2010年06月21日

inflateで連想するもの フレンズ4-24その2

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リハーサル・ディナーの席で、チャンドラーがロスのベストマンの1人として挨拶をします。
チャンドラー: I'd like to toast Ross and Emily. Of course, my big toast will be tomorrow at the wedding. So this is kind of my little toast or Melba toast, if you will. (No one in the room laughs. He starts to get flustered.) Okay. I've known Ross for a long time. In fact, I knew him when he was going out with his first girlfriend. (Ross looks embarrassed.) And I thought things were really gonna work out for him until the day he over-inflated her. (He laughs. Jack looks at Judy and no one in the room laughs.) Ohh, dear God! (ロスとエミリーに乾杯(トースト)したいと思います。もちろん、僕がする重要な乾杯は明日の結婚式でになりますが。ですから、これは私のちっちゃな乾杯(トースト)、もしくはメルバ・トーストみたいなものです、言うなれば。[部屋にいる誰も笑わない。チャンドラーは狼狽し始める] オッケー、僕はロスを長い間知っています。実際、最初の彼女と付き合っていた頃のロスを知っていました。[ロスは恥ずかしそうな顔をする] それでその時僕は思ってたんですよね、彼にとっては何もかもがうまくいくことになるだろうって。ロスが”彼女”を膨らませすぎて割っちゃった日まではね。[チャンドラーは笑う。ジャック(ゲラーパパ)はジュディ(ゲラーママ)を見て、その部屋の誰もが笑わない] あぁ、なんてこった!)

チャンドラーの最初のセリフでは、toast は「(…のために、…に)乾杯する」という他動詞で使われています。
toast を名詞として使う、make a toast (to 人)、propose a toast (to 人)という表現もよく使われますね。
ベストマンがグラスを鳴らしてみんなの注意を引いて挨拶する、というシーンは、フレンズ2-24その23 にも出てきました。
今は結婚式前夜のリハーサル・ディナーの席なので、「本当の重要な乾杯は明日になりますが…」とチャンドラーは言っています。
正式な my big toast は明日なので、今日のこれは、my little toast か Melba toast ですね、と続けます。

Melba toast は「メルバトースト、天火でかりかりに焼いたごく薄いトースト」。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
Melba toast : [noun] [uncountable] a type of thin hard TOAST that breaks easily into small pieces
(Etymology, Word Origin)
1900-2000 Nellie Melba (1861-1931), Australian singer; because she was given it when she was ill

つまり、「簡単に小さなかけらに割れる、薄くて硬いトーストの種類」。語源は「20世紀に出来た言葉。ネリー・メルバというオーストラリアの歌手が語源。彼女が病気の時、それを与えられたから。」

英辞郎には「米語」と書いてあるのですが、英語・米語の区別が書いてある LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では特に、米語(American English)であるとは書いてありません。
これが「アメリカ英語」であったなら、出席者の半分くらい(半分以上?)がイギリス人なので、アメリカ英語の意味がわからずジョークがすべってしまった、という解釈も可能ですが、LDOCE で「米語」だと限定されていないところを見ると、イギリス人も知っている単語で、ただ単に、チャンドラーのジョークがイマイチだったのでしらけてしまった、ということになるでしょう。(確かに、チャンドラーのジョークとしてはあんまり面白くないですし…笑)

いつものようにジョークがウケないので、徐々に焦り始めるチャンドラーですが、気を取り直して、スピーチを進めます。
彼とは長い付き合いなんで、彼の最初の彼女も知ってるんですよ…という、学生時代の友人にありがちなスピーチを始めるのですが、オチであるはずの最後のセリフで、チャンドラー自身は「面白いでしょ?」みたいな感じで「ナッ!」と笑って終わるのですが、ロスの両親は顔を見合わせ、エミリーの両親も表情が固まったままで、誰もが笑おうとしません。
完全に空気が凍ってしまい、チャンドラーもヤバい、という顔をしています。

その最後のセリフは、And I thought things were really gonna work out for him until the day he over-inflated her. となっています。
この解釈については、あまり自信がないのですが、多分、こういう意味だろうなぁ、と思ったことを以下に説明しておきます。(長くなりますので適当に読んで下さい)

I thought things were really gonna work out for him until... は「(…の時)まで、物事は本当にうまくいくことになるだろうと思っていた」という意味。
彼にとって物事がうまくいく、というのは、最初の彼女ができて、彼女との関係がうまく発展し、いい感じになるだろう、いい仲までいくだろう、みたいなことでしょう。
「…までそう思っていた」という過去形は、「実際に起きたことは違っていた」ということで、「ある時に、それがうまくいかないということがわかった」というニュアンスになります。
until 以下で、「どの時点で」それがうまくいかないことがわかったか、を説明しているのですが、それが、the day he over-inflated her 「ロスが彼女を over-inflate した日」だとのこと。

inflate は「(空気・ガスなどで)…を膨(ふく)らませる、膨張させる」という他動詞。
inflate a balloon だと「風船を膨らませる」ですね。
「膨らませる」という物理的な意味から、「感情を膨らませる」→「感情を煽(あお)る、得意がらせる」という意味にもなるようです。
そこに over- がついているので、over-inflate は「限度を超えて、過度に膨らませる」という意味になりますね。

目的語の her が his first girlfriend を指していると考えると、「人間を膨らませる」のは変だから、「感情を過度に煽る」という意味かな、とも思ったのですが、良い意味の「彼女を大喜びさせる」、悪い意味の「彼女を激怒させる」のどちらにしても、チャンドラーが「今度こそ外さないぞ!」と意気込んでいるはずのジョークですから、ちょっと意味が通じない気がするんですよね。
「彼女をむっちゃ怒らせて、ああ、こりゃうまくいかないな、と思った」というのはあり得る話ですが、ただそういう意味だけなら別に over-inflate という単語を使う必要もないし、「彼女を激怒させて関係が終わった」という事実はあまりにもありきたりでスピーチで語るほどのことでもありません。

チャンドラーが自分で最後に、ナッ!と笑っているのは、これはジョークなんですけどね、という目印だと思います。
ですがそれを聞いて、両親たちはどう反応したらいいかわからない、という顔をし、会場の空気は凍ってしまっている様子から、場にそぐわない不適切なジョークを言ってスベってしまった、という感じが私にはするのですね。

やはりポイントは、over-inflate という動詞だと思います。
私が inflate という単語を聞いて思い出すのはやはり「風船を膨らませる」などのイメージ、そして、an inflatable doll 「ビニール人形」です。
「ビニール人形」については、ビニール人形の話 フレンズ3-2その19 で詳しく説明しています。(そこでは、ビニール人形が出てくる、「アリー my Love」のセリフも解説しています)
カンヌ国際映画祭で上映された是枝裕和監督の「空気人形」という映画もありましたねぇ…。

私はこのチャンドラーのセリフを聞いた瞬間、そういう an inflatable doll のイメージが頭に浮かんでしまいました。
(勘ぐりすぎかもしれませんが)チャンドラーは、he over-inflated her と表現することで、「ロスが空気人形を持っていた」ことを示唆しているように私は感じました。
だとすると、over-inflate は「膨らませすぎて割れる」という意味でしょう。
ロスとチャンドラーは学生時代、(確か)ルームメートだったはずだと思うので、ある日、チャンドラーは、ロスがビニール人形を膨らませすぎてパン!と割れた音を聞いたのではないかと思うのですね。
彼女とデートしたりしてうまくいきそうなのかと思ってたけど、ある日、隣の寝室から、ビニール人形が破裂する音が聞こえたので、「なんだ、ロスが一緒に寝てたのは、人間の彼女じゃなくて、ビニール人形だったのか」と気づいた、というオチかなと私は思いました。

人間の彼女を over-inflate できるはずないのに、わざと、he over-inflated "her" と表現しているのでしょう。
「(彼女と寝てると思ってたのに)その”彼女”を膨らませて割っちゃった日に、俺は気づいちゃったんだよね、それが人間じゃなかったってことに」みたいなことを言いたかったのかな、と。

こういう内容だと、彼女に振られて欲求不満のロスがそういう人形を使っていたことになり、本当にしても(笑)、またはただのジョークにしても、両親や親戚が集まる場で言うには、かなり不適切なジョークである気がします。
それで、あんな風に会場が凍りついてしまったのだと思います。

inflate という単語から私はそこまで連想したわけですが、考えすぎかなぁ?? もしくは全然見当外れのことを書いているのかも…。
かなりヤバいジョークを言ってしまった…という空気になっているので、この仮説もありうると思うのですが、どうでしょう??


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posted by Rach at 13:49| Comment(4) | フレンズ シーズン4 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさんこんばんは。仕事他で少しばたばたしてご無沙汰してました。週末に、Rachさんの最近のやめるかも・・・というブログを見て、驚いてしまいました。僕は楽しみとインセンティブをもらい、友達にも勧めててきたのに、何でー、せっかくーと正直思いました。でもよく考えると僕たちは気楽な訪問者で、楽しませてもらっているだけで一方通行だから、Rachさんが気をもんでいることなど思いもよらず、ずーっと与えられたものが続くものだとなんとなく当たり前に思ってしまったのでした。感謝の念は持っておりましたがときどきクリックも忘れてしまっていたし。今後はきちんと見てます、という表現をいたします。

そのうえでひとこと言わせてください。ブログには、さっとのぞいて済ませるものから、ここのように、画面でストーリーを見て楽しみ、理解のためのチャレンジも時間をかけ、その上でじっくりと楽しませてくれるブログに相対するいわばすごく濃厚なもの、までいろいろあると思います。DVDの場面を繰り返し見て、ブログに相対すると30分から1時間くらいかかります。濃厚な時間を過ごしていると自分では思って感謝しています。クリックの数のみで現れない充実した時間と中身が絶対にあると思っています。Rachさん自身が楽しめなくなったら別ですが、こちら側に毎回アクセスするたびに充実感を持っている人たちがたくさんいる、ということを感じていただければ幸いです。訪問者なるが故の勝手な物言いお許しください。
Posted by koroyakun at 2010年06月21日 23:39
koroyakunさんへ
拙ブログを友達にも勧めて下さっていたのですね。ありがとうございます。私の「やめる」の記事を見て、「何でー、せっかくーと正直思いました」とのこと、ごもっともだと思います。
私自身、あんな言い方になってしまったことは、読者の方に何かを強要することになってしまい、とても失礼なことを言ってしまったと後から反省しました。

言葉が足りなかったと思うのですが、「読んだなら押して下さい」ではなくて、「押してもらえたらこれからも頑張れる気がする」という感じなのですね。いろんな意味で、自分のブログの存在意義がわからなくなって、やめた方がいいのかもしれないと思ったのです。

私は拙著の中の「途中でやめることは「挫折」か?」という項目で、

人に対して「やると決めたことをやった」と言いたいためだけにやっているのならやめたほうがいい。

と書きました。
何となく私の中で、「せっかくここまで続けたのなら、ファイナルまで続けたい」という単なる「意地」になってしまっているのではないか?と思えてきて、私はただこれまでやってきたこのブログの記事の蓄積に「しがみついている」だけではないか、とも思えたのですね。もちろん、新しい記事を書くことは自分の勉強でもあるわけですから、全くの無駄だとは思っていませんでしたが、皆さんのニーズとずれたものであるならば、それを勝手に自分の「ライフワーク」みたいに思い込んでいるのは「道化」かもしれないと思ったのです。

拙ブログについて「濃厚」「充実感」と表現して下さったこと、とても嬉しいです。そういう部分を評価していただけるとしたら、このブログを続けている意味も十分見出せます。ありがとうございます。これからも頑張っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
Posted by Rach at 2010年06月22日 11:15
ご、、ご無沙汰しております、Rach 、、さん。この、over-inflate はその「破裂させる事を意味する」と言うものだと思いますし、同様の特殊人形ネタは野郎同士で結構ジョークにしたりしますよ。
だから、このチャンドラーの話しは、彼女の話しと見せかけておいて、実は人形の話しだった、という最初からそのように練られたオチだったのだと思います。そのオチの為の over-inflate だったのだと思います。結局、オチなかっのですけどねぇ。

Posted by FDJ at 2010年06月22日 12:56
FDJさんへ
ご無沙汰しておりました、FDJさん。
このようにコメントいただけて、とっても嬉しいです!

やはり、over-inflate は「破裂させること」でよろしいんですね? 彼女ができたのかと思ったら、それは実は「特殊人形」だったという、親族が集まる結婚式の場にはそぐわないジョークだったため、会場の空気が凍ってしまった、ということですよねぇ?

このセリフに関しては、聞いた瞬間に「それ系」の意味だとピンと来たんですよ。(それが、英語ブロガーとしてはともかく、女性として褒められたことなのかどうかは知らない、、、笑)

フレンズ3-2 で、an inflatable doll に関するセリフがあって、同じように気まずい雰囲気が流れていたので、その連想が働いたのだと思います。FDJさんも同じご意見だと知って、このブログで初めてFDJさんとお会いした頃に比べて、私もちょっとは英語ブロガーとして成長できたのかも、と自分でも思えました。ありがとうございます。

また、これからもこうしてコメントいただけると嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いします。
Posted by Rach at 2010年06月24日 09:52
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