2011年10月05日

ばかなことをしたのは愛していたから フレンズ6-5その5

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前回のエピソード フレンズ6-4 の終わりに、レイチェルは、自分がまだロスと結婚している状態であること(婚姻無効手続きがされていないこと)に気づきます。
レイチェルにバレてしまったので、とうとう婚姻無効の手続きをすることになり、ロスとレイチェルの二人は判事の所に行くのですが、申請の理由が認められず、離婚するしかないことに。
[Scene: Ross's apartment, Rachel is packing what she still has over there as Ross enters.]
ロスのアパートメント。レイチェルは彼女がまだその場所に持っている[置いてある]ものを荷造り中、そこにロスが入ってくる。
レイチェル: (deadpan) Oh, honey, thank God you're home. I was getting worried. ([無表情で] あぁ、ハニー。ありがたいわ、あなたが家に帰ってきてくれて。私、心配になってきてたから。)
ロス: I picked up the divorce papers. Uh, I've already signed everything and I put little X's where you need to sign. (離婚届を取ってきたよ。あー、僕はすでに全部にサインをして、君がサインする必要があるところには、小さな X を書いといたから。)
レイチェル: Oh, little X's! Great! That makes up for everything! (まぁ、小さな X ね! 素敵! それが何もかも埋め合わせしてくれるわ!)
ロス: Y'know, I, I... you've done a lot of stupid stuff too, okay? (ねぇ、君もたくさんばかなことをしてきた、だろ?)
レイチェル: Oh, name one stupid thing that is as stupid as this one. (まぁ、このこと(ロスが結婚した状態であることを黙っていたこと)と同じくらいばかなことを1つ挙げてみてよ。)
ロス: Okay, how about you flew to London to stop my wedding? Ah, how about you told me you loved me after I was already married! (よし、僕の結婚を止めるために君がロンドンまで飛んできたのはどう? あ、僕がすでに結婚した後で、君が僕を愛してると言ったことはどう?)
レイチェル: Hey! Wait a minute! That was different! I did those things because I was in love with you! (ちょっと!待ってよ! あれは違ったわ! 私がそういうことをしたのは、あなたを愛していたからよ!)
ロス: Yeah! Right! (ああ! そうだね!)
(Pause.)
沈黙。
ロス: You're right. That's very different. So let's, let's just sign the papers. (Sits down and Rachel keeps standing there.) What? (そうだね[君は正しいよ]。あれは全然違う。それじゃあ、書類にサインして。 [ロスは座るが、レイチェルはそこに立ったまま] 何?)
レイチェル: Nothing. (Sits down.) (何もないわ。[座る])
ロス: Okay, can we just sign, please? (オッケー、サインしてくれる?)
レイチェル: Uh-hmm. (Just as Rachel finishes signing her name, Ross yanks each page out of the way.) (えぇ。[レイチェルが彼女のサインを書き終えると同時に、ロスは(次の用紙の記入の)邪魔にならないように、それぞれの用紙を引っ張る])
ロス: Congratulations. (Gets up to leave.) (おめでとう。[去ろうとして立ち上がる])

ロスの部屋に同居させてもらうつもりだったレイチェルですが、結婚したままの状態であることを黙っていたロスとは一緒に暮らせないと、運び込んだ荷物をまとめているところ。
ト書きの deapan は「無表情で」。
その後に続くセリフは、文字だけを見ると、「ハニー、あなたが帰ってきてくれて良かったぁ。私、心配してたんだからぁ」みたいな新妻のセリフっぽいのですが、そういう奥さんが言いそうなセリフをわざと無表情で皮肉っぽくロスに言っているわけですね。
ロスが結婚した状態であることを隠していたことを非難するために、「あー、私はまだあなたの妻なんだった。だから、妻らしいことをとりあえず言ってみてあげたわよ」みたいな感じなのでしょう。

婚姻無効申請が認められなかったロスは、離婚手続きのために、離婚の書類をもらってきた、と言っています。自分は全部サインした、と言ったあと、I put little X's where you need to sign. と言っていますね。
X's は「エクスィーズ」と発音されていて、つまりは、X の複数形ということ。
where は、the place where ということで、「(君がサインする必要がある)ところ、場所」になります。
君がサインすべき場所に、僕が小さな X を(いくつか)書いておいてあげたからね、と言っていることになります。
日本の書類でも、サインやハンコが必要な場所に軽く印をつけたりしますが、それを put little X's と言っているわけですね。
つまり、X のような「ペケ印、バツ印」をつけたということです。

君がわかりやすいように印をつけといてあげたから、という発言に、どこか恩着せがましい部分を感じたのでしょうか、レイチェルは、Great! と言って大袈裟に反応しています。
make up for は「(おわびに)〜を埋め合わせる」ですから、That makes up for everything! は、「あなたがバツ印をつけてくれたことは、すべてのことを埋め合わせるわ」と言っていることになります。
そこまで丁寧にしてくれたら、今まであなたがしてきた(ひどい)ことは全部、チャラになっちゃうわね、みたいな皮肉ですね。

その皮肉にカチンと来たらしいロスは、「何もかも僕が悪いみたいに言うけど、君だって今まで、さんざんばかなことをしてきたじゃないか」と言っています。
name one stupid thing の name は「…の名前を挙げる」。as stupid as を使って、あなたがした今回のこと(結婚状態を黙っていたこと)と同じくらいばかなことを、何か1つでも挙げてみなさいよ、と挑発している感じになるでしょう。

ロスは、それじゃあ、とばかりに、How about...? を使って、「…はどう? それから〜はどう?」と2つの例を挙げています。
このセリフでは、How about の about の後ろに、you flew to London や you told me のような「文」が続いていますが、How about the fact that SV... のような感覚で使っているようですね。

僕の結婚式を止めるためにわざわざロンドンまで来たり、結婚後に僕を愛してると言ったり、それはばかなこととは言えないの?とロスは言いたいようです。
そう言われたレイチェルは強い調子で抗議しています。
That was different! は「そのことは、今のこととは違っていた」ということで、あれとこれとは状況が違う、と言っていることになります。
その後、「私は(あの時)あなたを愛していたから、ああいうことをした、してしまった」とも言っていますね。
それを聞いたロスは間髪入れず、怒ったように、Yeah! Right! と言い、その後、二人の間に沈黙が流れています。
しばらくの沈黙の後、ロスは、Yeah! Right! の内容を説明するように、You're right. That's very different. と言います。
つまり、ロスが Right! と言ったのは、「レイチェルの言い分が正しい。レイチェルがしたああいうことと、今回のこととは事情が全然違う」ということで、レイチェルの発言の正当性を認めた形になります。

ロスは自分の発言、Yeah! Right! の意味を、そのように自分で説明したわけですが、Yeah! Right! の後に、二人の間に沈黙が流れた、レイチェルが一瞬、その発言に驚いた様子だった…のは、レイチェル、そして、観客には、そのロスの発言が、「ばかなことをしたのは、愛していたから」という発言に同意したように聞こえたからでしょう。
間髪入れずにこう言ったロスの気持ちも、きっとそうだったはずです。
「どうして結婚のことを黙ってたの? どうしてすぐに婚姻無効申請をしてくれなかったの?」とロスを責め続け、「よくもこんなばかなことをしてくれたわね」とまで言いそうなレイチェルに対して、「そうだよ、君が今、理由を説明した通りだよ。僕がばかなことをしたのも、君を愛しているからだ」と一瞬、「勢い」で認めてしまった発言、だったのだと思います。
レイチェルがそれに気づき、緊迫した空気が流れる中で、ロスは「それ以上説明しても意味はない、僕らの関係は進展しようがない」と判断したのでしょうか、「right と言ったのは、君が right だということで、確かにあのロンドンの件と今回の婚姻無効の話とは全然違うよね」とレイチェルの発言を認めたように言ってみせた、ということでしょう。
君がやったばかなことは僕を愛するがゆえの行動で、僕のはそうじゃない、と言っていることになり、「状況が違う」ということはつまり、「僕は今、君を愛してはいない」と断言したことになります。

あの時、君がそういう気持ちだったように、僕も今同じ気持ちなんだ、と言いたい気持ちを抑えて、そう言ったわけですね。
心の奥底では、どうしてわかってくれないんだ、という気持ちもあるでしょうが、やはりそれを言ったところでどうなるものでもない、というあきらめも依然としてある、ということでしょう。

もう、その話はおしまいだ、と言わんばかりに話を終え、とにかくこの書類にサインしよう、とロスは言います。
レイチェルは、ロスのさっきのその反応に「何か」を感じたはずですが、ロスが言葉でそれを否定した以上、何も言うことができません。
ロスがレイチェルに「サインしてくれる?」という部分、can we just sign, please? のように、主語が you ではなくて、we になっていますね。
please 「どうか」という言葉が入っているので、やはりこれは「お願い、依頼」だと思うのですが、ここでの主語の we は、「親身の we 」なのかなぁ?と思ったりするのですが、どうでしょう??

「親身の we (the paternal "we")」とは、相手に同情的な気持ちを示すために、you の代わりに用いる we のこと。
医療関係者が患者に対して、また親が子供に対して用いることが多く、we と言っていても、この言葉を発した本人のことは含まれていません。

ロスはすでにもう自分のサインはしているので、レイチェルだけがサインをすることになるのでしょうが、「サインできるよね? サインしてくれるよね?」みたいに、相手の気持ちを自分も共有しているかのような感覚を、親身の we で出しているのかなぁ、と思ったりもします。
ロスの本心は、レイチェルに是非サインして欲しいわけではない、できることならサインしないで欲しい、でもその本心を隠すために、「サインできるよね? 僕もそばで一緒に見ててあげるからさ」みたいにわざと「親身の we 」を使っているのかな、という気がした、ということです。

ロスが指示するまま、書類にサインするレイチェルですが、レイチェルがサインを書き終わるか終らないかのうちに、ロスはピッと書類を引っ張って、次の用紙に移ろうとしていますね。
何だかイライラした感じですが、これも、「本当はレイチェルと別れたくないのに、レイチェルにサインさせなければならない状況にいらだっている」感じが出ているのだと思います。

レイチェルは早く結婚状態を解消したがっていたので、それに対してロスは「おめでとう」と言っているのですが、「おめでとう」という言葉とはかけ離れたその不満そうなその様子にも、「本当は離婚手続きをしたくない」ロスの気持ちがよく表れていると思いました。


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posted by Rach at 15:32| Comment(2) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Rachさん
いつもご丁寧な解説ありがとうございます。
毎日ここでコツコツここで英語勉強させていただいています。
また新刊の方も増刷おめでとうございます!

今回の説明も勉強になりました。
Name one thing〜の文章がよくわかりませんでしたが、Rachさんの解説でよく理解できました!

それからRossの気持ち(君と同じで、あんな馬鹿なことをしたのは君をあいしているから)があの沈黙に隠されている!っていうのにも気が付きませんでした!
解説読んでなるほど!でした!

基本おバカで、笑えるのがフレンズだとおもいますが、たまにこういうホロっとさせるシーンもいいですね!
この二人今後どうなるんでしょう?!(まだ最後まで見ていないので(笑)じっくり見ていきます)

Rachさんの
益々のご活躍を期待しております!


Posted by katuo at 2019年07月05日 14:22
katuoさんへ
コメントありがとうございます。
私の解説についてそのように言っていただきありがとうございます。また増刷についても温かいお祝いのお言葉、重ねてありがとうございます! とても嬉しいです(^^)

今回のシーンは本当にホロッとしてしまいますね。シットコムというコメディーであり、基本一話完結な話でありながらも、シーズンが進むにつれてキャラの成長と人間関係の深まりが描かれているのが、実に素晴らしいと思います。

「今後どうなるんでしょう?」って、すっごく気になってしまいますよね^^ 最後まで見届けたいという思いが強かったおかげで、ファイナルまで見続けることになったし、ファイナルまでブログ解説もできたのだと思っています。この後の二人、そしてフレンズみんなの展開をどうか楽しみにしていて下さいね。

これからも楽しい記事が書けるように頑張ります!
温かいお言葉の数々本当にありがとうございました<(_ _)>
Posted by Rach at 2019年07月08日 20:34
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