだんだんと効果が現れるという、漢方的な勉強法です。
短期間での効率的な英語学習を目指す人にも、この本はお薦めできません。英語力を伸ばすプロセスを楽しみたいと考える人がこの本を読むようにしてください。

「漢方的」という表現は当たっているなぁ、と思います。

ずっと続く日本の「英語学習ブーム」のような流れの中で、いろいろな宣伝文句に踊らされずに学んで行こうとするならば、まずは、「どういう英語力をつけたいのか?」をはっきりさせておく必要があるでしょう。
「短期間で英語の資格を取りたい」のか、「海外ドラマや映画の英語が理解できるようになりたい」のかで、学習法は変わってきます。
受験勉強と同じで、資格試験が目標ならば、それに合った勉強をすべきです。
受験生の時も、マークシート試験しか受けない科目の場合は、記述問題の勉強をする必要などありませんでした。
それと同じことで、TOEIC なら、公式問題集や、TOEIC の傾向をよく研究してある問題集にたくさん取り組んで、問題を TOEIC のスピードに合わせてテンポ良く解いていくスキルを磨くのが、一番手っ取り早く確実な方法ですね。
そして、海外ドラマなどを理解したいというのであれば、実際に海外ドラマを見てみるしか方法はありません。
生きた英語であるセリフをたくさん浴びないことには、それを理解する感覚は身につかないからです。

自分が目指す英語力は何か?をまずはよく考えてから、人が示す学習法というものに取り組むようにしたいですね。
求めるものと違う方向性の学習法を選んでしまっては、時間とお金の無駄になってしまう恐れがあります。

井上さんは御著書で、入門編、初級編、中級編、上級編に分けて、海外ドラマを使って英語を学ぶ段階を説明して下さっています。
それは実際に、井上さんの本を読んでいただければ、と思います。

井上さんの本の帯にあるように、
映画やドラマの英語がちょっとわかったら、かっこよさそう!と思いつつも勉強には手をつけていない
というような方が、井上さんの「捨てる英語勉強法」を読んで、実際に海外ドラマを使った英語学習を始めて下されば嬉しいな、と思います。
そして、その中の何パーセントかの方が、私がイチオシしている「フレンズ」を選んで下されば、さらに嬉しいことだと思います。
少しでも多くの方が、「いやいや英語を学ばされている」のではなく、「自分から進んで英語を学ぶ」という楽しみに気づいて下さればいいな、と願っています。


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posted by Rach at 07:34| Comment(8) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TOEIC満点とは、ものすごいですね!。
海外ドラマのDVDを鑑賞することで英語が身に付くのでね。
英語じゃないのですが、最近韓国ドラマにはまってしまってます。
Posted by torotan at 2010年06月24日 00:30
torotanさんへ
お褒めのお言葉、ありがとうございます。
DVDをじっくり鑑賞することで、日本にいながらでも生きた英語を身に付けることは可能だと思っています。
私はあまり韓国ドラマには詳しくないのですが、韓国ドラマが好きで、韓国語を学ぼうと思った、という方も多いですよね。本来、語学というのはそういう気持ちから学び始めるべきものなのではないかな、と思っています。
Posted by Rach at 2010年06月24日 09:47
学習歴みせていただきました。
フレンズのDVDで英語学習したんですね。
ただ、もともと700も超えていたとはびっくりです。
700もの高得点をとるまでは、どのような学習方法をしていたのですか?
Posted by torotan at 2010年06月27日 01:22
torotanさんへ
「もともと700も超えていた」の件ですが、
900点超えまでの道のり
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470173.html
にも書いた通り、2001年4月にフレンズを使ったDVD学習を始め、TOEIC初受験が2001年9月ですから、一応、5, 6ヶ月は勉強し、試験の準備をしてから受けた点数です。全く何の準備もせずにいきなり受けて 700点を超えたわけではありません。

「TOEICの点数を短期間で伸ばす」というキャッチフレーズの本がよくありますが、TOEIC はまさにそういうテストなんですよね。その過去記事にも書いた通り、私も、「語研 はじめてのTOEIC TEST」という問題集を使って、一応の対策をしていましたから、その結果が初受験で出た、ということでしょう。

そして、まだ模索状態でありながらも、DVD英語学習もそれくらいの期間続けた後ですから、多少はリスニング力もアップしていて、その効果が少しは出た、ということもあると思います。

また、私は受験生時代から英語が好きでしたので、その時に身につけた知識の貯金のお陰であることも否めないと思います。
私は共通一次世代なのですが、TOEIC の特にリーディングパートは、共通一次の延長線上にあるものだと思えます。身も蓋(ふた)もない言い方になってしまいますが、学生時代に英語が得意で、共通一次のような受験英語のマークシートの試験で高得点が取れるような人は、その貯金である程度の点は稼げてしまう、TOEIC とはまさにそういうテストですね。英検の場合はそうはいかなかったので、私は英検1級の方がずっと大変で、合格した時の達成感も英検の方が何倍も大きかったです。
Posted by Rach at 2010年06月28日 10:56
DVD学習のほか、TOEIC対策も大事なんですね。
英検のほうが大変だったとはびっくりです。
私は、これから貯金をはじめないといけないようです。。。
ありがとうございました。
Posted by torotan at 2010年07月05日 23:06
torotanさんへ
TOEICは、試験対策で点数が大きく伸ばせるテストですから、TOEICで高得点を狙うなら、「対策」するのが一番手っ取り早いと思います。TOEIC で高得点を取ることと、海外ドラマの英語を理解するのとはベクトルがかなり違いますので、「TOEIC の点数だけ」が目的の方には、私は海外ドラマで学ぶことはオススメしていません。

私は大学の時に、英検1級(それも一次試験)で撃沈したので、トラウマがあったんです。それもあって、英検に対する思い入れは、TOEIC の10倍くらいありました。世間での認識はどうかわかりませんが、今でも、TOEIC満点よりも、英検1級の方が、”私としては”誇りです。だから、ブログ下のキャッチフレーズも、「英検1級、TOEIC満点(990点)」のように、英検を先に書いているのですね。
Posted by Rach at 2010年07月07日 13:40
たくさんアドバイスありがとうございます。
そうですね。TOEICで点数を取るより、英語を普段使えることが大事ですね。韓国ドラマも数を見ていると、繰り返し使っている言葉は、何となくわかるようになってくるので、英語だとなおさらよいかもしれませんね。何かツボにはまる様なドラマが見つかるといいな。
「大草原の小さな家」なんかいいのかな??

英検は中学、高校のときチャレンジしてましたが、社会人になったら、TOEIC,TOEICで英検はさっぱり聞きませんね。英検1級は、Rachさんにとって、とても思い入れのある資格なんですね。
Posted by torotan at 2010年08月08日 02:20
torotanさんへ
私はあまり韓国ドラマにはハマらなかったのですが、韓国ドラマが好きになって、韓国語を学びたくなった、という方の気持ちはよくわかりますし、またそういう方は韓国語の上達も早いだろううと思います。「大草原の小さな家」はチラっとしか見たことがないので私はよくわかりませんが、何よりもご自分がお好きな作品を選ばれることが大切ですよね。

私は英検に対して非常に思い入れがあるのですが、やはり自分の過去の経験が大きく関係してくるのでしょうね。思い入れを持ってしまうと、英語力をはかる資格として、英検と TOEIC のどちらが優れているか、という客観的な問題ではなくなってくるのですが、自分の経験から何かしらのこだわりを持ってしまうのが人間だろうと思いますし、そういうただのこだわりであっても、英検1級を取るために頑張ったことは、自分にとっては良かったと思っています。実際に試験勉強をしている時も、TOEIC よりも英検の勉強の方が(大変でしたけれど)ずっと楽しかったです。
Posted by Rach at 2010年08月10日 09:39
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