ブログを続ける原動力となります。どうか今日も応援クリックをよろしくお願いします。


シーズン6 第4話
The One Where Joey Loses His Insurance (ジョーイ、迫真の名演技!)
原題は「ジョーイが保険を失う話」
[Scene: Monica and Rachel's, Rachel is packing her belongings to move to Ross's. She's standing in the kitchen.]
モニカとレイチェルの部屋。レイチェルはロスの部屋に引っ越すために、自分の持ち物を荷造りしているところ。レイチェルは台所に立っている。
レイチェル: Monica, which of all of this kitchen stuff is mine? (モニカ、この台所用品全部のうちで、私のものはどれ?)
モニカ: This bottle opener. (She grabs it off of the freezer door.) (この栓抜きね。[モニカは冷凍室のドアから、栓抜きをはぎ取る])
レイチェル: And...? (それに…?)
モニカ: And it's a magnet! (それに、それは(その栓抜きは)マグネットなの!)
レイチェル: Look at that! ([ロスに]、見てよ(栓抜きだけなのよ)!)
ロス: How weird is that? Y'know? You're moving in with me and have the one thing I don't have. It's like uh, in a way, you, you complete me. (Phoebe glares at him) Kitchen. (それってどれくらい不思議かなぁ。ほら、君は僕のところに引っ越してくる、そして僕が持っていない1つのものを持っている。それってまるで、ほら、ある意味では、君が、君が僕を完全なものにする[完成させる]んだよ。[フィービーがロスをにらむ] 台所をね。)
レイチェル: What? (何?)
ロス: (in an Australian accent) You complete me kitchen, matey! ([オーストラリア・アクセントで(訳注:私はイギリス・アクセントだと思うのですが、それについては後に説明します)] 君が僕の台所を完全なものにするんだよ、メイティ[友よ]!)
レイチェルは、Which of all... is mine? 「全ての…の中でどれが私のもの?」と尋ねています。
これまで5年以上同居してきたので、共有して使っていた台所用品のうち、私が持って行ってもいいのはどれかしら?という質問です。
モニカは、「この栓抜き」と言ってそれをレイチェルに渡します。
その後、レイチェルは、And...? と言って、その後のセリフを促していますが、それは、栓抜き以外に他にも何かあるでしょ?と言いたいわけですね。
「栓抜きと、それから他には何があるの?」という意味で、and を使うレイチェルに、モニカは、And it's a magnet! と答えます。
「それに、今渡したその栓抜きはマグネットでもあるのよ」ということですね。
その前の、grabs it off of the freezer door というト書きは、「冷凍室にくっついていたのを、つかんで取り外した」感覚がありますが、その描写からも、その栓抜きには磁石が付いているだろう、ということは想像できます。
「他に何かあるの?」と「別の品物」を尋ねたレイチェルに対して、「それはマグネットも兼ねてるのよ」と「別の機能」があることを言うことで、暗に「それ以外にあなたに譲れるものはない」と断言していることになるでしょう。
モニカはうまく話をすり替えた、という感じですね。
How weird is that? について。
How weird that is! なら「それは何て不思議なんだ」という感嘆文になるでしょうが、この場合は、is that? という語順なので、やはり「疑問文」ということになるでしょう。
直訳すると、「それってどんなに不思議かなぁ?」になるでしょうが、ロスは「それってどんなに不思議だと思う? 実はすごく不思議なことなんだよ」と、これからその「不思議さ具合」を説明する前に、そのような疑問文で、そのことが weird であると先に予告している、という気がします。
You're moving in with me and have the one thing I don't have. について。
have the one thing I don't have は「僕が持っていない(たった)1つのものを君が持っている」という感覚。
これから越してくる予定の君が、僕がもっていない唯一のものを持ってきてくれるなんて、すごく不思議だって思うだろ?という感じです。
It's like... 「…のようである」、in a way 「ある意味(では)」と言いながら、ロスは、You complete me. と言っています。
complete は「完了する」という意味ですが、「…を完成させる、…を完全なものにする」という意味もあります。
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
complete : to make something whole or perfect by adding what is missing
つまり、「欠けているもの[足りないもの]を加えることで、何かを完全に(whole, perfect)にすること」。
嬉しそうな顔をして、You complete me. とレイチェルに言ったロスを、フィービーは冷たい目でにらんでいます。
それは、You complete me. というセリフが、かなりロマンティックなセリフだからですね。
complete は「欠けているものを補って完全にする」というニュアンスですから、「君がいてくれると僕は完全になれる、君がいないと僕は不完全なままだ」と言っていることになり、僕には君が必要なんだ、君は僕の大切な一部なんだ、君がいないと僕は僕ではいられないんだ、のような意味になるでしょう。
しゃれた素敵な表現だなと思い、ネットで検索してみたところ、トム・クルーズ主演の1996年の映画「ザ・エージェント」(原題:Jerry Maguire)のセリフに、You complete me. があるようです。
IMDb: Memorable quotes for Jerry Maguire
Wikipedia 英語版: Jerry Maguire の Legacy という項目に、
Jerry Maguire spawned several popular quotations, including ... (途中省略) ... "You complete me"...
という記載があります。
「人気のある・評判の良い引用文をいくつか生んだ」ということで、その有名なものの中に、You complete me. も入っているということです。
どういう場面で使われたのか気になったので、早速、DVD をレンタルしてセリフを確認してみました。
(私が借りた DVD には英語字幕がついていなくて、それは少々残念でしたが…)
以下は、「ザ・エージェント」のネタバレになってしまいます。(あらすじを知りたくない方は(フレンズのセリフに戻ります)まで、スキップして下さい。)
主人公のジェリー・マグワイア(トム・クルーズ)が退職する時に、同僚のドロシー(レニー・ゼルウィガー)も彼の信念に共感して一緒に会社を辞めるのですが、その時のエレベーターの中で、手話で会話するカップルがいました。
そのカップルが降りた後に、ドロシーがその手話の意味を説明します。
ドロシー: My favorite aunt is hearing impaired. He just said "You complete me." (私の大好きなおばあちゃんは耳が不自由なの。今の彼は「君が僕を完全にする」って言ったのよ。)
おばあちゃんは耳が聞こえにくいから、ドロシーも手話を使える、だから彼の手話の意味がわかった、ということですね。
その時は、ふーん、という感じでその言葉を聞いていたジェリーですが、ラストシーン近く、ドロシーの存在の大きさに気づいて彼女の元に帰ってきた時に言うセリフが、
ジェリー: I love you. You complete me. (愛してるよ。君が僕を完全にするんだ。)
でした。
最初の方に手話として登場したセリフが、最後に決め台詞として使われることになる、というのが洒落てるなぁ、と思います。
(フレンズのセリフに戻ります)
今回の フレンズ6-4 の放映は、1999年10月ですから、トム・クルーズのこの映画(1996年公開)のセリフを意識して、ロスはそのフレーズを使ってみた、ということでしょう。
レイチェルへの恋愛感情を再び持ち始めたロスが、婚姻無効手続きをせず、レイチェルとまだ結婚している状態を続けて、なおかつそれをレイチェルには黙っている、そういう状態で、こんな「ロマンティックな愛のセリフ」を嬉しそうに言ったため、フィービーは、ロスをにらんだわけですね。
ちなみに、余談になりますが、Keyshia Cole(キーシャ・コール)が歌う、You Complete Me というタイトルの曲もあるようです。
Wikipedia 英語版: You Complete Me
2008年12月リリースのアルバム「A Different Me」に入っていた曲で、2009年1月にシングルとしてリリースされたもの。
ですから、フレンズ6-4 の放映(1999年)よりはずっと後なので、この歌を念頭に置いてロスがそのセリフを言ったわけではない、ということも言えるでしょう。
フィービーに「何言ってるの?」みたいな顔をされたロスは、とっさに、Kitchen. という言葉を付け加えます。
レイチェルに何?と聞き返されたロスは、kitchen と、さらには、matey という言葉も付けた、You complete me kitchen, matey! という文章を言っていますね。
この文章を私は「僕の台所を完全(なもの)にする」と訳しましたが、英語のセリフを見てみると、my kitchen という所有格(my)ではなく、me kitchen という目的格(me)になっていますね。
このように、英語では、my が来るべきところに me が使われる、ということがあります。
調べてみると、イギリスのある地方では、my の代わりに me が使われること、matey という単語もイギリス英語であることがわかりました。
それで、ネットスクリプトのト書きには「オーストラリア・アクセント」とあるけれど、私はイギリス・アクセント(イギリス英語)だと思ったわけです。
my の代わりに me を使うという用法について、また、matey という単語については、私がこれまでに見た他の作品(映画)でのセリフをいくつか引用しながら、次回の記事でじっくり説明したいと思います。
「You complete me kitchen, matey! というロスのセリフは、どこのアクセントか?、語彙から判断してどこの国の英語だと思われるか?」ということは、イギリス英語のネイティブスピーカーの方などに聞けば、瞬時にわかってしまう話だろうと思います。
ですが、私はあえてそういうことはせず、自分が英語学習として見てきた作品のセリフと、ネット上でポピュラーな情報源として使われている Wikipedia などを検索することとで、どこまで答えに近づけるかを自分で確かめてみたい、という気持ちが常にあります。
「調べた過程はいいから、結果だけ簡潔に教えてくれ」という方も多くおられるとは思うのですが、過程を披露するのがこのブログの基本コンセプトなので、次回もかなり長い記事になりますが(笑)、どうかお付き合い下さいませ。
ランキングをクリックして、応援していただけると嬉しいです。


こういう事を疑問に思う態度なんだなぁと思います。
達人レベルの人と普通レベルを分けるのって。
自分は普通にスルーしてしまいましたから。
疑問点を探す瞬発力って大切だなぁと思います。
個人的にはgrabs it off the freezer door では駄目なの?
とかそういう(恐らく)基礎的な疑問が先に出ます^^
コメントありがとうございます。
私は、ネットスクリプトのト書きにわざわざ、(in an Australian accent) と書いてあったので、ひっかかっちゃったんですよね。
普通に辞書を調べると、matey は「イギリス英語」だと書いてあったので、じゃあ、イギリス英語なのでは?というところから始まって、いろいろ調べることになった、ということです。
She grabs it off of the freezer door. の off of も気になりますよね。
研究社 新英和中辞典には、
off of...=《俗》 …から
He took the book off of the table. 彼はテーブルから本を取った。
と出ています。「俗語」ということなので、口語的な言い回しということでしょうね。
off は「分離」で、of は「起源」を表す感じでしょうか。
of は「ドアから(つかんだ)」のように、元々それがあった場所を示し、off は「(つかんで)ドアから離れた(状態にした)」という分離状態を示している、という感覚なのかなぁ、と思います。
この off of に注目されたのも、非常に良いポイントだと思います。そういう「気づき」を重ねていくことで、だんだん細かいニュアンスにも近づける気がします。