2010年07月07日

一筆書きパズルが語源のイディオム フレンズ5-1その2

皆様の応援のお陰で、現在、「人気ブログランキング」は3位、「にほんブログ村」は1位です。
ブログを続ける原動力となります。どうか今日も応援クリックをよろしくお願いします。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 英語ブログへ


前回のフレンズ4-24 で、ベストマンの挨拶でスベってしまったチャンドラーと、ロスの母親に間違えられてしまったモニカは、(恐らくお互いを慰め合っているうちに)男女の関係になってしまいました。
もちろん、他のフレンズたちは誰も気づいていないのですが、その後も何度も(チャンドラーによると「7回」も!)二人はエッチをしたらしく、今も下のワインセラーで会おうという約束をしたところ。
チャンドラーは先に行き、モニカもそこに向かおうとしたその時、レイチェルがモニカに話しかけてきます。

レイチェル: Mon, honey, I gotta ask you something. (モニカ、ハニー、あなたに尋ねなきゃならないことがあるの。)
モニカ: (impatiently) Now? ([いら立った様子で] 今?)
レイチェル: Ross said my name up there, I mean, come on, I can't just pretend it didn't happen, can I? (ロスはあそこで[結婚式の祭壇で]私の名前を言ったわ。つまり、ほら、私はただ、そういうことが起こらなかったってふりをすることはできないのよ、そうでしょ?)
モニカ: Oh, I, I don't know. (あぁ、私は、私はわからないわ。)
レイチェル: Monica, what should I do? (モニカ、私はどうすればいい?)
モニカ: Just uh, do the right thing. (Uses some breath spray) (ただ、そうね、正しいことをすればいいのよ。[口臭予防スプレーを使う])
レイチェル: What? (どういうこと?)
モニカ: Toe the line! Thread the needle! Think outside the box! (Tries to leave, but is stopped by Rachel.) (規則に従って! 穴に針を通すように慎重に! 既成概念にとらわれずに考えて! [去ろうとするが、レイチェルに止められる])

pretend は「…のふりをする」。
今回のように後ろに that 節が続く場合は、「(that 以下)であるというふりをする、…であるとうそぶく」というニュアンスになります。
実際にロスは、誓いの言葉を述べる時に私の名前を口にしたのよ、そんな事実がなかったかのようなふりをすることは私にはできない、とレイチェルは言っているのですね。

レイチェルは真剣に相談しているのですが、早くチャンドラーとエッチしたくて(笑)心ここにあらずという感じのモニカは、「さあね、わからないわ」みたいな適当な返事をしています。
do the right thing は「正しいことをする、やるべきことをする」というニュアンス。
フレンズ2-8その10 では、レイチェルを選ぶためにジュリーと別れたロスが、I did the right thing. と言っていました。
Do the right thing. 「正しいこと[正しいと思うこと]をしなさい」というのは、友人に対する励ましのアドバイスでよく聞く表現ですが、ここではそれが何を指すのがよくわかりませんね。
それでレイチェルも聞き返すのですが、モニカもあまり深く考えずに Just do the right thing. と言ってしまったようで、その後、アドバイスを3文まくし立てて、その場を去ろうとします。

その3文、Toe the line! Thread the needle! Think outside the box! について、じっくり見てみることにします。(非常に長くなっています。すみません)

まず1つ目の Toe the line.
DVDの英語字幕では、Tow the line. と表記されていたのですが(tow は「引っ張る、牽引する」という動詞)、ネットスクリプトのように、Toe the line. が正解だと思われます。
toe も tow もどちらも [tou] で、発音は同じになります。

toe は名詞で「足の指、つま先」、動詞では「…につま先で触れる」という意味。
ですから、文字通りの意味は、「(競争やレースなどで)スタートラインにつま先をつける」という意味で、そこから、「規則などに従う」という意味になるようです。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
toe the line : to do what other people in a job or organization say you should do, whether you agree with them or not
「ある仕事や組織の中の他の人々がすべきだと言うことをすること。それに同意するしないにかかわらず」

Macmillan Dictionary では、
toe the line : to accept rules and to obey people in authority
例) Members of the party have to toe the line or they're expelled.

「規則を受け入れること、そして、権威ある人々に従うこと」。
例文は、「その党(パーティー)のメンバーは、規則に従わなければならないか、もしくは除名されるかだ。」

次に2つ目の Thread the needle.
thread は「糸」で、動詞では「(針に)糸を通す」という意味になります。
過去記事、針に糸を通す フレンズ3-8その31 で、裸のブ男を突っつく巨大な装置を操作している時に、thread the needle という表現が使われていました。

LAAD では、
thread a needle : to put thread through the EYE (=hole) of a needle
つまり、「針の穴に糸を通すこと」。

Macmillan Dictionary では、
thread a needle : to put a piece of thread through a needle
つまり、「1本の糸を針に通すこと」。

英英辞典の説明が「そのまんま」すぎて、あんまり役に立たないのですが(泣)。

英辞郎では、
thread the needle
【名-1】困難なことを成し遂げる、針に糸を通す
【名-2】《ゴルフ他》狭い所に正確に打つ

と出ています。

ロングマン、マクミランの英英辞典では、文字通りの「針に糸を通す」という意味しか書いてありませんが、その表すところはやはり、英辞郎にあるような「困難なことを(正確に、慎重に)成し遂げる」というような意味なのだろうと思います。

最後の Think outside the box. について。

LAAD では、
think outside the box : to think of new, different, or unusual ways of doing something, expecially in business
「何かをやるのに、新しい、別の、またはいつもと違う方法を考えること。特にビジネスにおいて」。

Macmillan Dictionary では、
think outside the box : to find new ways of doing things, especially of solving problems
例) Employees are encouraged to think outside the box and develop creative solutions.

「何かをやるのに新しい方法を見つけること、特に問題解決において」
例文は「従業員たちは新しい方法を見つけ、創造的な解決を生み出すことを奨励される。」

英辞郎では、
think outside the box
これまでとは全く違った観点で考える、既成概念にとらわれずに物事を考える


とあるように、まさに「既成概念にとらわれずに」という部分がこのフレーズのポイントになります。
そしてこのフレーズの語源は、ある一筆書きの問題に由来するようです。

英辞郎で関連語を調べていて、以下の説明を見つけました。
pop out of the box
既成の概念を破る◆【語源】9個の点を4画の一筆書きで結ぶというパズルの答えに由来する◆【類】think out of the box ; think outside the nine dots


その説明には、think outside of the box そのものは載っていませんが、限りなく近い表現が類義語として挙げられていますね。

ネットで調べてみると、やはりそういう「一筆書きのパズル」が由来であることがわかりました。

Wikipedia 英語版: Thinking outside the box

そこに9個の点(ドット)を線で結ぶという問題の図が載っています。
9個の点を大きく外にはみ出す形で線を結ぶことで、最小の本数(4画)で一筆書きが可能になるのですね。
この形を線で結ぼうとする時、点の外に線を伸ばすという発想はなかなか出てこないですよねぇ?
だから、そういう既成概念を打ち破るような、斬新で柔軟な考え方を、このパズルになぞらえて、think outside the box と呼ぶようになったようです。

ネットを検索していると、think outside the box は、ビジネス書や自己啓発書などでよく登場するフレーズであることもわかります。
「枠をはみ出せ!」という考え方が新しい道への突破口になる、という感覚でしょうね。

説明が長くなりましたが、モニカはレイチェルにアドバイスとして、よく使われる3つのフレーズを立て続けに挙げた、ということになるでしょう。

「規則に従って! 針に糸を通して! 既成概念にとらわれず考えて!」というセリフは、その3つの文章に何の脈略もない気がします。
1つ1つのフレーズはアドバイスとして「それらしい」言葉だけれど、3つをつなげるとイマイチ意味がわからない感じがする…焦っているモニカがレイチェルに、適当な意味不明なアドバイスをしたことを表しているのかな?と私は思いました。


ランキングをクリックして、応援していただけると嬉しいです。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 英語ブログへ


posted by Rach at 14:22| Comment(6) | フレンズ シーズン5 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ここまで掘り下げるか、という Rach さんの探求心にはいつも頭がさがります、さすが trekkie ですね。この三つのフレーズは、仰る通り、それらしい事を適当に並べただけだと思うのですが、はじめの二つは偶然にもダンスに関係のある言葉でもあるので、これを書いた人は何かしらの意味を持たせようとしてたのかも知れませんね。何かまた、発見しましたら、追加コメントいたします。

いつもありがとうございます。
Posted by FDJ at 2010年07月09日 08:21
FDJさんへ
お褒めのお言葉、ありがとうございます!
Star Trek のミッションの目的は、To explore strange new worlds. To seek out new life and new civilizations. To boldly go where no one has gone before. ですからねぇ。私も trekkie としてそういう「探求心」だけは失わないでいたいな、と思っています。私のそういう部分がブロガーとしては良い方向に働いているのだろうと信じて(笑)、いつもブログを書いています。

Toe the line. と Thread the needle. はダンスに関係ある言葉、なんですか。私もちょっと調べてみたのですが、よくわかりませんでした。ただ、身体の姿勢が大切なダンスにおいては、身体の位置やポージングにおいて、「ラインにつま先を揃える」とか「針に糸を通すようにきっちり狙いを定める」感覚は確かに関係ありそうですよね。
また何か情報がありましたら、コメントいただけると嬉しいです。

こちらこそいつもありがとうございます。FDJさんがいて下さっていつもとても心強いです。
Posted by Rach at 2010年07月09日 10:58
Rachさんへ
Let me try to explain my understanding on "Toe the line! Thread the needle! Think outside the box!"
Toe the line: stick to disciplines or customs. Here Monica wants Rachel to refrain from overacting just because Ross said her name instead of Emily since they are legally married now.
Thread the needle: get difficult job done. Here Monica wants Rachel to open her eyes widely to get some insight about forgetting about Ross though it's a difficult thing to Rachel right now.
Thinking outside the box: Don't let stereotypes keep you away from other opportunities. There are a lot of other nice guys besides Ross, don't clinging yourself to Ross. Here Monica encourages Rachel to move on.

So what Monica wants to express is consistent: don't do silly things, move on.
Posted by Fen at 2010年11月29日 19:06
Fenさんへ
Thank you for your detailed explanation. I see what you mean.

After reading your comment, I thought back about these lines. Now it seems to me that "Toe the line! Thread the needle! Think outside the box!" means "Don't act illegally! Handle the sensitive problem carefully! Forget about that "Ross & Rachel" history!"
Posted by Rach at 2010年12月03日 13:23
部下に嫌われるmanagement-speaksについて調べていて、こちらに辿りつきました。

Toe the line! Thread the needle! Think outside the box!
「その3つの文章に何の脈略もない、、適当な意味不明なアドバイス」

なるほど!面白いですね。

言葉本来の意味が失われ、経営者が従業員をを鼓舞することだけが目的だけで使われてしまった決まり文句、management-speaksの弊害を、こんな台詞で表現しているのかもしれませんね。

とても勉強になりました。有り難うございます。

Posted by ETCマンツーマン英会話 at 2013年07月03日 11:09
ETCマンツーマン英会話さんへ
ご訪問ありがとうございます。拙ブログに辿りついていただけて光栄です。ありがとうございます。

Think outside the box! 「枠をはみ出せ!」などは、おっしゃるような「経営者が従業員をを鼓舞することだけが目的だけで使われてしまった決まり文句」の典型でしょうね。ワイルドになれ、破天荒になれ、と言われても、、みたいに困ってしまうだけと言いますか(笑)。じゃあ、一体どうすればいいの?と言いたくなるような言葉はどこの国にもある、ということですね。

こちらこそ、management-speaks に結び付けていただいて参考になりました。ありがとうございました。
Posted by Rach at 2013年07月03日 12:04
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。