ブログを続ける原動力となります。どうか今日も応援クリックをよろしくお願いします。


セントラルパークで、フィービーが自分にモーションをかけてきた、と、恋人モニカに話して聞かせるチャンドラー。
チャンドラー: I'm telling you I think Phoebe thinks I'm foxy. (はっきり言って、フィービーは俺のことをセクシーだと思ってると思う。)
モニカ: It's not possible! (そんなのあり得ないわ!)
チャンドラー: Ow! (いてて[グサッ]!)
モニカ: I'm sorry, it's just, Phoebe's just always thought you were, you were charming in a, in a sexless kind of way. (ごめんなさい、ただ、フィービーはただいつも、あなたが、あなたがチャーミングだって思ってるわよ、性的な意味ではないけどね。)
チャンドラー: Oh, y'know, I, I can't hear that enough. (おぉ。ねぇ、今の言葉、いくら聞いても聞き足りないんだけど[もっと聞きたいんだけど]。)
モニカ: I'm sorry, I just think you misunderstood her. (ごめんなさい、私はただ、あなたがフィービーを誤解してると思うのよ。)
チャンドラー: No, I didn't misunderstand, okay? She was all over me. She touched my bicep, for crying out loud. (いいや、誤解なんかしてないよ、いいか? フィービーは俺に迫ってきたんだ。フィービーは俺のニ頭筋に触ったんだぞ、全く、もう…。)
モニカ: This bicep? (このニ頭筋?)
チャンドラー: Well, it's not flexed right now! (あぁ、今は、筋肉に力が入ってないんだよ!)
foxy は sexy の意味。
fox 「キツネ」に、「性的に魅力的な人」という意味があるのですね。
そういう fox や foxy については、フォクシーはセクシー フレンズ3-5その4 で説明しています。
foxy という言葉を強調したチャンドラーに対して、「ありえない」と返すモニカ。
ow は「アウ」と発音し、痛い時に発する言葉ですね。ouch 「アウチ」と似た感じです。
日本人だと、ケガした足を引きずりながら歩く時には、「いてて」とか「あいたたた…」とか言いながら歩いたりしますが、英語ではそういう場合、Ow, ow, ow, ow... 「アウ、アウ、アウ、アウ」と言いながら歩いているシーンをよく見かけます。
今回のチャンドラーのアウ!は、さっきまであれだけセクシーだと褒めておきながら、フィービーもそう思ってると言った途端、「そんなの、あり得ない」とバッサリ切り捨てたことに対して、「恋人からそんなこと言われて、俺は深く傷ついた、今のはこたえたよ」というニュアンスで、「いてて」みたいな言葉を言ったのだと思います。
俺の彼女なのに、その発言はひどいよぉ〜、という感じですね。
日本語で言うと、「イタッ! いてて!」でもいいでしょうし、傷つくことを言われた時に刃物で心臓をえぐられたかのように「グサッ!」と言ったりすることもありますので、とにかくそんな風に、傷つくことを言われたので今、心が痛んでいる、というニュアンスが伝わればいいかな、と思います。
モニカは、「もちろんフィービーはあなたのことをチャーミングだとは思ってると思うけど、それは異性として魅力的だと思ってるわけじゃないわ」とはっきり言います。
それに対して、チャンドラーは、I can't hear that enough. と返していますね。
can't ... enough を直訳すると、「十分に…できない」ということですから、「いくら…しても足りない」という意味になります。
人にお礼を言う時の決まり文句に、I can't thank you enough. というのがありますが、これも「いくら感謝しても感謝し足りません」ということなので、日本語で言うところの「感謝のしようもありません、お礼の申しようもありません」という意味になります。
言葉にできないほど、ものすごく感謝している、というようなニュアンスですね。
そういうニュアンスを今回のセリフにも当てはめてみると、(正直、よくわからないのですが、) I can't hear that enough. は「いくら聞いても聞き足りない」→「もっともっと聞きたい」というニュアンスになるのかなぁ、と思います。
「今のじゃ十分じゃないから、もっと言ってくれる?」みたいな感じで使われているのかなぁ、と。
言葉ではそう言っていますが、「フィービーはあなたをチャーミングだと思ってるけど、それは性的な意味じゃないわよ」とはっきり断言したモニカに対して、「恋人の君が俺のことを性的魅力がない、みたいに言うのか?」と、モニカの発言にあきれて、皮肉っぽく、「今の発言、もっと聞かせてよ、もういっぺん言ってみて」と言ってみせたのかなぁ、と思いました。
一瞬、「君の発言、よく聞こえないんだけど」と、相手のひどい発言に対して聞こえないふりをしたのかな?とも思ったのですが、もしそう言いたいのなら、I can't hear you well. のように well を使うと思うのですね。
やはり、not well 「よく(聞こえ)ない」ではなくて、not enough 「十分には(聞こえ)ない」なので、「まだ聞き”足りない”、もっと聞きたい」ということかな、と私は思いました。
恋人として失礼な発言をしたことに気付いたモニカは、ごめんなさい、と謝った後、「あなたはフィービー(の言動)を誤解してるのよ」と、さっきよりマイルドな表現を使いますが、チャンドラーは、勘違いなんかじゃない、She was all over me. だと説明します。
She was all over me. について。
LAAD には、以下のように出ています。
be all over somebody: (informal) to be trying to kiss someone or touch them, especially in a sexual way
つまり、「(インフォーマル) 誰かにキスやタッチをしようとすること、特に性的なやり方で」。
all over の元々のニュアンスは、「・・・の上一面に」という感じですから、それを人に対しての言葉として使うと、ばっと相手の全身を覆ってしまう、覆いかぶさる感じから、そういう意味になるのでしょうね。
感覚としては、「性的に相手に迫る」というところでしょう。
フレンズ2-10 でも、
ジョーイ: It was unbelievable! I walked in there and she was all over me. (信じられなかったよ! 俺がその部屋に入ると、彼女が俺に(性的に)迫ってきたんだ。)
というセリフがありました。
ジョーイに気があるキャスティング担当の女性が、部屋に入るなりいきなり迫ってきた(笑)という意味ですね。
チャンドラーは、俺に迫ってきたんだ、と説明した後、実際にフィービーは俺のニ頭筋を触ってきたんだから、とも言っています。
for crying out loud は、命令文につけると「頼むから、お願いだから」というニュアンスになり、それ以外だと、「おやまあ! あきれた!」というようなニュアンスになります。いずれも「強調」の効果があります。
LAAD では、
for crying out loud : (spoken) used when you feel annoyed or impatient with someone
例) It's right in front of you, for crying out loud.
つまり、「誰かに対していらいらしたり、耐えられないと感じる時に使われる」。
例文は、「まさにお前の目の前にあるだろ[まん前にあるだろ]、あきれたね!」
今回のセリフは訳しにくいのですが、フィービーが自分に気があることを全く信じようとしない恋人モニカにいらだって、「勘違いも何も、実際にフィービーは俺のニ頭筋を触ったんだってば! (どうしてそれを信じてくれないんだよ、全く…)」のような感じで、相手に対するいらいらを「強調」しているのかな、と思いました。
フィービーが触ったというその筋肉に触れたモニカは、「えー、これがぁ〜?」みたいに、また信じられないという顔をしています。
flex は「(筋肉や関節)を曲げる」という他動詞。
LAAD では、
flex [transitive] : to bend or move part of your body so that your muscles become tight
つまり、「体の部位を曲げたり動かしたりして、筋肉が堅く引き締まる」。
flex one's muscles だと「力・能力を示す、誇示する」という意味になります。
力こぶをぎゅっと作って、「どうだ!」と自分の力を見せる感覚なのでしょう。
(恐らく)ぷよぷよの(笑)筋肉を掴まれて、「だって今は、力こぶを作るように力は込めてなかったから」と言い訳しているのも、チャンドラーらしくて笑えますね。
ランキングをクリックして、応援していただけると嬉しいです。


僕も海外ドラマ、特に「フレンズ」が大好きでもう十数回は繰り返し見ていますw
ここまで詳細に内容を解説しているのを見て、少し自分の考えも共有したいなと思って初めてコメントします。
今回はチャンドラーの"I can't hear that enough."についてですが、
皮肉で言った意味ももちろんありますが、もう一つ意味があるのではないでしょうか?
第4シーズンで部屋交換の原因となったクイズ対抗戦のシーンでチャンドラーが女性と接したのが話の流れから遅いということがわかります。そして、大学時代の髪型やナンパが下手だという事実から、チャンドラーは本当にあまりsexyに見られなかったと言うことも間違いないかと思います。
それらを踏まえると、ここでのこの一言は自尊心を彼女に傷つけられたから皮肉に言ったのと同時に、そのまんまの意味で「本当にそれよく聞くんだよね」とも取れるのではないかと思いました。
個人的な意見ですが、こんな感じです。
これからも楽しく拝見させていただきます。
はじめまして。コメントありがとうございます。
紹介していただいたクイズ対抗戦を含め、フレンズのいろんなエピソードで「チャンドラーはモテない、sexy には見られない」という認識がありますね。モテるプレイボーイであるジョーイといつも比較される役回り、と言いましょうか。
そういう意味では、「本当にそれよく聞くんだよね」という返事でもしっくり来るのですが、not... enough のように enough を否定しているので、「よく聞く」という意味には解釈できないような気が私はするのです。not enough だと「十分ではない」→「不十分な、足りない」という意味になってしまう気がするのですね。
enough は「十分な」という意味があるので、「もうたくさん」みたいなニュアンスで使われることもありますよね。
enough を使った常套句としては、Enough! や Enough of that! 「もうたくさんだ!」みたいなものがあり、not という否定ではなく肯定のニュアンスで使われれば、「(今までさんざん言われ続けてきたから)もうたくさんだ」という感じには解釈できるのかな、と思います。
そういう意味では、チャンドラーの本音は、"I've had enough of that." 「もうたくさんだ」→「もうそんなこと聞き飽きたよ、もう十分言われてきたから、それ以上言わないで」という気持ちだったのを、わざと正反対のことを言って、「まだ十分に聞けてない、まだ聞き足りない」→「もっと聞きたい、もっと言って」と言ったのかもしれないなぁ、と、yang さんのコメントを読ませていただいて思いました。
または、「まだ十分聞けてない」→「これからまだまだ何度もその発言を聞くことになるだろう」という意味で言った、というようなニュアンスもあるのかな?とか…。
I can't thank you enough. という決まり文句は意味的にもしっくり来るのですが、thank が hear になった場合のニュアンスが、イマイチわからないんですよね。hear enough 「十分に聞く」というのは、どういう状態を指しているのだろうと。
I can't thank you enough. の意味を私なりに分解してみると、以下のようになる気がしました。
I've already thanked you, but that's not enough. So, if possible, I'd like to thank you more & more. (But I can't.)
それを、hear に当てはめようとしても、よくわからない…という感じなのですね…。
また私なりに引き続き考えてみたいと思っています。
貴重なご意見、ありがとうございました。
なるほど、そうかもしれないですね。
僕はcan't enoughを「満足できない」と理解して、直訳ではなく、
意訳で「いくら聞いても満足できない」=「よく聞くんだよね」という解釈しました。直訳ではないので少し甘まりがあったのかもです。
ここまで一文一文分析したのは初めてですごく面白いです。
頑張って続けてください
お返事ありがとうございます。
私が上に書いたのも、「今の私はこう思う」という意見に過ぎませんので、あくまで参考程度に聞いていただけると幸いです。
I can't hear that enough. は、見た目は知っている単語ばかりで簡単そうですが、そのニュアンスを正しく説明しようとすると何だか難しい、という感じがします。
分析を面白いと言っていただけて嬉しいです。これからも頑張ります。