シーズン4 第21話
The One with the Invitation (ふたりの思い出、ロスとレイチェル)
原題は「招待状の話」
ロスは結婚、フィービーは出産、と、友達の人生にビッグな出来事が起きているのに、自分たちはただここセントラルパークで座ってるだけだ、と嘆くチャンドラーとジョーイ。
エベレストに登る人のビデオの広告を見た、と言うジョーイは、二人でエベレストに登ろう!と言い出します。
フィービーが入ってきて、
フィービー: What, what's up? (どうしたの?)
ジョーイ: We're gonna climb Mt. Everest. (俺たち、エベレスト(山)に登るんだ。)
チャンドラー: Yeah, baby! (そうさ、ベイビー!)
フィービー: Really? I looked into that. Yeah, but, I mean it costs like $60,000, and y'know, you could die. And you would die. (ほんとに? 私もそのこと(エベレストに登ること)を調べた[検討した]わ。そうなのよ、でも、6万ドルくらい費用がかかるし、ほら、死ぬ可能性もあるしね。そして、あなた(たち)なら(本当に)死んじゃうわ。)
チャンドラー: (dejected) Yeah, well.... ([落胆して] ああ、そうか…)
ジョーイ: We could get that Everest video, though. (でも、俺たちはそのエベレストのビデオをゲットすることはできるぞ。)
チャンドラー: Yeah, we could do that without, y'know, risking our lives at all. (そうだ、俺たちはそうすることが可能だ、ほら、自分たちの命を全く危険にさらすことなく。)
エベレストに登ろうと思ってるんだ、と話すジョーイたちに、フィービーは、I looked into that. と言っています。
look into は「…を詳しく調べる、検討する」。
まさに「その中に入り込んで見る」感覚ですね。
フィービーもかつて、エベレスト登山に興味を持ったことがあるらしく(笑)、それについていろいろ調べてみたんだけど、費用がものすごくかかるのよ、と言っています。
Wikipedia 日本語版: エベレスト に「登山料」という項目があり、金額が書いてありますが、そこでは最も安いルートで、25,000 ドルだとあります。
フィービーの言っている金額と少し違いますが、いずれにしても、かなりの高額の登山料を払わないと登れない、ということですね。
高額な費用の話をした後で、...and y'know, you could die. And you would die. とフィービーは言っています。
you could die の could は「可能性」。
世界最高峰の登山ですから、「死ぬ可能性がある」という話です。
ここでは「コストもかかるし、死ぬ可能性もある」という一般論を述べているので、you could die の you は「一般の人」を指すと考えられます。
そういう一般論を述べた後、And you would die. と言う時に、フィービーはチャンドラーの顔をまじまじと見て、その後、ジョーイの方も見ていますね。
一般論として「死ぬ可能性がある」という話をした後、「エベレストに登るぞ!」と張り切っているチャンドラーたちを見て、「そういう死の危険性のあるところに行ったら、あなた(たち)は多分死ぬでしょうね」と、今度は話者の「推量」を述べている、ということです。
登山家でもない素人で、登山を甘く見ているあなたたちなら、間違いなく死ぬわね、みたいな言い方です。
...you could die. And you would die. というセリフは、同じような内容を繰り返しているように見えますが、2つの you のニュアンスも異なりますし、could と would を使い分けていることで、そこに話者の考えが見えます。
「エベレスト登山では(人が)死ぬ可能性がある。そして(あなたたちの姿を見ていると)あなたたちなら死ぬだろうな、って思える」という厳しい指摘ですね。
「死の危険のある場所へ行ったら、あなたたちなら間違いなくその「死ぬ方の人間」になっちゃうわ。だからやめた方がいい」とやんわり忠告しているわけです。
それで、チャンドラーもがっかりしたように、Yeah, well.... と言っているのですね。
could を would と言い換えたことで生じるニュアンスの違いを楽しめるようになれば「いい感じ!」です。
英語を理解するためには、難しい単語をたくさん知っていることよりも、こういう could と would のニュアンスの違いを知っていることの方がずっと大切だと思います。
エベレスト登山は無理だと言われたジョーイですが、気を取り直して、「実際に登ることはできなくても、そのビデオを入手して見ることなら俺たちにもできる!」と言っています。
チャンドラーも、「ビデオを見るだけなら、死ぬ危険性もないもんな」とそれに賛同していますね。
「エベレストに登る」という壮大な話が、「ビデオを見る」といういつもと変わらぬ話にトーンダウンしている面白さを感じて下さい。
この後に続くやり取りについては、次回の「その2」で解説します。
(Rach からのお願い)
このブログを応援して下さる方は、下のランキングサイトをクリックしていただけると嬉しいです。
人気ブログランキング
にほんブログ村 英語ブログ
皆様の応援クリックが、とても励みになり、ブログを続ける大きな原動力となっています。心より感謝いたします。
毎回なるほど、とかそうだなー、とか思いながら丁寧な解説を楽しく拝見しています。
この場面も話題は分かりやすく軽快なテンポで見ていてたのしいです。couldとwouldはまさにおっしゃる通りですね。もしshouldを使うとまた違うニュアンスになるのでしょうね。死んじまうぞ!みたいな。
あとここで出てくるass-printって、聞くとなるほどと言う感じの面白い言葉ですね。foot-printがあるから当然ass-printもあるのですね。
その2お待ちしてます。
まさにその通りですね。難しい単語は辞書をひけばすぐわかりますけど、このようなニュアンスの違いは見落としがちに(経験がないと見落としがち)なりますね。
次回も楽しみにしています。
いつも嬉しいお言葉、ありがとうございます。
ass-print という言葉は面白いですよね。最初、セントラルパークの椅子に ass-print を残すだけ、と言っていたのが、エベレストに ass-print を残してやるぞ!に変わるのが面白いですよね。足跡(あしあと、そくせき)ならぬ、「尻跡」ですね。最初に「椅子にお尻の跡を残すだけ」と言っていたのが、エベレストの話への伏線だった、ということでしょうね。
南洲 翻訳修行さんへ
おっしゃる通り、「難しい単語は辞書をひけばすぐわかります」よね。頻出頻度の低い、綴りのややこしい単語を覚えることが上級者だ、みたいな風潮もありますが、そんな単語こそ、本当に「辞書見りゃおしまい」です。
本当に難しいのは、日本語の訳語だけではピンと来ない「ニュアンス」なんですよね。