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(Ross and Emily's parents are seated at a table. Ross is between them and they are discussing the wedding bill.)
ロスとエミリーの両親はテーブルに座っている。ロスは彼らの間にいて、両親たちは、結婚式の費用を議論している。
ゲラーパパ: There's no way in hell I'm paying for it. (私がそれに金を払うなんて、絶対にありえない。)
ロス: Look, we're down to just one point. Could we please maybe just settle it after the wedding? (ねぇ、(僕たちには)ちょうど1点だけしか残ってない。多分、お願いだから、結婚式の後にそれを解決することにしようよ。)
ゲラーパパ: All right, fine, but I just want to say I'm not paying for your wine cellar, you thieving, would-be-speaking-German-if-it-weren't-for-us, cheap little man! (Emily's stepmum looks shocked. Jack and Judy get up and leave.) (わかったよ、いいさ。でもな、ただこれだけは言わせてくれ。私は君のワインセラー代は支払わない。この、盗人(ぬすっと)で、我々がいなければドイツ語をしゃべってるだろう、ケチな小男め! [エミリーの継母はショックを受けた様子。ジャックとジュディは立ち上がって去る])
フレンズ4-24その1 で、結婚式にかかる費用を喜んで分担させてもらう、とゲラー夫妻(ロスの両親)は言っていたのですが、請求書を見ると、何じゃこりゃ?というような、およそ結婚式とは関係なさそうな費用がたくさん盛り込まれていたので、ゲラー夫妻は怒っています。
これまでに何度かモメた後、まだその口論は続いています。
「There's no way+文」は、「…はとうていできない、決してできない」という意味。
ここでは、強意語の in hell もついて、it に私がお金を払うなんて、絶対にできない、だめだ、と言っています。
ここでは、it がまだ何を指すかはわかりませんが、it という単数形なので、何かしら払いたくない項目が1つある、ということですね。
We're down to just one point. の be down to は「…しか残っていない」。
英辞郎では、
down to=《be 〜》〜しか残っていない
例) I'm down to my last cigarette. たばこが最後の1本になってしまった。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
be down to something : to have only a small amount left from a larger amount
例) Now we're down to our last eight dollars.
つまり、「より大きな量から小さな量が残った状態になること」
例文は、「今、(我々には)最後の8ドルしか残っていない。」
つまり、ロスのセリフは、「僕たちには、払う払わないでモメる問題はもう1点しか残っていない。1点だけになった。1点に絞られた」という意味でしょう。
もう1点だけになったんだから、今ここでモメるのはもうやめて、その決着は結婚式が終わった後にしようよ、そうしてくれない?みたいに言っているのですね。
音声では、after が強調されていますが、それは、「何で今モメるんだ、どうして”後”にしてくれないんだよ!」と言いたいわけです。
息子のロスにそう言われて、今すぐの決着は保留にするパパ。
ですが、捨てゼリフのように、これだけは言わせてくれ、と言っています。
ここでは it ではなく、I'm not paying for your wine cellar. とはっきり言っていて、パパが it と呼んでいたものは、「ワインセラー、地下のワイン貯蔵室」だったことがここで初めて観客にわかる、という仕組みです。
結婚式の費用の中に、「家に新しくワインセラーを作る」費用を盛り込まれたら、そりゃ誰でも怒るわな、と思えて、エミリーの親がどれだけ厚かましい人かがわかる、という流れですね。
you thieving, would-be-speaking-German-if-it-weren't-for-us, cheap little man! というのは、エミリーのパパを非難している言葉。
thieving は名詞で「盗み、泥棒」、形容詞で「泥棒の」。ここでは、最後の man にかかっている形容詞だということになるでしょう。
cheap は「けちな、せこい」ですね。
明らかに相手を罵倒するセリフだと思われるのですが、would-be-speaking-German-if-it-weren't-for-us とは何か?
man という名詞を形容するために、ハイフンでつなげて形容詞化しているわけですが、すると、元の文章は、... would be speaking German, if it weren't for us. という仮定法の文章になります。
speaking-German if-it-weren't-for-us でぐぐってみると、その言葉について説明したサイトがいくつかヒットします。
You'd (all) be speaking German, if it weren't for us. という形で使われることが多いようです。
直訳すると、「我々がいなければ、君らはドイツ語を話しているだろう」。
if it weren't for... というのは、「現在の事実に反対の仮定」で「もし〜がなかったら」という仮定法のフレーズですね。
これは受験生の時にも、仮定法の典型的なフレーズとして習った記憶があります。
LAAD では、
if it weren't for/if it hadn't been for somebody/something :
if something had not happened, or if a situation were different
例) If it hadn't been for you, I would not be alive now.
If it weren't for Michell's help, we'd never get this job done.
つまり、「もし何かが起こらなかったら、または状況が違っていたなら」。
例文は、「もしあなたが(あの時)いなかったなら、私は今頃生きていないでしょう。」
「もしマイケルの助けがなければ、我々はこの仕事をやり遂げていないでしょう。」
「もし〜がなかったら」という仮定は、もっと簡単に Without... と表現することもできますね。
このセリフの、「我々」は「アメリカ人」、「君たち」は「イギリス人」を指します。
これは、アメリカ人がイギリス人に向かって言うセリフで、意味は「第二次大戦で、アメリカが関与・参戦しなければ、お前たちイギリス人はドイツに占領されて、ドイツ語をしゃべってるだろうよ」という意味のようです。
実際、このセリフは、アメリカ人のゲラーパパから、イギリス人のエミリーパパへ向けられたものですよね。
パパにしてみれば、「お前らイギリス人は、アメリカ人の私らにもっと感謝すべきなのに、それを恩を仇で返すようなことをしやがって。この恩知らずのイギリス人が!」という感じで使っているように思います。
あまり物事に動じそうにないエミリーママ(継母)までもが、頬を押さえて、「まぁ、なんてことを言うの?!」みたいな顔をしていますから、かなり失礼な発言であることもわかりますね。
アメリカ人がイギリス人と喧嘩する時によく使われるセリフ、ということで、今回のような、イギリスロケというスペシャル版にふさわしい(?)セリフだったのだろうと思います。
実際の場面でアメリカ人がイギリス人に対してこう言うと喧嘩になりそうですが、「フレンズ」はコメディなので、観客もジョークとして笑ってそれを受け入れている、ということでしょうね。
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解説を読んでなるほどと思いました。いつもながら正確で丁寧でかつ深い解説ですね。
私は最初 we're down to just one point. はロスが呆れて「僕達には一つしか解決方法が無い。それは式の後に議論する、ということだ。」というニュアンスかと思ってましたが、読んでいくとやはりRachさんの理解が正しいですね。
あと、would-be-speaking-German-if-it-weren't-for-usは相手の父親がドイツ系の人なのかな、とこ思いましたが、解説読んでなるほどそういう意味だったのか、と勉強になりました。いつもありがとうございます。
ところで一つ質問なのですが、いつも解説を出すのにそれぞれどれくらいの時間をかけているのですか?
もし差し支えなければ教えてください。
we're down to just one point はDVDでは「ねえ、僕の頼みを一つだけ聞いて」と翻訳されていました。その場合 one point は Could we please maybe just settle it after the wedding? を指すことになりますよね?ここも、翻訳は必ずしも原文通りに訳されているとは限らないよい例だと考えていいでしょうか?
would-be-speaking-German-if-it-weren't-for-us は、「ドイツ人はケチだ」というステレオタイプから、ケチということを強調するために German を出してきたのだと思っていましたが、Rach さんが解説されているような歴史的背景があったのですね。勉強になりました。
解説をお褒めいただきありがとうございます。
We're down to just one point. については、いざ記事を書く時まで、全く気に留めていなかったのですが、down の存在が気になって調べてみると、英辞郎やロングマンに同じような例文が載っていたのですね。私自身が解説を書くことで新たな表現を知った、という感じです。多分、解説を書かなければ、完全にスルーしていた表現だと思います。
German の表現も面白いですよね。これも、とりあえずセリフを聞いた時点ではその意味を何も思いつかなかったので、解説では飛ばそうかと思っていたのですが、また気を取り直して、考えてみました。私としては、「こういうセリフを説明してこそのブログ」だと思っているので、それを何とか説明できて良かったなと思っています。
解説を出す、つまり、記事を書く時間がどのくらいかかるか?というご質問ですよね?
解説記事を書く前に、まずネットスクリプトとDVD(字幕・音声)とを突き合わせて、ネットスクリプトを音声に忠実な形に修正する、という作業をしています。解説で取り上げない部分も含め、エピソードの最初から最後までをそうやってチェックしています。自分自身のリスニングの勉強のためでもあり、質問を受けた場合にすぐ対応できるようにするためでもあります。聞き取りにくいセリフは何度も巻き戻して聞いたりするので、これが結構時間がかかるんですよねぇ。(いつも何時間くらいかかっているか、記録していないのでわからないのですが…)
そうやってスクリプトを修正したあとは、サブカルネタがなく、英英などの辞書だけで解説が書ける場合だと、下書きをざっと書いて、その文章を読みやすい形に推敲するのに2時間くらいでしょうか。
サブカルネタがあるとやはり時間はかかってしまって、3、4時間、というところだと思います。せっかく調べるんだから、と、いろいろ深く調べ出すと、もっと時間がかかっている場合もあります。
記事を書くのにかかる時間がブロガーとして平均的なものなのかどうかは自分ではよくわからないのですが…。
kemeさんへ
DVDの日本語訳は必ずしも直訳ではない場合が結構ありますよね。恐らく今回の we're down... もその一つだと思います。「ねえ、僕の頼みを一つだけ聞いて」と言いたいんだったら、こういう英語にはならない気がするんですよね。
私も以前、DVDの日本語訳にかなり引っ張られていた時期もあったのですが、だんだん英語を学ぶうちに、「もしその日本語訳の意味を言いたいんだったら、こういう英語は使わないのではないか?」という視点で見られるようになってきました。こういう意味なら別の英語表現を使うはず、だからその日本語訳は流れを重視した意訳だろうな、と判断する感覚です。
「ドイツ」や「ドイツ人」から何かの連想が働く、ということはありますよね。今回は、アメリカ人がイギリス人に向かって言った罵倒の言葉であることが大きなヒントになったようです。私も今回のセリフでそういう歴史的背景を元にした言い回しがあることを知っただけなんです。スルーせずに解説したことで、私自身も勉強になったと感じました。
コメントありがとうございます。
フレンズで英語学習をされながら、拙ブログの解説をお読み下さっていること、ありがとうございます。そして「“神様、仏様”と思うほど助かっております」とのお言葉も誠にありがとうございます。そこまで言っていただけると、ブログ解説をますます頑張ろうと思えます!
この「ドイツ語を話してるだろう」というのは実に面白いセリフだと思うので、それをこうしてブログでシェアできて、皆様にも面白いなと思っていただき一緒に楽しむことができるのは、ブロガーとして本当に嬉しいことなんですよね(^^)
それから、毎日(!)応援クリックを2枚とも(!)押して下さっているとのこと、本当にありがたく嬉しく思います。応援していただき、ブログの上位でいさせていただけることは、ものすごく励みになっていて、いつも幸せな気持ちでブログを続けさせていただくことができています。本当にありがとうございます。
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