ブログを続ける原動力となります。どうか今日も応援クリックをよろしくお願いします。


シーズン5 第7話
The One Where Ross Moves In (レイチェルは恋の法則ガール)
原題は「ロスが引っ越してくる話」
[Scene: Central Perk, Chandler and Joey are there. Joey is looking at a National Geographic and giggling.]
セントラルパーク。チャンドラーとジョーイがそこにいる。ジョーイはナショナル・ジオグラフィック(という雑誌)を見て、くすくす笑っている。
チャンドラー: Are you looking at naked tribeswomen? (裸の原住民の女を見てるのか?)
ジョーイ: No, look. (Shows him the magazine.) (いいや、見てくれよ。[チャンドラーに雑誌を見せる])
チャンドラー: That's a pig. (それはブタだぞ。)
ジョーイ: I know, I know. But look at the knobs on it! (わかってる、わかってるよ。でも、そのブタの乳首を見てみろよ!)
(Ross enters and his hair is a mess.)
ロスが入ってくる。髪の毛は乱れている。
チャンドラー: Hey! (Joey quickly hides the magazine under the couch.) (よお! [ジョーイはカウチの下に、素早くその雑誌を隠す])
ロス: Emily's cousin kicked me out. (エミリーのいとこに(部屋から)追い出されたよ。)
チャンドラー: What? (何だって?)
ジョーイ: Why? (どうして?)
ロス: Well, when you're subletting an apartment from your wife's cousin and then you get a divorce, sometimes the cousin suddenly wants his apartment back. (うーんと、妻のいとこからアパートメントを、サブレット(また借り)してて、その後、離婚したら、そのいとこが自分の部屋を突然返して欲しいと思ったりすることがあるんだよ。)
チャンドラー: How can he do that? Didn't you sign a lease? (どうしてそんなことができるんだよ? ロスはリースの契約をしなかったのか?)
ロス: Who needs a lease when it's "family"? (身内なのに、契約を必要とするやつがいるか?)
ジョーイは、ナショナル・ジオグラフィック(National Geographic)という雑誌を見ながら、くすくす笑っています。
詳しくはこちら(↓)。
ナショナル ジオグラフィック 日本版 NATIONAL GEOGRAPHIC.JP
「ナショジオ」という略称で呼ばれることもある、自然や科学などのトピックを取り上げている雑誌ですね。
古生物学者のロスが好きそうな雑誌ですが、ジョーイが喜んでいるので、「裸の女性でも載ってるのか?」とチャンドラーは尋ねています。
ですが、ジョーイが見ていたのは、ブタ(笑)。
あきれるチャンドラーに、ジョーイは、But look at the knobs on it! と言って喜んでいますね。
knob は「ドアノブ」などの「ノブ」「取っ手、つまみ」ですが、ジョーイのいやらしい笑い方を見ていると、何かエッチ系のことを考えているのがわかります。
これから、その knob(s) とは何か?について考えてみます。(長くなります。すみません)
まず、knob には penis の意味があります。
Macmillan Dictionary にも、
knob : (British) (impolite) a man's penis (=sex organ)
と出ています。
LDOCE (Longman Dictionary of Contemporary English) にも、
knob : (British English) (spoken, not polite) a penis
と出ています。
が、アメリカ英語に特化した辞書である、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) には、knob の語義に penis の意味は載っていません。
そのように、辞書の定義を忠実に解釈すると、「knob はイギリスでは penis の意味として使われるが、アメリカではその意味では使われない」ということになるでしょうか。
ただ、オンラインスラング辞典である、Urban Dictionary でも、knob = penis だという説明が多く載っていたのですが、そこでは特に「イギリス英語限定」という記載はありませんでした。
とすると、もっぱらイギリス英語だけど、アメリカでもその意味で使うことはあり得るかなぁ、という気もするのですね。
ただ、a knob = a penis だと解釈した場合に、違和感を感じるのは、the knobs on it と「複数形」になっていることです。
it は前述の a pig ですから、「1匹のブタ(の身体の表面)についている penises (複数)」だったら、おかしいような気がするのですね、生物学的に(笑)。
そう考えると、アメリカ英語ではあまり penis の意味では使われない、ということが意味を持ってくるような気もします。
最初に述べたように、knob には「取っ手、つまみ」という意味もあります。
また、英和では「(木の幹などの)こぶ」「丸い丘、小山」のような意味も載っています。(残念ながら英英ではそういう意味は見当たらないのですが…)
そういう「盛り上がったもの、出っ張ったもの」、あるいは文字通り「つまみ」という意味で、複数形のもの…ということになると、ブタのお乳、特に「乳首」(nipples)を指している可能性が高い気がします。
DVDの日本語でも「見ろよ、この乳首!」と訳されていましたし、ジョーイの習性(?)を考えると、ブタの penis よりも、ブタのおっぱいを見て喜んでいる方が彼らしい(笑)という気もしますし。
また、DVDの英語字幕や実際の音声は、knobs on it となっていますが、ネットスクリプトは、knobs on her と書いてあります。
her というのは、female pig ということですから、ネットスクリプトを書いた人(ディクテーションした人)も、knobs を nipples だと思った、だから、it を her と書いてしまった、ということなのでしょう。
さきほど参考にあげた Urban Dictionary では、knobs という「複数形」の形で調べると、
knobs : The female breasts/nipples
と出ていました。
また、英辞郎でも、knob にはそういう意味は載っていませんでしたが、knobs という「複数形」では、
knobs=乳房
と出ていました。
それを考えると、最初から knobs という複数形で調べていれば、こんな回り道をすることもなかったわけですが…(泣)、でもイギリス英語では単数形で penis の意味になる、とわかったのも無駄ではなかった(と思いたい…笑)。
…ということで、やはりここは「乳首」ということで間違いないと思います。
「つまみ」に通じる形からの連想…なのでしょうね。
knob の話をこんなに延々書いたのは、英語音声で聞いた瞬間は、ノブみたいな形状のものとして私も(ブタの)乳首を連想したのですが、英英に penis の意味が載っていたので一瞬そっちかな?と思ってしまった自分に対する反省が一つ、それと、これがエッチ系の意味であることが次回の「その2」で取り上げるオープニング前のオチと少し関係があるように思うからです。
それについてはまた、次回詳しく説明します。
kick someone out を直訳すると「蹴り出す」ということですから、「追い出す、放り出す」という意味ですね。
漫画などでよく見かけるような、「出てけー!」と言われポーンと蹴られて追い出された、みたいなイメージでしょう。
なぜロスは追い出されたのか?と理由を尋ねるジョーイに、ロスは when you're subletting... という文章で、you を主語にして答えています。
これは、「自分の経験を語る時に使う you 」ですね。
フレンズ1-13その3 のコメント欄 でも説明していますが、マーク・ピーターセンさんの「続 日本人の英語」に、このような you についての詳しい記述があります。
p.71 のピーターセンさんの説明にあるように、
「英語では、自分の経験から一般論を推定する場合、主語を "you" にすることが実に多い。」
のですね。
今回の場合、「(もし)君が妻のいとこから部屋を借りてて、それで君が離婚したら…」のように、主語を 「君、あなた」として訳しても、意味はわかりますよね。
もし君がこういう立場だったりするだろ、そしたら、こういう結果になるんだよ、と、君(相手)に疑似体験を連想させて、相手の共感を得ながら自分の体験を一般論として語る感覚…から来たものだと思いますが、ここではあえて「君が」と二人称で訳さない方が、英語本来のニュアンスが出る気がします。
あくまで自分のことを語っているけれど、「こんなふうになるもんなんだ」と一般論として語るために you を使っている、ということです。
こういう「自分の体験を語る時に主語を you にする」というのは、これまでのフレンズでもたびたび登場しましたし、英語でのインタビューなどでもよく耳にします。
こういう場合は主語が you である方が英語的には「自然」なのだ、ということですね。
sublet は英和では「…を又(また)貸しする」と出ています。
使役動詞として使われる let 「…させる」には、「(家・土地など)を貸す、賃貸する」という意味があり、そこに「下、下位、副」を意味する接頭語 sub- がついた形になります。
LAAD では、
sublet : to rent to someone else a property that you rent from its owner
つまり、「持ち主[家主]から借りている[賃借している]資産[不動産]を他の誰かに貸すこと」。
sublet の語義説明に使われている rent という単語は、rent someone the room や rent the room to someone の形だと「人にその部屋を貸す・賃貸する」という意味になり、rent the room from だと「その部屋を…から借りる・賃借する」という意味になります。
ですから、その前置詞の感覚を sublet にも当てはめると、to なら貸すで、from なら借りるになりますから、sublet an apartment from your wife's cousin は「妻のいとこからアパートの一室を、また借りする」という意味になるのですね。
英和ではもっぱら「また貸しする」という意味で載っていますが、from と組み合わせれば意味はおのずと「また借りする」になる、ということです。
フレンズ4-4その2 では、家賃安定化条例について触れましたが、その時のアパートの管理人トリーガーのセリフで、
Monica is illegally subletting her grandmother's apartment. (モニカは、おばあさんのアパートを違法に又貸し(サブレット)している。)
というのもありました。
祖母名義のアパートなのに、モニカがそれをレイチェルとルームシェアしていることを、「違法に又貸し」と表現しているわけですね。
family は「家族」ですが、ここでは「身内」の感覚ですね。
不当に追い出されるなんて、lease 「賃貸借契約」を交わさなかったのか?とチャンドラーは尋ねていますが、「身内、親戚」としての好意から貸してくれてただけだから、契約なんか結んでるわけないだろ、とロスは答えているわけです。
Who needs...? は、Who knows? / Who cares? などと同じ反語で、「身内なのに、誰が契約を必要とするんだ。わざわざ契約を取り交わすやつなんていないだろ?」というニュアンスですね。
ランキングをクリックして、応援していただけると嬉しいです。


今回はknobについての深ーい深ーい解説ありがとうございました。大変ためになりました。(どこかで使えるとは思いませんが。)
今回お書きになったYouで表現する一般事項もおっしゃる通り極めて英語らしいな、と思います。日本人はなんとなくWeで言いたいですよね。In Japan, we have to pay a toll in most of the expressways.みたいに。あるいは、People を主語にしたくなるkともあります。なんとなくこちら側のことをそちら側の人に説明している、というような感じでしょうか。
英語表現はそこにいる相手が主人公と考え"In certain situations....."において、君はこうだね、こうしなくては、という雰囲気なのでしょうか?In Japan, you have to pay.....。のほうが英語的ですね。 また思いつきですみません。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、上に説明したような意味で、自分から a knob や knobs という言葉を使うことはないでしょうが(笑)、知識として知っておくのは悪くないかな、と思っています。
ロングマンやマクミランにそういう語義が載っていたのも驚きでしたし。
自分の体験を you を主語にして語る件については、おっしゃるように日本人はまず、We を使うことを考えるでしょうね。「我々日本人は…」みたいな言い方に私たちは慣れていますものね。(とか、ここでもつい「私たち」とか言ってしまう…笑)
ただ、そう表現すると、英語圏の人は違和感を感じるようです。
上で紹介させていただいた、マーク・ピーターセンさんの「続 日本人の英語」の中でも、
日本人はこういう一般論を語る場合に、We を使いたがるが、そういう "we" は、「硬くてやや不自然というだけでなく外国人の相手に少々疎外感さえ与えかねない」
と説明されていました。
このような you については、私が購読していた週刊STのコラムでも説明がありました。
2005年6月10日号の、堀内克明さんと V.E.ジョンソンさんによるコラム「英語Q&A」での、「一般の人を表す you 」という記事です。
読者の方の質問は、「ミュージシャンのインタビューで、明らかに自分が質問されているのに、主語を you にして答える人が多い。この you はどのようなニュアンスなのでしょうか?」というものでした。
それに対する先生方の回答の中で、もしインタビューに答える時などに、you 以外の単語を使った場合にはどういうニュアンスになるか、という説明もされていました。
その説明は以下のとおり。
one や a person だと「改まっていて、堅い」感じ。
people は「自分以外の世間一般の人たちを指す」感じ。
we は「われわれ」という自己主張が感じられて、you のように控えめではない。
I だと「自己満足」の感じ。
動名詞を使って「…することは」という文にして主語を省略すると、主語を省略する日本語に近い効果があるが、これはぶっきらぼうな印象を与える。
(引用ここまで)
日本人が使いがちな we や people では、どういう印象を持たれるかがよくわかりますね。
こういう場合は英語では you が最も自然だ、ということです。
おっしゃるように、「日本にいたら、(あなたも私も含めて、人は)みんな、こうしないといけないんですよ」というニュアンスで、In Japan, you have to... と主語を you にする方が、自然だろうと思います。