2010年07月12日

相手に選択の余地を与えない依頼 フレンズ5-1その4

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ハネムーンスイートで、チャンドラー、モニカと共にエミリーを待っていたロス。
ノックの音にエミリー?と喜んだロスでしたが、それはエミリーの両親でした。
その後、その部屋にレイチェルも入ってきます。
エミリーパパは、「エミリーは君には二度と会いたくないと言っている」と告げ、エミリーの荷物を持って部屋を出て行こうとします。
ウォルサム氏(エミリーパパ): Goodbye, Geller. (さよなら、ゲラー君。)
ロス: Now, hold on! Hold on! (Stops him) Look, look, your daughter and I are supposed to leave tonight for our honeymoon. Now, now you, you tell her that I'm gonna be at that airport, and I hope that she'll be there too. Oh, yeah, I said Rachel's name, but it didn't mean anything, Okay? She's, she's just a friend. That's all! (Rachel sits down, depressed.) Now just tell Emily that I love her and that I can't imagine spending my life with anyone else. Please, promise me that you'll tell her that. (ちょっと、待って! 待って! [ウォルサム氏を止める] あの、あの、あなたのお嬢さんと僕は、今夜二人のハネムーンに行くことになっているんです。ですから、僕はその空港にいるからって、彼女に伝えて下さい。そして僕は彼女もそこにいてくれることを願っています。ええ、そうです、僕はレイチェルの名前を言いました、でもそれは何の意味もなかったんです。いいですか? 彼女は、彼女はただの友達なんです。それだけなんです! [レイチェルはがっかりして座る] 今、ただエミリーにこう伝えて下さい。彼女と愛していると、そして、誰か別の人と人生を一緒に過ごすことなんて想像できないと。お願いです、僕に約束して下さい、そのことを彼女に伝えるって。)
ウォルサム氏: All right, I'll tell her. (To his wife) Come on, bugger face! (わかったよ、あの子に伝えるよ。[自分の妻に向かって] 行くぞ、この、あきれたやつめ!)
ウォルサム夫人(エミリーママ): (As she walks pass Ross, she pats his butt.) Call me. ([ロスの傍を通り過ぎる時、エミリーママはロスのお尻を叩いて] 電話して。)
ウォルサム氏: You spend half your life in the bathroom. Why don't you ever go out the bloody window? (お前は人生を半分を化粧室で過ごしてるだろ。その(いまいましい)窓からお前が逃げ出したらどうだ?)

エミリーの荷物を持って出て行こうとする両親に対して、ロスは必死に自分の気持ちを伝えようとしています。
Your daughter and I are supposed to leave tonight... の部分、主語が、Your daughter and I となっているのが「他人行儀な丁寧文」という感じがします。
普通の状況だと、Emily and I でも良いのでしょうが、今回は「君とエミリーはもう終わりだ」みたいに親に言われた後なので、 エミリーというファーストネームでまるで「自分のもの」のように呼ぶことを避けた感覚でしょうか。
相手の親に対して「あなたのお嬢さん」と表現することで、「今はエミリーもあなたたちご両親もご立腹なのはよくわかっていますが、それでも僕はまだ終わりだとは思っていません」ということを一生懸命伝えようとしているのでしょう。
僕はエミリーとハネムーンに行くことになっている、ということを述べるのであれば、I'm supposed to leave tonight with your daughter (or Emily) for our honeymoon. という選択もあり得ますが、それだと「僕がハネムーンに行く、そして一緒に行くのはエミリー」という感じになって、with Emily の部分がちょっと「おまけ」みたいな感じにも聞こえそうですね。
ロスは、エミリーと僕は、正式に結婚した妻と夫としてハネムーンに行くことになっているんだ、ということを強調するために、「二人を主語」にしている、という感覚でしょう。

you tell her that... は形としては「命令文」ですね。
Tell her that... という命令文にさらに強調で主語の you がついた形ですので、命令文としてはかなりキツい感じがしますが、もちろんこれは「絶対に伝えろよ!」と偉そうに命令しているのではなくて、「お願いだから必ずそう伝えて下さい」という、相手に有無を言わせない、他の選択肢を選ばせないような強い気持ちが入っているように感じます。

普通は相手に対して丁寧に何かを依頼する場合は、Could you...? 「…してもらえますか?」のように遠回しな表現を使いますが、それは相手にそれをするかしないかの選択権を与えることで、相手の意向を尊重した丁寧な依頼になるわけですね。
今回のロスは、「エミリーにロスの言葉を伝えない」という選択肢を絶対に選んで欲しくないから、「できればそう伝えていただけないでしょうか?」などと遠回しな表現は使わずに、それしか選択肢はない、という感じの強い命令文の形で、自分の希望を相手に伝えた感覚だと思います。

「僕は確かにレイチェルの名前を口にしましたが…」と言いながら、それが何の意味もないこと、レイチェルはただの友達にすぎない、ということをロスは説明しています。
それを聞いていたレイチェルが、がっくりした様子で、ゆっくりと椅子に腰掛けるのが見ていて辛いですね。
「私の名前を呼んでくれたってことは、まだ私を愛してるってこと?」と期待していたレイチェルですが、そんな風にみんなの前ではっきり断言されてしまって、そのかすかな希望が打ち砕かれた瞬間だった、ということです。

Now just tell Emily that I love her and that I can't imagine... の部分も「命令形」ですね。
エミリーに伝えて欲しい内容として、I love her と I can't imagine... という2文を挙げています。
文法的にはこのように、伝えたい内容のそれぞれの頭に that を付けることで、その2つの内容を伝えて欲しいということがわかります。
書き言葉の場合は、そういう that は省けませんが、会話のような口語の場合は that は軽く発音されたり、はしょられたりすることも多そうですね。
それをきっちりと、that A and that B と表現しているのが、「律儀なロス」っぽいところが出ているような気がしました。

そのロスの必死の訴えを聞いているうちに、エミリーパパもだんだん感銘を受けたような顔になっていきます。
「どうかそれをエミリーに伝えると約束して下さい」と言われ、パパもまじめに頷いて「伝えるよ」と返事していますね。

ウォルサム氏は、妻に向かって bugger face と呼び掛けています。
bugger は特にイギリスでよく使われる言葉です。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) では、
bugger [noun] [countable]
1. (British English not polite) an offensive word for someone who is very annoying or unpleasant
2. (not polite) someone that you pretend to be annoyed with, although you actually like or love them


つまり、1. は「(イギリス英語、礼儀正しくない言葉(俗語)) 非常にうっとうしい、または不快な人に対する侮辱語」。
2. は「(俗語) 自分がむかついているふりをしているその相手、実際にはその人が好きだったり愛していたりするにもかかわらず」。

1. はまさに「侮辱語」で、2. はそういう侮辱語で相手を呼ぶことで、逆に相手に対する親愛の情を表しているという感覚ですね。
このウォルサム夫妻は、気の弱い夫が、わがままし放題の妻に振り回されているという感じが伺えるのですが、そういう妻に呆れながらも、「全くお前は何てやつだよ」的な、ちょっと親愛の情も入った感じで、この bugger face という言葉を使っているような気はします。
なかなかこういう呼び掛け語は日本語にしにくいのが難点ですが。

ウォルサム夫人は、ロスが気に入ったようで、このシーンの前にもロスに対して少し色目を使っています。
そして部屋を出る時にも、ロスのお尻を叩いて Call me. などと言っていますね。
夫が目の前にいるのにそういう行動をする妻にあきれて言った、次のウォルサム氏のセリフも面白いです。

誓いの言葉でロスに名前を間違えられて、トイレの窓から抜け出したエミリーでしたが、ウォルサム氏にしてみれば、「妻のお前も、化粧室にこもって化粧直ししたり、鏡ばっかり見たりしてるのに、(エミリーじゃなくて)お前が窓から逃げ出したらどうなんだよ?」という気持ちのようです。
エミリーじゃなくて、お前が逃げ出してくれてたら丸く収まったのに…みたいなことですね。
人生の半分を過ごす、とはまた大袈裟ですが、それくらい長い時間こもってると言いたいわけです。

bloody はイギリス英語で「強意語」としてよく使われる言葉ですね。
元々は、「血の」「血まみれの」「血なまぐさい、残虐な」という意味ですが、強意語としてはそこまでのおどろおどろしい意味はなくなっていて、感覚的に何か強調したい時に名詞につける軽い感じの言葉、という認識で良いでしょう。

LDOCE では、
bloody [adjective, adverb]
(spoken especially British English)
1. used to emphasize what you are saying in a slightly rude way


つまり、「口語、特にイギリス英語。ちょっと無礼な感じで、自分の言っていることを強調するために使われる」。
ロングマンの語義にも、'slightly' rude 「”ちょっと”無礼な」とあるように、そんなに強烈な言葉ではない、ということですね。


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posted by Rach at 11:14| Comment(2) | フレンズ シーズン5 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさんこんにちは。
面白いストーリー展開になってきましたね。
今回Rossが言っている、「Your daughter and I are supposed to ...」の言い方はまさに相手に対する丁寧な説得調ですよね。ウォルサム氏の手をつかんで、目を見て説得する状況では、Emily ではなくやはりyour daughter となりますよね。目の前の相手に最大の敬意を払いながらも客観的な言葉をつないでいく言い回しだと思います。あと、違う状況ですが非難の気持ちがこもった場合にも丁寧さとともに、こういう客観的な言い回しにもなると思います。まさに日本語で
「お宅のお嬢さんと私は・・・」という感じでしょうか。

ところで今更primitiveな質問で恐縮ですが、ランキング投票は文末にある2つのshort cutをクリックするだけでよいのですよね?
ある部分とんでもなく疎いのでお聞きするしだいです。
Posted by koroyakun at 2010年07月13日 22:46
koroyakunさんへ
コメントありがとうございます。
「目の前の相手に最大の敬意を払いながらも客観的な言葉をつないでいく言い回し」という表現はまさにその通りだと思いました。ファーストネームで表される一人の人間としてではなく、「あなたの娘」のように、他者との関係でその人の所属や立場や位置づけを表す表現の方が、「客観的」な視点が入りますものね。敬意にしろ、非難にしろ、一歩距離を置いて近づきすぎないことが、そういう表現に表れてくるのだろうと思います。

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Posted by Rach at 2010年07月14日 12:11
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