2010年08月09日

医者と看護師のイメージ フレンズ5-3その4

皆様の応援のお陰で、現在、「人気ブログランキング」は3位、「にほんブログ村」は1位です。
ブログを続ける原動力となります。どうか今日も応援クリックをよろしくお願いします。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 英語ブログへ


フィービーがいる分娩室に、男性のナースが入ってきます。
レイチェル: Uh, Monica, this is Dan (points to him), one of the guys we're gonna be going out with on Saturday. Uh Dan, Monica. (Mouths "He's yours." to her.) (あー、モニカ。この人がダン、[ダンを指差す] 土曜日に私たちがデートする予定の男性の一人よ。あー、ダン、(こちらが)モニカよ。[レイチェルはモニカに、「この人があなたの相手よ]と声には出さずに口の動きで言う])
ダン: Nice to meet you. (はじめまして。)
モニカは横にいるチャンドラーをチラっと見てから、わざと大袈裟に嬉しそうな挨拶をする。
モニカ: Hello, Dan! I'm really looking forward to Saturday night! Really, really! (こんにちは、ダン! 本当に土曜日の夜を楽しみにしてるわ! ほんとに、ほんとにね!)
チャンドラーは頭をポリポリかきながら、横から話に入ってくる。
チャンドラー: So Dan, nurse, not a doctor, huh? Kinda girlie, isn't it? (それで、ダン、(君は)ナースなんだね、ドクターじゃなくて、だろ? ちょっと女の子っぽい、って感じじゃない?)
それを聞いたナースのダンは苦笑いをする。
モニカ: Chandler! (チャンドラー!)
ダン: Nah, that's okay. I'm just doing this to put myself through medical school. (いやぁ、いいんだよ。医学部を卒業するために、このナースの仕事をやっているだけなんだ。)
チャンドラー: Oh. ([残念そうに] あぁ。)
ダン: And it didn't feel so "girlie" during the Gulf War. (それに、湾岸戦争の時、ナースの仕事はそんなに「女の子っぽい」感じじゃなかったよ。)
チャンドラー: Sure. (Pause) And listen, thanks for doing that for us, by the way. (Retreats in defeat.) (そうだよね。[しばしの間(ま)] それで、ねぇ、俺たち(アメリカ国民)のために、そういうことをしてくれてありがとう、言い忘れてたけどさ。[敗北して撤退・退却する])

レイチェルは、自分とモニカのために、男性ナース2人とダブルデートの約束をとりつけました。
そのうちの一人(名前はダン)がちょうどフィービーの分娩室に入ってきたので、レイチェルはモニカに彼を紹介します。
ト書きの Mouths "He's yours." to her. に少し注目しましょう。
mouth という動詞は、フレンズのネットスクリプトのト書きによく登場しますが、「声には出さずに口の形だけで…と言う」という意味です。
セリフとして声には出ていないので、DVDでもこの部分は日本語に訳されていませんが、実際に映像を見ていると、確かにレイチェルの口は、He's yours. と言っているように動いていますね。
He のところで目の前にいるダンの頭を指差し、yours のところでモニカを指しています。
意味としては、He/Dan is your date. 「彼があなたのデート相手よ」ということです。
誘った二人はどちらも多分かっこいいのでしょうが、多分レイチェルはもう一人の方をより気に入っていて、私はもう一人のナースにターゲットを絞るから、あなたはこっちの彼を担当ね、みたいな感じのことでしょう。
その前のセリフにあるのと似たような、He's one of our dates. 「彼はダブルデートの相手のうちの一人よ」というような内容なら、声に出して言えるのでしょうが、「ダンの担当はあなただからね」みたいなことはやはり、ダン本人の前では言いにくいので、声には出さずに口の形だけでそうモニカに伝えた、ということだと思います。

モニカはダブルデートをすることで、最初はチャンドラーに申し訳ないという気持ちを持っていたのですが、この少し前に二人で話した時、チャンドラーは「モニカが誰とデートしようと別に構わないよ、だって俺たち遊びだろ(We're goofing around)」みたいなことをつい言ってしまい、モニカも「あなたがそう言うんなら、私も気にせずデートするわ」みたいな、ちょっとした喧嘩状態に今はなっています。(goof around というフレーズについては、また、後の記事で解説します)
それでモニカは大袈裟なくらい、ダンに愛想よく挨拶しているのですね。これ見よがしにチャンドラーに見せつけている感じです。
I'm really looking forward to Saturday night! は、to の後、Saturday night という名詞が続いていますね。
「…するのを楽しみに待つ」のように動詞が続く場合は、look forward to doing のように動名詞の形になる、ということが常に注意事項として挙げられますが、このように直接、名詞が続くのを見ると、「動詞の場合は動名詞にしなければならない」ということもおのずと理解できますね。
「look forward to 動名詞」ということを丸暗記するのではなくて、今回のように名詞が来たり、動名詞が来たりする様々な形に遭遇することで、自然とその形が普通に思えてくる、そういう学び方をしたいものだと思います。

モニカがチャンドラーの前でわざとはしゃいで見せたので、チャンドラーも何か一言言わずにはいられないようです。
君は医者じゃなくて、看護師なんだよね。それってちょっと girlie じゃない?みたいなことを言っています。
girlie は、ガーリーというカタカナでも何となくわかるように「女の子っぽい」という意味です。
ジョーイが最初に nurse と聞いて、女の子を想像したように、ナースという職業には女の子のイメージがある、とチャンドラーは言いたいのですね。
この発言はちょっと、PC (politically correct) 的に問題あり、という感じなのですが、それについてはまた後で触れることにします。

put myself through medical school を直訳すると、「自分自身を、医学部の中に入れて通す」みたいな感じになるでしょうか。
それはつまり、「医学部に通って、最終的には卒業する」というニュアンスでしょうね。
英辞郎にも以下の説明が載っています。
put oneself through college=(働いて)自力で大学を卒業する
例) How do you think I put myself through college? 「大学を卒業するのに、どうやって学費を稼いだと思う?」


看護師としての実習経験が卒業単位に必要ということもあり得るかもしれませんが、英辞郎にあるように、「働いて学費を稼ぐ」というニュアンスが近いような気はします。
医学部の高額の学費を稼ぐために、看護師として働いているんだよ、ということでしょう。

ナースなんて女の子みたい、と言ったのに、実は医学部に在籍する医者の卵なんだ、と返されてしまったので、チャンドラーは「負けた」という感じで残念そうな声を出しています。
さらには、湾岸戦争(the Gulf War)の話がダメ押しになったようですね。
ダンは「湾岸戦争中のナースの仕事は、そんなに「女の子っぽく」感じられなかったよ」と言っています。
このように it feels という形の自動詞は、「(物事が)…と感じられる」という意味。
feel という単語が使われていることから、この文章だと、やはりダン本人がその現場でその感覚を感じた、ということだと思えます。

湾岸戦争が起こったのは 1991年頃ですね。
今回のエピソードの放映は、1998年なので、7年前の出来事になります。
今、医学部に通っていて、見た目も若そうなダンが、7年前のその戦争に看護師として参加していた、というのはちょっと設定に無理があるようにも思いますが、ここでのセリフはやはり、ダン本人にそういう経験がある、ということを言っているように思います。
君たちは看護師の仕事を女の子っぽい仕事だと思っているようだけど、戦争などの現場を見たらとてもそんなことは言えない、壮絶で大変な仕事なんだ、ということでしょう。

戦争の話まで出されて、チャンドラーは反論することができません。
thanks for doing that for us の that は、具体的には湾岸戦争での看護師の仕事、を指すでしょう。
us は、そんな風に戦争の前線で働いていた人に対して、本国に残っていた国民の我々、という感覚でしょうね。
君たち看護師さんは、俺たちのために前線で頑張ってくれてたんだよね、ありがとう、みたいな感じのセリフになります。
by the way は「ところで」ですが、今回のように最後におまけのようについている by the way はちょっと日本語に訳しにくいところ。
無理に語尾につけて訳すと、「ありがとうね、言い忘れてたんだけどさ」みたいな感じになるでしょうか。

そう言った後、まさにト書きにあるように「敗北して退却する」ことになるのですね。(戦争っぽいフレーズを使っているのは、湾岸戦争からの連想でしょうか?)
ナースという職業をネタに、相手をギャフンと言わせるつもりが、逆にギャフンと言わされてしまった感じです。

最後に PC (politically correct)の話をします。
フレンズ2-21その14 で詳しく解説しているのですが、直訳すると「政治的に正しい」という意味で、その概念の意味は、「(表現・考え方・行動が)人種や性による差別や偏見がない」ということです。
アメリカは差別に対する感覚が鋭い国なので、PC 的に問題ないかどうかについてのチェックは日本以上に厳しいです。
それを考えると、今回のように、ナース(看護師)は女の子の仕事、みたいに決め付けるのは、ちょっと PC 的に問題発言なのでは?という気がするのですね。
また上のチャンドラーのセリフからは、医者と看護師の仕事の間に優劣をつけている感覚もあるので、それもまた PC 的には問題ではないかな、とも思います。

ただ今回の場合は、聞いた瞬間には「そこまで言っちゃっていいの?」と思えるような差別的な発言をするのですが、結局、そのことでチャンドラーが逆に負かされてしまう、という展開になっているので、そのきわどい発言もある程度は許されてしまっているのかな、という気はします。
また、「フレンズ」はあくまでもコメディであるので、ジョークを成り立たせるための前振りのセリフとして許される許容範囲であった、とも言えるのかもしれません。

ナースのことを今では日本語でも「看護師」と中性的な名称で呼称していますが、昔は「看護婦」と呼ばれていましたので、ナースと聞いて「白衣の天使」の女性を想像してしまうのは、何もジョーイに限ったことではないですね。
今回のフレンズのセリフを見ていても、「男のナース」という存在を特別扱いしている感覚があります。
今回はそのみんなのイメージを逆手に取る形で、ジョークやセリフが成り立っているという感じでしょう。

余談になりますが、TOEIC のような試験では、PC 的配慮がなされていて、例えば、リスニング・セクションでは、医者が女性である、上司が女性である、という会話のパターンもよく登場します。
これも「女性だから看護師、女性だから部下」のような固定概念を持っていると、それだけで混乱してしまう可能性がありますね。
PC という概念を知っていると、逆に「PC に配慮した会話なんだな」と妙に納得できてしまうわけです。
TOEIC の問題の表紙に、いろんな人種の方々の顔写真が載っていますが、これも、「国際語」としての英語のイメージを強調すると同時に、英語を話す多様な人種に配慮した、PC 的な側面もあるのでは?と思っています。


(Rach からのお詫び)
いただいたコメントへのお返事は、もうしばらくお待ち下さいませ。

(Rach からのお願い)
ランキングをクリックして、応援していただけると嬉しいです。
人気ブログランキングへ にほんブログ村 英語ブログへ
posted by Rach at 10:07| Comment(3) | フレンズ シーズン5 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさんはサンデル教授のハーバード白熱教室を、ご覧になっていましたか?
ちょっとした知る人ぞ知るといった人気番組で、私も大変これにハマっておりました。
この中でアメリカの優れた面白い思想、哲学に触れました。
アファーマティブ・アクションというものです。
積極的差別是正措置というもので、大学の入試なんかで黒人と白人が同じ点数だった場合、黒人を優先して合格にしようという思想です。
番組ではコレが道徳的にどうか?討論するわけです。
なぜこういった措置がとられたかというと過去の黒人への迫害、差別への贖罪意識、および 多様性の重視という観点です。
大学という教育の場で同質の人間、つまり同じ白人だけよりも色んなタイプ(性格、人種、性別)を集めたほうが人間の教育的観点からも有効であるという思想らしいです。
前のブッシュ政権でも黒人が要職についていたり、黒人女性が長官だったりしていました。
もちろん政治的な黒人票の取り込みとか純然たる能力主義もあるでしょうが、前述した多様性重視という観点も大きいと思います。
そういえばスター・トレックでも黒人や女性が艦長だったり、インディアンの血をひく人が副艦長とか、これもそういった思想の現れかなと思います。
今回、PC (politically correct)の話にインスパイアされか書かせていただきました。
アメリカという国は勝手なこともするし必ずしも肯定的ではありませんが、こういった面は素晴らしいなと思う次第です。
Posted by かつての読者 at 2010年08月13日 00:27
And it didn't feel so "girlie" during the Gulf War.というのはDanが軍人(看護婦)ではなく、Gulf warを参加したと私が思っていますが。
20歳頃recruited in the army, attended medical school after leaving it.
Posted by Fen at 2010年08月13日 22:47
かつての読者さんへ
「ハーバード白熱教室」は話題になっていたので知っていますが、残念ながら番組は見ていません。正義とは何か?などの命題を考えるという、非常に興味深い番組ですよね。

affirmative action のような「措置」を取ることには賛否両論あると思いますが、そういうアクションを起こさないと変わらない、起こすことで変わることも多いのだろうと思います。そういう diversity に対する意識がアメリカははっきりしていますよね。


Fenさんへ
Fenさんのお考えでは、「the Gulf War の時は20歳くらいなので軍人として参加し、その後、医師を目指した」ということですね。確かにそうかもしれませんね。今、医学部在籍であることを考えると、そのスキルで看護師として戦争に参加する、というのは無理がありますものね。若い頃、その戦争に兵役として参加して、そこで奮闘する看護師の姿を見ていた、それはとても girlie と呼べるような軽いものではなかった、という感覚なのでしょうね。
Posted by Rach at 2010年08月14日 08:33
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。