ジョーイ: (entering) Hey, guys. (Sees their state of undress) What 'cha been doin'? (Has a silly grin.) ([入ってきて] やあ。 [服を脱いでいる[服を着ていない]二人の状態を見て] 何やってたんだよ? [おばかな感じで歯を見せて笑う])
モニカ: (looking out the window) Hey, Joey! Isn't that the girl that waved at you the other day? ([窓の外を見て] ねぇ、ジョーイ! あれって、こないだあなたに手を振ってた女の子じゃない?)
ジョーイ: I don't know, but I can see through your sheet. (He looks out the window.) Yeah, yeah, that's her. But y'know what? Doesn't matter. I'm never gonna get to meet her anyway. (どうかな、でも、君が巻いているシーツが透けて見えるよ。[ジョーイは窓の外を見る] そうだ、そうだよ、あれはその彼女だ。でもさぁ、どうでもいいや。どの道、俺は彼女に会うことができないんだよ。)
モニカ: Why? (どうして?)
ジョーイ: Because it's impossible to find her apartment! She lives in like some hot-girl parallel universe or something. (だって、彼女のアパートメント(部屋)を見つけることは不可能なんだよ! 彼女は、ほら、いい女の平行宇宙か何かに住んでるんだよ。)
モニカ: What are you talking about? (Pointing out the window.) She obviously lives on the second floor, seventh apartment from the left! (何言ってるの? [その窓を指差しながら] 明らかに、彼女は住んでるわ、2階の、左から7番目の部屋にね。)
ジョーイ: No. No. No. She lives on the third floor, eighth apartment from the left. (いやいやいや。彼女が住んでるのは、3階の、左から8番目の部屋だよ。)
モニカ: No. Those first two windows, (Points) that's the lobby. And y'know that other one over there, that's the stairway. You've been counting wrong. (いいえ。あの最初の2つの窓は、[指差す] あれはロビーよ。それから、あっちの別の窓、あれは階段よ。あなたはずっと数え間違いをしてるのよ。)
ジョーイ: I did not know that! Thank you, Monica. (Starts to leave) I can't believe I almost lost another girl because of counting! (俺はそのことを知らなかった! ありがと、モニカ。[立ち去ろうとする] 数のカウントのせいで、もう一人女の子を失うところだったなんて、信じられないよ。)
モニカは身体にシーツを巻いた状態で、それを見たジョーイは、「二人は一体何してたのかな?」とニヤニヤした笑いを浮かべています。
モニカが、「あそこに見えるのは、前に手を振ってた子じゃない?」と言っても、「そのシーツが透けて見えてるよ」みたいなことを言ってからかっていますね。
see through は「シースルー」という日本語になってしまっていますが、直訳すると、「…を通して見る」ことから、「…を透かして見る、…から透けて見える」という意味になるのですね。
窓に行って確認したジョーイは、「確かに例の女の子だけど、どうでもいい。どうせ、会うことはできないんだし」みたいに投げやりなセリフを言っています。
get to は、「…するようになる、…の状態になる」という感覚ですから、「どっちみち、彼女と会える、ということにはならない」というニュアンスですね。
彼女のアパートの部屋を見つけることは不可能なんだ、と説明した後、parallel universe という言葉も使っています。
これは、SFなどによく登場する「平行宇宙、平行世界」で、parallel world 「パラレル・ワールド、もう一つの世界」という言葉もありますね。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
a parallel universe
a) a universe that is extremely similar to our own, and exists at the same time
b) used when someone or something seems very strange and unusual, and different or separate from your normal experience
つまり、a) は、「私たち自身の宇宙[世界]に非常に似ている宇宙のことで、同時に存在している」、
b) は、「誰かや何かが非常に変わっていて普通ではないように見え、通常の経験とは異なり離れている時に使われる」。
a) は科学的、SF的な意味合いで、b) は「異次元、異世界」の感覚で、通常の感覚が通用しない世界、というニュアンスですね。
今回のエピソードでは、向かいのアパートに住むこの女の子の部屋を訪ねたら、そこはロスの部屋だった…ということが続き、ジョーイはなかなか彼女に会うことができません。
こっちからは見えてるけど、きっと彼女は別の世界に住んでいて会えない存在なんだよ、みたいにSFチックに言ってみせているわけですね。
それもただの「平行宇宙」ではなく、hot girl の平行宇宙、つまり、いい女がいっぱい住んでいるような世界に住んでるんだ、と言っているのが、ジョーイらしいですね。
ジョーイにとっては、夢のような世界なのでしょう。
モニカは、その彼女の住んでいる部屋の位置をジョーイに説明しています。
「2階の左から7番目の部屋」は、英語ではこう表現するんだなぁ、ということも同時に覚えておきたいですね。
こういう部屋の説明・案内などは、ビジネス英語でも必要なものだと思います。
ジョーイが部屋の位置を間違えているのを知って、モニカはその間違えた原因を説明してあげています。
ロビーや階段の窓を、部屋の窓とカウントしてしまったために、ジョーイは間違えたのだ、ということがわかります。
count wrong は「数え間違う」なので、現在完了進行形を使った You've been counting wrong. は、「(いつも彼女が見つからないって言ってたのは)あなたはずーっと数え間違いをしてるのよ」というニュアンスになりますね。
ジョーイは、I did NOT know that! と、否定の not を強く発音して、「それは知らなかった!」と言っています。
I can't believe I almost lost another girl because of counting! について。
because of counting は、直訳すると「数を数えることのせいで」というところで、つまりは、「数を数え間違えたり、正確に数えられなかったせいで」という感覚ですね。
almost lost という、「almost+過去形」は、「もう少しのところで・危うく…するところだった」というニュアンス。
lost (lose) は、「失う、見失う」で、ここでは「ゲットし損なう、ゲットするチャンスを逃す」というような感覚でしょうか。
「数を数え間違えたせいで、もう少しで女の子を失うところだったなんて、信じられないよ」と言っているわけで、「信じられない」というのは、女の子を失いそうになった原因が「愚かな数え間違い」であったことに、自分自身であきれているわけですね。
ところでこのセリフ、another という単語に少々ひっかかりました。
another というのは、an + other で、「もう一人の、別の」という意味ですね。
今回のように、あの手を振っていた彼女のことを言っているだけであれば、a girl 「一人の女の子」で構わないと思うのに、another を使っている理由は何でしょうか?
「もう一人別の女の子を失うところだった」というのは、以前にも何かしらの数え間違いで、お近づきになり損ねた経験があることを示唆している…のでしょうか??
counting 「数を数えること」という漠然とした表現を使っているので、必ずしも、部屋の位置を間違えたこととは限らないかもしれません。
数字に強いチャンドラーに比べて、数字には弱そうなジョーイなので、何か数字に関するミスをしてチャンスを逃した経験があって、今回、部屋を数え間違っていたことに気づいたジョーイは、「カウント間違いで、”また”失敗しちゃうところだったよ」みたいに言っているのかなぁ、と。
ジョーイは自分のおでこを手のひらでペンと強く叩きながら出て行き、モニカは少し首を横に振ってあきれた顔をしています。
モニカがあきれているのは、もちろん、アパートの部屋を正しく数えられないジョーイにあきれているのもあるでしょうか、もしかするとその another という言葉を聞いて、「前にも数え間違いで失敗したことがあったわけ?」みたいにあきれているのかもしれないなぁ、と思いました。
以前の間違いがどういうものかは、はっきりとはわかりませんが、「数え間違いによる失敗」というのが、ジョーイならありそうな話なので、「一体どんな間違いをしたんだよ!?」とツッコミを入れたくなるようなセリフの面白さなのかな、と思ったりします。
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