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ロスの部屋にブレンダー(ミキサー)を取りに来たレイチェルは、ロスの元妻エミリーがロスに電話をかけてきたのを偶然聞いてしまいます。「明日、私は他の人と結婚する予定だけれど、あなたとあんなに早く別れてしまったことは間違いだったんじゃないかと思ってるの」というメッセージが留守電に吹き込まれるのを茫然とした顔で聞いていたレイチェルは、そのメッセージをモニカにも聞かせます。
[Scene: Ross's apartment, Rachel is playing Emily's message to Monica.]
ロスのアパートメント。レイチェルはエミリーのメッセージをモニカに再生して(聞かせて)いる。
エミリー: (on answering machine) Are you thinking about me? No, of course you're not. But if you are, call me tonight. Okay, bye. ([留守電で] あなたは私のことを考えてる? いいえ、もちろん考えたりしてないわよね。でももし私のことを考えているなら、今夜電話して。それじゃあ。)
モニカ: (does Rachel's) Nooo! ([レイチェルのを真似て] ノーー!)
レイチェル: (does Monica's) I know! ([モニカのを真似て] そうでしょ!)
モニカ: Well, thank God you were here! I mean, we have to erase that! (そうね、あなたがここにいてくれて良かった! だって、私たちはそのメッセージを消さないといけないもの!)
レイチェル: What? We can't do that! (何ですって? そんなことできないわ!)
モニカ: We have to! What if Ross hears that and then calls her back and then they get back together? Is that what you want? Ross back with that controlling, neurotic, crazy Emily? The Emily that wouldn't let him see you? (そうしなくちゃいけないのよ! もしロスがそれを聞いて、それから彼女に電話をかけ直して、その後、二人がよりを戻したらどうするの? それがあなたの望みなの? ロスがあの支配的で、神経質で、クレイジーなエミリーとまた一緒になるのが(望みなの)? ロスをあなたと会わせようとしなかった、あのエミリーよ?)
レイチェル: Noo! Oh no! No! God, no! He should not get back together with her. I mean, I know that! You know that! Even Ross knows that! But that still doesn't give us the right to erase his message! (だめよ! あぁ、だめだめ! なんてこと、だめよ! ロスはエミリーとよりを戻すべきじゃないわ。だって、そんなこと私はわかってる! モニカもわかってる! ロスでさえ、そのことはわかってるわ! でも、それでもそのことが、彼のメッセージを消す権利を私たちに与えるわけじゃないのよ!)
エミリーのメッセージは、Are you thinking about me? の後、you're not や if you are のような省略形が使われていますね。これはもちろん、No, of course you're not thinking about me. But if you are thinking about me, call me tonight. ということになります。
セリフとして聞く場合には、are という be動詞だけを残すことで、その後の thinking about me が省略されていることはわかると思いますが、実際に自分がこういう言い回しを使う場合でも、このエミリーのセリフのように、thinking などを続けずに、be動詞で止めておくという感覚を使えるようになりたいところだと思います。こういうのが、自然な英語、なのですね。
明日他人と結婚するはずのエミリーが、ロスにまだ未練があるようなメッセージを送ってきたので、ロスの妹モニカも驚いています。
モニカは、Nooo! と言っていますが、そのト書きには、does Rachel's とあります。
直訳すると、「レイチェルのものをする、レイチェルのをする」みたいな感じになりますが、これは「レイチェルの口癖を真似る」というようなニュアンス。
その後の、does Monica's も、「モニカのをする」→「モニカの口癖を真似る」ということです。
勝ち誇ったように、I know! と叫ぶのは、モニカの典型的な口癖として有名ですが、レイチェルの Nooo! の言い方も、ファンの間ではよく知られているものです。
女性陣のNo!の違いの話 フレンズ3-2その32 では、No! や、I know! という口癖について詳しく触れています。
今回のやり取りでは、モニカとレイチェル、それぞれの口癖が逆転している、という面白さがあるわけですね。
このエピソードを英語で普通に見ていて、それに気付いた方は、かなりのフレンズファンだと言えるでしょう。
ネットスクリプトでは、ト書きできちんとそのことについて触れてくれているので、初見では気付かなかった人も「ああ、そう言われればそうだ!」とわかったかもしれません。
こうやって、ファン同士でその「お遊び」をシェアできるのも、人気番組の楽しみの一つですよね。
こんな風に、お決まりの口癖が入れ替わる、というパターンは、ある意味、ジョークの王道とも言えます。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 3」でも、ドクのための墓標が、自分の墓標に変わるかもしれないと知ったマーティが、
マーティ: Great Scott! (なんてこった!)
ドク: I know. This is heavy. (そうだな。これはヘビーだ。)
というやり取りがありました。
バック・トゥ・ザ・フューチャー3部作を通じて、ドクはびっくりした時にやたらと Great Scott! と叫び、マーティは大変なことが起こるとすぐに Heavy. という言葉を使っていたわけですが、完結編のパート3 で、お互い、相手の口癖を使って驚きを表現し合っている、という面白さです。
逆転していることに気付けるからこそ、笑えるわけですよね。
こういう「お決まり」「お約束」に関連したジョークは、シリーズものならではの楽しさでしょう。
Thank God! は「ありがたい。助かった」。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
thank goodness/heavens/God : said to show that you are very glad about something
例) Thank goodness final exams are over.
for
例) Thank heavens for email!
つまり、「何かについて非常に嬉しいと思っていることを示す時に使われる」。
例文は、「最終試験が終わってくれて良かった!」「eメールがあって助かった!」
ロングマンの語義にも出ているように、God 以外にも、goodness や heavens も使われます。
goodness は good の名詞形で「善」という意味ですが、このような感嘆のニュアンスで God 「神」という言葉を使うのは好ましくない、という考え方があるために、よく似た goodness を God の婉曲語として使うわけですね。
Thank God! という言い回しはよく聞くのですが、アカデミックな辞書であるロングマンの例文では、God ではなく、goodness と heavens の方が使われています。God よりも、そちらの方を使っておく方が「無難」だということなのでしょうか?
レイチェルは、Thank God! を使って、「エミリーが電話してきた時、あなたがこの場所にいてくれて良かった」と言っています。
モニカはロスがそのメッセージを聞く前に消去すべきだと主張します。
「そんなことできないわ」というレイチェルに、モニカは、What if...? 「もし…したらどうするの?」を使って、メッセージを消さなかったら、どういう結果になると思う?と言っています。
What if... 以下の分では、and then というフレーズが2回出てきますが、これは、「こうして、それからその後こうなって、それからその後こうなったら、どうするの?」みたいに、次々に起こる事態を時系列でレイチェルに想像させている感覚ですね。
これを許すと、最終的にはこうなってしまうのよ、と説明している感覚です。
Is that what you want? を直訳すると、「それ(今言ったこと)があなたが望むことなの?」ということで、「それがあなたの望みなの? あなたはそんなことを望んでるの?」という決まり文句ですね。
「そんなこと、あなたが望んでるはずないわよね、そうでしょう?」みたいな気持ちが裏に込められています。
controlling は「人を支配するような」というニュアンスでしょう。
neurotic は「神経質な、神経過敏な」、さらには、crazy とまで言っていますね。
結婚式の頃までは、モニカはエミリーと仲が良かったのですが、その後、ロスが結婚式の誓いの言葉で、エミリーとレイチェルの名前を間違えてしまったために、エミリーは「もうレイチェルとは二度と会わないと約束して」などと言い始め、エミリーとフレンズたちとの関係がおかしくなってしまったのでしたね。
The Emily that wouldn't let him see you? について。
まず、wouldn't は「…しようとしなかった」という「拒絶」のニュアンス。
ロスをレイチェルを会わせようとしなかった、という感覚です。
that という関係代名詞で「レイチェルに会わせようとしなかったエミリー」という意味になっていますが、その Emily という固有名詞に the がついていますね。
エミリーというロスの元妻は、一人の人間として様々な面を持っているわけですが、その中でも特に、「レイチェルとの仲を勘ぐって、もう一生会わせないようにしようとした、”あの”エミリーよ」と限定したい感覚から、定冠詞の the がついているのでしょう。
あんなエミリーとロスが元の関係に戻ってもいいの?とモニカに問われ、レイチェルはそれを否定します。
get back together は「よりを戻す」。恋愛ドラマの頻出表現ですね。
I know that! You know that! Even Ross knows that! と that が続けて出てきますが、その that はすべて、その前の「ロスはエミリーとよりを戻すべきではないということ」を指しています。
私も、モニカも、当人のロスさえも、よりを戻すべきじゃないってことはわかってるわ、ということですね。
But that still doesn't give us the right to... は、「でも、それでも、そのことが私たちに…する権利を与えるわけではない」ということで、つまりは、「だからって、ロスへのメッセージをロス自身が聞く前に、他人の私たちが勝手に消してもいいってことにはならないわ」ということです。
レイチェルにしてみれば、「ロスがエミリーとよりを戻しちゃいけないけれど、このメッセージはやっぱり本人に聞かせるべきよ、彼にはそれを聞く権利があるんだから」というところですね。
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フレンズの解説・・詳細でとてもいいですね。
この分析、好きです。
終わったら、スタートレック・ネクストジェネレーションでも解説していただけたら、うれしいです。
コメントありがとうございます。
また、解説もお褒めいただき、ありがとうございます。これからも詳細な分析ができるよう、頑張りたいと思います。
「スタートレック・ネクストジェネレーション」、いいですよねぇ。フレンズよりも詳しく解説する自信があったりもするのですが、SF用語を説明するのに夢中になって、誰も読んでくれなくなりそうな恐れもあります(笑)。