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2011年07月19日

主語youで自分の体験を語る フレンズ1-5その7

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フレンズ1-5その1 のコメント欄 でご質問がありました。
その記事内で、
チャンドラー: There's that awkward moment when you've handed her the note. (ジャニスにメモを渡したときは、気まずい空気が流れたよ。)
というセリフについて取り上げているのですが、「ジャニスにメモを渡したのはチャンドラーなのに、どうして主語が I ではなくて、you になっているのでしょうか?」というご質問でした。
そのセリフについて、その記事では解説が不十分であることと、私が当時つけた日本語訳を見ると、今の私が考えるものと少しニュアンスが違っているように思ったので、今回、改めて1つの記事として、修正と解説の追加をしたいと思います。

このような「自分の体験を語る you 」は、フレンズなどの海外ドラマのセリフによく登場するもので、これまでの記事やコメント欄でも何度か説明したことがあります。
ですが、フレンズ1-5 のようなシーズン1の最初の頃のエピソードですでに出てきていた、ということであれば、少しでも早い段階でそういう you のニュアンスを理解していただいていた方が、あとあとの英語学習もスムーズになるだろうとも思いました。
フレンズ1-1 から順番に学んでおられる方のためにも、今回は、フレンズ1-5 の追加記事として改めて書いてみようと思ったということです。
ですから、過去の記事やコメント欄に書いた部分と重複するところも多々あると思いますが、ご了承下さいませ。

フレンズ1-5その1 の記事では、チャンドラーの長いセリフの中の1つの文だけを取り上げていますが、実際のそこでのやり取りは以下のようになっていました。
今の私が考える日本語訳も一緒につけてみます。

モニカ: Chandler, nobody likes breaking up with someone. You just gotta do it. (チャンドラー、人と別れるのが好きな人なんていないわ。ただそうしなくっちゃ[別れなくちゃ]。)
チャンドラー: No, I know. But it's just so hard, you know? I mean, you're sitting there with her. She has no idea what's happening. And then you finally get up the courage to do it. There's the horrible awkward moment when you've handed her the note. (わかってるよ。でもただすごく難しいんだ、わかるだろ? つまりこういうことだ、彼女(ジャニス)とそこに座ってるとする。彼女は何が起ころうとしているのか全くわかっていない。そしてそれからついに別れる勇気を振り絞る。そこで、ものすごく気まずい瞬間があるんだよね、彼女にメモを手渡す時にさ。)

チャンドラーは、ジャニスと別れるのがどれほど難しいかを説明しようとしています。そのチャンドラーのセリフはすべて、主語が you で語られていますね。
これは、最初の部分の、But it's just so hard, you know? I mean... に続く形で、「ジャニスと別れるのがどんなに大変かわかるだろ? 例えばこんな感じなんだよ…」と、相手にジャニスとの場面を想像させて、そのハードさを理解してもらおうというようなニュアンスがあります。
チャンドラーは、「過去にジャニスとの間に実際に起こったこと」(過去の出来事)を説明しているのだと思うのですが、それをリアルに「想像」してもらうために、主語を you にし、現在形を使ってしゃべっているのだと思います。
日本語でも、「ほら、ちょっとそういう状況を想像してみてよ、君がジャニスと座ってるとする。ジャニスはこれから何が起こるのか全然わかってない。それで…」みたいに言うことがありますよね。それと同じような感覚だと思います。

日本語だと、「例えば、君がこういう状況だと想像してみてくれ」みたいに事前に一言、言っておく必要があるようにも思いますが、英語の場合は、「自分の体験を説明する際に、相手に共感してもらえるように、主語に you を使って説明する」ということが一般的かつ自然に行われているため、いきなり、主語の you を使って言っても相手も戸惑わないわけです。
これが、主語が I であって、時制もすべて過去形であったなら、「過去に起こった事実を淡々と述べている感じ」になるでしょうが、相手にその体験を共有してもらって、そのハードさを理解してもらうために、主語が you で現在形が使われている、と考えたらよいと思います。

つまり、チャンドラーは、自分の経験を述べているようですが、「もし君がこういう状況にいたとする、それで彼女はこんな感じで、結局、こういう結果になるんだよ」と、君(相手)に疑似体験を連想させて、相手の共感を得ながら自分の体験を一般論として語る感覚が、この you なのだと思います。
こういう you は、「君が」と訳すべきではないし、また、自分の体験を語っているのであっても、「俺が、私が」のように訳さない方が良いとも思います。
「相手を含めた一般の人の you を使うことによって、自分の体験を相手に共有させる」ニュアンスがあるわけですから、あえて主語を誰とは示さずに訳す方が、この英語の you のニュアンスが出やすい気がするのですね。

また、チャンドラーは、自分の経験を語っていると思われるので、意味としては、私が過去記事で訳したような「ジャニスにメモを渡したときは、気まずい空気が流れたよ」みたいな感じの内容になるとは思いますが、厳密に前から訳すと、「そういう気まずい瞬間があるんだよ、ジャニスにメモを(ちょうど)手渡した時にね[手渡すとね]」みたいになるでしょうか。

また、when 以下が後半に位置しているのは英語ではよくある普通のことですが、このセリフに関して言うと、この部分がジョークのオチ(punchline)になっているような気もします。
ジャニスと別れるのがどれだけ大変か、という話を語っていて、「何もわかってないジャニスに対して、別れを告げようと勇気を振り絞るも、気まずい瞬間があるんだよねぇ…」と来るので、彼女に「別れよう」と口に出して言うのが気まずいのかと思ったら、直接口では言えなくて、メモに書いて手渡す、というオチだった、という面白さがあるのかなぁ、と。

「別れよう」ってメモに書いて渡す?!って、そりゃあ気まずいわっ!(笑)とツッコミを入れたくなる感じもしますし、また、「ばつが悪く、きまりが悪い」と言っていたのは、「別れを告げることそのもの」ではなくて、「メモを使うという行為」を指しているという面白さなのかな、とも思います。
「いやぁ、気まずくてさぁ、メモを渡すと」「え、メモ!?」みたいな感じのやり取りで、勇気を奮い起こした結果が、直接口では言えない、「メモの手渡し」かよっ!という楽しさなのでしょう。
have handed her the note を聞くまでは、「うーん、確かに気まずいわよね…」と共感していただろう聞き手のみんなが、メモのオチを聞いてちょっと拍子抜けする、みたいな感覚なのかなと私は思いました。

ということで、このセリフは、「俺がジャニスにメモを手渡した時、気まずい瞬間があった」という「過去の自分の経験」っぽく訳すよりも、「気まずい瞬間があるんだよね、ジャニスにメモを手渡すとさ」という、「内容を相手の頭の中でイメージさせるような感覚」で訳すのが良いのかな、と思います。

このように、英語では、「自分の経験談を語る時に、主語を you にする」ということがあるわけですが、それについては、辞書、または他の方のわかりやすい説明を引用させていただく形で、そのニュアンスを詳しく見ていきたいと思います。

まず、you には話している相手の「あなた」以外に、「一般の人」を表す意味があります。
それは、英和や英英にもたいていは載っています。

研究社 新英和中辞典では、

you=[総称的に一般の人をさして]人は(だれでも)
(用法)漠然とした人をさすので, 日本語に訳さないほうがよい場合が多い


と説明されています。

また、LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
you [pronoun]: people in general

つまり、「一般の人」という語義で載っています。

その「一般の人」を表す、という意味から、一般の人には当然 I も含まれている、ということで、I の代わりに you を使うことがある、ということになるようです。
you が「一般の人」を指す、というところまでは、とりあえず辞書にも載っているのですが、さらにそれが「I をも含んでいる」、だから、「I の代わりに you を使うことがある」ということまでは、辞書にはなかなか載っていません。

以下にそのニュアンスを非常にわかりやすく説明して下さっている2つの説明をご紹介します。
1つ目は、「週刊ST」内のコラム、2つ目は、マーク・ピーターセンさんの「続 日本人の英語」です。
(この引用は、他の記事でも何度も使わせていただいていますが、「本当にこの説明はわかりやすい!」ので、今回も是非使わせて下さい!)

まずは、ジャパンタイムズ発行の抄訳付き英字新聞「週刊ST」の堀内克明さんと V.E.ジョンソンさんによるコラム「英語Q&A」の記事。
そのコラムでは、このトピックについて2度取り上げられていました。

1回目は、2005年6月10日号の、「一般の人を表す you 」という記事。
読者の方の質問は、「ミュージシャンのインタビューで、明らかに自分が質問されているのに、主語を you にして答える人が多い。この you はどのようなニュアンスなのでしょうか?」というものです。
その時の先生方の回答を以下に引用させていただきますと、

この you は一般の人(person or people in general)を指すもので、特定の「あなた」を指してはいません。つまり、「あなたを含む一般の人」といった意味で、話し相手を抱き込むような親しみを込めています。
従って、会話やインタビューでは、くだけて親しい感じを表わすために you が好んで使われます。


そして、もしインタビューに答える時などに、you 以外の単語を使った場合にはどういうニュアンスになるか、という説明もされていて(これがまた非常にわかりやすくて感動したのですが)、その説明は以下のとおり。

one や a person だと「改まっていて、堅い」感じ。
people は「自分以外の世間一般の人たちを指す」感じ。
we は「われわれ」という自己主張が感じられて、you のように控えめではない。
I だと「自己満足」の感じ。
動名詞を使って「…することは」という文にして主語を省略すると、主語を省略する日本語に近い効果があるが、これはぶっきらぼうな印象を与える。


2回目に取り上げられたのが、同じコラム「英語Q&A」の 2007年1月12日号の「自分のことを指す you 」という記事。
「(インタビュー記事などで)、本人が自分のことを話しているのに、主語が "you" になっているのをよく見ます。I ではいけないのでしょうか?」
という読者の質問に対する先生方の回答を、以下に引用させていただきます。

こういう you は、generic you (総称的な you) または indefinite you (不特定の you)と呼ばれます。
つまり、この you は特定の「あなた」ではなく、「あなた(方)を含む人(たち)」です。これは「人」(one)に近く、結局「われわれ」(we)と同じ意味になります。この we には当然 I が含まれますので、回りまわって you = I に相当します。
要するに、最初から I と言うと自己主張のように聞こえて、客観性がありませんので、相手を含めて you と言うと、一般性のある意見を伝えることができるというわけなのです。



次にご紹介するのは、マーク・ピーターセンさんの 続 日本人の英語 (岩波新書)

p.69 から、
「あなた」ではない You
についての説明があります。
p.71 に、
英語では、自分の経験から一般論を推定する場合、主語を "you" にすることが実に多い。
とあります。
こういう you の使い方は、一般日本人には馴染みがないらしく、日本人学生にこの "you" を使うと、たいてい誤解される、という主旨のことも書いてあります。
つまり、自分の経験として「一般論の you」を使って、When you watch... , you can.... と説明すると、I can? と聞き返される、というような「すれ違い」がたびたび起こる、ということですね。
また、日本人はこういう一般論を語る場合に、We を使いたがるが、そういう "we" は、「硬くてやや不自然というだけでなく外国人の相手に少々疎外感さえ与えかねない」とも説明されています。

日本人は、「you=あなた」だと思い込んでいるので、相手が you という単語を使うと、「えっ? 「私」のこと?、私が聞きたい・知りたいのは「あなた」のことなのに」とか思ってしまうんですよね。
そういう日本人が抱きがちな疑問を、「続 日本人の英語」では、上手に説明して下さっています。

この「続 日本人の英語」という本は、その前に出た 日本人の英語 (岩波新書) の続編ですが、2冊とも今でもずっと売れ続けているロングセラーです。
「日本人の英語」を知り尽くしておられる方なだけに、2冊とも目からウロコの解説ばかりなのですが、私はこの続編の「「あなた」ではない You 」の説明に実は一番感動を覚えました。
ネイティブがよく使うにもかかわらず、これを説明している辞書や本が少ない、そのため、この you のニュアンスを知らない日本人英語学習者は結構多いような気がするのですね。
you なんて、中学校で一番最初に習う単語の一つですから、今さらをそれを調べる人もいないだろうし、「you =あなた」と思い込んでしまってそれ以外のニュアンスがあることにも気づかずにスルーしてしまいがちです。

こういう you のニュアンスは、実際に生きた英語でそれに出会った経験がないと、上に引用させていただいたような説明もピンと来ないんですよね。
私は海外ドラマのセリフという生きた英語を学んだおかげで、そういう you に出会ったことがあったため、週刊STやピーターセンさんの説明を読んだ時に、すんなり納得できたのだと思います。
そういえばそういう言い回し、どこかで聞いたことがあったけど、そういうニュアンスだったのかぁ、と「気付く」感覚です。

上にも書きましたように、ピーターセンさんの本は長年売れ続けているベストセラーなわけですから、その「「あなた」ではない You 」を読んだ日本人英語学習者はかなりの人数おられるはず。
それなのに、日本人が英語を話す時に、そういう you を自然に使って話している人をあまり見かけない気がするのですね。
それは、「英語の知識」としてとどまっていて、自分で使えるレベルまで到達していない、ということなのだと思います。
自分で使えるようになるには、そういう知識を「実際に英語が話されている現場」で確認して、「あぁ、こんな風に使うんだ」という感覚を掴む必要がある、ということなのだろうと。
知識と経験を融合させなければ言葉は使えるようにはならない、そういう気がします。

なんだか最後は「英語論」みたいになってしまいましたが(笑)、辞書に普通に書いてあることを改めて別の本で確認してもそれはあまり意味がない気がする…今回引用させていただいた説明のように、辞書や他の本にはなかなか書いていない「ネイティブの感覚」に出会えた時に、いつも私は喜びを感じるのです。
「私がネイティブの人に教えてもらいたいのは、そういうことなんですよっ!」みたいな感動と言いますか。
また、そういう感覚を、実際にセリフで確認できる「海外ドラマのDVDを使った英語学習法」の意義も改めて感じることができる気がしています。


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posted by Rach at 16:21 | フレンズ シーズン1

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