2011年01月15日

光年は「距離」だけど… フレンズ5-9その8

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フレンズ2-6その4+longに関する疑問点(2) のコメント欄 で、「光年」という言葉の意味についてのコメントがありました。
私が、フレンズ2-6その1 のコメント欄 で、「光年」をまるで「時間」であるかのように書いてしまっていたことに対してのご指摘でした。
そのご指摘通り、「光年」という言葉は「年」という文字が入っているけれども、「距離」(光が1年間に進む距離)を表す単位ですよね。
どうやら「時間」を表す「年」という漢字に引っ張られて、勘違いしてしまったようです。
光年と言えば、宇宙戦艦ヤマトで「14万8千光年の彼方のイスカンダル」と言っていたように、光年が距離であることは小学生の頃から知っていたはずなんですが…(爆)。
誤りをご指摘していただき、ありがとうございます。

そんな風に「光年」の話題が出た時に、最近のフレンズのエピソード(フレンズ5-9)で、light years (つまり、光年)という単語が出てきたことを、ふと思い出しました。
それに関連して、辞書を調べていると、いろいろと興味深いことが出てきたので、今日は、フレンズ5-9 の追加記事として、light years を中心に記事にしたいと思います。

light years という単語が出てきたのは、フレンズ5-9その5 の少し前のシーン。
上の記事では、その部分を省略して、日本語であらすじを説明しています。
そのあらすじにあるように、文学講座を受講しながら、自分で本を読んでこないレイチェル、さらにはフィービーが考えた意見をさも自分が考えたように発表して得意気なレイチェルに、フィービーは激怒しています。
また本を読んでこないまま、「ジェーン・エア」ってどんな人?と尋ねてきたレイチェルに、フィービーが嘘の情報を教えるのが以下のシーン。

フィービー: Fine. Okay, all right. So, Jane Eyre? First of all, you'd think she's a woman, but she's not. She's a cyborg. (いいわ、わかった。それじゃあ、ジェーン・エアね? まず第一に、あなたは彼女を女性だと思ってるだろうけど、そうじゃないわ。彼女はサイボーグよ。)
レイチェル: A cyborg? Isn't that like a robot? (サイボーグ? それってロボットみたいなものじゃないの?)
フィービー: Yeah, this book was light years ahead of its time. (えぇ(ロボットみたいなものよ)。この本は、ものすごく先進的な話なの。)
先生(The Teacher): (entering) Sorry I'm late. Let's get started. So, what did everybody think of Jane Eyre? ([入ってきて] 遅れてすまない。さあ始めよう。それで、みんなはジェーン・エアのことをどう思ったかな?)
フィービー: Umm, Rachel and I were just discussing it, and she had some very interesting insights. (あのー、レイチェルと私はちょうどそのことを議論していたところです。それで、レイチェルが非常に興味深い洞察をしていました。)
先生: Well, go ahead, Rachel. (そうか、さあ、どうぞ(それを話して)、レイチェル。)
レイチェル: Uh, thank you, Phoebe. Umm, well, what struck me most when reading Jane Eyre was uh, how the book was so ahead of its time. (あー、ありがとう、フィービー。あのー、ジェーン・エアを読んでいて、私が最も感銘を受けたのは、この本が非常に先進的である、ということです。)
先生: If you're talking about feminism, I think you're right. (もし君がフェミニズム(男女同権主義)のことを言っているのだったら、君は正しいと思うよ。)
レイチェル: Yeah, well, feminism, yes. But also the robots. (ええ、そう、フェミニズム、そうですね。でも、ロボットのこともです。)
それを聞いて、ニヤッと笑うフィービー。

フィービーは、ジェーン・エアはサイボーグだと嘘をついて、レイチェルに恥をかかせようとしているわけですが、そのサイボーグの話が出た時の this book was light years ahead of its time というセリフで light years が登場していますね。
最後の方のセリフでも、the book was so ahead of its time という表現が出てきていますが、light years ahead of its time は、ahead of its time の強調バージョンといったところです。

まずは、ahead of its time という表現から見てみます。
ahead of one's time は、「時代に先駆けて、進歩的で」という意味。

Macmillan Dictionary では、
ahead of your/its etc. time : much more modern or advanced than most other people or things
例) As an artist, he was years ahead of his time.


つまり、「他の多くの人々や物事よりも、ずっともっと近代的で[最新で]、進んだ[進歩した、進化した、高度な]」。
例文は、「芸術家として、彼は何年も時代を先駆けていた。」

そして、今度は、light year の語義を英英で調べてみると、ロングマンには、今回のセリフで使われた、light years ahead のフレーズが載っていました。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
light year [noun] [countable]
1. PHYSICS the distance that light travels in one year, about 9,500,000,000,000 kilometers (5.88 trillion miles), used for measuring distances between stars
2. light years ahead/better etc. than something : (informal) much more advanced, much better etc. than someone or something else
例) The show was light years ahead of its competition.
3. light years ago : a long time ago


つまり、1. は「(物理学) 1年で光が進む距離、約9兆5千億キロ(5兆8800億マイル)、星間距離を測定するために用いられる」。
2. の light years ahead/better etc. than something は、「(インフォーマル) 誰かや何かよりももっとずっと進歩している、ずっと良い」
例文は、「その番組は、ライバル番組よりもずっと進んでいた[ずっと良いものだった]。」
3. の light years ago は、a long time ago 「ずっと以前に、ずっと昔に」。

Macmillan Dictionary では、
light year
1. [COUNTABLE] ASTRONOMY the distance that light travels in a year, used as a unit for measuring distances in space
2. light years [PLURAL] : (INFORMAL) a very long way in time, distance, or quality
例) Her life in Hollywood was light years away from her childhood in the East End of London.


つまり、1. は、「(天文学) 1年で光が移動する距離、宇宙での距離を測定するための単位として用いられる」。
2. の light years は、「(インフォーマル) 時間、距離、品質において非常に長い距離」
例文は、「ハリウッドでの彼女の生活は、ロンドンのイーストエンドでの子供時代とは、ものすごくかけ離れたものだった。」

マクミランの語義では、本来の定義である distance 「距離」に限らず、time 「時間」や quality 「品質」における a very long way も表す、と書いてあるのが興味深いところです。
このマクミランの例文は、生活の「質」がものすごく違う、異なることを、light years away で表現しているわけですね。

ということで、物理学、天文学の定義で言うと、「距離」だけれども、インフォーマルな使い方としては、距離だけに限らず、時間やクオリティの面においても大きな「隔たり」がある、ということを示す意味として使われることもある、ということのようです。

特に、light years ago は、a long time ago 「ずっと昔に」という「時間」の感覚で使われていますね。
years ago 「何年も前に」というフレーズがあるため、それと似た感覚で使っている、というのもあるでしょうし、light years が「尋常ではない距離」を表すために、時の隔たりが非常に「長い」→ずっと昔、という流れにもなるのでしょうね。
日本語でも「遙か遠い昔」「近い将来」などと言いますが、距離を表す「遠近」を時間軸上で捉えた場合には、距離=時間の長さになる、ということも納得できる気がします。

マクミランに、he was years ahead of his time という例文が出ていましたが、この years を light years と「誇張」した感じのフレーズが、今回のセリフの light years ahead of its time なのでしょう。
ですから、this book was light years ahead of its time というセリフは、「この本は、時代の遙か先を行っていたのよ」という感じになるのでしょうね。

ちなみにこのセリフ、DVDの日本語訳は、「(字幕)遠い未来の話なの/(吹替)実は何億光年も未来の話なのよ」と訳されていました。
サイボーグの話だから、「(西暦2500年のような)ずっと遠い未来の話」だとも言えるわけですが、厳密に言うと、「物理的な時間における、遙か遠い”未来”」というよりも、advanced の感覚が近いようです。
その当時の同類のものよりも、ずっと進んでいる、先進的である、という感じでしょう。

「先進的、進歩的」という意味で使っているので、レイチェルが先生にその話を説明した時に、「当時の保守的な社会において、フェミニズム(男女同権主義)の点で先進的だ、と君は言いたいのだね?」と解釈されたわけです。
そこで、「えぇ、まぁ、そういう感じのことです」と言って終わっておけばいいものを、はっきり、サイボーグという言葉を出してしまったので、墓穴を掘ることになってしまう、というオチになります。

以上、「光年」の定義の話から、それこそ何万光年も脱線してしまいましたが(笑)、インフォーマルな使い方としては、「距離」以外の隔たりを表す場合もある、というところが、個人的には大変興味深かったです。
例えば日本の辞書である広辞苑などで「光年」を引くと、そこには通常の天文学の定義である「距離」の意味しか載っていません。
ですが、英語の場合は、「何年も」の意味で years が使われているフレーズが多く、それを誇張する感覚で、light years ago や、light years ahead of its time のようなフレーズも存在するということ、それは、「光年は距離を表す」という天文学の定義からすると少々不思議な感覚ではあるけれども、あくまで「インフォーマルな形」としては頻繁に使われ、さらにはちゃんと辞書にもそのフレーズが載っていた、という点が、私的にはとても面白かった、ということです。
本来の定義とは異なるために、英英の語義でも、「天文学」と「インフォーマル」のように厳密に区分けしてあったわけですね。

超長い「光年」話にお付き合いいただき、ありがとうございました。


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posted by Rach at 08:09| Comment(2) | フレンズ シーズン5 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。

まずは、いつもコメントをする度、丁寧なご回答を下さって、ありがとうございます。

コメント欄で賑わっていた「longに関する疑問点」の話も、拝見させて頂いておりました。私感としましては、、そこでは、距離/時間の議論が為されていたようではありますが、私も理系(工学系)出身で、その立場からすると、距離と時間はむしろ不可分のものと捉えておりますので、longの意味するところがそのどちらなのか、という議論は、ある意味、不毛であるような気もしておりました。(長くなりそうなので、、その説明は省きます)

そして、今回のエントリを拝見しまして、思ったことは、日本語と英語の、単語に対する感覚の違いのようなものです。私も、英語の感覚が身に付いているとは、とても言えないようなレベルではあるのですが、今まで英文に接してきた中で、ぼんやりと感じてきたようなことがあります。それは、日本語の単語、特に専門用語、が、意味する範囲はとても狭いもので、それに対して、英語の単語が意味する守備範囲は結構広いものが多いのではないか、ということです。

Rachさんは、光年=light year(s) という例を挙げられました。日本語では、例えば日常会話で、「まるで、数万光年が経ってしまったようだ」みたいな言い方は、普通誰もしませんよね。「光年」=物理系(それも天文系)の専門用語、みたいな守備範囲の狭い言葉、或いは、本来の定義そのままの言葉、と捉えられているからだと思います。

数年前に、ハンガリー出身の友人で、大学院の面接のために書いている論文(日本語)の添削を頼まれたことがありました。彼は、その頃、おそらく、頭の中での第一言語は英語であり、その論文も、英語を日本語に翻訳したような形態で書いていたように思いました。そこでは、同じ意味の言葉を、様々な単語で言い換えていたのですが、僕は、それを、一つの単語に統一するように言いました。彼は、英文では、同じ単語を繰り返し使わずに、類義語で置き換えて変化をつけるのが定石だと主張したのですが、日本語の、特に専門用語に近いものになってくると、それぞれの守備範囲が狭く、言い換えが通用しない、なぜなら意味が少しずつ異なってきてしまうから、そのため、ある、定まった概念を繰り返し示す時は、同じ単語を使い続ける方が良いのだ、と説明したのですが、それと同時に、英語と日本語の違いについて、また思い知らされたような気がしました。

英文の新聞や雑誌なんかを読んでいると、本当に、様々な言葉の言い換えを頻繁に目にするものですが、日本語だとなかなかそういう、単語の意味を七変化させつつ、同じことを示し続けるするような使い方はしないものだなぁ、と時々思います。

今回の話を読んでいて思いだしたのは、ages という言葉で、前に、旅行のガイドブックか何かを読んでいた時に、It takes ages. みたいな表現があったことを思いだしました。その部分の意味するところは、「(予約無しで待っていると)数時間はかかります」ぐらいのことだったと思うのですが、その大げさな単語の使い方が、すごく記憶に残ったことを覚えています。

すみません、、何が言いたかったのか、イマイチ分からなくなってきたのですが、、日本語だと一つの意味しか持たないような言葉でも、それに対して同じ意味を持つとされる英単語は、それに加えて色々な文脈でも派生して使われ、膨らんだ意味を持ち得る、、ということが結構あるのでは無いか、ということを感じ、コメントさせて頂きました。

実は同時に、その逆のパターンもあるかな、とも思い始めていたりもするのですが、、。それでも、どちらかと言うと、日本語の単語の方が、守備範囲の狭いものが多い気は、やはり、しています。
Posted by neko at 2011年01月16日 03:51
nekoさんへ
こんにちは。コメントありがとうございます。

long についての「距離と時間はむしろ不可分のもの」というご見解、私も納得いたします。
また、日本語の専門用語の守備範囲が狭く、英語はそれと比較して結構広い、というお話もよくわかる気がします。

英語の light years は、インフォーマルな会話で頻繁に使われるようですね。辞書の例文にもあったように、宇宙や天文学とは全くかけ離れた、普段の生活の文章で使われるようです。ご指摘の通り、日本語で「光年」という言葉を使うと、そういう分野に詳しい人、そういう仕事にたずさわっている人が使う以外だと、何となく違和感がありますよね。
広辞苑でも、光年はあくまで、本来の物理学としての概念しか載っていなかった、というところも、日本語では「何光年も前」みたいな表現は(通常は)存在しない、ということを物語っていると思いました。

そのハンガリーのご友人のお話も、英語と日本語の違いを端的に表していて、大変興味深いです。日本語では専門用語になればなるほど、用語を統一しないと、意味のずれが生じてしまいますよね。英語は、同じものを指す場合でも別の言葉に言い換えないと稚拙に見えてしまう、ということはよく言われていて、それが日本人が英語を書く際に戸惑う部分でもあります。
英語では、事実を伝える新聞記事などでも、頻繁に言い換えが行われます。それに比べて日本語の新聞は、やはり用語が統一されている印象が強いですよね。

ages という表現も確かに面白いです。英語は極端な表現を好みますよねぇ。million などという単位もよく登場しますし、逆に短い場合では、「ちょっと時間いい?」みたいな意味で、Two seconds. や、Three seconds. などを使ったりもします。「2秒や3秒じゃあ、こっちが返事をする間に使い切ってしまうやろ!」とツッコミたくなるところですが(笑)、それがまた「英語っぽく」て面白いなぁ、と。

各言語における守備範囲の違いに注目するのは面白いですね。単語を覚える時に、一対一対応で覚える方も多いですが、それでは本当の意味で単語を覚えた、理解したとは言えない、ということを、今回いただいたコメントで改めて強く感じました。

興味深いコメント、ありがとうございました。
Posted by Rach at 2011年01月18日 15:28
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