2012年05月01日

望むものを何でも、こっちとあっちで フレンズ6-17その3

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今年のバレンタインデー当日はモニカが忙しかったため、2週間遅れで祝うことにしたチャンドラーとモニカ。
それぞれが相手のために手作りの贈り物をする、と約束したのですが、チャンドラーはプレゼントを手作りすることができません。
二人の寝室で、適当なものを探していたチャンドラーは、a mixed tape (音楽や音声をミキシングした編集テープ)を発見し、それを手作りギフトとしてモニカに贈ることにします。
手作りカセットテープ(カセットテープ、って時代を感じさせますが…笑)に感動したモニカは、自分のプレゼントをチャンドラーに渡すのですが、
(He opens his present to find Phoebe's sock bunny from earlier.)
チャンドラーが自分へのプレゼントを開けると、先のシーンで出てきたフィービーの(手作り)靴下バニー(ソックスで作ったウサギ)であることがわかる。
チャンドラー: It's a sock bunny. (靴下バニーだ。)
モニカ: Yeah-yeah, remember how I call you bunny? (そう、そうよ、私があなたをバニーって呼ぶのを覚えてるでしょ?)
チャンドラー: Not really. (いや、あんまり。)
モニカ: Well, I did one time, and-and I want to start doing it more. See, that's what this is about. (そうねぇ、一度、そうした[あなたをそう呼んだ]わ、そして、もっとそうするように始めたいと思うの。ほら、これは、そういうことなのよ。)
チャンドラー: I see. Y'know umm, Phoebe makes sock bunnies. (わかったよ。ほら、うーんと、フィービーは靴下バニーを作るよね。)
モニカ: No! No, she doesn't. Uh Phoebe, what she makes- that's uh- they're sock rabbits. They are completely different-- Okay! Okay! Okay! I didn't make it! I'm sorry! I totally forgot about tonight and the fact that we're supposed to make the presents! (いいえ! いいえ、フィービーは作らないわ。あー、フィービー、彼女が作るのは、それは…靴下ラビットよ。それって全く違う…。わかった、わかった、わかった! 私はそれを作ってない。ごめんなさい! 今夜のことと、私たちがプレゼントを作ることになっていたって事実を、私はすっかり忘れてたの!)
チャンドラー: Oh, it's okay. I don't-- (ああ、いいんだよ、俺も…してないし…)
モニカ: No-no, it's not okay! It's not! I mean you were just.... You're so incredible! You went through all this time and effort to make this tape for me! Y'know I'm just gonna- I, I am gonna make this up to you! I will! I-I am going to cook anything you want in here (points to the kitchen), and I am going to do anything you want in there! (Points to the bedroom.) (いいえ、よくないわ! よくない! だって、あなたはただ… あなたってすごいわ! あなたはこんな時間と努力をかけて、私のためにこのテープを作ってくれたんだもん! ほら、私はあなたにこの埋め合わせをするわ! きっとよ! 私はあなたが望むものを何でも料理してあげるわ、こっちで[台所を指差す] そして、あなたが望むことを何でもしてあげるわ、そっちで[寝室を指差す]。)
チャンドラー: (thinking it over) Well, I did put a lot of thought into the tape. (They both run into the bedroom.) ([その件について思いを巡らせて] そうだな、そのテープのことはほんとにいろいろと考えたんだよなぁ。 [二人は寝室に走って入る])

部屋で偶然見つけた編集テープを「俺の手作りなんだ」とプレゼントしたチャンドラーでしたが、モニカからのプレゼントは、ソックスでできたウサギ(a sock bunny)。
これより前のシーンで、「何か手作りのものを持ってない?」と、チャンドラーがフレンズたちに相談していた時に、フィービーが見せていたのがこれと全く同じものでした。
だから、チャンドラーは、そのバニーを見て、唖然としているのですね。

モニカは自分の手作りだとごまかそうと必死で、「私があなたをバニーって呼ぶの、覚えてるでしょ?」と言います。
Not really. は「あんまり覚えてない、よく覚えてない」みたいなニュアンスで、完全否定ではありませんが、はっきり完全否定すると角が立つので、こんな風に軽く否定してみた、というところでしょう。
チャンドラーにバレているとも知らず、モニカはまだ、嘘を続けます。
I did one time. は、I called you bunny one time. 「私は過去に一度、あなたをバニーと呼んだ」という意味。
その後の文章を直訳すると、「あなたをもっとたくさんバニーと呼ぶことを始めたいと思っている」ということで、「過去に一度あなたをバニーと呼んだけど、これからはもっとそう呼びたいと思ってるの」という感じですね。
See, that's what this is about. の that は、直前のモニカ自身のセリフ、「あなたを過去にバニーと呼んで、これからもっとそう呼びたいと思っていること」を指します。
this は、チャンドラーへのプレゼントの靴下バニー、もしくは、「チャンドラーに靴下バニーをプレゼントすること」を指すでしょう。
日本語では、「ね、これはそういうことなのよ」と訳しましたが、それはつまり、「こんな風にあなたにバニーちゃんのプレゼントをあげたのは、あなたをこれからもっとバニーと呼びたいと思っているからなのよ」と言っていることになります。

ついにチャンドラーは、「フィービーが靴下バニーを作る」ことをモニカに告げます。
このセリフについては、makes という「現在形」が使われているのに注目すべきですね。
チャンドラーは、「モニカが作ったと主張している、その靴下バニーは、フィービーが作った(ものだ)」と言っているわけではありません。
目の前の靴下バニーの作者が誰かを言っているのではなくて、「フィービーが(フィービーも)、靴下バニーを作るんだ、作るよ」と言っているだけです。
いきなり、モニカのプレゼントを「それはフィービーの作ったもんだろ!? モニカは嘘をついてるんだろ?!」と否定するのではなく、「俺はフィービーがそれと同じような靴下バニーを作ることを知ってるんだけど」と先にやんわり伝えることで、「俺はそれがフィービー作だとわかってるんだけどな」と言外に示唆しているわけですね。
これまでのフレンズで何度も出てきたように、現在形は「習慣、習性」を表しますので、チャンドラーのセリフはあくまでも、「フィービーは靴下バニーを作る」という彼女が日常行う行為を語っているだけであって、決して、Phoebe made the sock bunny. 「フィービーが”その”靴下バニーを作った」と直接的にモニカの嘘を糾弾しているわけではない、ということです。

現在形を使ったチャンドラーに対して、モニカも現在形の否定文で、「フィービーは靴下バニーを作らないわ」と否定します。
その後も、「フィービーが作るのは靴下ラビットで、靴下バニーとは全然違うわよ…」みたいに、理由にならない理由を言っているところに、追い込まれてしまっている様子がよくわかりますね。
ついに意を決して、「私は靴下バニーを作っていない」と自分の手作りでないことをモニカは認め、「今夜のこと、プレゼントを手作りすることになってたこと、をすっかり忘れてたの!」と正直に謝ります。

チャンドラーも偶然部屋で見つけた音楽テープを「俺の手作り」と嘘をついて渡しただけなので、謝るモニカを見て、「いや、いいんだよ、俺もこのテープを作ってないんだ(I don't make this tape.)」と告白しようとしたのですが、I don't-- まで言ったところでモニカがセリフをかぶせてきて、「よくないわ! あなたはほんとに素晴らしいんだもの!」と言って、チャンドラーが自分のために手間をかけて音楽テープを編集してくれたことを賞賛します。

You went through all this time and effort to make this tape for me! の go through は「耐える、切り抜ける、終える」みたいな「やり遂げる」感覚ですね。
「私にこのテープを作るために、このすべての時間と努力をかけてやり遂げてくれた」みたいな感謝の気持ちです。
あなたは手間暇かけて私に手作りのプレゼントを作ってくれた、だから、(他人のプレゼントを使ってごまかそうとした)私にどうか埋め合わせをさせて、みたいにも言っています。

モニカは、I am going to 「私は…するつもりである」を使って、埋め合わせの内容を説明しています。
前半は、「あなたが欲しいものを何でも料理してあげる、ここで」と言って、here のところで台所を指差しています。
後半は、「あなたが(して)欲しいことを何でもしてあげる、あそこで」と言って、there のところで寝室を指差していますね。
シェフであるモニカが、「あなたの好きな料理を何でも作ってあげる」というのは、埋め合わせとしてまず想定される話ですが、in the kitchen の部分をあえて、in here と言って指で場所を示しているのがポイントですね。
同様に、後半では、「あなたの望むこと、何でもしてあげるわ、あっちでね」と寝室を指差すことで、「え? あっち、つまりベッドルームで何でも好きなことをしてくれるの?!」とチャンドラーが喜び、寝室とはっきり言うよりも「あそこで」と言う方が余計にエッチな雰囲気が増す、という効果があるわけです。
どちらも同じように、anything you want 「あなたが望むもの・ことを何でも」という表現が使われているのもポイントですね。
動詞は、cook と do のように異なってはいますが、場所に関しては、台所と寝室、という具体的な場所の単語は出さずに、here と there を指で示すことで、「こっちであなたの望むもの(を料理する)、あっちでもあなたの望むこと(をする)」と言っているところに、よりセリフとしての面白さが出ていることになるでしょう。

そのテープは自作じゃない、と告白しかけていたチャンドラーでしたが、「あっちで何でも望むことをしてあげる」と言われて、急に表情が変わるのも面白いです。
put thought into を直訳すると、「考え、思考を…に入れる、注入する」という感覚になるでしょうか。
今回は、put a lot of thought into ですから、「多くの考えを…に注入する」みたいな感じで、「…のことをいろいろとよく考えた、時間をかけて考えた」というニュアンスになるでしょう。

LAAD (Longman Advanced American Dictionary) では、
put time/energy/work/enthusiasm etc. into something : to use a lot of time, energy etc. when you are doing an activitiy.
例) The kids have put a lot of energy into planning the trip.

つまり、「何かの活動をしている時に、多くの時間やエネルギーなどを使うこと」。
例文は、「その子供たちは、旅行の計画に多くのエネルギーを費やした」。

ロングマンの英文では、「時間、エネルギー、仕事、情熱」などが使われていますが、今回のチャンドラーのセリフでは、thought になっているので、「そのテープを作るのに、あれやこれやといっぱい悩んで考えたんだ」みたいなニュアンスで使っていることになります。

少し前にモニカが、You went through all this time and effort to make this tape for me! と言ってくれたことを、別の表現で言い変えた感じです。
I did put のように、強調のための did が入っていますので、put a lot of thought をさらに強調した感じで、「そのテープ作成に当たっては、ほんと、いろんなことを考えに考えたんだよ〜」と、自分がそのテープを作るのにどれだけの努力をしたか、ということを主張しているわけですね。

そのまま、寝室に走って行く二人に笑ってしまいますが、最初は「俺も自作じゃない」と言おうとしていたのに、モニカのセクシーなお誘いにつられて、「いやぁ、それを作るのには、随分苦労したんだよ」と、ころっと変わる様子をセリフから感じていただければと思います。


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posted by Rach at 16:19| Comment(4) | フレンズ シーズン6 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも,楽しく読ませてもらっています.mixed tape って,贈った人間が思うほど,贈られた人間は喜ばないという典型的な贈り物で,その場しのぎとは言え,それを選択するのがチャンドラーらしいですね.

さて,"put a lot of thought into the tape" ですが,「テープにたくさんの思いを込めた」と私は取りました."put a soul into" とか "put one's heart into" と同じ感覚です.
似たようなものなんですが,Rach さんの解釈とは thought の内容が変わってくるように思えます.この thougt は,私の解釈ではモニカへの感情,愛ですが,Rach さんの解釈では,何を贈るのがいいかという考えになると思います.
もっとも,thought を私のような使い方をしていいかは,あまり自信がありません.一応,英和では,「思いやり,心配,配慮」などの訳語がありますが,「愛情」まで延長させるのは日本語に捉われているのかも,と自分でも思います.

まあ,チャンドラーが強調したいのは,結局,自分がモニカの「償い」を受ける資格があるということで,どちらでも話はつながるのですが・・・
Posted by さへき at 2012年05月01日 23:28
さへきさんへ
コメントありがとうございます。
「贈った人間が思うほど,贈られた人間は喜ばないという典型的な贈り物」…。うーん、確かにそうかもしれない(笑)。

そして、put a lot of thought into についてのご意見、ありがとうございます。
thought を「モニカへの感情、愛」だと解釈されたのですね。おっしゃるように私は「考え」という風に解釈しました。いろいろ試行錯誤して、どの曲がいいかとか、曲の順序はどうしようかとか、そういうことをいっぱい考えたんだ、自分のアイデアや考えを、そのテープにいっぱい込めたんだ、みたいな感じに捉えました。

改めて、英英辞典を見てみると、
LAAD (Longman Advanced American Dictionary) の thought には以下のような意味が載っています。

3. CAREFUL CONSIDERATION : careful and serious consideration
5. CARING ABOUT SOMEBODY/SOMETHING : a feeling of worrying or caring about someone or something

3. は、「熟慮。注意深く真剣な考慮」、5. は、「誰かや何かを気にかけること。誰かや何かを心配し、気にかける感情」。

さへきさんの解釈だと 5. の意味で、私のは 3. ということになるでしょうね。
「気にかけること」は「思いやり」のような意味ですし、そういう「愛情のような感情」だと解釈するのも可能な気はしますよね。

私もよくわからないのですが、仮に「愛情」のような意味で言いたいとすると、I put a lot of thought for you into the tape. のように、「”君への”想い」という「対象物」が言葉として入るような気もします。またそういう「気持ち」だと言いたい場合は、thought よりも、feelings という言葉の方を使おうとするかもしれない…とか。

DVDの日本語訳が、
「テープは苦心の作だ/あのテープ、すっげー苦労したんだよね」
となっていたので、私もその訳の印象に捉われている部分もあるようです。
「そのテープには、多くの熟慮が込められている」→「あれやこれやと熟慮に熟慮を重ねて、そのテープを作り上げた」というのが、「俺は苦労したんだよ」感に繋がるな、と納得してしまったわけですね。

私自身も確信はないので、今後も、thought のニュアンスに注意してセリフを見ていくことにします。
一緒に考えていただいてありがとうございました。
Posted by Rach at 2012年05月04日 12:03
さっそくのお返事ありがとうございます.

「愛情」ならば thought ではなくて feelings を使うのじゃないか,というご意見は説得力がありますね.確かに 二つ並べてみると,男女間の「愛情」には thought よりも feelings の方がふさわしい気がします.まだ,はっきりとはわかりませんが,私も Rach さんの解釈の方がすっきりするような気がしてきました.ありがとうございます.

ところで,これは本来ならば次のエントリーにコメントすべきなのでしょうが,The Way You Look Tonight について一言.

私は古いミュージカルが好きなので,この曲にも思い入れがあります.この曲は映画「有頂天時代」のために書かれた曲なんですが,フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースがこの曲に乗って踊るシーンは,ミュージカル映画の中でも一,二を争うロマンチックなダンスナンバーなんです.ですから,この曲を聴いてモニカがチャンドラーを踊りに誘うのもすごく自然な流れですね.
Posted by さへき at 2012年05月04日 20:33
さへきさんへ
こちらこそ、お返事ありがとうございます。

thought よりは feelings かも、というのは、あくまで私の「印象」に過ぎませんので、確信はないのですが、そのように言っていただけて光栄です。こちらこそ、ありがとうございます。

また、映画「有頂天時代」の詳しい情報、ありがとうございます。私も、その曲の英語版ウィキペディアに、Swing Time や Fred Astaire のことが書いてあったので、オリジナルはそれなのかぁ…とは思ったのですが、何しろその映画を見ていないもので(笑)、それ以上、話を深めることも不可能だと思い、あっさり飛ばしてしまいました。ですから、いろいろ教えていただけてとてもありがたいです。
(フレッド・アステアの映画は、「パリの恋人」だけ見たことあります。オードリー・ヘップバーン特集という映画館の企画があって、その4作の中に入っていました…笑)

それで、「有頂天時代」の中で実際にアステアとロジャースの二人がこの曲で踊る、だから、チャンドラーとモニカもその映画の名シーンを思い出して踊る…わけですね。「踊りに誘うのもすごく自然な流れ」であることが、その映画を見た人ならわかる、ということなんですね。勉強になります。ありがとうございました。
Posted by Rach at 2012年05月07日 17:09
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