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シーズン5 第22話
The One With Joey's Big Break (ジョーイ悲願の大ブレイク)
原題は「ジョーイの大ブレイクの話」
モニカとレイチェルの部屋にジョーイが入ってきます。
ジョーイ: (entering, depressed) Hey. I just got off the phone with Estelle. Guess what? (Pause, then very excitedly) I got the lead in a movie! ([落ち込んだ様子で入ってきて] やあ、エステルとの電話を終えたところなんだ。何だと思う? [間があって、ものすごく興奮して] 俺、映画の主役をゲットしたんだ!)
チャンドラー: You got the lead in a movie? That's amazing! What's the movie about? (映画の主役をゲットしただって? それってすごいよ! 何の映画なんだ?)
ジョーイ: It's called Shutterspeed. It's really cool. Yeah, umm, I meet this girl in the subway and we fall in love in, like, a day, right? And then she disappears. But I find out where she lives and when I get there, this like old lady answers the door and I say, "Where's Betsy?" Right? And she says, "Betsy's been dead for ten years." (「シャッタースピード」っていうタイトルなんだ。すごくクールなんだよ(かっこいいんだよ)。ほら、うーんと、俺が地下鉄である女の子に出会って、俺たちは恋に落ちるんだ、ほら、一日でね? で、それから、彼女は消える。でも俺は彼女が住んでるところを見つけて、そこに行くと、おばあさん(老婦人)が応対するんで、俺は「ベッツィーはどこ?」って言うんだよ。すると、そのおばあさんはこう言うんだ。「ベッツィーは10年前に死んだよ。」)
フィービー: Ohh-oh, chilling! (うぅー、身も凍るわね。)
get off the phone は「電話を切る」。
get off the bus/train 「バス・電車から降りる」のように使うことが多いですが、基本的な意味は「〜から離れる」というニュアンスですね。
さっきまで電話で話してて(on the phone)、そこから離れた(off)という感覚が出ています。
最初、ちょっと意気消沈した暗い感じで入ってきたジョーイですが、ちょっと間を置いた後、 I got the lead in a movie! と叫んでいます。
lead は「(映画・演劇などの)主役、主演俳優」。
play the lead なら「主役を演じる」ですね。
主役という意味では今回のセリフのように、the lead と定冠詞 the がつきます。
これは、ある映画や演劇においての主役は「その人に特定される」からでしょう。
ですから、セリフでも、the lead in a movie 「(まだ特定されていない)ある映画の(その中で特定された)主役」のように、the と a が使い分けられているのですね。
何だか落ち込んだ様子で入ってきた時には、たいていびっくりするようなビッグニュースを持っている、というのがいつものジョーイのパターンですが、今回もまさにそのセオリー通りの展開、ということになります。
I got the lead in a movie! とビッグニュースを伝えたジョーイに対して、チャンドラーは主語を変えただけの、You got the lead in a movie? というセリフをオウム返しのように言っています。
I got the lead in a movie! のように相手が「俺は…した!」と言った場合は、You did? 「そうなのか?」みたいに簡単に返す場合も多いですが、今回はジョーイにとって喜ばしいビッグニュースであり、聞いた自分たちも驚いたので、省略しないフルセンテンスで返した、という感覚だと思います。
What's the movie about? を直訳すると、「その映画は何に関するものですか?」ということですから、どんなジャンルのどんなテーマの映画なんだ?と内容を尋ねていることになります。
It's called... は「…と呼ばれている」ですから、今のところ、仮題・仮タイトルは、「シャッタースピード」なんだ、みたいな感じでしょう。
その後、ジョーイは映画のあらすじを話して聞かせます。
meet this girl の this は、これまでのフレンズにも何度も出てきた「物語調で語る場合に使われる a と同じような意味の this」ですね。
ある女の子と一瞬で恋に落ちるも、その子が消え、その子の住所を訪ねるとおばあさんが出てきてこう言うんだ…と説明しています。
"Betsy's been dead for ten years." は継続を表す現在完了形ですね。
自然な日本語に訳そうとすると、「ベッツィーは10年前に死んだよ」になるでしょうが、こういうニュアンスの場合、英語では、She died ten years ago. とか、She passed away ten years ago. (pass away は die の婉曲語)のようには言わず、She's been dead for ten years. のように表現します。
以前に、フレンズ3-7その1 のコメント欄 で書いたことがあるのですが、「死んでいる」という「状態」が10年間続いているということがポイントとなっているので、現在完了形が使われているということなんだろうと思います。
日本語のように「10年前に死んだ」をそのまま英語の died ten years ago にすると、「10年前に死んだという出来事が起こった」ことに焦点が当てられ、「死ぬ」という「行為・動作」が起こったのが10年前だ、という過去の事実を述べていることになります。
ですがここでは10年前に起きたその事実を述べたいのではなくて、彼女が死んでから10年が経つ、10年前から彼女はいない、彼女は死んでいるというその「状態」が10年間続いて現在に至る、それを、has been dead という継続を表す現在完了形で表現している、ということなのだと思います。
単純に過去形で表現してしまうと、それは単に過去に起こった出来事を語っていることになり、そこに現在の状態との接点は見られません。
現在完了形(the present perfect)に「現在」(present)という言葉が使われているのは、その時制を使うことによって、現在との関連、つながりを示すことができる時制だからです。
「10年間ずっと死んだ状態である」→「だから今ここに訪ねてきても、彼女はいるはずがない」という、現在の状況と繋がっていることを示せるわけですね。
このような、英語と日本語の「視点」の違いのようなものに気づく時に、外国語を学んでるんだなぁ、ということをしみじみ実感します。
日本語を直訳した She died ten years ago. でも意味や意図は通じると思うのですが、「英語ではこういう場合、普通はこう言う」という、ネイティブが良く使う自然な表現を学んで行くのが、英語学習だと思うのです。
みんなが普通に使っている表現だからこそ、話す方と聞く方の意思疎通がスムーズにいくのだろうと。
chill は名詞では「冷え、(ひんやりする)冷たさ」「ぞっとする・ひやりとする気持ち」、動詞では「(人)をぞっとさせる、ひやりとさせる」。
そこから、chilling という形容詞は「身も凍るような、ぞっとするような」という意味になります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
chilling [adjective] : something that is chilling makes you feel frightened, especially because it is cruel, violent, or dangerous.
つまり、「chiling なものは、人に恐怖を感じさせる、特にそれが残酷、暴力的、または危険だという理由で」。
ここでは、「恋に落ちたはずの女性はずっと前に死んだ人だった」という怪談めいた話を聞いたのと、ジョーイがそのセリフをいかにもおばあさんみたいな震える声で言ったので(笑)、フィービーはちょっと大げさに、「それ、(人を)ぞっとさせるわね、身の毛もよだつわね」みたいなニュアンスで chilling を使っているのですね。
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