2010年04月06日

アルジャーノンに花束を フレンズ4-19その4

モニカ: (entering with Rachel) All right, boys. Last chance for the tickets. ([レイチェルと一緒に部屋に入ってきて] いいわ、男子達。チケットの最後のチャンスよ。)
レイチェル: Otherwise, I'll give them to my new boyfriend, Joshua. (さもないと、そのチケットを私の新しい恋人ジョシュアにあげちゃうわよ。)
チャンドラー: No, thank you. (いいや、結構だ[いらないよ]。)
ジョーイ: Wait, wait, wait, wait! (To Chandler) Come on, come on! Let's trade. The timing's perfect! I just clogged the toilet! (待って待って待って! [チャンドラーに] なあ、なあ! 交換しようよ。完璧なタイミングなんだ! 俺、ちょうどトイレを詰まらせちゃったんだよ!)
チャンドラー: Look, I want those basketball seats as much as you do. Okay? But we can't live in the small apartment after we've lived here! Didn't you ever read Flowers for Algernon? (なぁ、俺はお前と同じくらい、あのバスケの席を欲しいと思ってるよ、だろ? でも、ここに住んでしまった後で、あの小さな部屋に住むことなんてできないよ! お前は「アルジャーノンに花束を」を読んでないのか[読まなかったのか]?)
ジョーイ: Yes! Didn't you ever read Sports Illustrated? No, I didn't read yours! But come on, we can go to the game tonight! (読んだよ! お前こそ、「スポーツ・イラストレイティッド」を読んでないのか? いいや、(やっぱり)お前の言った本を俺は読んでないよ! でも、なぁ、俺たち今夜、試合を見に行けるんだぞ!)

モニカとレイチェルは、チケットと部屋を交換する最後のチャンスだと言って、チャンドラーとジョーイに迫ります。
チャンドラーは、「遠慮する」と断るのですが、ジョーイはやっぱりチケットをあきらめきれません。
「今、交換するにはタイミングがパーフェクトなんだよ!」と言っていますが、その理由は、「トイレを詰まらせちゃったから」(笑)。
clog は「(管などを)詰まらせる」という意味で、フレンズ2-16その1 でも説明しました。

「たった今(ちょうど)トイレを詰まらせてしまった」という意味では、「少し前に詰まらせて、今でも詰まった状態である」ことから、本来であれば「現在完了形」が使われるところですが、アメリカ英語ではこのように、イギリスなら現在完了形を使うところを、あっさりと(簡単な)過去形で済ましてしまう、ということも多いですね。
just という副詞が入っているので、過去形であっても、現在完了形のニュアンスに近いことがわかる、ということでしょう。
トイレを詰まらせてそれを直すのが面倒くさいから、このタイミングでモニカたちに部屋を返しちゃおうよ、とジョーイは言いたいのですね。

チャンドラーは、今のこの広くてきれいな部屋に住んでしまった後で、元の小さな部屋には住めないよ、と言っています。
その後で、「お前は「アルジャーノンに花束を」を読まなかったか?」と言っていますね。
「アルジャーノンに花束を」は、日本語にも翻訳されている有名な小説ですね。
日本語では「アルジャーノン」という表記になっていますが、チャンドラーの発音は「アルジャノン」という感じです。

Wikipedia 日本語版: アルジャーノンに花束を

知的障害を持った青年チャーリィが脳手術によって天才になるお話です。
あらすじなどは、上のウィキペディアに詳しく書いてありますので、それをご覧になって下さい。

手術を受けて、さまざまな知識を身に付け新しい世界を知ってしまったチャーリィは、元の何も知らなかった頃の自分には戻れない、というような意味で、例えに出したのだと思われます。
何もわからなかった頃は、その現状に満足していた、でも、もっと素晴らしい世界があることを知ってしまったら、もう元には戻れないんだ、こんな大きくて快適な部屋で暮らすことに慣れてしまったら、今さら元の小さな部屋には戻れないよ、ということですね。

Didn't you ever read...? という否定の疑問文は、「読まなかったのか? 有名だからもちろん読んで内容を知ってるはずだろ?」というニュアンス。
Have you ever read...? だと「今までにそれを読んだことがあるか?」という「読んだ経験を尋ねる」文になりますが、今回の場合は、読んだかどうかを尋ねているというよりは、「当然読んでるよな? 読んでないってことはないよな?」という気持ちで「読まなかったのか?」と言っている感覚でしょう。

当然読んでて内容を知ってるだろ?みたいに言われたジョーイは、Yes! と答えます。
この yes はこれまで何度も説明してきましたが、否定疑問文に対して yes と答えるのは肯定の意味、すなわち、Yes, I read the book. 「ああ、その本は読んだ」という意味です。
「英語を英語のまま理解する」というのは、この Yes. を聞いて、「うん、(お前の言う通り)読んでない」ではなく、「読んだよ」という意味であることを瞬時に理解する、ということですね。
「Yes=はい」だと機械的に覚えていると、これを「はい」だと思ってしまい、チャンドラーの言った内容「読んでいない」を肯定しているかのように受け止めてしまいがちです。
こういう Yes / No の感覚は、実際に英語のセリフをたくさん聞いていると、自然に理解できるようになってきます。
難しい単語の意味をたくさん知っているよりも、こういう Yes / No の感覚をしっかりわかっていることが、ずっと大切だと私は思っています。
返事が肯定か否定かというのは、会話の中で大切なポイントなので、そこを勘違いしてしまうと、会話がおかしくなってしまうからです。

読んだ、と答えつつも、その本の内容には触れず、今度はジョーイが別の本の名前を出して、「お前こそ、この本を読んでないのか?」と言うのですが、その本のタイトルは、Sports Illustrated。
illustrated は「写真・さし絵入りの、図解付きの」なので、その名前を聞くだけでも、スポーツの写真などが載っている本(雑誌)だとわかりますね。

Wikipedia 日本語版: スポーツ・イラストレイテッド

日本語版の「概要」に書いてありますが、スポーツだけではなく、「水着特集(Swimsuit Issue)」というのがあるようです。
Sports Illustrated で検索すると、水着のおねーさんの表紙の画像がたくさんヒットしたのは、そういうわけだったのか、と(笑)。

「アルジャーノンに花束を」という小説を持ち出したチャンドラーに対して、「ニックスのチケットに心を惹かれないなんて、お前はスポーツ誌を読んでないのか?」と返したわけですが、その雑誌はそのような水着特集でも有名なので、ジョーイがいかにも好きそうな雑誌であるのが、セリフとして余計に面白いということでしょう。
チャンドラーは「何も知らない頃には戻れない」という例えで、有名な小説を挙げたのですが、それに対抗するためには、「また元の場所に戻って幸せな暮らしだってできる」というような小説でも挙げるしか勝ち目はないですね。
ジョーイの場合はそういうひねりも何もなく、ニックスを重要視しないチャンドラーに、「お前はスポーツ誌を読まないのか? どれだけニックスがすごいチームか、ニックスのコートサイドチケットにどれほどの価値があるのかわかってないのか?」みたいに返したので、ジョーイはその「アルジャーノンに花束を」の例えの意味が全くわかっていないことが判明するわけです。

それで、「さっきは読んだって言ったけど、やっぱり本当は読んでないよ、内容は知らないよ」と認めた上で、本の例えで対抗するのはあきらめて、チケットと交換したら、早速今晩、試合を見れるんだぜ!と力説しているのですね。


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posted by Rach at 08:57| Comment(2) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フレンズが英会話の学習に良いと聞き、わからない文を調べると、こちらのブログにたどり着きました。
とても詳しい解説が載っていて感激しました。
ぜひ応援させていただきたいです。
ありがとうございます。
Posted by ぜんちゃん at 2015年10月06日 01:23
ぜんちゃんさんへ
コメントありがとうございます。
フレンズのセリフの検索で、拙ブログにたどり着いて下さったとのこと、とても光栄で嬉しいです。

私が書いた解説について「感激」とまで言っていただき、こちらこそ感激です。また、応援のお言葉もありがとうございます。そう言っていただけるととても励みになります。

これからも詳しくわかりやすく楽しい解説を目指して頑張って行きたいと思っています。
こちらこそ、温かいお言葉、本当にありがとうございました!(^^)
Posted by Rach at 2015年10月07日 16:14
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