「ゲームに勝った方が、部屋もニックスのチケットも両方もらえる」という賭けをすることにした4人。
結局、トランプのゲームで男性陣が勝ってしまいます。
早速ニックスの試合を楽しんできた男性陣が、おみやげのTシャツをあげようと女性陣の部屋(小さい方の部屋)を訪ねるのですが…。
(He knocks on the girls' door and walks in. Surprise! The girls, obviously using Star Trek technology, have completely moved everything in both apartments back to their original positions, all in the time it took for the guys to go to a basketball game. Wow! Anyhoo, Chandler is stunned, and Joey doesn't even realize it.)
チャンドラーは女性陣のドアをノックして中に入る。そしてびっくり! 女性陣はどう見てもスタートレックのテクノロジーを使ったようで、2つの部屋のもの全てをそれぞれ元の場所に完全に移動させていた、男性陣がバスケの試合に行っている時間内に。ワオ! とにかく、チャンドラーは唖然としているが、ジョーイはそのこと(部屋が交換されていること)に気づいていない。
チャンドラー: Oh. Oh, God! (He starts running around like a chicken with his head cut off.) (ああ、なんてこった! [頭を切り落とされたニワトリのように、走り回る])
ジョーイ: Hey, want a beer? (Hands him a beer and sits down in one of the chairs.) (Jumping up.) WHOA!! (おい、ビールいるか? [チャンドラーにビールを渡し、チェアの1つに腰を下ろす] [飛び上がって] わぁっ!)
チャンドラー: I know! (そうだろ!)
(They both sprint to what used to be their apartment.)
二人は自分たちの部屋だったところにダッシュする。
チャンドラー: Open up! Open up! Open up! (開けろ! 開けろ! 開けろ!)
(A very angry Monica opens the door with the security chain still on.)
非常に怒った(顔の)モニカが、チェーンロックをかけたままドアを開ける。
モニカ: We'll discuss it in the morning. (Slams the door shut.) (その件は明日の朝に話しましょう。[ドアをバタンと閉める])
チャンドラー: What the hell is going on? (一体何が起こってる?)
(It's Rachel's turn to open the door.)
レイチェルがドアを開ける番。
レイチェル: We took our apartment back! (Slams the door shut.) (私たちの部屋を取り返したのよ! [ドアをバタンと閉める])
フィービー: (opening the door) I had nothing to do with it. (Closes the door.) (Opens the door.) Okay, it was my idea. But I don't feel good about it. ([ドアを開けながら] 私は関係ないけどね。[ドアを閉める] [ドアを開ける] いいわ、私のアイデアなの。でも、いい気持ちはしないわ。)
今回はちょっとト書きにも注目してみます。
部屋がすっかり元通りになっているのを見て驚くチャンドラーですが、The girls, obviously using Star Trek technology というト書きが、トレッキーの私としては面白いです。
あまりにも見事に元通りになっているので、スタートレックの転送装置でも使ったのか?と言いたいのですね。
スタートレックの転送技術については、転送して、神様 フレンズ3-17その11 で説明しています。
日本人だったら、「ドラえもんの道具でも使ったのか」とでも表現されそうな感じですね。(実際、少し前のドラえもんで、ひみつ道具を使って簡単に引っ越しする話を放映していました)
チャンドラーは部屋の変化にすぐ気づいたのに、ジョーイはそれに全然気づいていないことも、ト書きでちゃんと描かれています。(「頭を切り落とされたニワトリ」の例えはすごい…笑)
ジョーイは冷蔵庫からビールを取って、それをチャンドラーに渡し、革のリクライニングソファーに深々と腰を下ろします。が、しばらくしてから飛び上がって叫んでいますね。
かなり時間が経ってから、やっとその事実に気づいたということです。
I know! は「知ってる! そうでしょ!」というモニカの口癖ですが、ここでは「そうだよ、俺はとっくに気づいてたよ。お前もやっとわかったか」という感覚ですね。
女子の部屋を訪ねたはずなのに、自分の椅子があるなんておかしいじゃん!とやっと気づいたわけですが、この長い間(ま)を置いてから気づく、というギャグは、吉本新喜劇の内場勝則さんの持ちネタにありますね。
(ちょっと脱線しますが、わかる人にはわかるネタなので、説明させて下さい…笑)
Wikipedia 日本語版: 内場勝則 の「舞台でよく言うセリフ(持ちネタ)」という項目に、以下の説明があります。
ひどく驚いた時は「イィィィィーーー!」(『え』と『い』の中間の音)
これの発展系として、重大な事実を告げられた時にその直後は平然と振る舞い、相当の間を置いた上で「イィィィィーーー!」と叫び笑いを取るパターンもある。
この「相当の間を置いた上で」というのが、今回のジョーイのボケに通じるものがあります。
私の記憶に残っているのは以下のような話。
旅館の宿泊客の内場さんが、部屋に帰ってテレビをつけるとニュースをやっていて、「この事件の容疑者は…」と自分の名前が登場したのにも関わらず、それを聞いていなかったかのようにしばらく新聞を読んでいて、かなり間があいてから、「いぃぃぃーっ?」(確かに「え」と「い」の中間音なんだな、これが)と驚く、というもの。
お客さんの方も、その「いぃぃぃーっ?」が出るまで笑いをくっとこらえているという、舞台と客席との妙な一体感すらあります。
シットコムと吉本で同じようなギャグがある、というのは楽しいですよね。
どちらがどちらかの真似をしたわけではないでしょうから、英語と日本語の違いはあれど、お笑いの発想は似ている、ということですね。
慌てて大きな部屋に突進するチャンドラーとジョーイ。
security chain 「ドアチェーン、チェーンロック」をかけたままドアを開ける、というト書きも、勉強になりますね。
直訳すると、「チェーンロックをまだオンした状態でドアを開ける」という感じです。
怖い顔をしたモニカが、We'll discuss it in the morning. と言いますが、これも直訳すると、「それは朝に議論しましょう」ということで、「何か言いたいことがあって訪ねてきたんでしょうけど、もう今日は夜遅いから、その話なら(or 何か話があるのなら)明日の朝にして!」と言って、この場で議論することを拒否しているセリフになります。
チャンドラーたちは状況が飲み込めず首をひねっていますが、観客は大喜び。女性陣うまくやったね!という感じの歓声・拍手も起こっています。
次はレイチェルの番。
「私たちは、自分たちの部屋を取り返したのよ」とだけ言って、またドアをバタン。
あなたたちがニックス戦で浮かれている間に、部屋は返してもらったわ!という勝利宣言ですね。
最後にフィービーもドアを開けています。
今回の賭けは、チャンドラー&ジョーイ vs モニカ&レイチェル、の戦いだったので、フィービーは部外者なのですが、関係ないはずのフィービーまでもが、「私にも一言言わせて」とばかりに登場するのが、いかにもコメディーっぽい笑いです。
わざわざドアを開けて、「私は無関係だけどね」と言うのが、日本のお笑い(吉本新喜劇など)でもよくある三段落ちの感覚ですね。(「3人目は必ずボケろ!」というのが、吉本の鉄則ですから…笑)
フィービーのセリフは、単なる三段落ちでは終わらず、「無関係って言ったけど、実は関係がないこともない」と言い直しているのも楽しいです。
関係がないどころか、「二人がニックスの試合を観戦している間に、こっそり部屋を交換しちゃったら?」と提案したのがフィービーだったということ。
feel good about... は「…に良い気持ちを感じる、…をよく思う」ということで、「部屋を交換しようって提案したのは私だけど、あなたたちのことを考えると、申し訳ないって思ってるわ、心苦しいと思ってるわ」というような感じでしょうね。
(Rach からのお願い)
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Joeyは常にテンポがずれてるっていうか、いつも後で気づく感じが好きです。あの表情とか、おもしろいですよね。
私は、このエピソードをみたとき、テレビの前で拍手した覚えがありあます。
やったね、女性陣!!って感じで;D
前にフレンズの脚本について書かれてましたよね。脚本家は10人以上いて、しかも観客の前で演技しながら直しいれて、いろいろ工夫して最終的な形にしていくと言うことだったと思いますが、見ていると英語の字幕とセリフが微妙に違ってることがよくありますが、脚本のせりふと字幕はまた多少違ってるのでしょうか?もしお分かりになれば教えてください。
生まれも育ちも関西人の私としては、吉本的DNAみたいなものがあるので、同じようなノリのお笑いを見ると、嬉しくなってしまうんですよね。共感していただけたようで、とっても嬉しいです。
「ジョーイが後から気づく」のは、彼のキャラ設定として確立していますよね。そういうキャラ立ちしたキャラだからこそ、「いかにも彼ら的な」セリフや言動に笑えてしまう、そういう部分も、それぞれが持ちネタを持っている吉本と共通するところがあるような気がします。みんながそれを待っている期待感というのでしょうか。
シットコムは観客の反応が面白いですよね。英語で見ていて、観客と同じように拍手喝采したり、ため息をついたりしている自分に気づくのも嬉しいですよね。
koroyakunさんへ
脚本家が大勢いるという話は、
フレンズ2-15その3 のコメント欄
http://sitcom-friends-eng.seesaa.net/article/388470407.html#comment
で書いていましたね。
キャストが演じるために元々脚本は存在しているはずですが、実際は、観客の反応を見ながらセリフをその都度変えたりしているために、「実際に放映されたセリフの形での脚本」というものが、正式な資料として存在しているのかどうかはよくわからないです。
ネット上に存在する「ネットスクリプト」というのは、実際のドラマのセリフを熱心なファンの方が耳で聞いて拾った(ディクテーションした)ものになります。ですから、かなり忠実に実際のセリフを拾って下さっているのですが、早口で聞き取れない部分、よくわからない固有名詞などでは間違いもありますね。
そして、DVDの英語字幕について。
これは、実際に劇中で話されているセリフを字幕にしているはずですが、セリフを一字一句きちんと文字化しているのではなく、時々「はしょられて」いるのですね。ですから「英語の字幕とセリフが微妙に違ってる」のです。
ワンフレーズがごっそり抜けていたり、be gonna (be going to) が will に置き換わっていたり、と、英語字幕ではかなりの省略、変更が行われています。
それは、「フレンズ」に限ったことではなくて、映画のDVDを見ていても、英語字幕は実際のセリフよりも省略されていることが多いですね。日本のテレビ番組で、しゃべっている内容が字幕になっていることがありますが、あれも一字一句拾っているのではなく、少し簡略化されて表示されていますね。それと似た感覚でしょうか。
洋画に日本語字幕をつける場合、何秒のセリフなら何文字、という字数制限のルールがあります。それは、あまりたくさんの文字を表示しても、読むスピードがついていかないからという理由でしょう。英語字幕の場合も、あまり細かく全ての音を拾って文字化しても読めない、ということからでしょうか?、セリフまんまの字幕は少なく、大抵、何らかの形で省略されていることが多い、ということです。私が知っている中では、アリー my Love (Ally McBeal)は、かなり実際の音に忠実に、英語字幕化されていました。
ですから、「フレンズ」に限らず、多くの英語字幕付きの作品では、セリフの音と英語字幕とが完全に一致していない(セリフが全て英語字幕化されていない)ことも多い、ということですね。「セリフの音をすべて英語字幕化しようとはしていない」と言ったほうが良いでしょうか。
お久しぶりです。コメント、ありがとうございます。
以前下さったコメントでも、「アルジャーノンに花束を」について書いて下さっていましたね。今回、題名がセリフに出てきたことから、話の内容も、それをモチーフにしている、ということは充分考えられますよね。
あいにく(いつものことながら)、まだこの作品は読んでいなくて、またじっくり読むことができた後、今回いただいたコメントを振り返ってみたいと思っています。
「宇宙大作戦」にもそういう話があったんですか? うーん、どんなストーリーだったでしょうか。「宇宙大作戦」はあまり詳しくないので、残念ながら思いつかないです…。